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映画『散り椿』キャストと原作のあらすじネタバレ。劇場版と小説の違いは何か⁈

  • Writer :
  • Yasu

時代劇映画『散り椿』は、9月28日(金)より全国公開

直木賞作家、葉室麟の同名小説が原作。監督はこれまで主に撮影技師として数々の映画製作に参画してきた木村大作。

『剣岳 点の記』では日本アカデミー賞で、最優秀撮影賞だけでなく、最優秀監督賞を受賞しました。

主演の岡田准一の演技への期待も去ることながら、時代劇でありながらセットを使わず、すべてロケーション撮影で製作されたことにも要注目の“美しい時代劇”です。

映画『散り椿』の作品情報

【公開】
2018年(日本映画)

【原作】
葉室麟

【監督】
木村大作

【脚本】
小泉堯史

【キャスト】
岡田准一、西島秀俊、黒木華、池松壮亮、麻生久美子、緒形直人、新井浩文、柳楽優弥、芳根京子、駿河太郎、渡辺大、石橋蓮司、富司純子、奥田瑛二

【作品概要】
名キャメラマンとして知られる木村大作が、監督を務めた映画『劔岳 点の記』『春を背負って』に続く第3作品目となる時代劇。

享年15年。かつて藩の不正を訴え出たが認められず、故郷扇野藩を出た瓜生新兵衛は、連れ添い続けた妻・篠が病に倒れた折、彼女から最期の願い、「采女様を助けていただきたいのです」と託されます。

新兵衛にとって采女は、よき友でありながらも因縁のある相手でした。采女と対峙した新兵衛は、切なくも愛に溢れた篠の想いを知ることになるが……。

新兵衛役を岡田准一、かつての友・采女を西島秀俊が務め、黒木華、池松壮亮、麻生久美子ら日本映画界を代表する豪華俳優陣が集結。

葉室麟プロフィールと作品の特徴

葉室麟(はむろりん)は、1951年1月25日生まれで福岡県生まれのの時代劇作家。2017年12月23日死去。

西南学院大学文学部外国語学科フランス語専攻を卒業。

50歳から創作活動をはじめ、4年後『乾山晩愁』で文壇デビューを果たします。

2007年に『銀漢の賦』で松本清張賞、2012年では『蜩の記』で直木賞を受賞します。

歴史、時代物を中心に、小説、随筆含めてハイペースで執筆。文壇デビューから13年で約60冊刊行されました。

原作『散り椿』のあらすじとネタバレ

瓜生新兵衛は病に伏している妻、篠がいる部屋に向かいます。

新兵衛が部屋の障子を空けると、篠は起き上がり、庭を見ようとしていました。

「枯れた庭など見ても仕方あるまい」と言う新兵衛は、いつもより元気そうな篠の姿を見てうれしくなります。

そして篠は、「春になれば椿の花が楽しみでございます」と言います。

「散り椿か」と新兵衛。

新兵衛は篠からある願いを託されます。「不正事件に巻き込まれた采女様を助けて欲しい」と。

采女とは、平山道場四天王の一人で、新兵衛とはよき友だったものの、二人には因縁がありました。

采女と篠は昔、相思相愛だったのです。采女の母親が、篠との結婚を猛反対したことで、二人は破談になりましたが、破談になった後も、互いが互いを想っている事を表す文を交わすなどしていました。

新兵衛はそんな篠と采女の関係を知ったうえで、篠へ愛を注ぎ続けます。

「篠にとって大切なものはそれがしにとっても大切」

「人は大切なものに出会えればそれだけで仕合わせと思うております」。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『散り椿(原作)』ネタバレ・結末の記載がございます。『散り椿(原作)』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

不正事件を暴こうとしている新兵衛と、政争に巻き込まれている采女。

采女から真相を明かされた新兵衛は、「平山道場四天王のうち、二人がお主のために死んでしまったということか。しかも肝心のお主が抗争に敗れたとはなんともむなしい話だ」と言います。

新兵衛や采女と同様に、不正事件に巻き込まれた、平山道場四天王の内の二人、三右衛門と源之進は命を落としているのでした。

「すべてはわしの罪だ」と責任を負おうとする采女に対し、新兵衛は、「そのように何もかも一人で抱え込もうとするのが気にくわぬ」と言います。

「新兵衛、わしはお主が羨ましかった。思うことをそのまま口にして生きるお主のようでありたい、と何度思ったか知れぬ」

「黙れ采女。お主の言いたいのは篠のことであろう。お主が恋焦がれた篠をわしは妻にすることができた。だがな、篠は死ぬ前に言い遺した。お主の助けになってやってくれとわしに頼んだんだ。それに、お主からもらった文を大事に持っておった」

新兵衛の悲しみを帯びた言葉に対し采女は、ひややかな口調で言葉を放ちます。

「新兵衛は大馬鹿者だな。確かに若いころ、篠に想いをかけたことはある。だが篠は違っていたのだ」

篠は椿の傍らで想いを懸けた人に会いたいと言い、采女の事を案じていたと、采女の言葉を信じようとしない新兵衛でしたが、采女からある文を見せられます。それは、采女が篠から受け取った文でした。

その文にはこうありました。

「くもり日の影としなれる我なれば 目にこそ見えぬ身をばはなれず」

采女は「姿を見る事ができない身となったが、心はわしから離れないという意味の文だと思い込んでいたが違っていた」と言います。

「違っていないだろう」という新兵衛でしたが、「曇り日の影のごとく、目には見えなくとも、決してお主と離れずついていくつもりだ、それゆえ、気持ちは受け入れられぬ、とわしに告げたのだ」と言う采女。

まだ采女の言っている事が信じられない新兵衛に対し采女は、「篠の後を追って死ぬつもりなのではないか」。

「篠はお主を死なせたくなかった。だからわしの事を助けてやれと言ったのだ。篠はお主を生かすために心にもないことを言わねばならなかったのだぞ」と声を荒げるのでした。

その後、政争に巻き込まれ、非業の最期をとげる采女。

采女が最期につぶやいた言葉は「しの殿……」でした。

また、采女は「散る椿は残る椿があると思えばこそ、見事に散っていけるのだ」と言葉を言い残しています。

新兵衛が歩き去った後の道には、秋の日に照らされた目に鮮やかな紅葉が、影を落としていました。

『散り椿』の原作と映画の違いは?

木村大作の映像美に期待大

キャメラマンとして数多くの賞を受賞してきた木村大作監督だからこその、映像美に期待大です。

それも人工的な映像美ではなく、よりリアリティを追求した映像美です。

すべてのシーンでセットを使わず、1年以上かけたロケーション撮影だったことからも、映像に対する拘りがうかがえます。

また、雪の決闘シーンは本物の雪ではなく、泡を使った擬似的な雪を使用しました。

しかし、これもまた長年にわたり、『八甲田山』(1977)や『復活の日』(1980)。また『駅 STATION』(1981)などで多くの雪撮影のロケーションを行なった経験と実績が雪の決闘シーンのリアリズムを可能にしました。

葉室麟の同名小説が原作になかった雪の決闘シーンを映画に入れたことも、木村大作の発案であり、雪へのこだわりは自信の表れでしょう。

美しい男二人と美しく散る二人

愛のすれ違いの中で対峙する新兵衛と采女。新兵衛を岡田准一が演じ、采女を西島秀俊が演じます。

この二人が主となり織りなす時代劇、というだけで雰囲気満点です。美しい画が想像できます。

又、散っていく人の散り際も美しく描かれています。

采女は、報われずとも愛し続けた人を想いながら散り、新兵衛の妻は、愛する夫の未来を想いながら散っていきます。

また、本作『散り椿』で岡田准一は俳優としてだけでなく、裏方のスタッフとしても活躍しています。

殺陣や撮影助手などを務め、自ら進んで映画制作のアイデアを出していたそうです。その点を木村大作監督は大きく評価し、岡田准一にとっての代表作になったと太鼓判を押していました。

まとめ

作家やコメンテーターとして活躍している中江有里はこの小説を読んでこう述べています。

「小説世界にも、現実世界と違わない生きづらさを抱え、なんとか逆境を跳ね返そうとする人がいる。実際には存在しない人に共感したり、慰められたりしながら、本を閉じる。目には見えない、手には届かない世界が確かにあるのだと思うだけで、生きる力が湧いてくる。『散り椿』はまさにそんな小説だ」

確かにそのような小説です。

信念を貫くことの尊さを訴えかけてきます。

報われない愛する気持ちを押し殺すようにクールに振る舞う采女。

愛する妻が遺した「采女様を助けていただきたいのです」という言葉に従うべく、采女の前に現れる新兵衛。

作中の両者の言葉には、人を愛することの厳しさが表れています。

人を想うとはどういうことかが描かれています。

両者ともカッコイイんですよねぇ~、これがまた。

采女が遺した「散る椿は残る椿があると思えばこそ、見事に散っていけるのだ」と言う言葉、なんて素敵なんでしょう!

筆者が遺すとすれば「散る椿は残る椿があれば尚更、生にしがみつくのだ」となりそうです…。

『散り椿』は、すれ違いが際立たせる儚くも美しき愛、美しき演者と美しき背景の相乗効果による映像美、あらゆる美しさを表現した映画になるのでしょう。

葉室麟の同名小説の優れた原作を読んで、映画公開が待ち通しくなりました。

時代劇映画『散り椿』は、9月28日(金)より全国公開

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