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『BAUS 映画から船出した映画館』あらすじ感想と評価レビュー。キャスト染谷将太の演技で古き良き映画館が夢見た“あした”を映し出す

  • Writer :
  • 谷川裕美子

映画『BAUS 映画から船出した映画館』は2025年3月21日(金)よりテアトル新宿ほか全国ロードショー

2014年に閉館した映画館・吉祥寺バウスシアターを舞台に、その歴史と家族の物語が温かな視線で描かれた映画『BAUS 映画から船出した映画館』。

主演を『ヒミズ』(2012)の染谷将太、その兄をロックバンド銀杏BOYZの峯田和伸が演じます。妻役には『海街diary』(2015)の夏帆。

映画『BAUS 映画から船出した映画館』が2025年3月21日(金)よりテアトル新宿ほか全国ロードショーとなります。

多くの人々に愛された唯一無二の映画館を営む平凡な一家。しかし、激動の時代を生きる彼らの人生は、決して平坦なものではありませんでした。映画館という宝の栄枯盛衰を静かにみつめる本作の魅力をご紹介します。

映画『BAUS 映画から船出した映画館』の作品情報


(C)本田プロモーションBAUS/boid

【日本公開】
2025年(日本映画)

【原作】
本田拓夫

【監督】
甫木元空

【脚本】
青木真治、甫木元空

【編集】
長瀬万里

【キャスト】
染谷将太、峯田和伸、夏帆、渋谷そらじ、伊藤かれん、川瀬陽太、とよた真帆、光石研、橋本愛、鈴木慶一

【作品概要】
時流に翻弄されながらも劇場を守り、娯楽を届け続けた⼈々の姿を描くヒューマンドラマ。

2014年に惜しまれながらも閉館した映画館・吉祥寺バウスシアター。1925年に吉祥寺に初めて誕生した映画館・井の頭会館が、ムサシノ映画劇場、バウスシアターへと形を変えながら、多くの人々に愛される文化の交差点になっていった劇場をめぐる歴史と家族の物語が描かれます。

主演は染⾕将太。兄・ハジメと思いつきで⻘森県から上京し、成り⾏きで吉祥寺にできた初の映画館”井の頭会館”に勤めることになるサネオ役を演じます。サネオの兄・ハジメ役には、ロックバンド銀杏BOYZの峯⽥和伸、サネオの妻となるハマ役を夏帆が演じます。

共演は、とよた真帆、光石研、橋本愛、鈴木慶一。

監督を務めるのは、バンド・Bialystocksのボーカルとしても活動し、映画『はだかのゆめ』では⼩説も出版するなど、各界で活躍する甫⽊元空。劇中の⾳楽は、吉祥寺バウスシアターや⻘⼭真治とも縁深い⼤友良英が担当します。

映画『BAUS 映画から船出した映画館』のあらすじ


(C)本田プロモーションBAUS/boid

1927年。活動写真に魅了され、「あした」を夢⾒て⻘森から上京したサネオとハジメは、ひょんなことから吉祥寺初の映画館“井の頭会館”の社長と出会い、そこで働き始めることとなります。

兄・ハジメは活弁⼠、弟・サネオは雑務を引き受けていましたが、やがてサネオが社長職を引き継ぎました。

劇場のさらなる発展を⽬指す⼆⼈でしたが、戦争の⾜⾳がすぐそこまで迫っていました。

映画『BAUS 映画から船出した映画館』の感想と評価


(C)本田プロモーションBAUS/boid

映画への愛にあふれた、胸揺さぶられる作品です。

三回姿を変えて生き延びてきた映画館の、90年に渡る激動の物語が綴られます。映画館を大事に育ててきた一家の歴史と並行して、日本の、そして世界の時代の流れが映し出されます。ツェッペリン飛行船、アメリカの大恐慌、そして世界大戦。日本の苦難の時代に思いを馳せずにはいられません。

淡々と物語は紡がれます。人生の節目が写真だけで描写されるなど、余白の多い印象です。その余白があるからこそ想像をかきたてられ、より深く作品を味わえていることに気づかされることでしょう

活動写真の神に引き寄せられたかのように、映画館で働き始める青森の田舎から上京したサネオとハジメ。

自由人で破天荒な兄のハジメは活弁士となり、そんな兄をサネオは支えていましたが、活弁の時代はすぐに幕を閉じてしまいます。時代の流れと共に多くのものが消えゆく中、彼らは必死に映画館と共に生きる道を探り続けるのでした。

いつも笑顔でサネオを支える妻のハマ。かわいい3人の子供にも恵まれた一家でしたが、やがて大きな戦争の渦に飲み込まれていきます。

兄を慕うあどけない弟からハマに心惹かれる青年へ、そして戦争への怒りと恐怖を持つ家族を持つ男へと、変遷していく主人公・サネオの心理を、演技派で知られる染谷将太が繊細に表現しています。

憎めないダメ兄貴役の峯田和伸、家族と映画館を支える肝っ玉母さん役の夏帆をはじめ、とよた真帆、光石研、サネオの息子・拓夫の晩年を演じる鈴木慶一の演技にも注目です。

まとめ


(C)本田プロモーションBAUS/boid

時代の大きなうねりと共に、吉祥寺初の映画館とそこに生きた家族の姿を綴る壮大なドラマ『BAUS 映画から船出した映画館』

平凡な一家が、仕事、愛、未来に全力で向き合う姿にいつの間にか心魅入られ、観終えた時には一緒に長い旅をしたような感覚に陥ることでしょう。そして、吉祥寺バウスシアターを知らなかった人でも、閉館がいかに大きな喪失だったかを実感するに違いありません。

映画『BAUS 映画から船出した映画館』は2025年3月21日(金)よりテアトル新宿ほか全国ロードショーです。



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