映画『だれもが愛しいチャンピオン』は2019年12月27日(金)より全国公開
プライドの高いバスケットコーチと、知的障がい者のバスケットボールチームのメンバーとの絆を描いたヒューマンドラマ、映画『だれもが愛しいチャンピオン』。
「スペインのアカデミー賞」と呼ばれる「ゴヤ賞」で3部門を受賞した他、オーディションに合格し本作で俳優デビューを果たした、ヘスス・ビダルが、障がいのある俳優として史上初となる「ゴヤ賞新人男優賞」に輝くなど、話題となっています。
スペイン映画で「年間興行成績1位」にも輝いた、映画『だれもが愛しいチャンピオン』の魅力をご紹介します。
CONTENTS
映画『だれもが愛しいチャンピオン』の作品情報
【公開】
2019年公開(スペイン映画)
【原題】
Campeones
【監督】
ハビエル・フェセル
【脚本】
ダビド・マルケス、ハビエル・フェセル
【製作】
ガブリエル・アリアス・サルガド
【キャスト】
ハビエル・グティエレス、ホアン・マルガリョ、アテネア・マタ、セルヒオ・オルモス、フラン・フエンテス、フラン・フエンテス、ロベルト・チンチージャ、ホセ・デ・ルナ、ステファン・ロペス、フリオ・フェルナンデス、ヘスス・ビダル、ヘスス・ラゴ・ソリス、アルベルト・ニエト、グロリア・ラモス、ルイス・ベルメホ、ビセンテ・ヒル、イツィアール・カストロ、ルイサ・ガバサ
【作品概要】
問題を起こした事で、知的障がい者のバスケットボールチーム「アミーゴス」を指導する事になった、プロバスケットコーチのマルコが、バスケットボールを通して、人間的に成長していく姿を描いたコミカルなヒューマンドラマ。
「アミーゴス」のメンバーは、実際に障がいを持つ600人の中から選ばれた、10人の俳優を起用しています。主演に、スペインのアカデミー賞である「ゴヤ賞」の常連でもある名優、ハビエル・グティエレス。監督は2003年のスパイ・コメディー『モルタデロとフィレモン』で、ゴヤ賞の編集賞など5部門を受賞したハビエル・フェセル。
映画『だれもが愛しいチャンピオン』あらすじ
バスケットボールのプロリーグで、サブコーチを務めているマルコ。
マルコは、コーチの才能を評価されながらも、短気な性格からトラブルを起こし、チームの厄介者となってしまいます。
トップコーチと試合中に戦略面で揉め、殴り飛ばしてしまったマルコは、チームを解雇されてしまいます。
自暴自棄になり、お酒を飲んだ状態で車を飛ばしていたマルコは、警官のパトカーに衝突し拘留されてしまいます。
マルコに言い渡されたのは、知的障がい者のバスケットボールチーム「アミーゴス」で、コーチとして3ヵ月間の指導をする事でした。
気が乗らない上に、全くヤル気が起きないマルコは、当初は1週間に1回、1時間の指導で終わらせようとしますが、判事の命令により、本格的な指導をする事になります。
「アミーゴス」のメンバーは、パスの練習やシュートなどの基本的な練習どころか、ランニング練習さえも成立しない状況で、マルコは頭を抱えます。
しかし、そんなチーム状況にも関わらず、「アミーゴス」は全国大会のリーグへ参戦する事になります。
「アミーゴス」を率いるつもりもないですが、試合に負けて恥もかきたくないマルコは、チーム内で唯一、正確なシュートを打てるロマンを試合に出そうとします。
ですが、ロマンはマルコの話も聞かず、練習場を立ち去り、そのまま「アミーゴス」を辞めてしまいます。
さらに、ロマンの代わりに加入した女性選手、コジャンテスは、口も態度も悪い自信家で「アミーゴス」のチームワークはさらに混沌としていきます。
それでも「アミーゴス」をまとめようとするマルコは、自身が目をそらしてきた、ある問題に向き合うようになっていきます。
映画『だれもが愛しいチャンピオン』感想と評価
『だれもが愛しいチャンピオン』は、ヒューマンドラマですが、決して重い作風の映画ではありません。
ヒューマンコメディと社会風刺、ブラックなジョークが融合した、絶妙なバランスの作品となっていますので、見どころを紹介していきます。
最後まで軽快なテンポのユーモラスな作品
知的障がい者のバスケットチーム「アミーゴス」を指導する事になった、短期でプライドの高いバスケットコーチ、マルコの姿を描いた映画『だれもが愛しいチャンピオン』。
繊細なテーマを扱っている作品なので、重い作風になりがちではありますが、本作は軽快なテンポで展開されるユーモラスな映画となっています。
プライドの塊のような性格のマルコと、純粋な言動が多い「アミーゴス」のメンバーとの掛け合いは、まるで漫才のボケとツッコミのような関係になっていきます。
また、物語的に重くなりそうなクライマックスに、あえて一番コメディっぽい、滅茶苦茶な展開を持ってくる事で、最後まで軽快なテンポを崩しません。
本作は、個性豊かな10人による「バスケットボール」を通した冒険と、その冒険を率いる事になった、主人公マルコの人間的な成長を描いた、ユーモアに溢れた作品です。
「アミーゴス」はチームになれるのか?
本作に登場する「アミーゴス」のメンバーは、実際に障害を持つ600人の中から、オーディションで選ばれた10名が演じており、それぞれのキャラクターに合わせて当て書きがされています。
本作のストーリーの主軸は、個性が強すぎる「アミーゴス」のメンバーと、その「アミーゴス」に全く歩み寄るつもりがないマルコが、どのようにお互いを理解し「選手とコーチが1つのチームになるか?」という部分です。
鍵を握っているのは、「アミーゴス」をサポートする「ロス・アミーゴス協会」のフリオです。
フリオにより、「アミーゴス」のメンバーが置かれている環境を聞かされたマルコは、「アミーゴス」の、あるメンバーが抱えているトラウマを克服させる事により、チームを1つにまとめていこうとします。
この、トラウマ克服の場面も、笑えて楽しいおススメの場面となっています。
障がい者を取り巻く厳しい環境
軽快なテンポで、鑑賞していて楽しい作品になっている『だれもが愛しいチャンピオン』。
ですが、障がい者を取り巻く労働環境や、周囲の厳しい態度など、社会的な問題も描いています。
印象的なのが、バスの中での場面で「もし自分がここにいたら、どう思うか?」と考えると、かなり心苦しくなります。
また、作中で語られる「アミーゴス」のメンバー、ロマンの過去は、2000年に開催されたパラリンピックシドニー大会で起きた、実際の事件がモデルになっています。
マルコは作品の前半で、知的障がい者に対して、嫌悪感を抱くほどの、差別的な言葉を並べています。
では、社会はどれだけ知的障がい者に対して理解をし、変化をしているのでしょうか?
そんな問題定義を、本作では、マルコの目線を通して問いかけています。
まとめ
「知的障がい者のバスケットチーム」という繊細なテーマを、終始軽快なテンポの、ユーモラスな映画に仕上げた本作。
人が生きていくうえで「乗り越えなければならない試練」というものが、必ず何かしら発生します。
その試練から目をそらさず、戦う事の大切さを描いており、本作の原題『Campeones』にも、監督であるハビエル・フェセルの想いが込められています。
本作は「アミーゴス」のメンバーだけでなく、主人公であるマルコの成長も描かれた、鑑賞後に清々しい気持ちになる作品です。
作中に、少し過激すぎると感じる表現もありますが、その点こそが、ハビエル・フェセルが観客に問いかけるメッセージでもありますので、しっかりと受け止めて下さい。
映画『だれもが愛しいチャンピオン』は2019年12月27日(金)より公開となります。