人生はくそったれで、愛おしい。
映画『グッバイ、リチャード!』が2020年8月21日(金)より、全国公開されています。
初主演から30年目になるジョニー・デップを主役に迎え、マンチェスター映画祭など数々の映画祭で称賛されたウェイン・ロバーツ初監督作品です。
突如余命宣告された大学教授のリチャード。追い討ちをかけるように妻から不倫を告白され、残りの人生を謳歌しようと決意します。怖いものなしのリチャードは今までの自分のルールを破り、マリファナを吸ってみたり、遠慮なく物を言ってみたりと破天荒な行動にでます。
そんなリチャードの言動は周りの生徒や娘、友人にも影響を及ぼしていき、リチャード自身も自分の人生を振り返り、愛おしみはじめますが、リチャードの最期は近づいていき…
ジョニー・デップ自身のキャリアをも投影したかのような役柄、等身大の中年男性の演技と、今までにない新たなジョニー・デップの一面を見ることができ、“人生を歩むこと”の大切さを教えてくれます。
映画『グッバイ、リチャード!』の作品情報
【日本公開】
2020年(アメリカ映画)
【監督】
ウェイン・ロバーツ
【キャスト】
ジョニー・デップ、ローズマリー・デウィット、ダニー・ヒューストン、ゾーイ・ドゥイッチ、ロン・リヴィングストン、オデッサ・ヤング
【作品概要】
初主演映画『クライ・ベイビー』(1990)から30年目になるジョニー・デップ。「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズから『シザーハンズ』(1991)など個性的な役を演じてきたジョニー・デップが演じるのは、突如余命宣告された大学教授。癌による余命宣告をうけるというシリアスな題材をユーモラスに描いたヒューマンドラマ。
共演者には『ゾンビランド:ダブルタップ』(2019)のゾーイ・ドゥイッチや、『レイチェルの結婚』のローズマリー・デウィット、『ワンダーウーマン』のダニー・ヒューストンなどがいます。
監督を務めるのは、初監督作である『グッバイ、ケイティ』(2016・劇場未公開)がマンチェスター映画祭など数々の映画祭で称賛されたウェイン・ロバーツ。
映画『グッバイ、リチャード!』のあらすじとネタバレ
大学教授のリチャードはある日、医者から末期癌であると余命宣告されます。突然のことにショックを受けたリチャードは、茫然と池に飛び込んでいきずぶ濡れになります。
家に帰り、いつものように妻(ローズマリー・デウィット)と娘(オデッサ・ヤング)と食事をしていると、娘が突然自身がレズビアンであることを告白します。
一時の気の迷いだと受け取らない妻に娘は怒り自分の部屋に行ってしまいます。そして気まずい雰囲気の中、妻もリチャードの大学の上司であるヘンリー(ロン・リビングストン)と不倫していることを告白されます。
驚いたリチャードは自分が末期癌と宣告されたことを言えません。
余命宣告のことを言えないまま、妻とお互いに自由に生きようと取り決めをし、残りの人生を謳歌しようと決意します。
リチャードは大学に向かい、生徒に授業に興味がない者は帰っていいと宣言し、残った生徒と共に自由に授業を行い始めます。そして生徒の目の前でマリファナを持っているものは来ることとまで言ってしまいます。
そして、唯一の友人であり、同僚でもあるピーターと飲みに行き、ピーターにだけ自身が末期癌であることを伝えます。
ピーターは動揺し、泣いてしまいます。心配するピーターをよそに、リチャードは自由に授業をし、生徒と飲みに行き、バーのウェイトレスを口説いてみたり破天荒な行動をしていきます。
映画『グッバイ、リチャード!』の感想と評価
余命宣告を受けた男が残りの人生をそう生きるかというシリアスなテーマを題材にしながら重くなりすぎず、ユーモラスに描いています。
しかしながら余命宣告を受け戸惑うリチャードの様子はリアルであり、少しづつ病に蝕まれていくリチャードの様子もあいまって自分の“人生”を生きるということについて考えさせられるヒューマンドラマになっています。
そんなリチャードをキャリアも長く中年に差し掛かったジョニー・デップがユーモラスに演じています。
映画の中での堂々と不倫をする妻の態度や、皮肉を交えあけすけに何でも言うリチャードの様子から良い夫婦関係とは必ずしも言えなかったのではないかと考えられます。
そのような破天荒さはジョニー・デップ自身の半生とも重なって見えてきます。
生徒に対しても自由に授業を行いながらふとした場面で人生について語るリチャードの姿があり、その言葉は生徒の胸にも響いています。
娘と変わらぬ年頃の生徒クレアとの交流や、レズビアンであることや高校生という多感な時期で揺れる娘に対するリチャードの父としての姿も見所の一つです。
まとめ
本作は、“人生”の終わりを迎えることをユーモラスに描いたウェイン・ロバーツの脚本をジョニー・デップが気に入り映画化される運びとなったそうです。
また、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズや「アリス・イン・ワンダーランド」シリーズなど大作の出演が近年目立っていたジョニー・デップが、久しぶりにインディーズで主役に回帰した映画となります。
長いキャリア、私生活で様々な経験をしてきたジョニー・デップが自身を投影したかのような役に挑み、ジョニー・デップならではのユーモラスさと脚本のユーモラスさがあいまってシリアスながらも優しく、くすっと笑えるようなヒューマンドラマに仕上がっています。
それぞれの“人生”を生きるということ、最期が近づいて知る人生の愛おしさがリチャードの言葉に重みを持たせ、観客の涙を誘います。しかし、ラストまでどこかユーモラスさを残した爽やかなリチャードの旅立ちが観賞後に爽やかな気持ちにさせてくれます。