“生きるとは、人生を愛するということ”
ドキュメンタリー映画『子どもが教えてくれたこと』に登場する子どもたちは、皆病気を患い治療を受けながら毎日を精一杯に生きています。
家族とのかけがえのないひと時、学校で友達と過ごす貴重な時間。辛く苦しくて泣いた時もあるけれど、瞬時に次の楽しみや喜びを見出します。
そんな子どもたちの言葉や生きる姿は、きっと観る者にパワーを与えてくれます。
映画『子どもが教えてくれたことの作品情報』
【公開】
2018年(フランス映画)
【原題】
ET Les Mistrals Gagnants
【脚本・監督】
アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン
【キャスト】
アンブル、カミーユ、イマド、シャルル、テュデュアル
【作品概要】
監督のアンヌ=ドフィーヌ・ジュリアンは、自分の娘を病気で亡くしています。
病気が見つかってからの日々を綴った『濡れた砂の上の小さな奇跡』(講談社刊)はフランスでベストセラーになり、世界20各国でも翻訳されました。
自らの経験をもとに、子どもたちの持つ力を見事に映し出したドキュメンタリー映画です。
映画『子どもが教えてくれたこと』のあらすじとネタバレ
小学校に通う8歳の女の子アンブル。
彼女はお芝居が好きで、劇の練習を一生懸命取り組んでいます。
彼女の病気は肺動脈性肺高血圧症。どんな時も可愛いリュックが欠かせられません。
リュックには狭くなった肺動脈を拡げる薬剤を定期的に注入するポンプが入っているからです。
体育館で友達と楽しくバトミントンをするアンブル。
「運動はあまりしてはいけないのだけれど、なんとかやっている。だって人生を楽しんでいるから、セラヴィ」と笑顔で語ります。
神経芽種(骨髄)を患うサッカーが大好きな5歳の男の子カミュー。パリ郊外のサッカークラブに入っていて、パパとの日々練習をしています。
チームでなかなかボールを取れないカミュー。
コートでは走って攻めて、ヘトヘトになって泣きそうになっています。
「僕が赤ちゃんだった時に、ママが全部説明してくれたよ」と話すカミューは、自分の病気のことを全て理解し、はっきりと説明します。
撮影当時8歳のティデュアル。彼は胸腔内の交感神経節から発生した神経芽種を患い、3歳の時に腫瘍摘出手術をしています。
「その手術が原因で左右の目の色が違う、グリーンとブラウン」とティデュアル自身が説明します。
お花が好きで、庭のお花の世話をしながら説明します。
「これがチューリップ、これがペチュニア、これは知らない」
アルジェリア生まれの7歳の男の子イマド。数年前に治療のため、フランスに移住し、独特のアクセントでよくお話をします。
慢性腎臓病から腎不全、腹膜透析を自宅でしています。
自分の病気について深く理解し、誰に対しても自分の言葉でわかりやすく話します。
「結婚はしないよ。今はまだ小さいから」大人のような言葉を交わすイマドですが、12時間の透析中静かに横になっています。
顔に絆創膏、長袖の服で覆うように着込む8歳の男の子シャルル。表皮水泡症という肌が弱くなる病気のため、体を包帯で覆っています。
平日は病院で過ごし、週末は自宅に帰ります。病院では、いつも親友のジェソンと一緒に病院を駆け回っています。
「僕たちは病院の部屋全部知っているよ」と嬉しそうに話すシャルル。
5人の子どもたちは、どの子もよく走り回りよく笑っている元気なように見えますが…。
映画『子どもが教えてくれたこと』の感想と評価
この映画の原題『Mistrrals gagnant』(ミストラルギャニョン)は、ルノーの歌うフランスの有名なシャンソンで、幼い我が子への深い想い、2度と戻ってこない幸せな時間を慈しむ切ない名曲です。
だからこそこの邦題『子どもが教えてくれたこと』がぴったりと合うそんな気がします。
この主人公の5人の子どもたちの『子どもが教えてくれたこと』とは、何なのか。
この5人は一人一人が、命に真剣に向き合って日々過ごしているからこそ、大人でも語れない珠玉のメッセージを届けてくれています。
アンブルが、自分の病気を話した後にさらっと笑顔で交わす言葉、
「うまくいかないことがあっても、何とかなるわセラヴィ(それが人生よ)」
家でモルヒネを打ちながら、ピアノを弾いて集中できない自分と向き合うティデュアルの言葉、
「学校に行きたい、ただそれだけなんだ」
小さなベットにぐるぐる巻きにテープに巻かれてペット検査(全身のガンのスキャンする)をやりきるカミューが言いのける言葉、
「死んだら、もう病気じゃない」
小さな哲学者が、見るものに多くの生きる命のメッセージを届けてくれます。
まとめ
本来、“子どもは弱い生き物で、大人が守るべきもの”ではなく、子どもたちの持っている強さや優しさ、そして子どもの力の可能性を信じて、大人が同じ目線で考え行動することだと、気付かせてもらった気がします。
最後に、アンブルのお姉ちゃんが語る言葉があまリにも印象的です。
「子どもはやりたいことをするのが一番いいの。もっと子どもを信じなきゃ」
未来を託す子どもたちの命が輝くために、大人がじっくりと何ができるのか考えさせる映画です。