ファティ・アキン監督の『50年後のボクたちは』は、かつて、14歳だったすべての大人たちに贈るロード・ムービー!
2017年9月16日より東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国順次公開!
14歳のマイクは学校の同級生から変人扱いのはみだし者。彼の家では母親はアル中、父親は浮気中。そんなある日、チックというチョット風変わりな転校生がやって来って来ます…。
CONTENTS
1.映画『50年後のボクたちは』の作品情報
【公開】
2017年(ドイツ映画)
【原題】
Tschick
【脚本・監督】
ファティ・アキン
【キャスト】
トリスタン・ゲーベル、アナンド・バトビレグ・チョローンバータル、メルセデス・ミュラー、アニャ・シュナイダー、ウーベ・ボーム、ウド・ザメル、クラウディア・ガイスラー=バーディング、アレクサンダー・シェアー、マルク・ホーゼマンノーマ、フリーデリッケ・ケンプター
【作品概要】
ドイツ国内で220万部以上の売り上げを記録、また26カ国で翻訳されている児童文学を『愛より強く』『ソウル・キッチン』の名匠ファティ・アキン監督による映画化。
2.ファティ・アキン監督のプロフィール
初長編作品『Kurz und schmerzlos』(1998) 予告編
1973年8月25日にトルコ移民の両親のもと、ドイツ・ハンブルクに生まれます。
はじめは俳優を志していたものの、トルコ移民役などステレオタイプの役柄ばかりに嫌気がさして、ハンブルク造形芸術大学へ進学。
1995年に監督デビュー作となる短編『Sensin- Du bist es!』を発表。
初の長編映画となった『Kurz und schmerzlos』(98)はロカルノ映画祭の銅豹賞、アドルフ・グリム賞、バイエルン映画賞など全部で9つの賞を獲得。
その後、『太陽に恋して』(2000)、ドキュメンタリー『Wir Haben Vergessen Zurückzukehren』(2000)『Solino』(2002)を発表。
また、偽装結婚から始まる愛を描いた『愛より強く』(2004)で、第54回ベルリン国際映画祭金熊賞をはじめ、2004年ヨーロッパ映画祭最優秀作品賞など数々の賞で一躍有名となります。
監督6作目となる『クロッシング・ザ・ブリッジ~サウンド・オブ・イスタンブール~』(2005)は、音楽ドキュメンタリーとして高い評価を得ます。
日本でも大ヒット!『ソウル・キッチン』(2009)
『そして、私たちは愛に帰る』(2007)で第60回カンヌ国際映画祭最優秀脚本賞と全キリスト協会賞を受賞。
『ソウル・キッチン』(2009)は、第66回ベネチア国際映画祭審査員特別賞を受賞し、30代にして、世界三大映画祭ベルリン、カンヌ、ベヌチアにて主要賞受賞する快挙を果たします。
『ソウル・キッチン』はドイツで100万人以上を動員して大ヒットとなったのを皮切りに、ヨーロッパ各国でヒットを飛ばした。
その後もいくつかの作品を制作した後、『消えた声が、その名を呼ぶ』(2014)は、第71回ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門に出品され、ヤング審査員特別賞を受賞。
今作『50年後のボクたちは』では、自身も原作の大ファンを公言する大ベストセラー小説「14歳、ぼくらの疾走」を原作に実写化を果たします。
ファティ・アキン監督は、今作『50年後のボクたちは』を観てくれるあなたに、次のようなメッセージを贈ってくれています。
「映画はあなたの気分を良くしてくれます。これは楽しい映画で、おかしい映画で、勇気のほとばしる瞬間があります。その一方でメランコリックでもあり、考えさせる映画でもあります。しかし、この映画はウィットや新鮮さを失うことはないでしょう。この映画はあなたに力を与えてくれます。ビタミンB12の集中注射のようなものです。この映画のメッセージ「あまり考えすぎるな、ただ動け。ただ動くんだ」というのはまさに理にかなっているのです」
楽しく、可笑しく、勇気の出る映画!映画が行動する力を与えてくれるなんて!
素敵なファティ監督の言葉ですね!
ぜひ、観なくちゃですね!
3.映画『50年後のボクたちは』のあらすじ
14歳のマイクはクラスメイトから孤立した冴えない中学生。
そんな彼はクラスメイトにも人気のあるタチアナに片思いを寄せますが、臆病なだけでで話しかけることもできません。
授業中にマイクは、アルコール依存症な母親についての作文を読むと、周囲からは「変人!」と笑われたり、作文内容で先生からも叱られてしまいます。
ある日、チックという風変わりな転校生がロシアからやって来ると、先生は彼の席をマイクの横に座らせます。
チックの手持ちの荷物にはウォカの瓶が入っていました。酒を呑んでいるせいか、チックはなぜか母親と同じ匂いがしました。
そんなチック関わり合いたくないマイクは無視を決め込みます。
しかし、マイクが一方的に思いを寄せたタチアナの誕生日のパーティには、マイクとチックの2人だけ招待状が届きませんでした。
やがて、夏休みに入ると、失意のマイクの元にチックがやってきます。しかもチックは自動車に乗ってきたのです。
思わずマイクは「盗難車か?」「借りただけさ あとで返す」というチック。
「捕まるぞ」と臆病なマイクは言いますが、チックは「俺は14歳だ 刑罰は15歳からさ!」と言います。
恐る恐る、車内を見渡すマイクに、チックは「ドライブに行こうぜ!」と誘いをかけます。
無断借用した青いオンボロのディーゼル車“ラーダ・ニーヴァ”に乗り込んだ2人は、南へと走り出します。
2人はチックの祖父が住んでいる“ワラキア”を目指して旅に出たのです。
様々なトラブルに遭遇しながらも、旅の途中でいつくもの出会いと別れを繰り返します。
やがて、臆病者のマイクを誘い出した無鉄砲なチックとの旅は、2人にとって一生忘れることのできない冒険になっていく…。
4ファティ・アキン監督と原作本の出会いは?
今作『50年後のボクたちは』の原作は、ドイツ国内で220万部以上を売り上げを記録し、26カ国で翻訳される超ベストセラー小説「14歳、ぼくらの疾走」。
ドイツ児童文学賞など多くの賞を総なめにしただけでなく、舞台版の上演では2012・13年シーズン最多上演作品となる大ヒットの話題となりました。
そんな海外からも愛される原作を実写映画化したのは、世界三大映画祭を制覇した名匠ファティ・アキン監督。
ファティ監督は、原作「14歳、ぼくらの疾走」との出会いについて、次のように語っています。
「2011年にフランクフルトのブック・フェアで、「Im Clinch」という本をプレゼンしていたのですが、その時ロヴォールト出版社に何かお薦めの本はないか聞いたのです。その時薦められた一冊が、「14歳、ぼくらの疾走」のペーパーバック版でした。その後むさぼるように読みました。この映画を引き受けると決めたのは、これまでで最も重要な決断でした。人生のあの時期にまさに私が必要としていた映画だったのです。あらゆる点で、あの映画は私を救ってくれたのです。読んでいる途中から、映画化するとしたらどうするか考え続けていました。キーになるのは、マイクとチックが星を眺めながら、いかに自分たちが小さいかに気づくところでした」
ファティ監督は原作にとても惚れ込んだようですね。
監督自ら“あの映画は私を救ってくれた”と言わしめた、誰もがあつて思春期に思い抱いたような気持ち。その少年たちの行動はどこか爽やかで必見ですよ!
5.原作者ボルフガング・ヘルンドルフのプロフィール
ボルフガング・ヘルンドルフは、1965年ハンブルクに生まれます。
風刺雑誌「タイタニック」のイラストレーターとして活躍した後、作家としても活動を始めます。
2002年に『Pluschgenwitten』、2007年に『Diesseits des Van-Allen-Gurtels』を出版。
2010年に脳腫瘍が発見され、その直後から「14歳、ぼくらの疾走」の執筆に取り掛かり同年に刊行しました。
海外26か国で出版され、ドイツ国内では220万部以上の売り上げる大ベストセラー。
2011年に『砂』を出版した後、2013年に闘病の末ベルリンで惜しまれつつも死去。
2014年には、ボルフガングがインターネットで公開していたブログ「仕事と構造」を書籍化。
また、死の数週間前まで執筆していた『14歳、ぼくらの疾走』の登場人物の少女イザが主人公の未完の小説『Bilder deiner grofen Liebe』も出版されています。
今作『50年後のボクたちは』の劇中に登場した謎の多いイザ。
マイクにとって忘れることができないチャーミングな彼女の澄んだ瞳…。
映画をご覧になってイザのことが気になったら、未完の小説も読んでみるのも良いかもしれませんね。
3.映画『50年後のボクたちは』の感想と評価
ファティ・アキン監督の今作『50年後のボクたちは』は、もう、テッパンと言い切れるほど、どなたにも薦められる映画です。
若くして世界三大映画祭の主要な賞を制覇したファティ監督の豊かな才気溢れる演出と、安定感のある語り部の演出力は必見としか言いよう亜ないですね。
思春期という繊細な時期の少年少女の様子を紡いだ表情の数々。
そして、センスの良い楽曲に乗せながら魅せるロード・ムービーの爽快感は、きっと、あなたを魅了することでしょう。
物語の見どころの中心といえば、臆病者でクラスメイトから変人と蔑みされるマイクの成長していく姿です。
主人公マイク役を演じたトリスタン・ゲーベルと風変わりなチック役を演じたアナンド・バトビレグ・チョローンバータルのやり取り。
映画を見ながら、あなたもきっとドライブの旅をした気分になれますよ。
そんな活き活きとした2人の俳優との出会いをファティ・アキン監督は次のように述べています。
「彼らは撮影当時13歳でした。私は運転席でビクビクしている幼い顔が欲しかったのです。いつ捕まるかと始終心配している、そんな風に見えなければならない。トリスタン・ゲーベルは『Winnetous Sohn』(2015/アンドレ・アルコー監督)など、多くの映画で既に出演経験がありました。元々はマイクの級友の1人としてキャスティングされていたのですが、マイク役の予定だった子がうまくできなくなり、彼にしたのです。チックを演じたアナンド・バトビレグ・チョローンバータルは、この企画に入った初日にオーディションした子で、その演技に心打たれました。撮影が始まってみると、アナンドはトリスタンより90センチほど背が高かった。それで1:1.85(フレームサイズ:アメリカン・ビスタサイズ)で撮ることにしたのです。さもないとどちらかが鼻か額で切れてしまいますからね」
ファティ監督もお墨付きな彼らの表情や仕草。そして、“2人の友情”に関しては、ぜひ、劇場であなたの目で味わってくださいね。
とっても!カワイイですよん。
また、眼力の強いイザ役のメルセデス・ミュラーの乙女な心にも注目です!(箱の中身きになるな〜笑)
マイクは夏の冒険の一時、チックやイザたちに過ごすことで内面が成長していきます。
しかし、一貫してマイクの心情に変わることがないのは、アルコール依存症な母親と愛情を分かち合う姿です。
それと比べてマイクは、浮気する父親と対峙した様子では冒頭と終焉では大きく違った姿で描かれています。
バカンスの浮気旅行に若い女性と2人で旅立つ父をプールの中から“撃ち殺す?ロー・アングルで見送るマイク視点”と、離婚を決めた父親が若い女性と家から出て行く様子を“感情も示さずに屋上から見下ろす(見下す)マイクの視線”。
この対比させたショットをファティ監督は観客に示すことで、親子関係やマイクの成長した姿は一目瞭然で理解させる演出でした。
お見事な演出はこれだけではなく、巧みなファティ監督ならではのウィットやペーソス効いた映像文法がこの作品にはふんだんに盛り込まれています。
例えば、あらすじでも触れましたが、“チックとマイクの母親の同じ匂い”や“水辺のマイクとイザの初々しさ”など、挙げればいとまもありません。
ぜひ、あなたの目でファティ監督の語り部の演出をお確かめくださいね。
もちろん、ファティ監督の楽曲の演出も、スッゴ〜〜く聴かせてくれますよ。
オリジナル・サウンドトラックもオススメします!
【Tschick Original Soundtrack】
http://tower.jp/item/4545185/Tschick
まとめ
ファティ・アキン監督の『50年後のボクたちは』は、2017年9月16日より東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国順次公開!
かつて、14歳だったすべての大人たち!ぜひ、お見逃しなく!
【最後にオマケね】
『トランスフォーマー』も出るけど『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997)をどうぞ!