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Netflix映画『最高に素晴らしいこと』ネタバレ感想と考察解説。ラストまで“心の病との闘い”をエル・ファニングとジャスティス・スミスで描く

  • Writer :
  • からさわゆみこ

心の傷みを知っているから「大事な人を助けたい」。その思いが見えなかった世界を明るくする青春物語。

今回は事故で大切な姉を亡くしてしまった主人公が、不登校がちなクラスメイトによって立ち直るまでの、心の触れ合いそして痛々しいまでの葛藤を描いている『最高に素晴らしいこと』をご紹介します。

身近にいる大切な人が亡くなった時の喪失感に苦しんだ時、そこから立ち直るには時間が必要です。そのために必要な時間は人によって異なり、その方法も人にとって違います。心の傷みがわかればこそ、その傷みに苦しむ人がいたら助けてあげたいと思うのが、友人であるといえます。

映画『最高に素晴らしいこと』の作品情報

Netflix 最高に素晴らしいこと

【日本公開】
2020年公開(アメリカ映画)

【原題】
『All the Bright Places』

【原作・脚本】
ジェニファー・ニーヴン『僕の心がずっと求めていた最高に素晴らしいこと』

【監督】
ブレット・ヘイリー

【キャスト】
エル・ファニング、ジャスティス・スミス、アレクサンドラ・シップ、キーガン=マイケル・キー

【作品概要】
本作は「マレフィセント」シリーズでオーロラ姫を演じたエル・ファニングと、『名探偵ピカチュウ』でティム・グッドマン役のジャスティス・スミスが共演しています。

原作は世界40ヶ国で翻訳されベストセラーになった、ジェニファー・ニーブンの小説『僕の心がずっと求めていた最高に素晴らしいこと』で、本作の脚本もジェニファーが務めています。

多感なティーンエイジャーである主人公が、家族の死や家庭内での虐待、学校でのイジメなどから、心身に病を抱えながらも精一杯自己と向き合い、立ち直ろうとするハートフル青春ストーリーです。

映画『最高に素晴らしいこと』のあらすじとネタバレ

インディアナ州の小さな街の早朝、セドニア・フィンチがジョギングをしていると、橋の欄干に立ち今にも落ちてしまいそうな少女を見かけます。

彼女はセドニアと同じ高校に通う、クラスメイトのバイオレット・マーキーでした。セドニアはバイオレットがそこで何をしようとしているのか、直感でわかり声をかけます。

バイオレットの隣りに立って片足でバランスをとってみたり、彼女をソワソワさせながら欄干から降りるように仕向けました。

その日バイオレットは学校に普通に登校し、友人のアマンダからホームパーティーに誘われたり、ボーイフレンドのローマからも声を掛けられますが、気もそぞろです。

セドニアは不登校が多く成績も不安定、校内で問題行動も起こし卒業が危ぶまれ、スクールカウンセリングを受けています。

カウンセラーのエンブリはセドニアを心配し生活の様子を聞きますが、セドニアは自分のことを“フィンチ”と呼ぶよう指示したり、助言を茶化しエンブリをイライラさせてしまいます。

バイオレットは姉を交通事故で亡くしていて、姉の死に気持ちがふさぎこみ、両親にも心を閉ざしていました。

その晩、フィンチはバイオレットのことをググってみました。すると、姉のエレノアと一緒に写るバイオレットの写真が載ったSNSと、他に姉エレノアが事故死した現場写真も検出されます。そこはバイオレットが自殺をほのめかしていた橋のある場所でした。

翌日、地理の授業で卒業課題が出題されます。クラスメイトとペアを組みインディアナ州の名所を調べて2カ所以上巡り、レポートにまとめ出すというものです。

フィンチはバイオレットを誘うために仲良くなろうと試みますが、うまくいきません。そして、バイオレットはその課題をやりたくないと母親に訴えますが、外出もせずひきこもる彼女に、友達と交流できるいい機会になるから取り組むようすすめました。

バイオレットはアマンダのホームパーティーに出かけますが、雰囲気に馴染めずすぐに家を出ます。帰り道バイオレットのスマートフォンに、インスタグラムの通知音が鳴ります。

見るとフィンチが橋でのできごとを唄にしてストーリーズで、バイオレットのアカウントにタグ付けしたのです。

バイオレットは怒って削除するようフィンチに電話をします。フィンチは橋での出来事を“あんな経験はもう二度と嫌だ”と、伝えます。その言葉は小説家ヴァージニア・ウルフの言葉を引用したものでした。

フィンチは彼女と会い課題のパートナーになってほしいと誘います。人嫌いの2人にとって意味のある場所がある。

だから、一度試してみる価値があると言いますが、バイオレットはそんな可能性はないと拒みます。

「ひとつ君に捧げたい言葉があるんだ。“千の可能性が芽生えるのを感じる”ウルフの波からの引用さ。人には最低でも千の可能性があるんだよ。」

バイオレットは少し納得はしますが結局、課題を免除してもらえるよう先生に頼んでみると告げて、フィンチと別れました。

以下、『最高に素晴らしいこと』ネタバレ・結末の記載がございます。『最高に素晴らしいこと』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

バイオレットは地理の先生に課題の免除を申し立てますが、受け入れてもらえず、渋々「自動車以外の移動手段なら・・・」と、フィンチと課題のパートナーを組むのでした。

フィンチが最初に選んだ名所は「まだ、人の手が入れられてない場所」といい、標高383メートルしかない、インディアナ州の最高所でした。

そこには高さを示す石と標識があるだけでした。2人は石の上に登り目の前に広がる林を眺めながら「本当にショボい場所」と、大笑いするのでした。

笑っていることにわれに返ったバイオレットは真顔になりました。それを見たフィンチは「笑ったからって地獄には堕ちない」と言うのです。

バイオレットは橋にいた日は姉の19歳の誕生日だったと話すと、フィンチは石の上から「2人で飛び降りよう」と言い飛び降りるのでした。

その晩、バイオレットに“あんな経験はもう二度と嫌だ”とチャットメッセージを送ります。バイオレットもウルフの言葉を引用し、“自分の真実を語らないならば、他人の真実も語るな”と返信します。

すると、フィンチはバイオレットの部屋の下まできて、外に出てくるように誘い出し、古い倉庫跡に連れていきます。そこには『死ぬまでに……』と、題されたメッセージボードのような壁がありました。

フィンチは死ぬまでに“目を覚ましたい”と書き込み、バイオレットは“勇敢でありたい”と書き残すのです。

そして、フィンチはまた少しエレノアのことを聞き出します。バイオレットは「よき姉でよき親友だった」と教えると、フィンチは「墓碑に刻めるね」と言い、彼女は少し心が吹っ切れたような顔をしました。

翌日、学校に行くとそこにアマンダがやってきてローマと課題のコンビを組んだと言いました。バイオレットはフィンチと組んだと教えます。

アマンダは「フィンチは急にキレてイスを投げつけたことがあるから、相当ヤバいヤツだよ」と忠告をしてしまいます。

バイオレットがロッカーをあけるとそこには「Your Turn(今度はキミの番)」と書かれた石が入っています。いつかは自分一人で外へ出かけるようにという意味です。

フィンチは次に行く場所について声をかけますが、バイオレットは2カ所だけの約束だと言って離れます。諦めないフィンチはバイオレットの家の前で一晩をあかし、早朝からドライブに誘います。

バイオレットは自動車に乗ることをかたくなに拒みます。試しに座ってみるだけと言っても聞き入れません。そこに彼女の両親が家から出てきます。

課題で名所を巡るために自動車に乗って行きたいと説明すると、父親は課題なら……と、母親も「いいきっかけになるわ」とバイオレットを後押しし、2人は出かけることになるのです。

助手席のバイオレットは緊張しながらもせきを切ったように語り始めます。

「どのくらいスピードが出ていたのか? 速くは感じなかった。気づいたらスリップをして、エレノアは“もう無理!”といって、車は橋に突っ込み、エレノアの悲鳴が聞こえたあとの記憶がないの」

姉の運転する車に同乗していたバイオレットは、自分だけが生き残ってしまったことに罪悪感を抱き、事故の恐怖から自動車を恐れたのです。

フィンチが連れてきた場所は、小さな1人乗りの手作りジェットコースター「ブルーフラッシュ」のある場所でした。バイオレットは大はしゃぎで乗り、心から笑顔を取り戻すことができたのです。

帰り道フィンチは「いつか君を連れて行きたい特別な場所」と、印をつけた地図を見せて言います。「君のどこが好きかわかる?全ての色が混じり合って最高に輝いているところだよ」と、告白をするのでした。

2人は恋人同士になり、いろいろな州の名所に出かけるようになります。ところが突然フィンチと音信不通になり、バイオレットは心配して友人に相談すると、「よくあることだ。フィンチと付き合うなら慣れる事だよ」と言われます。

そして、再びフィンチはバイオレットの前に姿を見せドライブに誘い、“底のない”と思われる湖へ出かけ、フィンチは一緒に飛び込んでみようと言います。

肌寒くなった季節でバイオレットは断りますが、フィンチはこの世で一番怖いものは何か聞き、彼女は「死ぬこと」といいますが訂正し「平凡であること」と答え、一緒に湖へ飛び込みました。

バイオレットはフィンチの脇腹に大きな傷跡をみつけ問いだします。それは幼い頃、父親の暴力によってつけられた傷でした。その経験がきっかけで時々、情緒が不安定になるというのです。

その後2人は朝まで眠ってしまい朝帰りをし、激怒したバイオレットの両親は2人に説明の機会も与えず引き裂きます。更にフィンチは学校でローマとトラブルを起こし暴力を振るってしまいます。

フィンチは再び心の闇の中に引きずり込まれていきますが、精神障害、過食症、自傷などに悩む若者のサポートグループに参加します。

そこには、社交的で明るいと思われたアマンダも過食と自殺願望の悩みで参加していたのです。

バイオレットはフィンチの自宅を訪ねますが、不在で帰ってくるまで部屋で待つことにしました。

帰宅したフィンチは、思考が先走り過ぎて追いつかず、意識が飛び空白になることがあると話します。

そしてフィンチは、今までは考えたことを付箋に書いて整理して集中してきたけれど、今はもっと時間がかかると告げました。

フィンチを助けたいというバイオレットを拒否し、自分で何とかすると追い出してしまいます。

バイオレットはフィンチからもらった“Your Turn”の石を置き忘れて立ち去り、フィンチはそれを見て何か思い詰めていました……。

映画『最高に素晴らしいこと』の感想と評価

Netflix 最高に素晴らしいこと

本作は表向きには見えにくい「心の病」について、そのシグナルとなるヒントを教えています。

この映画のラストはフィンチの周囲をとりまく大人が、彼の心の闇の深さに気づけず判断を見誤り、適切な心療を受けさせなかったことで悲しい結末となっています。

カウンセラーが専門知識に乏しく、見抜けなかったとしかいいようがありません。

フィンチには気分障害と呼ばれる症状がありました。「気分障害」には遺伝要因もあると言われていて、作中でも触れていますが、フィンチの父親も同じ心疾患があったようです。

フィンチは父親の暴力性が遺伝していたらという不安がぬぐえず、バイオレットと付き合うことに悩んだのでしょう。

ストーリーのラストは、バイオレットがフィンチと取り組んだ課題を通し、目に見えるものだけで評価せず、その奥にある真実や輝きに目を向ける必要性を語り、そのことを教えてくれたフィンチへの感謝で締めくくっています。

まとめ

『最高に素晴らしいこと』若年層に増えてきた、心の病気について表した作品でした。

昨今の学生は数字で評価されたり、言動や振る舞いだけで人格を決めつけられる、そういう場面が多いのが実情です。

つまり『面倒なこと』を避けて、人の本質について理解しようとする努力が、欠如した社会に目を向けているといえます。

作中では親の子供との関わり方、姉弟・姉妹の形、先生と生徒、友人とクラスメイトなどさまざまな観点で、心の病との向きあい方や見つけ方などがわかります。

この映画は、心疾患について正しく理解してつきあうことの大切さ以上に、もっと根本的な人との関わり方が重要なテーマであり、その先に「最高に素晴らしいこと」が、それぞれの心に芽生えてくることを教えてくれているのです。


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