連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第4回
深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信サービス【U-NEXT】で鑑賞することも可能です。
そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第4回は、マイク・メンデス監督の巨大蜘蛛が大暴れするSFコメディ映画『MEGA SPIDER メガ・スパイダー』です。
今回、人類が戦う相手は、究極の融合生命体「エイリアン×蜘蛛」の掛け合わせ、そして立ち向かう害虫駆除業者役を格好良く?演じてくれたのは、ご存知?我らの味方、グレッグ・グランバーグの主演作です。
また、伝説のカルト映画『悪魔の毒々モンスター』のロイド・カウフマン監督も特別出演。正しくB級映画の冠にふさわしい肩肘張らずコミカルに鑑賞が楽しめる、『MEGA SPIDER メガ・スパイダー』をご紹介いたします。
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CONTENTS
映画『MEGA SPIDER メガ・スパイダー』の作品情報
【全米公開】
2013年(アメリカ映画)
【原題】
Big Ass Spider!
【監督】
マイク・メンデス
【キャスト】
グレッグ・グランバーグ、リン・シェイ、パトリック・ボーショー、レイ・ワイズ、クレア・クレイマー、ロンバルド・ボイアー、ロイド・カウフマン(特別出演)
【作品概要】
『ドルフ・ラングレン ゾンビ・ハンター』『ハロウィン2016』のマイク・メンデス監督が、J・J・エイブラムス作品などで脇役に出演の多いグレッグ・グランバーグを主演に迎えたSF生物パニック映画。
また、『悪魔の毒々モンスター』で監督を務めたロイド・カウフマン監督も特別出演しています。
映画『MEGA SPIDER メガ・スパイダー』のあらすじとネタバレ
お人好しの害虫駆除業者のアレックス・マティス(グレッグ・グランバーグ)は、ロサンゼルスで働いています。しかし、ご時世もあり、運営資金もままならない経営者です。
ある日、アレックスはいつものように馴染みの家にネズミ駆除に向かいます。そこにいたのはネズミの罠の始末に困っていた高齢の女性ジェファーソン。
彼女を助けている間に、アレックスは毒蜘蛛に噛まれ、病院で治療を受けることになります。
そんな中、病院の遺体安置室に到着したばかりの遺体の袋から、ネズミの大きさほどもあるサイズの蜘蛛が這い出てくると、葬儀屋の男が噛まれて死亡します。
この出来事を知ったアレックスは、プロの害虫駆除業者としての誇りに火が付き、病院での治療費を清算する代わりに蜘蛛の駆除をすることを申し出ます。
また、病院の警備員であるホセ・ラモス(ロンバルド・ボヤー)は、そんな勇敢なアレックスを助けることにしました。
遺体安置室に向かうと、アレックスは蜘蛛が通気孔に逃げ込んだと推測しました。
アレックスは自ら通気口に入り、トランシーバーを使いホセと連絡を取り合います。
狭い通気口内でアレックスは、異常に粘着力の強い蜘蛛の巣を発見。彼の手には蜘蛛の巣が付き、それが非常に可燃性のあるものだと知ります。
一方、ロスアンジェルスの街中を、猛スピードで軍隊の車が連なって走行し、病院に到着。
ブラクストン・タナー少佐(レイ・ワイズ)が率いる軍事機動部隊と、カーリー・ブラント中尉(クレア・クレイマー)が現れ、蜘蛛が現れたという遺体安置室で死体の調査を開始します。
驚異的な成長で大きく成長する蜘蛛ですが、通気孔から病室に向かうと、麻痺で寝たきりの入院患者に襲いかかり、殺してしまいます。
通気孔を進んでいたアレックスは、警備員ホセの協力を得て、病院の地下へとたどり着きます。そこで彼は妙にデカい蜘蛛を追い詰め、殺人蜘蛛と対峙しますが、動きが素早く見失ってしまいます。
その時、突然、「伏せて!」の声とともに銃声が鳴り響きました。それは米陸軍の特殊部隊所属の美女カーリーが放ったものでした。
その蜘蛛は10キロはあると思われる下水道のフタを動かし、病院の外に消えていきました。やがて、蜘蛛は地下道に住むホームレスの男を殺します。
一方、カーリーの美しさに一目惚れしたアレックスですが、ここからは軍の役割りだと、アレックスが害虫駆除の専門家であるという話しを突っぱねました。
警備員のホセは、彼女に好意を抱いたアレックスの気持ちを察して、最も重要な事態だと相棒になることを宣言。アレックスの助手として凶暴な蜘蛛と戦い、カーリー中尉への思いを成就させることを決めます。
アレックスとホセのコンビは害虫駆除の自動車に乗り込み、公園に向かいます。そこでは何十人もの人々を次々に殺害し、さらに食べまくり、巨大に成長し続ける蜘蛛がいました。
映画『MEGA SPIDER メガ・スパイダー』の感想と評価
2013年に制作されたマイク・メンデス監督の昆虫パニック映画『MEGA SPIDER メガ・スパイダー』は、飛び抜けた映画演出が特に見当たる作品ではありません。
しかし、このことで本作が面白くないと判断するのは、いささか気が早いかもしれません。蜘蛛映画というのは、映画史の中でも、ひとつのジャンルに挙げられるほど、人気と支持があるからです。
その証拠にマイク・メンデス監督は、本作以後の2015年にも『ラバランチュラ 全員出動!』という昆虫パニック映画を作るほど、蜘蛛が大好きなB級映画作家なのです。
巨大蜘蛛と人類の戦い。それはB級映画にとって、誇らしくも、気高いクリーチャーのひとつなのです。今回は巨大蜘蛛の登場するB級映画の歴史と、『MEGA SPIDER メガ・スパイダー』の見どころ解説について、お話しいたしましょう。
巨大蜘蛛の歴史
参考映像:『吸血原子蜘蛛』(1958:「Earth vs. the Spider」「The Spider」「Earth vs. the Giant Spider」)
ユニバーサル・ピクチャーズは、『世紀の怪物/タランチュラの襲撃』という映画の演出をジャック・アーノルド監督に任せました。
ジャック監督は、『大アマゾンの半魚人』(1954)、『半魚人の逆襲』(1955)の監督として知られています。
そして、何と言ってもバート・I・ゴードン監督の存在を忘れてはいけません。彼は、何から何まで巨大生物にしてしまう映画作家です。
巨大イナゴを襲来させた『世界終末の序曲』(1957)、また、一つ目の巨人を登場させた『戦慄!プルトニウム人間』(1957)、そして、巨大蜘蛛が人を襲う『吸血原子蜘蛛』(1958)があります。
アニマルパニック映画の全盛期でも、1976年にバート監督は果敢にも、『巨大生物の島』、1977年の『巨大蟻の帝国』を発表します。
さて、蜘蛛を巨大化させた怪物として映画に登場させる場合、当初のハリウッドでは、本物のタランチュラなど、比較的に大きな蜘蛛をミニチュアセットなどに入れて接写撮影を行なったり、またはスクリーンプロセスなどの合成で実写映像と合成していました。
もちろん、部分的なパーツを造形して実際の人間と合わせ撮影する方法なども行われました。また、“怪獣と特撮の国”の日本ではどのように行われていたのでしょう。
参考映像:『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』(1967)
特撮の父・円谷英二の秘蔵っ子である有川貞昌特技監督が、1967年の『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』で巨大蜘蛛の怪獣クモンガを登場させています。
この作品では、蜘蛛の造形物は5メートルに及び、操演というピアノ線で釣って足などを約20人で動かしたそうです。
さて、現代では『MEGA SPIDER メガ・スパイダー』のように、本物の昆虫を使用することも、職人技を要する操演の使用も可能となりました。多くの場合メインの手法はCGIの映像によって行われています。
B級映画好きにとっては好みの意見は別れるかも知れません。実際の昆虫での撮影、ストップモーションの人形アニメ、人間の入る着ぐるみ、巧みな操演など、怪物、怪獣の登場させる方法は異なりますが、 B級映画の魂の吹き込みは、退化はしていないのではないでしょうか。
イカした害虫業者のアレックスの正体
本作『MEGA SPIDER メガ・スパイダー』に登場する主人公アレックス・マティス役を演じたのは、グレッグ・グランバーグ。
俳優のグレッグは、実はあのJ・J・エイブラムスと幼稚園の頃からの幼なじみで、キャストとしてJJ作品に起用されることがしばしばあります。
2001〜6年のドラマ『エイリアス』ではエリック・ワイス役、2004年のドラマ『LOST』ではセス・ノリス機長。
また、映画でも2006年の『ミッション:インポッシブル3』でケビン役、2015年の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』テミン・”スナップ”・ウェクスリー、2016年『スター・トレック BEYOND』では、宇宙基地ヨークタウンの副官のフィネガン中佐など、大活躍といっても良いでしょう。
そんなグレッグが本作『MEGA SPIDER メガ・スパイダー』では、愛すべき害虫業者を演じていますが、どことなく太りすぎたジョン・トラボルタのような雰囲気を醸し出し、コミカルな演技を見せています。
もちろん、B級映画の本作は細かなことを言い始めたらツッコミどころは満載ですが、そのようなことを気にさせないのは、グレッグの演じたアレックスというキャラクターの無頓着な子どものような愛嬌だと言えるでしょう。
そうでもなければ、アメリカ軍にある機動部隊のブラクストン・タナー少佐から、新たなる怪物退治の非常事態への出動依頼や、カーリー・ブラント中尉との一目惚れからの熱いキスも、寛容に笑うことができないでしょう。
参考映像:『ハロウィン2016』(2015)
また、そのアレックス(グレッグ・グランバーグ)とカーリー(クレア・クレイマー)は、『ハロウィン2016』というオムニバス映画のデェイブ・パーカー監督の「Sweet Tooth」でも共演を果たしています。
しかも、同じ衣装で夫婦役でというオチまでついた再共演です。
本作『MEGA SPIDER メガ・スパイダー』という映画と、アレックス、そしてグレッグ・グランバーグという俳優がいかに愛されているのかが理解できますね。
まとめ
本作『MEGA SPIDER メガ・スパイダー』は、正真正銘のB級映画。しかも、気楽に家で流し見するのに適した最高の娯楽作品です。
しかも、マイク・メンデス監督は、キャスト陣に依頼するのに十分な金額が用意できなかったため、Facebookで繋がっている友達リストの知人たちに依頼したほどです。
そのほか B級映画ファンにとってたまらない出演者がいます。1984年公開の『悪魔の毒々モンスター』、そして「おバカ映画」「Z映画」の代名詞と呼ばれたトロマ・エンターテインメントのロイド・カウフマン監督です。
巨大蜘蛛が出現した公園でジョギング中に、しっかりと蜘蛛の餌食になりますので必見です。
また、この作品は巨大モンスターのパニックムービーのみならず、アレックスの相棒を買って出る警備員ホセ・ラモスとの愉快なバディ・ムービーでもありますよ。
今回ご紹介したマイク監督の愛すべきB級映画『MEGA SPIDER メガ・スパイダー』は、2014年にSF・ファンタジー・ホラー作品の秀でた作品に贈られる「サターン賞」を、ベストDVDとブルーレイ部門で獲得しています。
ぜひ、日本語吹き替え版でお楽しみください!
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