恋愛映画のクラシック『(500日)のサマー』で知られるマーク・ウェブ。
『アメイジング・スパイダーマン』2作で大作を経験した彼の待望の新作がついに公開!
主演のマッケンナ・グレイスの可愛らしさに皆メロメロ!?
悪人なんか一人も出てこない心温まる映画『ギフテッド』をご紹介します。
以下、あらすじや結末が含まれる記事となりますので、まずは『ギフテッド』の作品情報をどうぞ!
1.映画『ギフテッド』の作品情報
【公開】
2017年(アメリカ映画)
【原題】
Gifted
【監督】
マーク・ウェブ
【キャスト】
クリス・エバンス、マッケンナ・グレイス、ジェニー・スレイト、リンゼイ・ダンカン、オクタビア・スペンサー
【作品概要】
『(500日)のサマー』のマーク・ウェブが再び小規模作品に帰ってきました。
主演はキャプテン・アメリカとして今や大スターとなったクリス・エバンス。
リンゼイ・ダンカン、オクタビア・スペンサーら実力派がドラマを盛り上げます。
メアリーを演じたマッケンナ・グレイスのキュートな魅力が炸裂!
特別とは、普通とは、幸せとは・・・?
人生において大切なものを教えてくれる新たな愛の物語が誕生しました。
2.映画『ギフテッド』のあらすじとネタバレ
フロリダに暮らすフランクとメアリー、片目の猫フレッド。
メアリーは7歳、彼女は生まれながらにして数学において天才的な才能を持っていました。
しかし、フランクは彼女を近所にある普通の学校に通わせます。
フランクたちの隣人であり親しい友人でもあるロバータだけは、メアリーの秘密を知っているため心配をしていました。
学校で小学1年生レベルの算数に不満げな態度を見せるメアリーに、教師のボニーは大人でも暗算で答えるのは難しい問題を出します。
ところがメアリーは少し考えると正解の数字を導き出しました。
ボニーは不思議に思い、保護者であるフランクの名前をインターネットで検索。
すると、そこには「著名な数学者ダイアン・アドラーが自殺。残された遺族は弟のフランク」という記事が。
フランクが金曜の夜には決まってバーに出没するとの噂を聞いたボニーは、バーに足を運びます。
そこで、一人酒を飲むフランクの姿を見つけ、ボニーは声をかけました。
3.映画『ギフテッド』の感想と評価
この映画を監督したマーク・ウェブは元々MV出身の人。
『(500日)のサマー』や『アメイジング・スパイダーマン』ではスタイリッシュな映像感覚と甘酸っぱい恋愛描写が大きな魅力になっていました。
ハリウッド大作であるアメコミ映画を監督した経験は彼にとって意義のあるものになったそうですが、『アメイジング・スパイダーマン』シリーズは急遽打ち切りに。
個人的にはサマーもアメスパも好きだったので、マーク・ウェブの次回作を心待ちにしていました。
そんな彼が選んだ作品は、才能と家族を巡るとても小さな物語。
そこには悪役も出てこないし、格好良いヒーローも出てきません。世間ではキャプテン・アメリカとして認識されているクリス・エバンスが影のある独身男を演じています。
その作品の小ささこそがマーク・ウェブが望んでいたことのようで、彼が本当に撮りたかった温かみがこの作品には映っています。
登場人物も非常に少なく整理されていて、特別大きく予想を超えるような動きもありません。
感動させてやろうというようなダサい演出はこの作品には見られず、ウェットな仕上がりにもなっていません。
お涙頂戴ものとは一線を画す、上質な人間ドラマが実力派の役者たちによって繰り広げられていました。
出ている役者もれなく全員が素晴らしいのですが、特筆すべきは間違いなく天才児メアリーを演じたマッケンナ・グレイスでしょう。
その感情表現の豊かさは本当に素晴らしく、特にキュートなしかめっ面は忘れがたい魅力がありました。
劇場が温かい笑いに包まれたとあるシーンでの間など、大人っぽさと子どもっぽさを併せ持つ11歳とは思えない天才的な演技を披露。
『(500日)のサマー』に妹役として出演していたクロエ・グレース・モレッツのようにスターになるのでしょうか。
ちなみに彼女はポケモンが大好きらしいです。
タイトルのギフテッドとは「同世代の子供と比較して、並外れた成果を出せる程、突出した才能を持つ子供のこと」。
これは努力うんぬんというよりは先天的に与えられた才能なのでギフト=贈り物というニュアンスを含んでいます。
この才能を生かすのか殺すのかは環境次第であり、イブリンが学問の発展のためにはそれをきちんと育てる責任と代わりに何かを犠牲にする必要があるとまくしたてる印象的なシーンは、完全に同意はできないものの胸に迫るものが確かにありました。
この物語がとことん優しいのは、娘から憎まれ、結果として自殺にまで追い込んだイブリンまで救っていること。
メモに書かれたあのイエスという文字は数学を愛していた彼女の心からの喜びであり、そこに到達できたのは間違いなくイブリンの熱心な支えのおかげということです。
そして、この映画において一番感動的なシーンは、意外にもクライマックスではなく中盤に用意されたとある病院のシーンでした。
凡百の作品ならばあそこは父親との再会を描くでしょう。
しかし、本作は天からの贈り物とされる赤ちゃんの誕生、新たな命がこの世に授けられた、まさにギフテッドの瞬間を劇的に切り取ってみせるのです。
その瞬間が本当に素晴らしく美しい。
この世に生まれてくれたことを喜び、たくさんの愛情でここまで育ててくれた。
だからこそ今私はここにいる。
その幸せな事実が強烈に胸に迫って来ます。
父と母がいない悲しみはメアリーの心に刻まれていると思いますが、それを忘れさせる程にフランクの愛は深く優しい。
私にもまだ1歳の小さな甥がいますが、あんな状況になったらフランクと同じように愛情を注ぎ続けられるだろうかと、ふと考えさせられました。
この愛の物語は親子ではなくて、叔父と姪ですからね。
フランクとメアリー、共に母親から突き放されてしまった似た者同士のバディムービー的な捉え方ができるのも面白いところです。
ケンカの仲直りシーンなんかは正にその趣がありました。
心を通わせるソウルメイト同士の絆の物語としての側面も持っている非常に懐の深いとても素晴らしい作品でした。
まとめ
劇中で取り上げられる「ナビエ-ストークス方程式問題」は、川や海の水に大気といった流体の動きを表す方程式だそうです。
しかし、現実の流体は複雑な挙動をするため、その方程式が現実の事象を正確に反映したとは言えません。
この問題は、そもそもこの方程式が物理的に意味がある解を導き出すことができるのかを証明するものです。
目に見えない流体の動きというものに、家族という同じく目に見えない繋がりを重ねているように私は感じました。
そのことに絶望して自殺を選んだ者と、そのことによって人生を救われた者。
家族は時に傷つけ合うことももちろんありますが、時に支え合える時もあるものです。
その不思議な関係性は簡単に答えを出せるようなものではないのかもしれません。
一つ確実に言えるのは、この作品はそんな家族の両側面をきっちりと描きながら、たしかに温かく、人の心を救うような優しさを持っているということです。