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Entry 2018/10/27
Update

映画『あいあい傘』あらすじネタバレと感想。親子の絆を倉科カナ&立川談春の共演で描く

  • Writer :
  • もりのちこ

夫婦で歩くということは「あいあい傘」で歩くのと一緒。肩を寄せ合い、一歩一歩、歩いて行くのです。

25年前に姿を消した父を探しにやってきた娘は、新しい家族を築き幸せそうに暮らす父の姿を目の当たりにします。どうしても父を許せない娘は、周りの人たちを巻き込み近づきます。

なぜ、父は姿を消したのか?なぜ、実の娘に会いに行かなかったのか?25年の時を経て浮かび上がる真実とは?

逢いたいのにずっと逢えずにいた父と娘の物語、映画『あいあい傘』を紹介します。

映画『あいあい傘』の作品情報


(C)2018映画「あいあい傘」製作委員会

【公開】
2018年(日本映画)

【監督】
宅間孝行

【キャスト】
倉科カナ、市原隼人、立川談春、原田知世、入山杏奈、高橋メアリージュン、やべきょうすけ、トミーズ雅、永井大、金田明夫、大和田獏、布川隼汰、越村友一、サブリナ・サイン

【作品概要】
劇団「東京セレソン」の主宰でもあり、脚本家、俳優としても数々の作品を手掛け出演している宅間孝行が、以前演劇で上演した同名舞台劇を、自ら監督し映画化。

25年前、生き別れた父と娘の再会の物語です。

姿を消した父親・六郎役に、落語家の立川談春。娘・さつき役は、倉科カナが演じます。また、新しい家族の妻・玉枝役に原田知世、お人よしのテキ屋・清ちゃん役に市原隼人と豪華キャストが勢ぞろい。

映画『あいあい傘』のあらすじとネタバレ


(C)2018映画「あいあい傘」製作委員会

お父さん、お母さん、幼い娘。絵に描いたような幸せいっぱいの家族の様子が白黒で再生されます。

段々と色づいていく風景。それと比例するように、死を覚悟する父親の姿が鮮明になっていきます。

ひとりの男が、ふらふらと片田舎にある恋園神社にたどり着きます。手には子供の字で「おとうさんありがとう」と書かれた封筒が。中には、肩たたき券が入っています。

神社の一角にある茶屋「恋園庵」の女将・玉枝(原田知世)は、男の何か思いつめた様子が気になり跡を追います。

雨が降る中、今にも命を落としそうな男・六郎(立川談春)に、玉枝はそっと傘を差しだします。その時、玉枝のお腹の中には女の子・麻衣子(入山杏奈)がいました。

それから25年。六郎、玉枝、麻衣子は家族として暮らしてきました。しかし、いつまでも籍を入れない夫婦関係に、娘の麻衣子はどこか他人行儀。麻衣子を実の娘のように思う六郎は麻衣子のことが心配で仕方がありません。

そんな中、恋園神社では年に一度の夏祭りが迫っていました。

お祭りの準備に忙しい、テキ屋の清太郎(市原隼人)と、日出子(高橋メアリージュン)、力也(やべきょうすけ)は、この辺りで育った悪ガキ3人組。義理と人情、ボケとツッコみの騒がしい毎日です。

事件は、清太郎の連れてきた一人の女性・さつき(倉科カナ)によって起こりました。さつきは、カメラマンでこの村のお祭りを撮影しにやってきたとのこと。

さつきに運命を感じた清太郎は甲斐甲斐しく村を案内します。やけに、茶屋「恋園庵」と六郎のことを気にするさつき。

実は、さつきは25年前生き別れた六郎の実の娘だったのです。

さつきは、六郎が新しい家族と幸せに過ごしていることを知り、苛立ちます。父は25年前自殺したと聞かされていた。犯罪者の妻として肩身の狭い暮らしをしてきた母。それでも、どこかで生きていると信じて父の帰りを待っていた自分たち。

さつきの六郎への怒りは頂点に達します。

以下、『あいあい傘』ネタバレ・結末の記載がございます。『あいあい傘』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
清太郎、日出子、力也に、自分は六郎の実の娘であることを告白したさつきは、怒りを露わに暴れまくります。

私と母には逢いに来ず、新しい家族を築き、幸せそうな父。めっちゃむかつく!こんな不公平、納得いかない!父の新しい家族に接触するさつきを、止めようと右往左往する清太郎たち。

そんな清太郎たちを振り払い、さつきは、娘・麻衣子に近づきます。実の娘VS今の娘。しかし、麻衣子もまた母・玉枝と六郎の関係が原因で、結婚に踏み切れないという悩みを抱えていました。

ますます苛立つさつきは、玉枝に逢いに行きます。さつきVS玉枝。しかし、どこまでも大らかで優しい玉枝に、さつきは撃沈です。

さつきは、こんな良い人たち相手に怒り、清太郎の気持ちまで利用した自分を責めます。それでも父と直接会う勇気のないさつきの前に、車海老のおっちゃん(トミーズ雅)が現れます。

車海老のおっちゃんは、さつきに六郎の居場所を教えてくれた張本人でした。さつきは、車海老のおっちゃんに雇った人を問いただします。

雇い主は、玉枝だったのです。

玉枝は、六郎を連れていかれても構わないという覚悟で、実の娘を探させ、六郎と逢わせてやりたかったのです。

25年前、死を覚悟した父を救ったのは玉枝でした。会社の責任を背負って死を迫られた父、実の家族を思い続け籍を入れず、いつも自分たちのことを祈って神社参りをしていた父。常に肌身離さず持ち歩いていた、実の娘からのメッセージカード。

25年間、苦しんだのは自分だけじゃなかった。さつきは、父・六郎と逢うことを決めます。

遂に再会する父と娘。

さつきのことを観光客と勘違いする六郎に、さつきはメッセージカードに入っていた「肩たたき券」を差し出します。もう、さつきには六郎の今の幸せを壊す気持ちは微塵もありません。ただ、写真を撮らせて欲しいとお願いします。

立派に成長した実の娘に、六郎はただ涙を流します。

運命とは「縁」とも言えます。25年前、恋園神社に死に場所を求めてやってきた六郎の後に、幼い泣き虫の女の子の姿がありました。女の子を泣き止ませようと、紙で作った傘をプレゼントした男の子がいました。

25年後、父との再会を果たして帰るさつきに、清太郎は紙で作った傘をプレゼントしました。

映画『あいあい傘』の感想と評価


(C)2018映画「あいあい傘」製作委員会

生き別れて25年。逢いたくても逢えなかった父と娘の再会

ストーリーを読んだだけでは、真面目な感動映画をイメージしますが、実際の作品は、テンポの良いコメディを見ているかようです。

個性派揃いのキャストと、落語を聞いているかのようなセリフ回し。怒りで管を巻く、倉科カナの演技になぜかスッキリし、ラストには市原隼人のタンクトップ姿に恋をしている始末です。


(C)2018映画「あいあい傘」製作委員会

相手を思いやるあまり、すれ違う思い言葉にしなければ伝わらない気持ち。この映画を通して、もどかしさを感じるはずです。そして、大切な人を思い出してください。同じ方向を向いていますか?どちらか一方だけが、雨に濡れていませんか?

人はいくら自分の人生が幸せでも、愛する人の人生が不幸なら本当の幸せは得られないのではないでしょうか。だからこそ自分の幸せと一緒に、愛する人の幸せも祈るのです。

タイトル「あいあい傘」には、相合傘の他にも「愛愛傘」「逢逢傘」、人によって当てはまる漢字が何通りも考えられます。


(C)2018映画「あいあい傘」製作委員会

まとめ


(C)2018映画「あいあい傘」製作委員会

映画『あいあい傘』の主題歌は、竹内まりやの「小さな願い」です。この作品のため書き下ろした、4年ぶりのシングルとなります。

大切な人にずっと幸せでいて欲しいという願いが込められたこの曲は、映画『あいあい傘』の世界観そのものです。

また、映画の風景が抒情的でとても印象的でした。ロケ地は、栃木県栃木市の太平神社、山梨県甲府市の金櫻神社を中心に行われたようです。どちらもご利益のありそうな格式ある神社です。聖地巡礼に訪れてみてはいかがでしょうか。

あいあい傘で一緒に歩いているパートナーがいる方は、改めてその奇跡に感謝を。これから、あいあい傘をさす相手と出会う予定の人は、心構えを。映画『あいあい傘』で感じてください。

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