2018年12月15日(土)、16日(日)に座・高円寺2にて開催するAfter School Cinema Club + Gucchi ’s Free Schoolによる上映イベント『傑作? 珍作? 大珍作!! コメディ映画文化祭』。
このイベントにて『マイティ・ソー バトルロイヤル』のタイカ・ワイティティ監督の傑作映画『ボーイ』(2010)が日本初上映されます。
“少年”の成長を、ワイティティ監督ならではのユーモアで描いた本作。
ワイティティ監督もダメな父親役で出演し、その演技力は本作のキモとなっています。
CONTENTS
映画『ボーイ』の作品情報
【原題】
Boy
【製作】
2010年(ニュージーランド映画)
【監督】
タイカ・ワイティティ
【キャスト】
ジェームズ・ロールストン、タイカ・ワイティティ、クレイグ・ホール
【作品概要】
公開当時、ニュージーランド本国で国内最高の興行収入を打ち立てた『BOY』が待望の日本初公開!
いまや世界的なヒットメイカーとなったタイカ・ワイティティの描く一人の少年の成長譚は、批評家からも絶賛され、タイカ・ワイティティ作品の中でも非常に重要な一本となっています。
ワイティティ自身も主人公の父親役を愛嬌たっぷりに演じています。
映画『ボーイ』のあらすじ
1984年のニュージーランドの田舎町ワイハウベイ。
マイケル・ジャクソンを崇拝している11歳の少年・ボーイは、祖母と6歳の弟ロッキー、年下の従妹たち、そしてヤギのリーフと暮らしています。
母はロッキー出産時に亡くなっていて、父は窃盗で刑務所に入っており長年会っていません。
ボーイは父への理想を抱いています。
刑務所なんかとっくに脱走し、帰ってきたらマイケル・ジャクソンに会わせてくれるんだと。
ある日、祖母が用事でしばらく留守にし、年長のボーイがロッキーや従妹たちの面倒を見る事になります。
そこへ、息子の顔さえ覚えていない父親アラメインが、友人2人を連れて帰ってきました。
彼らは“暴れ馬”というギャングで、アラメインがリーダーだと言います。
ボーイはあこがれの父親が帰ってきた喜びから、彼に付いて回りますが、当のアラメインは息子のことを便利な下っ端くらいにしか考えていません。
そんな2人の様子を見つめ続ける幼いロッキー。
アラメインが帰ってきた目的は、数年前に庭に埋めた大金を掘り起こす事でした…。
映画『ボーイ』の感想と評価
タイカ・ワイティティの茶目っけ
本作の監督であり、父親アラメイン役として出演もしているタイカ・ワイティティ。
息子に大麻を盗んでこさせ、子どもの前だろうが構わず吸う。
酔っぱらうといつも以上に絡み出し、喧嘩を始める。
子ども相手でも脅しをかけ、高齢の母親に金の無心をする。
こう書いてみると、とことん悪く、ダメな人物アラメインですが、ワイティティが演じるととてもチャーミングに映るんです。
いまいちカッコ良く決まらない抜けた感じと、口では大きなことを言いながらも自信の無さが窺える目つき。
彼が監督し、演じたからこそ、この物語は『コメディ』になりました。
タイカ・ワイティティのプロフィール
ニュージーランド先住民族である、マオリの少年を主役にした本作。
ワイティティ監督自身もマオリの血をひいています。
そんなタイカ・ワイティティのプロフィールを調べ、彼の魅力について考察してみました。
タイカ・ワイティティは1975年にニュージーランド・ウェリントンで出生。
ヴィクトリア大学の演劇学生時代に、ワイティティは5人組アンサンブルの一員として活動し、ニュージーランドやオーストラリアでツアーを行って成功を得ました。
またジェマイン・クレメントとコメディ・デュオ『ザ・ユーモアビースツ(The Humourbeasts) 』を結成し、ニュージーランド喜劇の最高峰であるビリー・T賞を1999年に獲得。
俳優兼コメディアンとして活動するなか、短編喜劇映画を製作するようになります。
短編監督作『Two Cars, One Night(原題)』(2003)がアカデミー短編実写映画賞にノミネートされ、2007年の『Eagle vs Shark(原題)』で長編監督デビュー。
同作のコンセプトを発展させた『BOY』(2010)はニュージーランドの歴代最高興収を記録しました。
2014年、ジェマイン・クレメントと共同監督、共同脚本、出演を務めたホラーコメディ『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』が世界的に好評を博し、マーベル映画『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)の監督に抜てきされます。
その他の出演作に『グリーン・ランタン』(2011)、監督・脚本作に『ハント・フォー・ザ・ワイルダーピープル』(2016)など。
日本ではコメディアンと俳優は別物と考えられがちですが、両者は密接な関係であります。
どちらも大事なのは“相手の呼吸”と“間”。
それはその時の状況をビビッドに捉えて反応するということです。
決められたセリフを決められたトーンで言われリアクションされても、観客の心には響きません。
いかに新鮮に反応し、いかに観客の想像を上回るか。
それが俳優兼コメディアンとして長年経験を積んできたタイカ・ワイティティ監督の魅力の正体です。
少年にとってのヒーロー
子どもにとって親は、生まれた時から親です。
ですが、親とは、子どもが生まれたからと言ってなれるものではありません。
子どもとともに成長し、次第に親になっていくものです。
息子ボーイが幼い時に家を出てしまったアラメインは、“父親”になれていません。
ボーイに「父さんじゃなくて“将軍”と呼べ」という始末。
アラメインにとっては、無法者の象徴である“将軍”がヒーローなんです。
また、ボーイにとってのヒーローはアラメインとマイケルジャクソンですし、ロッキーにとっては兄ボーイがヒーローです。
これはヒーローにあこがれる、3人の“BOY”の物語。
ヒーローとは理想であり、その現実を知ってもなお側にいたいと願うとき、少年は大人へ、そして父親へと成長を遂げるのかもしれません。
そう考えると、冒頭に出てくる映画『E.T.』(1982)のセリフも、ちがった趣きになります。
“You could be happy here…We could grow up together.”
“ここで暮らそう。一緒に大きくなろう”
映画『E.T.』では、少年エリオットとE.T.と名づけた異星人は別れる事になりましたが、3人の“BOY”はどのような未来を迎えるんでしょうか。
『傑作? 珍作? 大珍作!! コメディ映画文化祭』開催概要
【開催日時】
2018年12月15日(土)、16日(日)
【開催場所】
座・高円寺2
JR中央線高円寺駅 北口を出て徒歩5分
【料金】
全日券:8,000円、15日券:5,000円、16日券:4,000円
各回前売り券:1,500円(『突撃!O・Cとスティッグス』のみ1,000円)
当日券:1800円(『突撃!O・Cとスティッグス』のみ1,000円)
映画『ボーイ』上映日時
12月16日(日)13:00
詳細は公式イベントページにてお確かめ下さい。
まとめ
この映画『ボーイ』に出演した子どもたちは、すべてが現地の子どもたちで、演技経験のない子たちばかりだったそうです。
それが功を奏して、子どもたちが風景に自然に溶け込み、溌剌とした姿を見せています。
また、撮影3日前にキャスティングされたという、主役ボーイを演じたジェームズ・ロールストンも、ワイティティ監督相手に堂々とした演技を見せていますし、弟ロッキーの無垢な眼差しもとても愛らしく、兄弟がそこに存在すると信じ込ませてくれます。
実は社会的な問題を描いている本作。
しかし決して暗くせず、コメディに徹して作り上げたタイカ・ワイティティ監督の手腕は見事です。
エンドロールまで笑わせにかかるという徹底ぶり。
『傑作? 珍作? 大珍作!! コメディ映画文化祭』での上映をきっかけに、多くの方の目に触れることを願って止みません。