連載コラム「邦画特撮大全」第55章
平成最後の仮面ライダーとなった『仮面ライダージオウ』。平成も終わり令和という新時代を迎えた2019年7月26日から、『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』が公開されました。
本作は“ジオウの真の最終回”と銘打たれた、平成仮面ライダーシリーズの集大成とも言える作品です。
CONTENTS
映画『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』の作品情報
【公開】
2019年7月26日(日本映画)
【原作】
石ノ森章太郎
【監督】
田崎竜太
【脚本】
下山健人
【音楽】
佐橋俊彦
【アクション監督】
宮崎剛
【特撮監督】
佛田洋
【キャスト】
奥野壮、押田岳、大幡しえり、渡邊圭祐、稲葉友、クリス・ペプラー、ISSA、斉藤秀翼、パパイヤ鈴木、前野朋哉、若林時英、木梨憲武、生瀬勝久
【作品概要】
本作は平成最後の仮面ライダーシリーズ『仮面ライダージオウ』の劇場オリジナル作品です。監督は平成仮面ライダーシリーズの中核を担ってきた田崎竜太。脚本はTVシリーズのメインライターでTVアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン』で知られる下山健人。
奥野壮、押田岳、大幡しえり、渡邊圭祐らTVシリーズの主要キャストに加え、本作の主題歌を担当しているISSAたち「DA PUMP」のメンバーが総出演。さらに『仮面ライダードライブ』(2014~2015)から稲葉友とクリス・ペプラーがゲスト出演します。
本作に登場するオリジナル仮面ライダー役には前述のISSAの他、ジョウゲン/仮面ライダーザモナスには斉藤秀翼、カゲン/仮面ライダーゾンジスにはパパイヤ鈴木がキャスティングされています。
映画『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』のあらすじとネタバレ
常盤ソウゴ/仮面ライダージオウたちの元に、仮面ライダードライブの生みの親であるクリム・スタインベルトから助けを求めるメッセージが届きました。何者かがクリムの祖先を消し、仮面ライダードライブの存在を歴史から抹消しようとしていたのです。
ソウゴ、明光院ゲイツ/仮面ライダーゲイツ、ツクヨミ、ウォズ/仮面ライダーウォズの4人はクリムを助けるため、敵が向かったと思われる1575年へ向かいます。
1575年は、織田信長が武田信玄と戦った「長篠の戦い」を目前に控えた時期でした。
ソウゴたちは織田信長がクリムの祖先であるクララ・スタインベルトというオランダ人の美女と一緒にいると聞き、信長を探し出し接触します。しかし信長は飄々とした女好きの男で、後世に伝わるイメージとは大きくかけ離れた人物でした。
信長はゲイツを影武者にして、自身が惚れ込んでいるクララとどこかへ消えてしまいます。
残ったソウゴたちは信長らを追います。信長と合流するソウゴたちでしたが、そこへクララを狙ってジョウゲン/仮面ライダーザモナス、カゲン/仮面ライダーゾンジスが現れました。ソウゴたちは2人の謎のライダーを蹴散らし、クララを守りきります。
“平成仮面ライダーシリーズ”とは何だったのか?
『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』田﨑竜太監督特別コメント映像
2000年(平成12年)に放送が開始された『仮面ライダークウガ』から始まった平成仮面ライダーシリーズ。昨年2018年の冬に公開された前作『仮面ライダー平成ジェネレーションズFOREVER』は、『クウガ』の放送開始前日を起点に平成ライダー20作品全てを総ざらいした作品でした。
本作『仮面ライダージオウ Over Quartzer』は、前作以上に“平成ライダーとは何だったのか”というテーマを深化させた作品です。
そもそも、平成仮面ライダーシリーズという名称は便宜上のもので、昭和と平成をまたいで放送された『仮面ライダーBLACK RX』(1988~1989)、『真・仮面ライダー 序章』から始まったいわゆる“ネオライダー”と呼ばれる3作品、そしてネット配信され話題を呼んだ『仮面ライダーアマゾンズ』(2016~2018)などそこから零れてしまう作品も多数あります。
平成という時代を変えようとする本作の敵・クォーツァーが変身する仮面ライダーたちは、上記の“平成ライダー”に含まれない作品がモチーフとなっています。
常盤SOUGOが変身する仮面ライダーバールクスは『仮面ライダーBLACK RX』(1988~89)がモチーフ。仮面ライダーゾンジスは『真・仮面ライダー 序章』『仮面ライダーZO』『仮面ライダーJ』の3体のライダーがモチーフで、仮面ライダーザモナスはネットドラマ『仮面ライダーアマゾンズ』(2016~2017)がモチーフとなっているのです。
平成ライダーたちに取って代わろうとする仮面ライダーバールクスが、平成最初に放送された『仮面ライダーBLACK RX』を基にしているというのは非常に面白い点です。
クォーツァーは平成ライダーたちを“設定もバラバラ”で“不揃い”だと評し、美しい形に改変しようとします。しかしこの設定もバラバラで不揃いというのは、『クウガ』以降の平成ライダーたちの最大の魅力でもあるのです。チャレンジ精神を忘れずに毎年、独特の魅力を持つ平成ライダーが生み出されてきました。悪くいってしまえばシリーズの筈なのに作風に統一性がなく、劇中でウォズが言うように一つの枠に収めることなど出来ないのです。
しかし「不揃い」や「美しくない」などという、結果論としての評価は誰にでも出来るものではないでしょうか。主人公の常盤ソウゴは本作のラストにて、クォーツァーに対して「過去があるから現在の自分がある」と反論します。どんなに過去が不揃いでも美しくなくても、それは現在の自分にとって確実に糧となっているのです。これは『仮面ライダー電王』(2007~2008)で描かれた“過去が希望をくれる”というメッセージにも通じるものです。
まとめ
『仮面ライダードライブ』(2014~2015)の主題歌は「SURPRISE-DRIVE」でしたが、『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』の後半部はとにかく観客を驚かす仕掛けばかりでした。
平成という時代を仮面ライダーと共に歩んできたファンにとっては、最後のお祭り映画です。未見の方は劇場へ急ぎましょう。そして、令和に現れる新たな仮面ライダーたちの活躍も見守っていきましょう。
次回の邦画特撮大全は…
次回の邦画特撮大全は『劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer』と同時上映される『騎士竜戦隊リュウソウジャーTHE MOVIE タイムスリップ!恐竜パニック!!』(2019)を特集します。
お楽しみに。