映画『フィールズ・グッド・マン』は2021年3月12日(金)より全国順次ロードショー!
何の悪意もないユーモラスなキャラクターが、突然「諸悪」の象徴に? ある漫画のキャラクターに起きた奇妙な顛末の経緯を追ったドキュメンタリー映画『フィールズ・グッド・マン』。
インターネットでカルト的人気を誇る漫画『Boy’s Club』の登場キャラクター・ぺぺが、とあるきっかけからインターネット・ミーム(インターネットを通じて人から人へ、模倣的に拡がっていく行為/コンセプト/メディアなど)となり、まったく意図しない認識のされ方をしていく様を追います。
漫画作家という視点を持つと同時に、ジャーナリズムに関連した映像関連の仕事も手掛けてきたアーサー・ジョーンズが本作の監督を務めます。
映画『フィールズ・グッド・マン』の作品情報
【日本公開】
2021年(アメリカ映画)
【原題】
FEELS GOOD MAN
【監督】
アーサー・ジョーンズ
【キャスト】
マット・フューリー、ジョン・マイケル・グリア、リサ・ハナウォルト、スーザン・ブラックモア、サマンサ・ビー、アレックス・ジョーンズ、ジョニー・ライアン
【作品概要】
アンダーグラウンドのアメリカン・コミックのキャラクターである「カエルのぺぺ」をテーマにしたドキュメンタリー。作者マット・フューリーによって生み出されたキャラクターであるぺぺにまつわる数奇な運命を、アニメーションやリサーチの内容などを織り交ぜながら綴ります。
監督は映像作家のアーサー・ジョーンズ。また映像にはフューリー本人やその周囲の人たちとともに、アニメ『トゥカ&バーティー』の企画・製作総指揮を務めたリサ・ハナウォルトや漫画家のジョニー・ライアンらクリエイターも登場します。
映画『フィールズ・グッド・マン』のあらすじ
キャラクターたちのユニークな姿を通して若者たちの日常を象徴的に描いた、漫画家マット・フューリーの『Boy’s Club』。
漫画はアンダーグラウンド界隈で人気を博していた一方、とある回にて、漫画の主人公であるカエルのぺぺが「feels good man(気持ちいいぜ)」というセリフを発した場面が、一つのイメージ画像としてインターネットの掲示板やSNSで拡散されていきます。
やがてぺぺはインターネット上のミームの一つとなり、2016年のアメリカ大統領選時には匿名掲示板「4chan」などで人種差別的なイメージとして拡散されてしまいます。
さらにはユダヤ人組織の名誉毀損防止同盟からヘイトシンボルに認定されたり、トランプ大統領の当選にも関わったりと、キャラクターの生みの親・フューリーのまったく予想だにしない方向へと引っ張られ続けます……。
映画『フィールズ・グッド・マン』の感想と評価
ネット社会と創作の今を描くドキュメンタリー作品
映画『フィールズ・グッド・マン』は、インターネット環境の急速な拡大により、クリエイターが生み出した作品を容易に広く伝えることができるようになった現代において、逆に危惧しなければならないものが生じたという事実を、一つの例を用いてユーモラスに、また同時に辛辣にも描いています。
物語のキーマンとなるフューリーやその周辺の人々、関係者へのインタビューとさまざまなリサーチの内容、そして意図せずして「インターネット・ミーム」と化してしまったぺぺを描いたアニメーションなどで構成された本作。
アーサー・ジョーンズ監督はマット・フューリーと同じく、インターネットを作品発表の場として漫画家活動を行っていることから、漫画家としての観点でも一連の出来事を捉えており、かつ国際ジャーナリスト企業などでの仕事経験もあることから、監督としては本作がデビュー作でありながらも、一連のテーマを的確に、そして鋭く描写しています。
一方で、この作品におけるぺぺを取り巻く出来事の特徴は、大きな主題として製作陣側の主観で構成し、そのフッテージを一つの作品として組み上げている点にあります。
その主題とは、表現者が生み出したものが一人歩きするうちに奪われ、まったく意図しない方向へと進んでいく中で「怪物」と化すということ。
そしてこの主題に対し、「ここが問題」という要因を敢えてまとめていないことが重要なポイントとなります。その意図としてはやはり、見る側の人たちにこの問題を深く考えてもらいたいという点にあるようです。
現代は同様の出来事がさまざまなケースで起こりつつあり、人それぞれの観点でこの問題を見つめてもらう必要がある状況の中、このような形で一連の出来事を取り上げて現象を提起することは、非常に大きな意味のあるものでもあります。
特に日本のアニメブームを発端に漫画、アニメという文化が世界中に拡がりつつある現在において、クリエイターの作品が一人歩きしてしまうケースへの危惧が日々高まりつつある中、本作で取り上げられた要点はなおさら注目、注意していくべきものであると言えるでしょう。
まとめ
ぺぺというキャラクターに愛らしい表情があり、作者もそれを意図して描いたという事実がある中で、この映画で語られる実際の出来事はクリエイターの立場からするとショッキングである一方、その活動の難しさと覚悟の必要性を改めて感じさせられるものです。
この覚悟こそが、物語の結論と言えるものかもしれません。物語はフューリーが作品を書き上げて発表したことから展開を始めますが、それは企業や政府などの大きな力に左右されないインターネットの掲示板サイトによって、作者が予想だにしない方向に振られていき、エスカレートしていきます。
その経緯は、ついには政治の一端にすら利用されてしまうという、作者がまったく意図しない、望まない方向に進んでしまうわけです。
物語ではさまざまな事件からその問題点を挙げています。物語を見たクリエイターが帰着する結論として、現代における「メディア」というものの在り方に対する警鐘を鳴らしています。
同時に、まさしく「こういったことが起こる可能性がある」ということを「創作」に関わり触れる者たちへと再認識させ、だからこそ覚悟をもって「創作」に関わり触れ続けてほしいと示しているようでもあります。
映画『フィールズ・グッド・マン』は2021年3月12日(金)より全国順次ロードショーされます!