すべての生き物が幸せになるために。
「犬部」を通して動物保護を考えよう。
片野ゆかのノンフィクション「北里大学獣医学部 犬部!」を原案に、篠原哲雄監督が映画化。動物保護に取り組み続けた若者たちの熱き想いを伝えます。
青森県北里大学に実在した動物保護サークル「犬部」。2004 に結成された「犬部」の活動は、2010年発行された片野ゆかの本をはじめ、「犬部!ボクらのしっぽ戦記」「ツヅキくんと犬部のこと」としてコミカライズされるなど、人気を呼んでいます。そして今回、林遣都と中川大志の共演で実写映画化となりました。
動物保護をテーマにしたドキュメンタリーを手掛けてきた映像作家・山田あかねが脚本を担当し、可愛いだけの動物映画ではなく、命の大切さ、命を守る責任を問う作品となっています。
「犬バカ」たちの奮闘に、犬好きも猫好きも誰もが胸を熱くする映画『犬部!』を紹介します。
映画『犬部!』の作品情報
【日本公開】
2021年(日本)
【原案】
片野ゆか「北里大学獣医学部 犬部!」
【監督】
篠原哲雄
【キャスト】
林遣都、中川大志、大原櫻子、浅香航大、田辺桃子、安藤玉恵、しゅはまはるみ、坂東龍汰、田中麗奈、酒向芳、螢雪次朗、岩松了
【作品概要】
青森県北里大学に実在した動物保護サークル「犬部」の活動を綴った片野ゆかのノンフィクション「北里大学獣医学部 犬部!」の実写映画化。
監督は、『影踏み』『花戦さ』の篠原哲雄監督。動物保護をテーマにドキュメンタリーを手掛けてきた映像作家・山田あかねが脚本を担当。
「犬部」のメンバーには、熱血主人公・颯太に林遣都、相棒の柴崎役に中川大志、「犬部」の猫担当・佐備川役に大原櫻子、後輩・秋田役に浅香航大が共演を果たしています。
映画『犬部!』のあらすじとネタバレ
2003年、初夏。北里大学獣医学部に所属する花井颯太は、大学の授業が終わると急いで家に帰ります。
そこには、産まれたばかりの犬の赤ちゃんがいました。颯太は子供の頃から大の犬好きで、獣医を目指し勉強しています。
アパートには飼い犬の花子の他に、拾われてきた犬たち、猫たちが所狭しと暮らしていました。颯太は、今日も迷い犬を一匹連れ帰っていました。
同じ大学に通う猫好きの佐備川よしみに言わせると、颯太はこれまで出会った人の中で一番の「犬バカ」とのこと。
そして、もうひとりの「犬バカ」。颯太の同級生・柴崎涼介がやってきました。2人は迷い犬に「ニコ」と名付け、飼い主探しに乗り出します。
飼い主は思わぬ人物でした。それは、大学の安室教授。つまり、ニコは外科実習で使用する実験用の犬だったのです。
獣医科大学では、動物の生体を使った実習が、手術の授業の一環として組み込まれていました。獣医師になるためには、動物を安楽死させる外科実習が避けては通れないのです。
実験用の犬たちは、飼い主の見つからない動物保護センターで殺処分される犬たちでした。
颯太はどうしてもこの環境が許せません。「一匹も殺したくない」「生きているものは全部助ける」その想いでここまで保護活動を続けてきました。
安室教授と助手の秋田智彦が、ニコを連れ戻しにやってきます。どうしても渡したくない颯太。柴崎に説得され、しぶしぶニコを渡します。
自分の力のなさに落ち込む颯太の元に、ニコが再び脱走して戻ってきます。「今度こそ手放さない」颯太の想いに、安室教授は「特例ですよ」とニコを譲り渡します。
喜ぶ柴崎、よしみ、秋田とは反対に険しい顔の颯太。「これは特例に過ぎない。俺は一匹も殺したくない」。
颯太は、大々的に犬・猫の保護活動に乗り出します。サークル「犬部」は、こうして結成されました。
2019年、晩春。大学では異端児と言われた颯太も、東京で小さな動物病院を開業。無事に獣医師として働いていました。
大学卒業の際、問題の外科実習をボイコットし、動物病院での手術に多く立ち合いレポートを提出することで教授を説き伏せた颯太。
獣医になった現在も、動物保護活動を率先して行っていました。動物のことであれば何でも引き受け、無料で捨て猫の去勢手術も請け負います。全力投球の颯太を、看護師の深沢は心配していました。
そんな中、颯太を頼ってひとりの女性がやってきます。川瀬美香の案内で颯太が訪れたのはペットショップ「ドリーム」でした。
閉店しているも、店の中には取り残された犬たちが悪環境のもと放置されています。オーナーの久米を説得しようにも、保健所にやるのも金がかかると聞く耳を持ちません。
颯太は、無料で犬たちを引き取らせてほしいと提案。久米もそれならばと案を飲みますが、次の日には保護センターから犬を取り戻し、颯太を犬泥棒と警察に通報してしまいます。
状況が飲みこめないまま、逮捕となった颯太。獣医師の犬窃盗事件はニュースで大きく取り上げられ、SNS上では非難の声が殺到、動物病院には苦情の張り紙が張られ営業もできません。
この騒動をかつての「犬部」のメンバーは、それぞれの場所で知ることになります。親の動物病院で働く赤坂と、大学でワクチンの研究開発を続けていたよしみが、颯太のもとへ駆け付けます。
事情を聞いてあきれる赤坂とよしみでしたが、変わらず「犬バカ」の颯太に会い、昔の情熱を取り戻していきます。
しかし、その場に柴崎の姿はありませんでした。颯太は、柴崎の勤め先「十和田動物愛護センター」に行ってみることにしました。
映画『犬部!』の感想と評価
捨て犬や捨て猫を救うため、獣医学科の大学生たちが立ち上げたサークル「犬部」。これが実在したサークルだということを知ると、物語がより身近に感じられます。
「生きているものは、みんな助ける。犬も猫も」と掲げた活動は、決して楽なものではありませんでした。
そこには、減らない捨て犬、増える野良犬、追いつかない保護、殺処分の現状、様々な問題がひしめいていました。
それでも、ひとつでも目の前の命を救おうと奮闘する若者たちの姿に、命の大切さ、動物を飼うという責任について考えさせられます。
映画の中では、動物保護センターで殺処分を待つ犬たちの様子や、飼うことが出来なくなった動物たちの悲惨な現状など、目を覆いたくなる場面も描かれています。
飼い主がいなくなってしまった犬たちの最期から目を背けてはならないと感じます。動物を飼うということは、その命に最後まで責任を持つということなのかもしれません。
実在の「犬部」が結成されたのは、2004年ということです。当時はSNSも普及していない中、譲渡会などイベントを開催するのも大変なことだったろうと思います。
彼らの活動は始まりに過ぎなかったかもしれませんが、現在では獣医学部の外科実習は実験用の犬を用いないものなっていたり、多くの動物愛護のNPO団体が立ち上がっています。
ひとりの青年の熱い想いから始まったか活動が、仲間を呼び多くの人の心を動かしたのです。今でも北里大学獣医学部には「北里しっぽの会」と名称を変え、動物保護活動は続いています。
また映画化では、主人公の颯太が、仲間とともに「犬部」を立ち上げた学生時代と、獣医師になり新たな問題に立ち向かう現代との2つの時間軸で進んでいきます。
大人になっても信念を曲げずに動物保護に取り組む颯太。自分の進んだ道に迷い、挫折を経験しながらも、動物と向き合っていく「犬部」のメンバー。
学生の頃の夢を、いつまでも変わらない純真な気持ちで目指し続ける彼らの行動から、勇気と元気をもらえます。
主人公・颯太のモデルとなった獣医師の太田快作氏は、現在でも業務の傍ら、野良猫の避妊去勢手術や、多頭飼育崩壊の現場に赴き治療を行っているそうです。
映画化で主人公・颯太を演じた林遣都は、太田氏とどこか雰囲気が似ており、まさに「熱血犬バカ」っぷりを体全体で表現しています。愛犬の花子や犬たちと戯れる姿には、見ている方も自然と笑顔になります。
そして何と言っても、最大の癒しとなる動物たちの名演技にも注目です。実際に保護犬出身の犬たちも参加し、愛らしい姿を見せてくれます。
まとめ
青森県北里大学に実在したサークル「犬部」の活動を基に、動物愛護をテーマにした映画『犬部!』を紹介しました。
可愛い動物たちの登場に心癒されるだけではなく、動物保護活動を通して「命の大切さ」を学べる作品となっています。
愛犬がいる方はもちろん、動物が好きな人、これから動物を飼いたいと思っている人、親子でぜひ見て欲しい映画版『犬部!』。動物との向き合い方が変わるかもしれません。