今回ご紹介するのは2018年5月、第71回カンヌ国際映画祭でプレミア上映された『ブラッククランズマン(原題BlacKkKlansman)』。
日本での公開はまだ未定ですが、今の時代に見逃すことのできない今作についていち早く、詳しくお伝えします!
映画『ブラッククランズマン』の作品情報
【公開】
2018年8月:日本公開未定(アメリカ映画)
【原題】
BlacKkKlansman
【監督】
スパイク・リー
【キャスト】
ジョン・デヴィッド・ワシントン、アダム・ドライバー、ローラ・ハリアー、トファー・グレイス、コーリー・ホーキンズ
【作品概要】
1970年代、アメリカコロラド州のコロラドスプリングズで黒人として初めて警察官に採用されたロン・ストールワースが自身の体験を執筆した本『Black Klansman』を原作とする本作。
1979年、白人至上主義団体“クー・クラックス・クラン(通称KKK)に黒人とユダヤ人警官が潜入した衝撃の実話をユーモアを織り交ぜて描きます。
主人公ロン・ストールワースを演じるのは名優デンゼル・ワシントンの息子、ジョン・デヴィッド・ワシントン。
ユダヤ人警官フリップ役には『スター・ウォーズ』のカイロ・レン役でおなじみ、インディーズ映画にも出演し幅広い作品で演技力を発揮するアダム・ドライバー。
ロンと親密な仲になる女性、パトリス役は『スパイダーマン : ホームカミング』(2017)で注目の神聖ローラ・ハリアー。
KKK最高幹部デーヴィッド・デューク役には『スパイダーマン3』(2007)『インターステラー』(2014)のトファー・グレイス。演出は人種差別間の問題を長年訴えてきたスパイク・リー監督。
本作はパルム・ドールこそ逃したものの審査員特別グランプリに選出され、批評家からも大絶賛されています。
映画『ブラッククランズマン』のあらすじとネタバレ
1979年のコロラド州コロラドスプリングズ。
ロン・ストールワースは地元で初めての黒人警官に就任しました。
ロンの最初の配属は記録保管室ですが、同僚の白人警官たちから嫌がらせを受ける日々。
ロンは現場で働くことをブリッジス所長に要望しますが、それは受け入れてもらえません。
そんな中、ある日ロンは黒人解放闘争を訴える政治組織、ブラックパンサー党が過激化しているかどうか調べるべくブリッジス所長からの任命を受けて潜入することになりました。
ロンはそこでコロラド・カレッジの黒人学生連合の代表である女性、パトリスと出会います。
党の集会ではストークリー・カーマイケルが熱心な演説を行い、また白人警官が黒人を殺している問題についても言及します。
ロンは彼の演説に黒人と白人間の闘争が過激化しないか心配になります。
集会の後、クラブでパトリスと会ったロン。彼女と人種間、黒人と警察の問題について話し合います。
パトリスはここに来るまでの道、差別的な白人警官に意味なく疑いをかけられてきたのでした。
ロンは自分が警察官であることを彼女に打ち明けることはしませんでした。
ブラックパンサーに潜入した後、ロンは新聞でとある広告を見つけます。
それは白人至上主義団体“クー・クラックス・クラン”のもの。ロンは自分の名前を使いKKKに電話をかけ、人種差別主義者であると信じ込ませ、本部に今度出向くことにします。
ロンの代わりに彼の名前を用いて侵入することになったのはユダヤ人警官フリップでした。
映画『ブラッククランズマン』の感想と評価
人種差別問題をテーマにした作品ですが、随所にユーモアが散りばめられ、ポップに仕上げられているのが『ブラッククランズマン』。
白人至上主義団体KKKの恐ろしさはもちろん、団結し立ち上がろうとするブラックパンサーたちの過激さ、双方の攻撃的な部分を描いているのも特徴です。
印象的なシークエンスはフリップが支部に出向き、KKKメンバーたちとD.W.グリフィス監督による映画『国民の創生』(1915)を観る場面。
この『国民の創生』は映画史には欠かせない作品ですが、KKKも登場し、また彼らのトレードマークである白いガウンとマスクは『国民の創生』の衣装を基にしたものなのです。
映画を見て喜びの声を挙げるKKKとブラックパンサーの集会が、クロスカットを用いて描かれます。
2つの人種のぶつかり合い、KKKの悦楽とブラックパンサーの憤りが1つのシークエンスで表されています。
人間は見た目だけではその人の“人種”を判断することはできません。
どのようなバックグラウンド、ルーツがあり、どのようなアイデンティティを持っているか、それは1人1人を知らなければ分かることはできないのです。
また警察官を嫌うパトリスのように、一部の人間がそうだからと言ってそのグループ、役職に所属する人間すべてに偏見を持つことも正しいことではありません。
1970年代の実話を描きながら現在も問題が強く根付いていることをあらわにする本作は、悲しくも私たちに目を背けてはいけない問題を突きつけます。
まとめ
日本はアメリカと比べれば同じバックグラウンドを持つ人々が多い社会でしょう。
しかし、人種間だけではなく男性、女性間、マジョリティとマイノリティ、今まで明るみに出ることのなかった様々な問題が議論される現在、日常に潜む偏見や差別の根源を考えることは誰もが必要なことです。
カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞した『ブラッククランズマン』。皆さんにご覧いただきたい作品です。