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Entry 2020/02/18
Update

『アントラム/史上最も呪われた映画』ネタバレあらすじと感想。結末はフェイクか実話か観たら死ぬ!?

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

映画『アントラム/史上最も呪われた映画』は2020年2月7日より公開。

1979年に製作され、関わる者が次々と命を落とす呪われた映画『アントラム』。

1993年に行方不明になったこの作品を入手した、2人のドキュメンタリー作家が、呪われた映画の真相に迫るドキュメンタリー映画『アントラム/史上最も呪われた映画』。

呪われた映画に隠された、真実に迫る本作の内容をご紹介します。

映画『アントラム/史上最も呪われた映画』の作品情報

映画『アントラム/史上最も呪われた映画』

【日本公開】
2020年(カナダ映画)

【原題】
Antrum: The Deadliest Film Ever Made

【監督・製作】
マイケル・ライシーニ、デビッド・アミト

【キャスト】
ニコール・トンプキン、ローワン・スミス、サーカス=サレフスキ、ダン・イストラーテ、シュウ・サキモト、クリステル・エリング

【作品概要】
1979年に製作されたと言われる、カルト映画『アントラム』。

その内容は「幼い姉弟が地獄の扉を開く」という事以外は不明でしたが、ドキュメンタリー作家のマイケル・ライシーニとデヴィッド・アミトが、行方不明になっていた『アントラム』の35ミリ・フィルムを入手。

関係者の証言を交えながら、呪われた映画の本編を公開します。

映画『アントラム/史上最も呪われた映画』のあらすじとネタバレ

映画『アントラム/史上最も呪われた映画』

1979年に製作された映画『アントラム』。

この作品を1988年に上映したハンガリーの映画館は、上映中に原因不明の火災が起き、56人が死亡するという悲劇的な事件が発生しています。

また、自身の映画祭で『アントラム』を上映しようとした映画祭の主催者、ジャネット・ヒルバーグは映画を見た24時間後に死亡。「『アントラム』は上映するな」と言い残していました。

その後も、自身の主催する映画祭で『アントラム』を上映しようとした主催者が次々と命を落としている事から、『アントラム』は「呪われた映画」と呼ばれるようになります。

そして、1993年に、呪われた映画『アントラム』の上映イベントが開催されます。

『アントラム』の上映が始まった瞬間、観客全員が発狂を始め、映画館内が暴動状態となり、30名の死傷者を出してしまいました。

そして、1993年以降『アントラム』のフィルムは行方不明となっていましたが、長年この作品を追い続けていた、マイケル・ライシーニとデビッド・アミトの、2人のドキュメンタリー作家が入手します。

2人は『アントラム』の事をよく知る、映像クリエーター達に作品の鑑定を依頼し、『アントラム』には、何者かの手による細工が行われている事が判明。

そして、呪われた映画『アントラム』が、40年のベールを脱ぎます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『アントラム/史上最も呪われた映画』ネタバレ・結末の記載がございます。『アントラム/史上最も呪われた映画』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

映画『アントラム』は、幼い姉弟が飼っていた愛犬が安楽死する場面から始まります。

弟は「愛犬は天国に行った」と信じますが、母親は「悪い犬だったから、地獄へ堕ちた」と言い放ちました。

弟は落ち込みますが、姉が「ある儀式をする事で、魂に出会える」と提案し、姉弟は山奥でキャンプを張り、愛犬の魂に再開する為に地獄へ通じる穴(アントラム)を掘り始めます。

穴を掘り進めている内に、弟が地獄の番犬である、ケルベロスの存在を感じ始めるなど、様子がおかしくなっていき、姉は不安を感じるようになりました。

穴を掘り進めて数日後、姉弟は近隣を探検し、ある民家に辿り着きます。

その民家には2人の男が住んでおり、悪魔を連想させる、ヤギの頭をした巨大な蒸し器に人を入れていました。周囲に頭がい骨が落ちている事から、2人の男は蒸した人間を食べているようです。

身の危険を感じた姉弟は山奥から逃げ出そうとしますが、どんなに逃げても再び穴を掘っていた場所に戻されます。

弟は悪魔の存在を感じますが、弟の異変に耐えらなくなった姉は「儀式も悪魔も全て嘘」と伝えます。「知っていた」と答える弟。

直後、ケルベロスと思われる存在に襲われ、姉弟は木の上に逃げ込みました。

次の日の朝、食人の男2人が現れ、姉弟を連れ去ります。弟が蒸し器の中に入れられますが、姉が拾った拳銃で弟を助け出し、2人の男を射殺。

その後、森の中を歩く弟は、怪我をした犬を救います。

そこで唐突に「THE END」の文字が現れます。

ですが、映画『アントラム』はまだ続くようで、突然、画面の中央に三角形が現れます。

そして、姉が森の中で、消えた弟を探す場面が始まりますが、先程の三角形は薄く画面の中央に残っています。

弟が見つからず、テントの中で泣き続ける姉は、テントの外で音がする事に気付きます。

姉は、テントの外の存在に銃を向けます。

すると、フィルムがおかしくなり、画面が真っ暗になった後、不気味な男が画面の中央に出現し、我々観客の方を指差します。

それが、映画『アントラム』の全ての映像です。

他の映画と違い、不気味な点は以下の3つです。

1.音楽や劇中の音が不快に感じる。
2.画面の中に「五芒星」と思われるマークが、サブリミナル効果のようにいろいろな場面で現れる。
3.映画の最後に、物語と一切関係の無い男が現れ、こちら側を指差してきた。

マイケル・ライシーニとデビッド・アミトは科学的な見地から、映画『アントラム』を分析しました。

その結果、作中の音の中に、人間が不快に感じるよう調整された、ノイズが入っている事が分かります。

また、作中のいたる所に、悪魔崇拝を意味する「逆五芒星」が挿入されていました。

「THE END」の後に出現した三角形は、聖書で「三位一体」を意味する印である事も判明。

精神学の教授に「サブリミナル効果が、人を動かす可能性」について取材をします。

教授は「そんな事は、ありえない」としながらも、過去に強大な呪いの力を持っていた男が実在した事を話し「これぐらい、強い力が動けば可能性はある」と話します。

教授は、その男の写真を紹介します。

写真に写っている男は、映画の最後に、我々を指差していた男でした。

映画『アントラム/史上最も呪われた映画』感想と評価

1979年に製作され、関わる人間が次々と命を落とす、呪われた映画として知られる映画『アントラム』。

本作は、映画『アントラム』のフィルムを入手した、2人のドキュメンタリー作家が、呪われた映画の真相に迫るという、フェイク・ドキュメンタリーです。

『アントラム』本編が始まる前に、「ここから先、全ての映像を見た方に、何が起きても責任は取りません」と注意書きが表示され、呪われた映画の雰囲気を盛り立てています。

作風的には、「本当にあった呪いのビデオ」シリーズを連想させる内容で、「本当にあった呪いのビデオ」シリーズの、スペシャルなどに「自己責任で見てください」という、関わった人間が、全員失踪したと言われる動画が入っている事がありますが、作品の方向性は同じです。

ただ、「本当にあった呪いのビデオ」シリーズの動画は短いですが、『アントラム』は映画なので、結構長い間、映像を見なければなりません。

作中のドキュメントパートに登場する、『アントラム』の事をよく知る映像クリエーターも「作品自体は、怖くも面白くない」と言っていますが、『アントラム』の映画本編は、本当に特に面白くありません。

ですが、作中に100ヵ所以上も挿入されている「逆五芒星」や、たまに流れる不快な音が、どんどん何とも言えない、不安な気持ちにさせてくる映画です。

作品の内容も、悪い夢を見ているような内容なので、この不快感は短い動画ではなく、ある程度長尺で、独自の世界を展開できる映画だからこそ、表現可能な独特の不快感です。

特に後半の、唐突に「THE END」の画面が現れた後の、理解不能とも言える展開は「何か見てはいけないものを、見てしまっている」感覚に陥ります。

この不快感や、独特の感覚に陥る謎は、エンドロールで究明されます。

この辺りの流れは、フジテレビで過去に放送され、劇場版も製作された「放送禁止」シリーズに近い流れとなっています。

そして、全てが解明されたこそ、感じる恐怖。

ここが、本作最大の魅力となっています。

フェイク・ドキュメンタリーは、映画としての評価が難しい部分がありますが、少なくとも、前述した「本当にあった呪いのビデオ」シリーズや、「放送禁止」シリーズが好きな方は、間違いなくおススメしたい作品となっています。

まとめ

参考動画:映画『アントラム』除霊式でまさかの除霊失敗、衝撃の一部始終!!

フェイク・ドキュメンタリーの傑作と言えば、1999年の『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』が有名ですが、当時から「これは、映画なのか?」という論争が起きました。

フェイク・ドキュメンタリーというジャンルは、予算に関係なく、アイデアだけで勝負できる部分が魅力です。

特に2008年の『クローバーフィールド/HAKAISHA』は、作品本編だけではなく、公式のWEBサイトも「実際にあった事件」として扱っており、映画では描かれていない事件の始まりを、ユーチューブで「謎の動画」として公開するなど、本気で騙しにきている姿勢が大好きでした。

映画『アントラム/史上最も呪われた映画』も、フェイク・ドキュメンタリーなので、確実に人を選ぶ作品です。

『アントラム』自体は、本当に面白くないので、苦痛に感じる方もいるかもしれません。

ですが「『アントラム』は悪魔が細工をした映画」というアイデアは面白いですし、その映画を、実在したかのように扱っているこの作品は、何か印象に残り、忘れられない作品となりました。

前述したように、フェイク・ドキュメンタリーの魅力は、アイデアだけで勝負できる部分です。

その心意気を感じて、フェイク・ドキュメンタリーに、あえて乗っかる事も、映画の1つの楽しみ方ではないでしょうか?

『アントラム』が全て嘘だと、誰も証明していないので、もしかすると、本当に呪われてしまったかもしれないですしね。

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