連載コラム「邦画特撮大全」第46章
2019年公開を目前に控えたハリウッド大作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』。
この作品にはゴジラの他、キングギドラ、モスラ、ラドンといった東宝の人気怪獣たちも登場します。
今回の邦画特撮大全は登場怪獣の中からラドンに注目し、ラドンが初登場した1956年の映画『空の大怪獣 ラドン』を紹介します。
また本作『空の大怪獣 ラドン』は、2019年5月14日午後7時からBS12にて放送されます。
映画『空の大怪獣 ラドン』の作品情報
©︎東宝
【公開】
1956年12月26日(日本映画)
【監督】
本多猪四郎
【特技監督】
円谷英二
【キャスト】
佐原健二、白川由美、平田昭彦、村上冬樹、小堀明男、田島義文、山田巳之助、中谷一郎、如月寛多
【作品概要】
監督は本多猪四郎、特技監督は円谷英二と“ゴジラシリーズ”でお馴染み東宝特撮映画の黄金コンビが贈る日本初のカラー怪獣映画。
総製作費2億円の内、特撮費1億2千万円と第1作目の『ゴジラ』(1954)を超える巨費によって製作されました。
映画『空の大怪獣 ラドン』のあらすじとネタバレ
九州・阿蘇の炭鉱で坑内から大量の水が出るトラブルが多発していました。さらには作業員の五郎と由造の2人が坑道に入ったまま姿が見えないといいます。
技師の河村繁は仲間を連れて坑内に調査へ行くと、そこには由造の死体がありました。
由造の死体には刃物で斬られたような傷跡があります。五郎が坑内に入る前に由造と揉めていたことから、五郎が由造を殺害し逃亡したのではという噂が出ました。
しかし河村は五郎にかけられた疑いを信じられません。
田代巡査、捨やん、仙吉の3人が五郎を探しに坑内へと入ります。
坑内には奇妙な音が響き、3人に謎の影が迫ってきました。そして3人とも由造と同じ手口で殺されてしまいます。
由造の妻・民は、五郎の妹・キヨの家の前で絶叫。耐えられなくなったキヨは訪問して来た河村の胸に泣きつくのです。するとそこへ巨大なハサミを持ったヤゴのような怪物が姿を現しました。
作業員たちを襲ったのはその巨大なヤゴだと断定。警察たちは山狩りを開始しますが、銃では怪物に歯が立ちません。
応援に来た防衛隊も合流し、怪物を追って再び坑内を捜索します。坑内には怪物に襲われた五郎の死体がありました。
一同は機関銃で怪物を攻撃しますが、全く効きません。河村はトロッコを怪物にぶつけて倒します。河村は坑道の奥に空洞を見つけ進みますが、落盤が起こりに中に閉じ込められてしまうのでした。
阿蘇に調査にやって来た柏木博士は怪物の写真を見て、古代に生息していたメガヌロンだと推定します。
そんな中、地震が発生。地震によって陥没した地面に行方不明だった河村がいました。河村は事故の影響で記憶を失っていたのです。
一方、防衛隊・航空司令部に国籍不明機を発見したという情報が入りました。
ジェット機で国籍不明機を追跡しますが相手は超音速で飛行する上、ソニックブームを起こしてジェット機を破壊してしまいます。
また火口付近で1組のカップルが死亡する事件が発生。彼らが残したカメラにはプテラノドンを思わせる影を捉えた写真がありました。
映画『空の大怪獣 ラドン』感想と評価
空の大怪獣ラドンの特徴
巨大なヤゴの怪物“メガヌロン”が迫る恐怖を描いた前半、空の大怪獣“ラドン”による福岡市街の大破壊を描いた後半。観客を飽きさせない様々な要素が盛りだくさんな『空の大怪獣 ラドン』ですが、なんと上映時間は82分で2時間もありません。
本作に登場するラドンはその姿・名前から、“プテラノドン”や始祖鳥がモチーフとなっているのは明白です。“ゴジラ”は「水棲爬虫類から陸上獣類に進化しようとしていた中間生物」という設定で、そのシルエットは肉食恐竜を想起させるものです。ラドンはゴジラとの差別化から翼を有し飛行するという怪獣となりました。
また『空の大怪獣 ラドン』では怪獣に対して、『ゴジラ』(1954)で見られなかった“怪獣を生物として捉える”という試みが見られます。
ゴジラは恐怖の対象として描かれていましたが、孵化の様子やメガヌロンをついばむなど怪獣もまた生物であるという細かい描写が登場します。防衛隊が作戦にラドンの帰巣本能を利用する点にもそれが見られます。
特撮のみどころ
ラドンは飛行するため、着ぐるみのほかに6体の操演人形を撮影に使用しています。
地上では着ぐるみ、飛行シーンでは人形と場面に応じて使い分け映像に説得力を持たせています。
しかし西海橋でのシーンでは操演人形ではなく、中に俳優が入ったラドンの着ぐるみをワイヤーで吊るという大掛かりな操演を行っています。
本作の特撮の見所はやはりラドンによる福岡市街の大破壊でしょう。公開当時の福岡市街を再現したミニチュアの精巧さには目を見張るものがあります。
実際この一連の福岡破壊の場面では、実景映像は使用されずミニチュアを使用した特撮カットのみで構成されています。
ラドンが起こすソニックブームで破壊される街の中でも、特に瓦屋根が飛ぶカットは印象的です。またクライマックスの阿蘇噴火では、溶鉄を使用して溶岩流を表現しています。
このように『空の大怪獣 ラドン』は初のカラー怪獣映画ということもあり、さまざまな創意工夫が凝らされた意欲作となっています。
まとめ
怪獣を生物として捉えた視点やラドンの飛行シーンなど、『ゴジラ』とは違う趣を持った怪獣映画『空の大怪獣 ラドン』。
映画評論家の石上三登志は生前、『ゴジラ』第1作目より本作の方を高く評価していました。未見の方はこれを鑑賞してはいかがでしょうか。
次回の邦画特撮大全は…
次回の邦画特撮大全は、『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』(1965)と『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』(1966)を特集します。
お楽しみに。