映画『43年後のアイ・ラヴ・ユー』は2021年1月15日より全国順次ロードショー。
映画『43年後のアイ・ラヴ・ユー』は、アルツハイマーによって記憶を失くしたかつての恋人に43年の時を経て愛を伝える感動のラブストーリーです。
主演はクエンティン・タランティーノやアルフレッド・ヒッチコック作品など数々の映画作品に出演しているベテラン俳優のブルース・ダーン。2013年公開の『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』で、カンヌ国際映画祭主演男優賞を受賞して以来の主演作になります。
またフランスの名舞台女優カロリーヌ・シロルとの、しっとりとした演技の掛け合いが穏やかに心に沁みる作品となっています。
CONTENTS
映画『43年後のアイ・ラヴ・ユー』の作品情報
【公開】
2021年(スペイン・フランス・アメリカ合作映画)
【監督】
マーティン・ロセテ
【キャスト】
ブルース・ダーン、カロリーヌ・シロル、セレナ・ケネディ、シエンナ・ギロリ―、ブライアン・コックス、ステファン・マクファーレン、ベロニカ・フォルケ、ベン・テンブル、イザベル・ガルシア・ロルカ、ニコール・アンサリ、エミリー・マレー、ロバート・ロイヤル
【作品概要】
主演のブルース・ダーンはアカデミー賞女優のローラ・ダーンの父親としても知られていますが、『ヘイトフルエイト』や『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』などタランティーノ監督作品の常連俳優。
『華麗なるギャツビー』(1974)でゴールデングローブ賞助演男優賞にノミネートしたのち、『帰郷』(1978)や『栄光の季節』(1982)でベルリン国際映画祭の銀熊賞(最優秀男優賞)を受賞しています。
ベテラン俳優でありながら、新鋭監督の作品『ザ・ピーナツバター・ファルコン』(2019)にも出演するなど意欲的に活動しており、マーティン・ロセテ監督が一緒に仕事をしたいと希望していた俳優のひとりでした。
リリィ役のカロリーヌ・シロルはフランスの舞台、テレビドラマ、映画で幅広く活動しながら脚本やプロデューサー業にも取り組んでいるマルチな映画人。フランス映画界では最も権威あるモリール賞に3度ノミネートされている実力者として広く知られています。
クロードの親友役を務めたのは、ブライアン・コックス。映画からテレビドラマ等で活躍している名俳優。ドラマシリーズ「ニュルンベルグ軍事裁判」(2000)でプライムタイム・エミー賞の助演男優賞受賞して注目を集めたのち、映画作品は『ボーン・アイデンティティー』『ボーン・スプレマシ―』『RED/レッド』『REDリターンズ』に出演。『ファンタスティックMr.FOX』や『her/世界でひとつの彼女』では声優を務めています。
クロードの娘役シエンナ・ギロリーは『バイオハザードⅡアポカリプス』(2004)で注目を集め、『ラブアクチュアリー』(2003)『バイオハザードⅤリトリビューション』(2012)『ハイ・ライズ』(2015)などに出演している女優。
監督、脚本を務めたのはスペイン出身のマーティン・ロセテ。ニューヨークフィルムアカデミーで映画の演出を学んだのち製作した短編『Voice Over』(2011)でゴヤ映画祭ノミネートされるなど世界的に注目を集め。長編映画は『カネと詐欺と男と女』(2016)に続く2作目となっています。
実弟のホセ・マーティン・ロセテが撮影監督を務め“アナモルフィックレンズ”という特有の味を引き出すレンズを使用するなどこだわり抜いた作品が仕上がりました。
映画『43年後のアイ・ラヴ・ユー』のあらすじ
元演劇評論家のクロードは70歳で悠々自適に暮らしています。2年ほど前に妻に先立たれてからは手料理を自分で作り、友人のシェーンとかわり映えしないながらも楽しい生活を送っていました。
気がかりなのは、いけ好かない義理の息子のスキャンダルのせいで娘と孫娘がつらい目に遭っていることくらい。
そんなある日、かつての恋人で元舞台女優のリリィがアルツハイマーになり施設に入所したことを知ります。
クロードは彼女へ43年越しの想いを伝えるべく、アルツハイマーのふりをして施設に入所する決心をしました。
医師をだまし、施設のスタッフをだましてリリィに再会できたクロードでしたが、彼女はクロードのことを思い出せず…。
映画『43年後のアイ・ラヴ・ユー』の感想と評価
年を取っても豊かに生きること
本作は、アルツハイマーを取り扱っているので、現実的でシビアな部分もありますがそれと同時に歳を取っても豊かに生きることについて見事に描いた作品だと言えます。
かつての舞台女優だったリリィは、クロードから見せられる昔の舞台映像や若いころ好きだった音楽を聴くと突然記憶がよみがえったように目を輝かせます。
クロードのことはなかなか思い出せないリリィですが、彼女の反応からは舞台に対する喜びが溢れ、彼女の人生が垣間見えます。
トップ女優にまで上り詰めた彼女の努力は計り知れず、舞台に立つことに情熱を捧げていたことが想像できるといえるでしょう。
そんな人生の華々しいひとときを忘れてしまうというのは、アルツハイマーの残酷さを改めて感じさせられるつらい部分です。
しかし、本作の素晴らしいところは老化による辛さという観点だけでなく、歳を重ねても元気にそして前向きになれるというのを生き生きと描いている点です。
クロードはリリィへの一途な思いをありとあらゆる形で伝え続けます。とくにリリィが好きだったアーティストであるガーシュインの“エンブレイサブル・ユー”の贈り物はリリィのみならず、施設の若いスタッフをも魅了します。
時代が変わっても魅力は色あせることがなく、いくら時が経ってもその頃の想いを蘇らせてくれることを描いているといえるでしょう。
若いときの楽しさだけが全てではなく、長く生きて悲しいことも楽しいことも経験してきたからこそ感じられる幸せや、許しやいたわりの思いがあることを感じさせてくれます。
キャラクターたちの魅力
クロードはあけすけにものを言う、小うるさい老人ですが彼の率直さと情熱は観る者の心を揺さぶります。
鶏の丸焼きを調理しているところから自分で生活を管理できることが伺えます。ジョークを交わし合える良い友人を持ち、時には周りを巻き込んで自分の情熱を突き通す。悠々自適な理想のシニアライフといってもいいでしょう。
そして娘と孫娘をこよなく愛し、彼女たちからも愛されている優しい人間性が描かれている点は、娘や孫娘の年齢層の観客が本作に感情移入しやすい要素だといえるでしょう。
本作の観客が自分の老後を考えた時に、年を取り若い時と同じように生活できなくなったとしても、前向きに生きることはできると思わせてくれる作品になっています。
また、クロードの強引さをフォローする親友のシェーンは重要な役どころです。
クロードがアルツハイマーのふりをして養護施設に入所することやリリィのことについて、ことあるごとにツッコミを入れたり大げさなまでに心配をする姿が作品の中で良い意味での解説の役割を務め、共感を集めるキーマンになっているので注目です。
まとめ
本作は男女関係なく、様々な世代の人の心に響く映画となっています。
なかでも最も胸を打つのは、クロードが「この人生で最高の贈り物だ」と告げるシーンです。
この会話のやりとりには非常に深い愛が込められています。この言葉を告げた相手は誰なのか、なぜクロードはそこまで感激したのか、ぜひスクリーンで確認してみてはいかがでしょう。
『43年後のアイ・ラヴ・ユー』は2021年1月15日より、新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町ほか全国順次公開。