Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ドキュメンタリー映画

Entry 2021/02/15
Update

SLEEP マックス・リヒターからの招待状|感想と評価レビュー。ドキュメンタリー映画で「睡眠」のエンタテインメント性を追求する

  • Writer :
  • 桂伸也

映画『SLEEP マックス・リヒターからの招待状』は2021年3月26日(金)より全国順次ロードショー!

音楽家マックス・リヒターの楽曲『眠り』をテーマとした『SLEEP』の真意に迫ったドキュメンタリー映画『SLEEP マックス・リヒターからの招待状』。

本作は楽曲『SLEEP』をテーマに、作曲者リヒターや周囲の人、観衆などの声からその曲の持つ真価、思いに迫ります。

音楽、エンタテイメントをテーマとした映像を手掛けてきたナタリー・ジョンズ監督が作品を手掛けており、劇中ではロサンゼルスで行われた8時間にも及ぶコンサートの模様も合わせて映し出されています。

スポンサーリンク

映画『SLEEP マックス・リヒターからの招待状』の作品情報


(C) 2018 Deutsche Grammophon GmbH, Berlin All Rights Reserved

【日本公開】
2021年(イギリス映画)

【原題】
Max Richter’s Sleep

【監督】
ナタリー・ジョンズ

【キャスト】
マックス・リヒター、ユリア・マール、グレース・デイヴィッドソン、エミリー・ブラウサ、クラリス・ジェンセン、イザベル・ヘイゲン、ベン・ラッセル、アンドリュー・トール

【作品概要】
クラシックとエレクトロニック・ミュージックの融合である『ポストクラシカル』音楽のマックス・リヒターが作り上げた楽曲『Sleep』の真相に迫るドキュメンタリー。

8時間超におよぶ『SLEEP』を、ベッドや寝袋に入って横たわる観客に向けて演奏するライブの模様、舞台裏とともに、リヒター自身の思いや周囲の反応などからこの楽曲の真意を問います。

監督を務めるのは『アイ・アム・タレント』で初めてドキュメンタリー作品を手掛けたナタリー・ジョンズ。サム・スミス、チャイルディッシュ・ガンビーノ、モリッシー、ジョン・レジェンドなど、さまざまなミュージシャンたちとのコラボレーションでも知られています。

映画『SLEEP マックス・リヒターからの招待状』のあらすじ


(C) 2018 Deutsche Grammophon GmbH, Berlin All Rights Reserved

ロサンゼルスの総合芸術施設グランド・パークで2018年7月に、ポストクラシカルの旗手で映画音楽などの作曲でも知られる音楽家マックス・リヒターが、眠りをテーマとした曲『SLEEP』を演奏するコンサートを開くためにやってきます。

その演奏予定時間8時間以上という長きにわたるもの。

そして会場には座席の代わりに、多くのベッドが。

リヒターや演奏者たちが入念な準備を終えると観客たちは入場し、寝袋を出したり、毛布を広げたりして開演を待ちます。

やがて幕は上がり、リヒターが脳科学者デイヴィッド・イーグルマンの協力のもとで作られた、睡眠のための曲『SLEEP』の演奏が始まるのでした。

スポンサーリンク

映画『SLEEP マックス・リヒターからの招待状』の感想と評価


(C) 2018 Deutsche Grammophon GmbH, Berlin All Rights Reserved

主観を重点に置いたドキュメンタリー作品

ナタリー・ジョンズ監督はさまざまなミュージシャンとのコラボレーションでも知られる映像作家であり、『アイ・アム・タレント』以前にもミュージカル的なテレビドラマ『Great Performances』、ニューヨークの作曲家ニコ・マーリーの姿を追った『Essie Jain, All Became Golden』(いずれも日本未公開)といった表現者の姿を追った作品を手掛けています。

ゆえに本作はどちらかというとその視点はドキュメンタリーである一方で『SLEEP』という曲の本質や演奏の見え方、聴こえ方という点に重点を置いた構成となっています。

作中ではリヒターやそのパートナー、そして彼らを取り巻く人たちや観衆へのインタビューも収録されていますが、これらは『SLEEP』という楽曲やコンサートの補足を行いながら、演奏シーンを印象深いものとする演出の効果を担っています。

一方、本作のイメージを作り上げた根源としては、どちらかというとジョーンズ監督の主観性が感じられます。

ドキュメンタリーフィルムは事実を追うという点において、どちらかというと客観性を求められる傾向にありますが、この作品では単にありのままを映すというだけでなく、明らかに見え方の目標を見据え作り上げた映像を映し出しています。

このことからは、マックス・リヒターの『SLEEP』という作品がどのようなものなのかという、その見え方の印象を、あくまでジョンズ監督自身の印象を具体化したものと見ることもできるでしょう。

ドキュメンタリーというジャンル性を考えると非合理的に思えるかもしれませんが、芸術というジャンルに絶対的な答えがないことを考えると、ある意味これはもっともな描き方であるともいえます。

そしてこの構成の中で『SLEEP』という楽曲と“Sleep”、すなわち「眠る」という言葉自体の意味合いをさまざまに解釈し、印象を広げさせてくれるような求心力を埋め込んでいます。

単純なドキュメンタリーとして映像を作り上げたのであれば、単に資料的な意味合いでしかその価値を残すことはできませんが、本作は映像の美しさ、『SLEEP』という楽曲の響きの美しさと相まって、ある種のエンタテイメント的な側面を持ち合わせ、見終わった後に非常に心地よい気分を味わえる作品となっています。

まとめ


(C) 2018 Deutsche Grammophon GmbH, Berlin All Rights Reserved
本作の映像の魅力は、ドキュメンタリーというジャンルである中で、作品を美しく作り上げている点にあります。

大概においてはドキュメンタリー作品では、インタビューシーンなどは単にカメラの前に人を座らせてそのまましゃべらせるなど、リアルな映像、当時性を求めた映像が選ばれることが多いのですが、本作はコンサートの模様やインタビューなど細部にわたるところまで、いい意味で作為的な画作りがなされています

単にハンディーカムで狙った瞬間を逃さず撮りまくり作り上げた、というよりはリヒターの紡ぎ出す「Sleep」よりジョンズ監督が受け取ったポジティブな印象を、しっかりと練り上げられた映像で撮り切って構成されているという印象です。

時にドキュメンタリー作品は、その主題によっては見る側から「予備知識がないとなかなか受け入れられない」「興味のないジャンルだと内容がわからない」という印象を持たれるケースもありますが、本作はそんなドキュメンタリーの固定観念にも一石を投じ、多くの人に受け入れられるものを目指して作り上げられたものとも見ることができるでしょう。

映画『SLEEP マックス・リヒターからの招待状』は2021年3月26日(金)より全国順次ロードショーされます!



関連記事

ドキュメンタリー映画

今週公開のおすすめ映画『デヴィッド・リンチ:アートライフ』独白の88分とは

ドキュメンタリー映画『デヴィッド・リンチ:アートライフ』は、本日1月27日(土)より、新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほかにて全国順次公開。 デヴィッド・リンチ監督が紡ぐ“あの悪夢”は、彼がどのよう …

ドキュメンタリー映画

映画『新宿タイガー』あらすじと感想レビュー。ドキュメンタリーでお面を被った71歳の新聞配達屋さんに迫る

みなさんは、“新宿タイガー”をご存知でしょうか。 いつでも虎のお面を付けた風変わりなスタイルで新宿の街中いたるところに出没します。 街頭で聞き込みをすると目撃情報は多数。それも映画館付近でよくみること …

ドキュメンタリー映画

映画WEAREXはYOSHIKIの成功への経過を全ドキュメントに

全国の映画館にて公開中のXJAPANのドキュメンタリー映画『WE ARE X』は大ヒット中! 今回はスティーブン・キジャック監督の『WE ARE X』をご紹介します。 スポンサーリンク CONTENT …

ドキュメンタリー映画

映画『人生ドライブ』あらすじ感想と評価解説レビュー。熊本県民テレビ発のドキュメンタリーから見える“大家族の絆”

何が起こっても大事なものはここにある。 人生の悲しみも喜びも、思い出も10倍! 熊本県で暮らす岸家は、7男3女の大家族。泣いて笑って全力投球の岸家の21年間を追い続けたドキュメンタリー番組が、劇場上映 …

ドキュメンタリー映画

映画『愛と法』あらすじネタバレと感想。同性婚の弁護士夫夫の日常とは

映画『愛と法』は9月22日(土)よりシネ・リーブル梅田、9月29日(土)よりユーロスペースほか全国順次ロードショー。 2017年の第30回東京国際映画祭「日本映画スプラッシュ部門」作品賞、第42回香港 …

U-NEXT
タキザワレオの映画ぶった切り評伝『2000年の狂人』
山田あゆみの『あしたも映画日和』
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
【連載コラム】光の国からシンは来る?
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【KREVAインタビュー】映画『461個のおべんとう』井ノ原快彦の“自然体”の意味と歌詞を紡ぎ続ける“漁師”の話
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学