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Entry 2019/03/24
Update

映画『放課後ソーダ日和 特別版』ネタバレ感想。枝優花監督が描く“17歳が愛おしいもの”を巡る冒険譚

  • Writer :
  • 河合のび

2019年3月22日より公開の映画『放課後ソーダ日和 特別版』

ソーダの泡みたいに一瞬。だけど、ずっと消えない。

森田想、田中芽衣、蒼波純が演じる三人の女子高生の、美味しいクリームソーダを探す放課後の冒険。

青春の甘さも切なさも楽しめる映画『放課後ソーダ日和 特別版』をご紹介します。

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映画『放課後ソーダ日和 特別版』の作品情報


(C)2018 ALPHABOAT – SPOTTED PRODUCTIONS

【公開】
2019年(日本映画)

【監督・脚本】
枝優花

【キャスト】
森田想、田中芽衣、蒼波純、福崎那由他、大阪美優、小林苑子、芹澤興人、穂志もえか、モトーラ世理奈

【作品概要】
ひょんなことから知り合った三人の女子高生が、美味しいクリームソーダを探す放課後の冒険を通して友情を深めてゆく青春コメディ映画です。

MOOSIC LAB2017長編部門にて観客賞を受賞し、インディーズ映画では異例のロングランヒットを国内外で記録した枝優花監督の長編デビュー作『少女邂逅』。

その公開直前にYouTubeでアップされたスピンオフドラマが『放課後ソーダ日和』であり、本作は劇場公開のために再編集を施した「特別版」にあたります。

監督・脚本の枝優花は長編デビュー作にして代表作の『少女邂逅』をはじめ、今年の2月に公開され、山戸結希が企画・プロデュースしたことで話題になった短編オムニバス映画『21世紀の女の子』にも、劇中の一編『恋愛乾燥剤』の監督として参加しています。

キャストに『ソロモンの偽証 前篇・事件』『心が叫びたがってるんだ。』に出演し、『アイスと雨音』では主演も務めた若手実力派女優の森田想。

ネクストブレイク必至のファッションリーダーと注目され、本作では自身と同じくモデル活動をしている少女を演じる田中芽衣。

『ワンダフルワールドエンド』での主演デビュー後、『サムライフ』『サニー32』『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』など様々な映画に出演しその独特な魅力を発揮している蒼波純が並びます。

また『少女邂逅』にて主演を務めた穂志もえか、モトーラ世理奈も特別出演しています。

映画『放課後ソーダ日和 特別版』のあらすじとネタバレ


(C)2018 ALPHABOAT – SPOTTED PRODUCTIONS

父子家庭で育ち、金欠にあえぐサナ。

どこに行っても同世代のファンたちに声をかけられるほどの人気モデルで、学校の有名人なモモ。

地味でどこか鈍臭く、スマートフォンの音声読み上げソフトを使わないと喋ることができないムウ子。

同級生だけれど一度も会話を交わしたことのなかった三人は、夏休み前、ある出来事がきっかけとなり知り合います。

早速遊びに行こうとモモは提案しますが、手軽に、ワンコイン=500円以内で手に入れられてしまう楽しみに、三人は飽き飽きしていました。

結局、ムウ子の希望により、三人はいわゆる純喫茶のお店へと行くことになりました。

女子高生は場違いじゃないかと感じてしまう店内の雰囲気、メニューに書かれている値段の高さに戸惑ってしまう三人。

ですが、そこで注文したクリームソーダの美味しさに驚き、その虜になってしまいます。

サナに至っては、それを飲んだことで、無意識のうちに涙を流してしまいました。

その後三人は、放課後になると、美味しいクリームソーダを探しに各地の純喫茶を巡るようになりました。

以下、『放課後ソーダ日和 特別版』ネタバレ・結末の記載がございます。『放課後ソーダ日和 特別版』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)2018 ALPHABOAT – SPOTTED PRODUCTIONS

夏休み、新学期と美味しいクリームソーダを探し続ける中で、ムウ子とモモが抱える悩みも浮かび上がってきました。

失恋のトラウマによって喋ることが怖くなってしまい、サナの幼馴染・タクローへの恋にも臆病になってしまうムウ子。

人気モデルのイメージを維持するため、「みんなのモモ」であり続けるために頑張り過ぎてしまうモモ。

時に笑い、時に泣きながらも、三人は友情を深めてゆきます。

ある日の放課後、サナはいつも通り美味しいクリームソーダを探しに行こうと提案しますが、モモは仕事、ムウ子は塾があるためにそのまま帰ることになりました。

以前学校で配られた進路志望届を全く書けずにいたサナは、自身が周囲から取り残されているのではと不安になってしまいます。

サナは誰もいない自宅へ帰ると、クリームソーダを手作りすることにしました。

無事クリームソーダを完成させますが、一人で飲むクリームソーダはちっとも美味しくないことに気づきます。

そのまま居眠りしてしまうサナ。

目を覚ますと、そこには仕事から帰ってきた彼女の父親がいました。

父親は何も書かれていないクシャクシャの進路志望届を見て、サナに「普通の女子高生」として生活させられていない自身の不甲斐なさを彼女に謝ります。

そして、お手製のクリームソーダを彼女に差し出します。

それはずっと昔に亡くなってしまったサナの母親特製のレシピで作ったものでした。

クリームソーダを飲んで涙を流してしまった理由をサナは気づきました。

父親はサナに、「普通」に生きてほしい、「自分で最高と思える人生を自分で探せる」ように生きてほしいと語ります。

その言葉に対し、サナは返事をします。

そして、父親が母親の特製レシピで手作りしてくれたクリームソーダを、彼女は父親とともに楽しみます。

再びある日の放課後、サナ・モモ・ムウ子は指切りをして約束します。

「私たちの時間は限りある」「でも、三人で過ごした時間は決して消えない」「ずっと友達でいよう」と。

クリームソーダを探す三人の小さな冒険は、まだまだ続きます。

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映画『放課後ソーダ日和 特別版』の感想と評価


(C)2018 ALPHABOAT – SPOTTED PRODUCTIONS

現代社会において、「楽しみ」、硬く言い換えると「娯楽」は、お手軽で簡単に手に入るものばかりで溢れ返っています

薄利多売というスタイルは当たり前になり、ワンコインですら「高い」と言われることがままあります。

本作の劇中で言及されていたSNSも、コミュニケーションツールであると同時にお手軽で簡単に手に入る娯楽でもあります。

なぜなら、「自らを虚飾する」という行為には、少なからず娯楽の側面があるためです。

お手軽で簡単に手に入る娯楽に浸り続ける生活。それは、サナたちのような若い世代の人々だけのものではありません。

現代社会に生きる誰もが、そのような生活を送っていると言っても過言ではないのです。

しかしながら、そこに「大切」は存在するのでしょうか。

大切なものはどんなことだって消えない」。

劇中で発されたこのセリフに、お手軽で簡単に手に入る娯楽は、その脆い体を崩壊させることなく耐えられるのでしょうか。

本作の主人公たちであり、17歳の女子高生であるサナ・モモ・ムウ子にとって、「17歳」という時間は一度きりの、ほんの一瞬に過ぎません。

けれども、彼女たちは「三人で美味しいクリームソーダを探す」という大切な思い出を、「17歳」という時間の中から見つけ出せたのです。

それは、他人にとってはどうでもいいことかもしれません。

しかしながら、それは三人にとっては消えることのない「大切」であり、お手軽でもなく、簡単に手に入れることもできない、見つけ出せた三人だけが価値を理解できる楽しみなのです。

そもそも、クリームソーダの泡がそう表しているように、誰もが、人生という一瞬の時間の中を生きています。

あらゆる時間が加速の一途を辿っている現代社会に生きていれば、なおさらその事実を実感させられるでしょう。

果たして、「大切」を見つけ出さなかったとしても、その人生は「自分で最高と思える」ものになるのでしょうか

あまりにも短く、無意味とすら感じてしまう時間の中で、それでも、「大切」を見つけ出そうとする大切さ。

シンプルで、けれどとても大切なことを、本作は伝えてくれるのです。

まとめ


(C)2018 ALPHABOAT – SPOTTED PRODUCTIONS

個人差こそあれど、どうあがいても短い人生という時間の中で、「大切」を見つけ出す愛おしさを諭してくれる映画『放課後ソーダ日和 特別版』。

これから17歳になる方。17歳になったばかりの方。とっくに17歳でなくなった方。

様々な形で「17歳」という一瞬を経験する、あらゆる年齢層の方に観ていただきたい作品です。

『放課後ソーダ日和 特別版』、ぜひご鑑賞ください。



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