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Entry 2018/04/05
Update

映画『ゆずりは』あらすじと感想。キャストのコロッケはお笑いを封印で初主演

  • Writer :
  • シネマルコヴィッチ

ものまねタレントで知られるコロッケが、お笑いやものまねを封印して、本名である滝川広志として臨んだ初主演した映画『ゆずりは』6月16日(土)より、K’s Cinema、イオンシネマ板橋ほか全国順次ロードショー

葬儀屋のベテラン社員である水島正二は長いこと「死」と向き合う仕事を続けるなかで、感情の起伏を失っています。

実は水島には、ある亡き命と向き合い続けるという、心に重い責任を抱えていました。

ある日、入社採用試験の面接にやって来たのは、茶髪の外見で言葉づかいもひどい高梨歩。水島は新入社員の教育係をかって出ますが…。

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1.映画『ゆずりは』の作品情報


(C)「ゆずりは」製作委員会
【公開】
2018年(日本映画)

【原作】
新谷亜貴子「ゆずりは」(銀の鈴社)

【監督】
加門幾生

【キャスト】
滝川広志、柾木玲弥、勝部演之、原田佳奈、高林由紀子、大和田紗希、島かおり、野村昇、三谷悦代、小林博、前田けゑ、巨樹、瀬田ミナコ

【作品概要】
新谷亜貴子の同名小説を、ものまねタレントのコロッケが本名の滝川広志として映画初主演した作品で、お笑いやものまねを封印して臨んだヒューマンドラマ。

主人公の水島役をコロッケこと滝川広志が演じ、新入社員の高梨役を「ライチ☆光クラブ」「みんな!エスパーだよ!」の柾木玲弥が演じる。監督は「HERO」などの人気ドラマの演出を手がけた加門幾生。

2.映画『ゆずりは』のあらすじ


(C)「ゆずりは」製作委員会

52歳の水島正二は葬儀社・安宅の営業部長。

彼の務める会社に、茶髪にピアスという風貌の高梨歩が新入社員として面接にやって来ました。

見るからに素行は葬儀屋の社員としては不向きと思われた今時の若者を、周囲の反対を押し切っても採用を決めたのは水島でした。

高梨を厳しく指導する水島たち葬儀社スタッフ。


(C)「ゆずりは」製作委員会

しかし、一見では破天荒な高梨のなかに、実はご遺族にしっかりと向き合い、自然体で心に寄り添う豊かな感受性があることに気が付き始めます。

一方で水島はかつて、妻の直子を自死で失っていました。長い間子宝に恵まれず、彼自身の身体に原因があると知った水島は、妻の死の要因と関係があるとずっと後悔をしていたのです。

妻の死後、自暴自棄になって荒れていた自分を救ってくれたのは、亡き妻の父親である松波でした。

松波は自身が経営する葬儀社に水島を迎え入れ、立ち直りのきっかけをもたらしてくれました。

葬儀社の庭には、松波が大切な思いを持って育てる「ゆずりは」の樹が植えられていました。

「ゆずりは」の由来は、春に枝先に若葉が出た後、前年の葉がそれに譲るように落葉することから、一年を通して緑葉を絶やすことがないためだといいます。

松波は「ゆずりは」の樹を親から子へと代々受け継がれていく命に見立て、故人が去っても絶えることのない命の営みへの願いを込めて、この場所に植えていました。

水島は松波の教えである「葬儀中に涙は禁物」を守り、妻の死を悲しむ心と共に多くの人の「死」を悲しむ心を押し殺し、葬儀社の仕事に従事してきました。

そんな水島にとって、ありのままの自分をご遺族に見せる高梨の存在は、心を隠すことに慣れきってしまった自分の心を徐々に揺らしていきます。

そんなある日、高梨が葬儀場でイジメを苦に自死した故人の少女に想いを寄せるあまり、参列した騒がしい女子学生を罵倒する騒ぎを起こしてしまう…。

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3.映画『ゆずりは』の感想と評価


(C)「ゆずりは」製作委員会

声なきモノに「心」を感じるのは

本作『ゆずりは』は、タイトルに用いられた植物の様子を見ることで、“生かされている”意味を見出しことができます。

「ゆずりは」は、楪、交譲木または譲葉、学名: Daphniphyllum macropodum)は、ユズリハ科ユズリハ属の常緑高木。古名はユズルハ。

高さは10メートルほどで、葉は長さ20センチほどで枝先に螺旋状につく植物です。

「ゆずりは」の名は、春に枝先に若葉が出た後、前年の葉がそれに譲るように落葉し、その様子は親が子を育てて、代々受け継がれていく命に見立て名付けられ、家が代々続くという縁起物の植物とされ、正月飾りや庭木に使われるそうです。

物語のなかで俳優の勝部演之演じる、葬儀社の安宅を経営者する松波は、式場の中庭に「ゆずりは」の木を植えたことには“ある理由”があります。

そこから水島や高梨へのそれぞれが抱える「ある命」や「ある生き方」と繋がっていきます

原作者の新谷亜貴子は、「命」をテーマにした作品の舞台を葬儀会社にしたことについて、「死」はある意味で「生」に一番近い存在だと言っています。

その思いを原作者の新谷はこのように語ります。

「葬儀会社は常に人の「死」と共にあり、それは即ち、その人の「生き様」を知ることになります。死者はもはや動いたり話したりすることはできませんが、それでもなお確かに存在しているのは「心」です」

新谷が述べたように、死者は動いたり話したりできないが、「心」は存在しているということを、あなたはどう感じられるでしょう。

これまで生きて、共に生活を過ごして、一緒に人生を歩んでいた「命」と、その時どう向き合うか、これまでの忙しない日常では見落としがちな「心」と真正面に向き合うことが最後の故人との儀式なのかも知れません。

「ゆずりは」と「故人」は語らずとも雄弁なのは、それを見守るものに「心」があってなのでしょうね。

先に述べたように、葬儀社を経営する松波は、「ゆずりは」を育てるということは「心」と向き合ったという「生き様」でもあります。

この作品で正に、まるで「ゆずりは」の樹のように俳優の勝部演之は安心感のある脇役を好演しています。

優しい穏やかな気持ちで「ゆずりは」の樹にそっと触れる場面は美しいので注目してくださいね。

ものまねのコロッケではなく、俳優の滝川広志として初出演


(C)「ゆずりは」製作委員会

原作者の新谷は滝川広志(コロッケ)は、感情の起伏を失った水島という主人公を、自身が思い描いていたキャラクターとして水島像以上に演じている映画を試写で鑑賞した感想をこう述べています。

「人間になくてはならない感情を失いながらも「心」の大切さを忘れない水島の温かさを、微妙な表情の変化や声色で、とても素晴らしく表現されていたと思います。水島が葬儀中に初めて感情的になり、涙を流すシーンは圧巻でした」

また、原作者の新谷は、テレビで活躍する滝川ではなく、コロッケに笑わされているだけに、この作品の演技では終始泣かされたとも語っています。

俳優としての滝川広志は出演依頼があった当初、「え?本当に俺でいいの?」というが本音だそうで、水島の役作りするために次のような演技プランに臨んだそうです。

「舞台となる街のビジネスホテルに泊まって、自分の足で探索したんです。実際に街の人たちがいくスーパーや居酒屋なんかに行ったり、そこで人々が会話している様子を見たりしました。水島という人間はきっとこんな生活を送り、こんな人たちと関わっているのだろうかとか、きっと奥さんとふたりでこういう場所に食事をしていたんだろうとか。水島のいる環境を色々と想像しながら探索しました」

このようなことは演技プランというよりも、役つくりとしては基本的なことだと、滝川も十分理解をしていたようです。

しかし、あなたもよくご存知のように、俳優としての滝川の普段の職業は、コロッケとしてのお笑いものまねショーが多い訳です。

コロッケのショーを楽しみに観客は集まり、彼らを大いに笑わせた舞台が終わってから、今度は滝川として水島役に成り切ることに大きなギャップがあり、簡単なことではなかったと言います。

そういうところから始めなくてはならず、これほどまで最初からストイックに何か物事に取り組んだことも滝川広志(コロッケとしても)初めての経験だったようです。

また、滝川は舞台で行うショーという経験は豊富な実績がありますが、映像という分野の演技は初めて、特に本作「ゆずりは」は滝川広志として初出演になる挑戦でした。

舞台と映画では人物の動き方や見せ方は大きく違ってきます。

本作の演出を務めた加門幾生監督からは、撮影開始のクランクインした頃は「動きすぎ」と指摘を受けたようです。

そんなところにも注目して見てるのも、楽しいかもしれないと語っています。

まとめ


(C)「ゆずりは」製作委員会

ものまねタレントで知られるコロッケが、得意なお笑いを封印して、滝川広志として臨んだ初主演した本作。

原作者の新谷亜貴子は、「人は生まれるのに、なぜ死ぬのか。人は死ぬのに、なぜ生まれるのか」という問いかけを思いながら、その答えは誰にも分からないと言います。

としながらも、今を生きている意味を、「命を謳歌することこそ、私たちに課せられた、最大の義務」だと思っているそうです。

俳優として滝川広志がストイックに初主演で挑んだ主人公の水島正二役。

また、ベテラン俳優として勝部演之が安定感ある好演を見せた松波平二郎の深い優しさ。

さらには、水島の部下である高梨歩役には、加門監督が今この作品に出るべくして現れたという若手俳優の柾木玲弥

彼らが登場人物を演じることを通して、課せられた物語を見てることで、そこにも「ゆずりは」の葉が落葉する意味を重ね合わせられるかも知れませんね。

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