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Entry 2026/03/09
Update

『ハムネット』あらすじ感想と評価考察。シェイクスピア夫婦の絆と試練を軸に“ハムレット誕生の背景”を描いた話題作

  • Writer :
  • 松平光冬

シェイクスピア不朽の名作誕生の裏に迫るアカデミー賞本命作

第98回アカデミー賞において、作品賞、監督賞、主演女優賞ほか計8部門にノミネートされた映画『ハムネット』が、2026年4月10日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国順次ロードショーされます。

『ノマドランド』(2020)のクロエ・ジャオ監督が、シェイクスピアの戯曲「ハムレット」誕生の背景を、大胆なフィクションを交えて描いたドラマの見どころをご紹介します。

映画『ハムネット』の作品情報


(C)2025 FOCUS FEATURES LLC.

【日本公開】
2026年(イギリス映画)

【原題】
Hamnet

【監督・脚本・編集】
クロエ・ジャオ

【製作】
リザ・マーシャル、ピッパ・ハリス、ニコラス・ゴンダ、スティーヴン・スピルバーグ、サム・メンデス

【製作総指揮】
クリスティ・マコスコ・クリーガー、クロエ・ジャオ、ローリー・ボーグ

【原作・共同脚本】
マギー・オファーレル著「ハムネット」(新潮社刊)

【撮影】
ウカシュ・ジャル

【共同編集】
アフォンソ・ゴンサウベス

【キャスト】
ジェシー・バックリー、ポール・メスカル、エミリー・ワトソン、ジョー・アルウィン、デヴィッド・ウィルモット、ボディ・レイ・ブレスナック、オリビア・ライン、ジャコビ・ジュープ、ノア・ジュープ

【作品概要】

『ノマドランド』で女性として史上2人目となるアカデミー監督賞を受賞したクロエ・ジャオが、北アイルランドの作家マギー・オファーレル発表の同名小説を映画化。

脚本をジャオとオファーレルが共同で担当し、スティーヴン・スピルバーグとサム・メンデスが製作に名を連ねます。

『ロスト・ドーター』(2021)で第94回アカデミー助演女優賞にノミネートされたジェシー・バックリーが主人公のアグネス・シェイクスピア、『aftersun アフターサン』(2022)のポール・メスカルが夫ウィリアムを演じます。

主な共演に、『奇跡の海』(1996)のエミリー・ワトソン、『ブルータリスト』(2025)のジョー・アルウィン。

日本では2025年の第38回東京国際映画祭のクロージング作品として初上映。2026年の第98回アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演女優賞ほか計8部門にノミネートされました。

映画『ハムネット』のあらすじ


(C)2025 FOCUS FEATURES LLC.

16世紀イングランドの小さな村。薬草の知識を持ち不思議な力を宿した女性アグネスは、ラテン語教師のウィリアムと出会い結婚し、長女スザンナ、双子のハムネットとジュディスの3人の子をもうけます。

やがて劇作家となったウィリアムがロンドンで活動するようになり、ひとりで家庭を切り盛りするアグネス。そんな中、イングランドがペスト禍となり、ジュディスが感染してしまい…。

映画『ハムネット』の感想と評価


(C)2025 FOCUS FEATURES LLC.

「ハムレット」誕生の背景を大胆なイマジネーションで描く

中世デンマーク。城に現われた父王の亡霊から、その死因が叔父クローディアスの計略によるものと告げられ、復讐を誓った王子ハムレット。誤解と狂気が新たな死者を生みながら、ついに復讐を果たしたハムレットだが、自らも毒刃に倒れてしまう――。

「ロミオとジュリエット」、「べニスの商人」など、約37編の史劇・悲劇・喜劇を創作したウィリアム(ウィル)・シェイクスピア。その中でも「オセロー」、「マクベス」、「リア王」と並ぶ“4大悲劇”の一つとされる「ハムレット」は、数々の名セリフを生んだ彼の最高傑作とする声は少なくありません。

しかしながら、「ハムレット」が生まれた背景やその詳細については謎に包まれています。

ハムレットという名前は、ウィルの双子の長男ハムネットに由来するとされるも、その関連性は明らかになっていません。そのハムネットも、「ハムレット」が書かれた4~5年前に11歳で亡くなっていますが、死因は不明。そもそもウィルが劇作家になった経緯や、47歳で筆を折って隠居し51歳で亡くなったという生涯も諸説紛々です。

そしてウィルの妻アン・ハサウェイにいたっては、さらに身元不詳とされています。26歳の時に18歳のウィルと知り合い結婚、3人の子の母になったということは公の記録として残っているも、彼女がどういう人物だったのか、どこで夫と知り合ったのかといった素性は分からずじまい。

そのせいか、年下のウィルをたぶらかして結婚するも男遊びを繰り返し、そんな妻に嫌気がさしたウィルは単身ロンドンに渡り劇作家に…といった風評がなかば定説となっており、『恋におちたシェイクスピア』(1999)でも、夫婦仲が冷めきったウィルが新たな愛を求めるという物語となっていました。

そんなさまざまな謎や風評に向き合ったのが、北アイルランドの作家マギー・オファーレル。史実と独自のリサーチを元に大胆なイマジネーションを吹き込み、いかにしてアン・ハサウェイはウィルと出会い結婚したのか、彼らはどのような家庭を築いたのか、そしてウィルが「ハムレット」を上梓したきっかけは何だったのかを、8作目の長編小説「ハムネット」に認めました。

小説「ハムネット」は2020年3月に出版されましたが、映画化の企画はその数カ月前から動いており、サム・メンデス、スティーヴン・スピルバーグといった名フィルムメーカーたちも参画。

構想からおよそ5年後、ついに完成した映画版『ハムネット』は、原作小説に即して、アン・ハサウェイから出生時の名前「アグネス」とした1人の女性を中心に進みます。

名監督、名キャストたちが紡ぐ夫婦の在り方

(C)2025 FOCUS FEATURES LLC.

映画化にあたり、プロデューサーのスピルバーグして、「素材(原作小説)の本質を守り、登場人物、そして観客が物語を通じてたどる情緒的で複雑な旅を、直感的に理解して示せるただ1人の監督」として挙げたのが、『ノマドランド』で女性として史上2人目となるアカデミー監督賞を受賞したクロエ・ジャオでした。

ジャオもまた小説を読み、「とても直感的で、詩的な体験をした」とし、「映画監督として、あるリズムで映像が積み重なっていくのが見えた。この本には、映画監督としての私の鼓動と同じリズムの鼓動がある」と、これまでの監督作同様、原作者オファーレルと共同で脚本も担当。

鷹匠であり、本草学と云われる薬草の知識を持ち、手相にも精通するアグネス。家業の皮手袋製作を手伝いながらラテン語の家庭教師もしていたウィルは、そんな独立心と自尊心を持ち合わせる彼女の虜に。

すぐさま交際し、アグネスの妊娠を機に両家の反対を押し切り結婚したウィルですが、厳格で暴力的な実父に怯え、自分の成すべきことを見つけられずに苛立ちを隠せません。そんな夫をたしなめることなく包容し、劇作家としての秘めたるイマジネーションを膨らませる内助となるアグネスの姿は、“悪妻”イメージを伴うアン・ハサウェイとは程遠いものです。

アグネス役のジェシー・バックリーは、「まさに私が探し求めていた女性」とし、神秘的なアグネスへのアプローチを深めるために日記をつけるといった役作りをしました。かたやウィル役のポール・メスカルは、シェイクスピア作品は自身の実体験に基づいているという仮説を立て、いくつかの作品の独白の意味を掘り下げることで、ウィルを自分のものとしました。

バックリー、メスカルは当然ながら、脇を固めるウィルの母メアリー役のエミリー・ワトソンや、ハムネット役のジャコビ・ジュープといった子役も含め、キャスト陣の熱演が見ものです。

(C)2025 FOCUS FEATURES LLC.

まとめ


(C)2025 FOCUS FEATURES LLC.

本作『ハムネット』について、ジャオ監督は「変容の物語」と語ります。

劇作家としての才能が開花しロンドンで単身活動することとなるウィルに、子育てや家事に奮闘するアグネス。それぞれの立場が変容していくと同時に、村も変容に包まれます。それは、彼らに大きな悲しみをもたらすこととなります。

さまざまな変容によって試される夫婦の絆、家族の絆。そこからいかにして、名戯曲「ハムレット」は生まれたのか?

2025年度の映画賞レースを席巻しつつある注目作に、ご期待ください。

映画『ハムネット』は、2026年4月10日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国順次ロードショー。

松平光冬プロフィール

テレビ番組の放送作家・企画リサーチャーとしてドキュメンタリー番組やバラエティを中心に担当。『ガイアの夜明け』『ルビコンの決断』『クイズ雑学王』などに携わる。

ウェブニュースのライターとしても活動し、『fumufumu news(フムニュー)』等で執筆。Cinemarcheでは新作レビューのほか、連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』『すべてはアクションから始まる』を担当。(@PUJ920219)



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