マット・デイモン主演の社会風刺の利いたコメディ映画『ダウンサイズ』
映画「オーシャンズ」シリーズや『オデッセイ』などで、誰もが知るマッド・デイモンを主演に迎えた『ダウンサイズ』。
アクションやSF、ヒューマンドラマなど、数多くの作品に出演してきた彼が本作で演じた役柄は、人類を13㎝にしてしまう⁈という世紀の大発明によって運命を翻弄されてしまう主人公を描いた、コメディ要素もありながらも人生について考えさせられるロードムービー!?
ブラックジョークやユーモア満載の映画『ダウンサイズ』についてご紹介します。
映画『ダウンサイズ』の作品情報
【公開】
2017年(アメリカ映画)
【原題】
Downsizing
【脚本・監督】
アレクサンダー・ペイン
【キャスト】
マット・デイモン、クリステン・ウィグ、クリストフ・ワルツ、ホン・チャウ、ウド・キア、ジェイソン・サダイキス、ニール・パトリック・ハリス、ローラ・ダーン、ロルフ・ラスゴード、イングイェルド・エーゲベルグ、ソーレン・ピルマーク
【作品概要】
アカデミー賞脚色賞を受賞した映画『ファミリー・ツリー』や『サイドウェイ』などで知られる監督、アレクサンダー・ペインが脚本・監督を務めた、13㎝に縮小した人々とその世界を描いたコメディ映画。
縮小することで財産が82倍になるという「人類縮小プロジェクト」に惹かれたポールの待ち受けた運命を描いた作品です。
キャストは数多くの有名作品にて主演や助演を務めてきた、誰もがご存知のマット・デイモンのほか、『オデッセイ』にてマットと共演を果たしたクリステン・ウィグ、『イングロリアス・バスターズ』や「007」シリーズの『スペクター』で悪役を演じた、オスカー俳優クリストフ・ワルツが共演しています。
映画『ダウンサイズ』あらすじとネタバレ
時は15年前。ノルウェーのとある場所で、一人の博士が生物を縮小化させる実験を成功させました。
それから5年の月日が流れ、遂にその実験は人体でも成功を収めます。
研究の第一人者であった博士は自分自身をも縮小化させ、その成功を学会で発表しました。
人類を縮小化させることで、食糧問題や環境問題、さらには人類増加問題を解決するだけでなく、縮小化した人々は自分らの消費量が大幅に削減できるようになるため、誰もがうらやむような贅沢な生活ができるというのです。
そのニュースは世界各国で報道され世界中の人々の注目を集めていました。
更に時は流れ、10年後。
”ダウンサイジング”は一般社会でも普及してきており、贅沢な暮らしを手に入れようと縮小化することを選ぶ人達は増えていきました。
主人公のポール・サフラネックはその頃、愛する妻のオードリーと夫婦生活を送っていましたが、作業療法士として働くポールの稼ぎは満足する程とは言えず、夫婦共働きで暮らすも未だにポールの実家での暮らしが続いていました。
新居の購入を計画するも住宅ローンの審査に通ることもできず、夫婦の生活は決して楽なものではありませんでした。
そんなある日。ポールとオードリーは出席した高校の同窓会で、縮小したかつての友人夫婦に出会います。
そこで彼等の贅沢な暮らしっぷりを聞き勧められたポールとオードリーは、ダウンサイジングした人々らのための施設「レジャーランド」の見学に行くことにします。
そこで2人は、少ない財産でも夢に描いたような贅沢な暮らしをしている縮小した人々の姿を目の当たりにし、自分達も遂にダウンサイジングすることを決意します。
お互いに不安は残っていたはものの、ダウンサイジングが実施される当日を迎えました。
施術には様々な工程が必要になるため男女別に部屋に案内されることになり、まずはポールが先頭をきることになります。
全ての工程を終え、目を覚ましたときにはすでに縮小化していたポール。そこですぐにオードリーから一本の連絡が入ります。
なんとオードリーは縮小工程の段階で怖気づいてしまい、ポールを置いて一人縮小化を中断してしまったのでした。
一度縮小したら元には戻ることができないため、ポールは自分一人だけが縮小してしまったのでした。
それから1年後。ポールはオードリーと離婚し、夢に描いていたような豪邸を手に入れるも、何もかもの希望を失っていたため冴えない日々を送っていました。
そんな暮らしを続ける中、いつもパーティーばかりする隣人の騒音に迷惑していたポール。
ですが恋愛もうまくいかずムシャクシャしていた彼は、ある日その隣人のパーティーに参加することにします。
隣人のドゥシャンはパーティー好きなチャラチャラした男でしたが、ポールはすっかり彼に気に入られ、彼からダウンサイジングについての魅力について聞かされます。
映画『ダウンサイズ』の感想と評価
小さくなった人々から学ぶ、人生で一番大きなものとは
予告編がコミカルに制作されいたことから、コメディ映画かと予想されていた本作でしたが、いざ作品を全て観終わってみると、そこには鑑賞前では予想もしていなかった人生について考えさせられるほどの感慨深さが残りました。
確かに縮小するまでの過程は見ていてとても愉快です。
縮小化するためには、全身のあらゆる毛を全てそり落とし、金歯や銀歯などは全て抜歯する、そして最後には浣腸までほどほさなければならないというルールが設けられていることも可笑しな設定ですね。
通常の身体の大きさでは社会的に満足のいかない生活を送っていた人々が、小さくなることで贅沢に優雅に生活しているとは言えど、結局は通常サイズの物体の欠片でその生活を楽しんでいるのですから、さすがは社会風刺を描くのが上手いペイン監督かな、という風に感じました。
ですが前途したように、この作品はコメディ作品というよりもどちらかというと大人向けなロードムービーであると言えると思います。
縮小することで今の生活から脱出できると期待していた主人公ポール。
しかし、いざ縮小し夢のような豪邸を手に入れようとも、そこには自分と同じ大きさの世界があり、そして人もあり、小さくなろうとも周囲は何も変わらないどころか、自分自身は何も変わってはいないのです。
それでもポールは、幸せになるためにダウンサイジングを選びました。
そこでドゥシャンに出会い、作業療法士であったからこそノク・ランと出会うことができたのです。
そんな彼らとの出会いを通して、元の身体の大きさの頃には想像もできなかったような運命を導くことになり、最後には自分自身が本当に求めていた幸せとは何かに気付き、初めて自分で選択した人生を歩み始めるのです。
人生に対する人間の悩みや葛藤が上手に映画に盛り込まれていて、自分らしさを失っていると感じている方や、人生において大切なものが何か悩んでいる方々へ、ぜひオススメしたい作品のひとつですね。
まとめ
映画『オデッセイ』や「ボーン」シリーズ、「オーシャンズ」シリーズなど、逞しくて男性の印象の強いマット・デイモンですが、『ダウンサイズ』では、それらを感じさせない普通の冴えない中年男性を好演しています。
また、ノク・ラン・トランを演じたベトナム人の女優ホン・チャウは、この作品でゴールデングローブ賞助演女優賞などの賞に既にノミネートされており、彼女の演技力は多くの観客を引き付ける魅力があります。
彼女が演じるノク・ランの真っすぐな性格だけでなく、ギコチナイ英語の台詞のひとつひとつがストレートで、強く心に響くものがありました。
クリストフ・ワルツが演じたドゥシャンは、癖の強いユニークなキャラクターでしたが、さすがはオスカー俳優のクリストフ。納得のハマリ役だったと思います。
本作はダウンサイジングが可能となった世界をコミカルに描きながらも、小さな人々を通して人生の大きなものを教えてくれる映画です。