映画『記憶にございません!』は2019年9月13日(金)より全国ロードショー公開!
脚本家・演出家・映画監督として、数多くの笑いあり涙ありのコメディ作品を手がけてきた三谷幸喜。
彼の通算8作目となる長編監督作品は、初の政治モノです。
構想13年を経て完成を迎えた作品に集ったのは、主演を務めた中井貴一をはじめ、ディーン・フジオカ、石田ゆり子、草刈正雄、佐藤浩市、小池栄子、斉藤由貴、木村佳乃、吉田羊といった豪華キャスト陣。
裏と表、欲望と権力にまみれた政治の世界を舞台に、時にリアルに、時に寓話的に描かれた物語が展開されます。
映画『記憶にございません!』の作品情報
【公開】
2019年(日本映画)
【脚本・監督】
三谷幸喜
【キャスト】
中井貴一、ディーン・フジオカ、石田ゆり子、草刈正雄、佐藤浩市、小池栄子、斉藤由貴、木村佳乃、吉田羊
【作品概要】
三谷幸喜による通算8作目となる長編監督作品。
「もしも自分が、ある日突然総理大臣になったら……?」という空想から端を発する、三谷監督のオリジナルストーリーです。
主演の中井貴一を筆頭に、ディーン・フジオカ、石田ゆり子、草刈正雄、佐藤浩市、小池栄子、斉藤由貴、木村佳乃、吉田羊と主役クラスの俳優陣が集結しました。
映画『記憶にございません!』のあらすじとネタバレ
病院のベッドで一人の男が目を覚まします。
おでこには傷が一つ。そして男は、自分がなぜここにいるのかが思い出せません。
彼の名前は黒田啓介。総理大臣に就任したものの史上最低の支持率2.3パーセントを叩き出し、自身を嫌う多くの国民からは「史上最悪のダメ総理」とまで呼ばれるほどの悪徳政治家でした。
「総理が記憶喪失になってしまった」。黒田の政治家生命が終わりかねないこの事実は、首席秘書官の井坂ら三人の秘書官のみが知る事実として扱われ、総理の家族にも秘密で通すこととなりました。
記憶を失うまでは口も悪く、不遜な態度で汚い仕事にも手を出していた黒田ですが、今は自分が総理であることすら信じられないような状況です。
そんな彼のもとに次から次へとトラブルが襲い掛かります。
舌鋒鋭く黒田を糾弾し続ける野党第二党の女性党首・山西に呼び出されてみれば、実は二人が愛人関係であったことが発覚。怪しげなフリーライター・古郡からは、何のネタなのかも分からないままゆすられ続けるなど、何もかも忘れてしまっている黒田には耐え切れないほどのトラブルばかりです。
特に厄介なのが、政権内の最高実力者である鶴丸官房長官と間もなく来日する予定のスーザン大統領です。
表向きは総理を立てている鶴丸ですが、内面では軽く扱っています。その状況を井坂たちは面白く思っていません。
ただその井坂も、総理夫人であり黒田の妻である聡子と不倫関係にあったりと、必ずしも清廉潔白ではありません。
政治家になってからの記憶を失っている黒田は小学校時代の恩師・柳を呼び出し、社会の、そして政治の仕組みについての授業を依頼。記憶と共にすべてのしがらみを無くした黒田は、イチから現在の政治をやり直すことを決意します。
アメリカ初の日系女性大統領であるスーザン大統領との会談では、相手の顔色を一切気にしない黒田の態度がかえって正々堂々隠し事のない姿として捉えられ、大統領との関係は好転します。
映画『記憶にございません!』の感想と評価
「今回の三谷幸喜は、どうしたのか?」と思ってしまうほど、この映画は抜群によくできています。
今までの作品では、どうしても映画の本筋の邪魔をしてしまうようなギャグパートなどがあったものですが、今回はそれが目につかず、そのような場面があっても全てが有機的に繋がっているように感じました。
他作品では主役を演じられるほどの豪華すぎるメインキャスト以外にも、山口崇、田中圭、梶原善、寺島進、藤本隆宏、迫田孝也、ROLLY、後藤淳平(ジャルジャル)、宮澤エマ、濱田達臣、有働由美子といった多種多様な面々が、時には意外な場面で登場します。
こうなると、映画として目につく部分ばかりで本筋を邪魔してしまいそうですが、今回はこのようなキャストの「遊び」も映画を邪魔していません。
上映時間は127分であるため、映画全体の尺を刈り込んでスリムになったわけでもなさそうですが、冗長に感じる部分がほとんど感じられません。
三谷作品初参加となるディーン・フジオカが話をタイトにする役割を担っている部分も大きいと思いますが、今までの三谷幸喜監督作品を「食わず嫌い」していた人ほど鑑賞していただきたい作品に仕上がっています。
まとめ
三谷幸喜が描いた「総理大臣」といえば、彼が脚本を務めた田村正和主演のテレビドラマ『総理と呼ばないで』(1997)があります。総理大臣のキャラクターを筆頭に、本作の登場人物たちなどとの共通点が多く見受けられる作品です。
ただ『総理と呼ばないで』は、やはりテレビドラマということもあり、本筋から少し離れたエピソードも多数盛り込まれていました。
一方、今回劇場公開を迎える『記憶にございません!』は、「映画」という決められた時間枠によって脇道に逸れることもなく、「一人の総理大臣の再生の物語」という一本の物語に焦点が絞られたことでより「コメディ」としての純度が高い作品へと昇華されています。
各キャストの「コメディ」としての演技/演出表現も含めて、すべての要素が高いレベルで描かれているのです。
『記憶にございません!』は、今までの三谷幸喜監督作品からひと回りふた回りもグレードアップされた完成度の高いコメディ映画です。