映画『サハラのカフェのマリカ』は2022年8月26日(金)より全国ロードショー!
砂漠の中にポツンと存在する1軒のカフェ。せわしなく砂漠を行き来する旅人は、今日もここに立ち寄って女主人・マリカとのひとときを過ごしています。
サハラ砂漠で小さなカフェを営む年老いた女性と、そこを訪れる人たちの姿を捉えたドキュメンタリー『サハラのカフェのマリカ』。
カフェに訪れる人たちと女主人との会話を中心に、厳しい環境の中でゆったりとした時間が流れる砂漠の日常を表情豊かに描いた作品です。
映画『サハラのカフェのマリカ』の作品情報
【公開】
2022年(アルジェリア・フランス・カタール合作映画)
【原題】
143 rue du desert(英題:143 Sahara Street)
【監督・撮影】
ハッセン・フェルハーニ
【作品概要】
サハラ砂漠で小さなカフェを営む年老いた女性と、そこを訪れる人たちの姿を捉えたドキュメンタリー。
作品を手掛けたのは、アルジェリアのハッセン・フェルハーニ監督。作品は2019年の第72回ロカルノ国際映画祭で最優秀新人監督賞を受賞するなど世界的にも高く評価されました。
映画『サハラのカフェのマリカ』のあらすじ
アフリカ北部、アルジェリアのサハラ砂漠の真ん中にポツンと1軒、マリカがひとりで営むカフェがあります。
店にはトラック運転手や旅人たち、ヨーロッパのバックパッカーらが旅の途に訪れ、マリカはそんな人々と他愛のない会話を交わし、毎日を過ごしています。
人々は一杯のコーヒーとともに、自分の国や自身の人生など、自身の素直な思いやさまざまな出来事を、初対面のマリカに気兼ねなく打ち明けていました。
映画『サハラのカフェのマリカ』の感想と評価
砂漠の中にポツンと存在する1軒のカフェ。多くの人は1978年の映画『バグダッド・カフェ』を思い出すでしょう。
実際、本作でスポットがあてられる砂漠のカフェの女主人・マリカは、『バグダッド・カフェ』の主人公・ジャスミンと多くの点で違いが見られる一方で、カフェに居続ける理由にどこか重なるところがあるのではないかと感じられます。
アルジェリアでは、1970年に砂漠を南北に結ぶサハラ砂漠縦貫道路を建設したり、サハラ砂漠の中に、砂漠を縦横断できるいくつかの行路が設けられています。
残念ながら十分な整備は行われていないものの、それぞれの道路は重要な運送の経路となっており、マリカのカフェはこうした道路の途中に位置し、旅の途中に一時の安らぎを提供しているようです。
カフェを訪れる人の多くは陸送業者で、相変わらず情勢が安定しない政治の情勢を嘆いたりします。自身の住んでいる国のことをどこかよその国の話をしているようにも見えますが、一方でその言葉の端々にそれぞれの日常で抱いている思いのようなものも見えてきます。
終盤には、マリカ自身の口から彼女の波乱の人生と思われる経緯が、とある旅人との話の中で語られます。
彼女はその話を冗談だとごまかそうとしますが、複雑にも見えた彼女自身の表情からその真偽のほどを推し量ることはできません。
本作は大半がマリカのカフェに訪れる旅人と彼女との会話で構成されており、間には彼女が唯一の同居人である猫と戯れるシーンもあります。
しかしその話の端々や彼女の表情の変化などを探ると、彼女はさまざまな経緯を経てこの地にたどり着いた様子も感じられます。
その表情からは、彼女が決して恵まれた裕福な生活であるとはいえないものの、ここに自身の安息の地を見つけたことも伺えます。
激動の時代に生きる現代、案外オアシスという場所は、彼女のカフェのような場所なのかもしれません。
わが娘のようにかわいがる猫と戯れるマリカの姿からは、そんな普遍性すら見えることでしょう。
まとめ
会話シーンの中で特徴的なのは、旅人の多くとマリカが対面ではなく、どちらもカメラ側に顔を向けしゃべっているところです。
会話でお互いの表情を見ないのは、たとえば交渉ごとの現場では相手の真意が見えにくいこともあってこのような会話を行うことはまずありません。
日本国内では通常の会話でもこのような光景を見ることはあまりないのではないでしょうか。
しかし彼女らの会話は逆に相手を眺め見ないために、逆に自身の胸の内を素直に表しているようでもあり、話を聞く側としては詮索される様子もないので安心感が生まれるのかもしれません。
このような光景はかえって今の時代ではあってもいいのでは?と思えてくるところにこの物語の真意も見え、本作はマリカのそんな日常を通じて、安らぎを求める人たちへの指針を表しているようにも感じられます。
映画『サハラのカフェのマリカ』は2022年8月26日(金)より全国ロードショー!