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映画『栄光のマイヨジョーヌ』あらすじネタバレと感想。自転車ロードレース大会や選手を知る渾身の一作

  • Writer :
  • 西川ちょり

人生は最大に楽しむためにある

オーストラリアのプロ・サイクリング・ロードレースチーム「グリーンエッジ」に密着したドキュメンタリー映画『栄光のマイヨジョーヌ』。

2012年に発足した新しいチームに携わる人々のインタビューと豊富なレース映像で構成され、スポーツとしての面白さと選手たちの人間的魅力が同時に伝わる優れたドキュメンタリー映画です。

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映画『栄光のマイヨジョーヌ』の作品情報


(C)2017 Madman Production Company Pty Ltd

【公開】
2020年公開(オーストラリア映画)

【原題】
All for One

【監督】
ダン・ジョーンズ、マーカス・コプレディック

【キャスト】
エステバン・チャベス、サイモン・ゲランス、マシュー・ヘイマン、フィル・リジェット、ロビー・マックウェン、ニール・スティーブンス

【作品概要】
オーストラリアのプロ・サイクリング・ロードレースチーム「グリーンエッジ」に2012年の発足から5年に渡り密着したドキュメンタリー映画。チーム関係者や選手のコメントを交えながら、当時の豊富なレース映像を元に、チームや個々のメンバーに起こった様々な困難やそれらを乗り越えた劇的な勝利など感動の様子が綴られる。

映画『栄光のマイヨジョーヌ』あらすじとネタバレ


(C)2017 Madman Production Company Pty Ltd

2010年のツール・ド・フランス。どの国の車も国旗がついているのですが、そこにオーストラリアの国旗はありません。オーストラリア⼈ビジネスマンで起業家のジェリー・ライアンは⾃分のチームを作ろうと思い立ちます。

彼は、オーストラリア初のワールド世界ツアー出場レベルのサイクルロードレースチーム「グリーンエッジ」を誕生させます。ディレクターにはマシュー・ホワイト、ニース・スティーブンスを迎えました。

オーストラリア、メルボルン出身のサイモン・ゲランスはチームの空気を作っている選手です。彼は幼い頃から水泳選手として活躍していましたが、ある時、力不足だから他の競技へ移ったほうがよいと通告されてしまいます。

自転車競技と出会ったサインモンはめきめきと力をつけ、フランスのチームで活躍。数々の輝かしい勝利を勝ち取ってきました。彼を中心に最初の年は30人の選手が集まりました。

2012年3月、イタリアにおける世界最高のワンデイレース「ミラノ~サンレモ」で、スター選手ファビアン・カンチェラーラをかわしてゲランスが優勝。初出場にして快挙を成し遂げたチームは歓喜に包まれます。

チームはグランドツアー中にミュージックビデオの⼝パクや選手たちの普段の陽気な生活を紹介する動画「マイ・ピース・オブ・ザ・ワールド」を配信して人気を集めていましたが、このときのチームが歓喜する姿は全てYouTubeにあげられ、ファンと歓びを分かち合いました。

その勢いで臨んだフランスの伝統あるワンデイレース「パリ~ルーベ」でしたが、こちらはベルギー人のトム・ボーネンに優勝をかっさらわれてしまいました。

2012年6月のツール・ド・フランスでは初出場で第一ステージ優勝を飾ります。

2013年、2度目のツールでは、第一ステージでチームのバスをフィニッシュに移動させる際、ゲートにぶつかりアーチを落として立ち往生するというハプニングが起こります。選手がフィニッシュに飛び込んでくるのを邪魔することになり、あと4分半というところであやうくバスを退けることができました。

ゴールやスプリントが台無しになりかけるという珍事を起こしたことで、嘲笑の対象になってもおかしくありませんでしたが、チームはチームタイムトライアルで最速タイムをマークし、サイモン・ゲランスが名誉あるマイヨジョーヌを獲得します。

その後、ゲランスはチームメイトのダリル・インピーに自らのマイヨジョーヌを譲る走りをみせて、インピーは南アフリカ人で初の、そしてアフリカ大陸出身者としても初のマイヨジョーヌとして名前を残すこととなりました。

マイヨジョーヌを譲ったことは多くの人に驚きを与えましたが、「チームメイトだから助け合うのは当然だ」とサイモン・ゲランスは応えます。

コロンビア出身のエステバン・チャベスは若くして才能を発揮し、その名を知られることとなりましたが、事故により複雑骨折を起こし、腕が思うように動かず、神経の移植手術を受けるほどの重症を負っていました。

どん底にあったチャベスに声をかけたのが「グリーンエッジ」ディレクターのニースでした。復帰のチャンスを与え、チームに合流したチャベスもそれに応え、英語がわからない中懸命にチームに溶け込もうと努力します。

2015年にはレースに復帰。集団やレースで走るのが怖かったと語ります。2016年のブエルタ・ア・エスパーニャではチームのリーダーに選ばれ、見事区間優勝を果たします。チャペスの父は、息子の人生を取り戻してくれたとチームに感謝するのでした。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『栄光のマイヨジョーヌ』ネタバレ・結末の記載がございます。『栄光のマイヨジョーヌ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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アシストとしての走りに徹してきたベテランのマシュー・ヘイマンにとってパリ〜ルーベは特別な意味を持っていました。勝利を狙っていこうと決心した矢先、落車に巻き込まれ腕を骨折。全治6週間~8週間と診断されます。パリ〜ルーベまで5週間しかなくチャンスは潰えたように思えました。

彼は出場を訴え、彼にとってパリ~ルーベがどれだけ大事かということに気づいたディレクターが出場を認めました。ヘイマンは、ローラー台での練習だけのほぼぶっつけ本番でルーベに出場。

最初から飛ばし一時はトップに立ちますが、他チームの選手にぶつけられた瞬間、体制を崩し、チャンスはついえたように見えました。彼自身、この瞬間が悔しい思い出として一生ついてまわることになるだろうと覚悟したそうです。

しかし、彼は選手生活14年間の怒りをバネにしてそこから驚異的な粘りを見せ、トップに追いつき、混戦を制し、勝利します。

当初、オーストラリア人のチームを作ろうと始まったチームは、様々な国の選手を迎えることで、それぞれの文化に触れ、大きく成長していきました。

チャベスは言います。「全員が同じスピリットを持ち合わせている。人生は最大に楽しむためにある。自分たちはレーサーである前に人間だ。このチームはとても人間らしい」

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映画『栄光のマイヨジョーヌ』の感想と評価


(C)2017 Madman Production Company Pty Ltd

自転車ロードレースについては、漫画『弱虫ペダル』や近藤史恵の自転車ロードレース・ミステリー小説「サクリファイス」シリーズを通じて、馴染みのある方も多いでしょう。

タイトルにある「マイヨジョーヌ」とは、自転車ロードレースで最も大きな大会とされるツール・ド・フランスで、各ステージ終了後、総合成績一位の選手が着る黄色いジャージーのことです。

ツール・ド・フランスはマイヨジョーヌを巡る戦いであり、黄色はツール・ド・フランスを象徴するカラーとされています。

その大会にオーストラリアの代表が出場することを夢見て、オーストラリア⼈ビジネスマンで起業家のジェリー・ライアンが立ち上げたチームが「グリーンエッジ」です。

欧州のチームで活躍していたベテラン選手や、若手の勢いある選手が、タイムや成績だけでなく、チームにふさわしい人材かという人間性を重視して選出されました。

フランス、スペイン、イタリア、ベルギー、コロンビア、南アフリカ、アメリカ、オーストラリアで撮影されたド迫力の映像が最大の見ものです。

自転車ロードレースは優雅なスポーツに思われがちですが、非常に過酷な格闘技でもあります。集団で全力で走る中、誰かが転倒し、それに巻き込まれる姿は痛々しく、ときに選手たちは選手生命を脅かすくらいの大怪我を負います。

「グリーンエッジ」の闘いは劇的で、漫画や小説にすると「さすがにこれはありえないだろう」と言われるのではないかと思われるほど、鮮やかな勝利をものにしてチームやファンは歓喜に湧きます。

特に後半のエステバン・チャベスとマシュー・ヘイマンに焦点をあてたパートでは、人間の諦めない気持ちや目標への絶え間ない努力が本当に成果として実るのだという瞬間を見せられ、胸にせまってきます。

また、チームの要のサイモン・ゲランスはマイヨジョーヌをチームメイトに譲る走りを見せ、南アジア出身のダリル・インビーに栄冠を与えます。

選手ひとりひとりが自らの目標を達成していくだけでなく、仲間を信じてチームの一員に徹する姿はとても美しく感動的です。

まさに汗と涙と根性と友情の物語として、「栄光のマイヨジョーヌ」は、スポーツの素晴らしさとそれに打ち込む選手たちの姿を私たちにみせてくれるのです。映画の原題はずばり、「ALL FOR ONE」です。

しかし、「グリーンエッジ」及び映画の魅力はそれだけではありません、このチームでユニークなのは、徹底的に「楽しむこと」を肝に命じているところでしょう。

チームはグランドツアー中にミュージックビデオの⼝パク(カーリー・レイ・ジェプセンの「Call Me Maybe」に合わせて)や料理などのメンバーたちの日常生活や、競技中には観られない素顔を紹介する動画「マイ・ピース・オブ・ザ・ワールド」を配信し、人気を博しています。

本作の監督ダン・ジョーンズはチーム結成当時から、専属のビデオグラファーとしてチームに帯同してきました。ヘルメットをはずした際の選手たちの素顔や、選手たちをささえるメカニックの視点など、レースの中継では観られないような人間味溢れる映像が受け、グリーンエッジのチャンネルはYouTubeで最も人気のあるサイクリングチャンネルの一つになっています。

このようなチャンネルをチーム発足時代から儲けていたというのは、まさにSNS時代の戦略といえます。

新しいチームであるだけに、こうした親しみやすい映像が、チームに親近感をもたらし、人々を引きつける重要な役割を果たしたのは間違いありません。

まとめ


(C)2017 Madman Production Company Pty Ltd

ダン・ジョーンズ監督は、2000年代初頭にメルボルンの映画学校で映像を学び、学生時代の2005年にツール・ド・フランスの長編映像の撮影したのをきっかけに、自転車ロードレースの虜となったそうです。

本作はビデオグラファーとしてチームに5年間帯同した彼の集大成的作品となっています。豊富な映像と、メンバーやスタッフのインタビューを交えて作り上げられた作品はスポーツドキュメンタリーとしてもすこぶる面白いものに仕上がっていますが、同時に人間ドラマとしても、深く心に染み入る作品となっています。

自転車ロードレースファンの人は勿論のこと、そうでない方にもおすすめできる素晴らしいドキュメンタリー映画です。

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