本年度カンヌ国際映画祭で『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』で監督賞を受賞したソフィア・コッポラ。
彼女の過去作、『ブリングリング』では、実際にあったハリウッドセレブばかりを狙った、ティーンネイジャーの強盗事件を題材にしつつも、あくまでクライムサスペンスではなく青春映画のように取り上げています。
脇役ではありながら、その存在感とギャップを見せ付けたエマ・ワトソンの演技にも注目です。
CONTENTS
1.映画『ブリングリング』の作品情報
【公開】
2013年(アメリカ映画)
【原題】
The Bling Ring
【監督】
ソフィア・コッポラ
【キャスト】
エマ・ワトソン、レスリー・マン、タイッサ・ファーミガ、クレア・ジュリアン、イズラエル・ブルサール、ケイティ・チャン、マイカ・モンロー
【作品概要】
『SOMEWHERE』のソフィア・コッポラ監督が、実際に起きたハリウッドセレブばかりを狙った窃盗事件を映画化。
セレブに憧れるティーン・ネイジャーが、面白半分でセレブの豪邸に忍び込み、金品を盗んでいきます。
始めは出来心だった少女達ですが、うまみを知ってどんどん、盗みは大胆かつ、エスカレートしていきます。
盗みを働く少女達にも問題があると同時に、ハリウッドセレブたちの生活の異常っぷりもイーブンで描いており、クライムもののように見えて、ソフィア・コッポラ得意の演出で、青春映画のように描いています。
実際に被害にあったパリス・ヒルトンが自宅をロケ地として提供したり、ソフィア・コッポラ作では常連のキルスティン・ダンストがカメオ出演しています。
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2.映画『ブリングリング』のあらすじとネタバレ
ハリウッドセレブなどの豪邸が立ち並ぶ、カリフォルニア州のカラバサス。
そこある高校に1人の男子生徒マークが転入してきます。
以前にいた学校は、不登校が原因で出席日数が足りなくなり退学となってしまいました。
やむなく転校したマークですが、多くの生徒から煙たがられていました。そんな彼に声をかけてきたのは、レベッカという女子高生。
自分の容姿にコンプレックスを持つマークに、気さくに話しかけてくれるレベッカと、すぐに打ち解けることが出来ました。
レベッカは忙しくて、家を留守にしがちな状況にかまけて、自宅で開くパーティーにマークを招待します。
盛り上がっているパーティーをよそに、レベッカはマークを外へ連れ出すと、突然、路上駐車されている車のドアが開いていないかと、何台も確かめます。
すると驚くことに、少し歩いただけで、何台もの車に鍵が掛かっておらず、おまけに車内には貴重品が置きっ放しでした。
初めは驚くと同時に平気な顔をして盗みを働くレベッカに、動揺するマークですが、他にはいない親友と行動を共にするのに時間は掛かりませんでした。
次にレベッカは、知り合いの家が留守にしているのを見計らって、家に侵入して金品を分からない程度に盗んでいきます。
それだけでは飽き足らず、レベッカはたまたま見つけたという車の鍵を使って、車まで盗んでしまいます。
2人は盗んだオープンカーで夜の街をドライブします。
初めは2人で行っていた強盗は、自慢したい気持ちからか、レベッカの友人であるクロエ、ニッキー、サムにもセレブ邸への強盗に誘い、マークも彼女らと親しくなっていきます。
彼女達の紹介で訪れたクラブには、なんとあのキルスティン・ダンストやパリス・ヒルトンも訪れていました。
スタイリストを夢見ているマークは、セレブたちを間近に見たことで、この豪華絢爛な世界にどんどん惹かれていきます。
レベッカはパリス・ヒルトンの豪邸にお邪魔して、ゴージャスな品をいただこうとします。
マークはネットでパリスの住所を調べると、簡単に検索サイトで見つかり、ストリートビューで周りがどんな状態か確認します。
ネットニュースで、パリスのスケジュールを確認し、いざ侵入。
マットの下に鍵を隠しているのを発見し、まんまと豪邸に入ることが出来ます。
部屋をひとしきり見ると、数え切れないほどのブランド品が見つかり、レベッカたちはまるでお宝でも発掘したかのごとく、パリスの私物を頂戴していきます。
3.映画『ブリングリング』の感想と評価
すがすがしいほどのクソガキどもが、やりたい放題やって反省しない映画『ブリングリング』。
マークだけ何故か哀愁が漂うエンドで、もはや可哀想になってきますが、一方にエマ・ワトソン演じるニッキーは、もともとモデル志望だけあって、この犯行を宣伝材料に使うという果てしなさを見せ付けます。
こういうところは、ある意味(お騒がせ)セレブとしての素質があるのかもしれません。
『ロスト・イン・トランスレーション』『SOMEWHERE』では突っ込みがないシュールな演出が点在してましたが、今作でも地味にその演出が伺えます。
1.パリス・ヒルトンの豪邸
マークたちが初めて侵入したパリス邸がどれほどぶっ飛んでいるかを、分かりやすく箇条書きで説明してみましょう。
・豪邸なのに、玄関の鍵の隠し場所が外のマットという脇の甘さ。
・玄関で檻に入ったサルがお出迎え。
・なぜかポールダンス用のステージがある。
・自分が紙面を飾った雑誌の表紙が額に収まり、これでもかといわんばかりに飾られている。
・自分の顔面をプリントしたクッションが必ずといっていいほど椅子においてある。
・百貨店のワンフロア以上の金品があるetc.
・・・自分の顔写真がプリントされたクッションを置くって、相当な神経を持ち合わせていないと、まず不可能な気がします。
そして何より、撮影が行われたのは、リアルガチのパリス邸。
自分の被害現場を惜しげもなく晒すとは、もはや気前がいいのか、オツムがアレなのか・・・
2.リンジー・ローハンのサイドストーリー
お騒がせセレブの代名詞的というか、セレブは皆お騒がせなイメージしかない…。
存在のリンジー・ローハンですが、何故か劇中で2度も飲酒運転で逮捕されています。(しかもラジオとかテレビ越しの話)
短期間でどんだけ酔っ払ってるんだよと突っ込みを入れたいところですが、なんとそのリンジーと同じ刑務所でかつ隣の部屋に来るのが、最後まで自分を売り込むことに余念がなかったニッキーという、まさかの伏線回収。
リンジーは刑務所で夜通し泣いていたと、まさかの形でニッキーにカミングアウトされるのでした。
まとめ
原作はどちらかというとドキュメンタリーな内容となっているのに対し、映画はソフィア・コッポラによる演出、使用される曲も相まって、かなり青春ムービーな感じになっています。
インタビューや、映像資料は少なめですが、代わりにあの頃優等生のハーマイオニーを演じていた、エマ・ワトソンの豹変っぷりが見どころです。
セレブの生活も凡人の想像の範疇を超えていますが、よく見ると、犯行メンバーの家庭もどこか異常な様子が垣間見える過保護、学校の勉強より、宗教での教えを説く母などといった点も興味深かったです。
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