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Entry 2019/03/29
Update

スーパー戦隊歴代の“恐竜キャラクター”の内容解説と色彩比較の考察。|邦画特撮大全39

  • Writer :
  • 森谷秀

連載コラム「邦画特撮大全」第39章

先日2019年3月17日から平成最後の戦隊シリーズ『騎士竜戦隊リュウソウジャー』の放送が開始されました。

“恐竜”をモチーフにしたスーパー戦隊は今回で4作目です。

今回の邦画特撮大全では、歴代の恐竜戦隊たちを『騎士竜戦隊リュウソウジャー』との共通点などを中心に紹介していきます。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら

伝説の戦士たち『恐竜戦隊ジュウレンジャー』

封印から甦った魔女バンドーラとその配下が地球に侵攻してきました。不思議仙人バーザは5人の伝説の戦士を1億7000万年の眠りから目覚めさせます。

ティラノレンジャー・ゲキ、マンモスレンジャー・ゴウシ、トリケラレンジャー・ダン、タイガーレンジャー・ボーイ、プテラレンジャー・マイ。彼らは強大な力を持つ“守護獣”と共にバンドーラ一味と戦います。

当時のベストセラー小説『ジュラシック・パーク』の映画化が発表されたことから、モチーフに“恐竜”が選ばれたのが本作『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(1992)です。

前作『鳥人戦隊ジェットマン』(1991)がトレンディドラマさながらの恋愛模様が描かれた異色作だったこともあり、“王道”をテーマに掲げて製作されました。

また6人目の戦士であるドラゴンレンジャー・ブライを登場させ、シリーズに“追加戦士”という新機軸を定着させました。

本作は『リュウソウジャー』と同様に、ファンタジー色の強い作風となっています。

両作とも主人公たちは太古の部族の戦士です。また敵のモチーフが伝説上の怪物や神話の生物をモチーフにしている点も共通しています。

その他、“獣連者”と“竜装者”と漢字表記が存在する点も両作に共通しています。

ハードな展開とコミカルさの融合『爆竜戦隊アバレンジャー』

6500万年前に衝突した巨大隕石によって地球は“ダイノアース”と我々人類が住む“アナザーアース”に分裂。巨大隕石に付着していた宇宙の微生物たちはダイノアースで、邪悪な生命体“エヴォリアン”に進化。

エヴォリアンはダイノアースを壊滅させ、アナザーアースに侵攻してきます。

ダイノアースからやって来たアスカは、アナザーアースで出会った伯亜凌駕、三条幸人、樹らんるの3人の若者をアバレンジャーにし、地球の平和のために戦うのです。

恐竜をモチーフにしたスーパー戦隊の2作目は『爆竜戦隊アバレンジャー』(2003)です。

『ジュウレンジャー』がファンタジーの強い作風だったのに対し、本作はSF要素の強い作品となっています。

“ダイノアース”と“アナザーアース”という2つの地球がそれぞれ存在するというパラレルワールドの設定のほか、登場する恐竜たちにもSF的な設定が加味されました。

『ジュウレンジャー』に登場する“守護獣”たちは人知を超えた神のような存在でしたが、本作に登場する“爆竜”はダイノアースに生息していた恐竜が進化し金属の肉体と知性を手に入れた存在です。

終盤になりようやく味方となる追加戦士の仲代壬琴/アバレキラーの存在や、夫婦や義理の兄弟が敵味方に別れて戦うなどハードな展開が主軸に置かれています。

しかし重すぎる展開にならないように、コメディ描写もふんだんに取り入れられています。

爆竜たちは人語を介しアバレンジャーたちとコミュニケーションをとりますが、語尾に「~テラ」や「~ケラ」などと付けて話します。このコミカルな口調がハードな展開を緩和させます。

またエヴォリアンが毎回送り込んでくる敵怪人・トリノイドは動物・植物・無生物の3つの要素で構成されていますが、彼らのみんな駄洒落のようなネーミングです。

例えばナナクサルンバ(七草+猿+ルンバ)やツタコタツ(蔦+タコ+コタツ)などモチーフをそのままつなげたネーミングです。

また“邪命戦隊エヴォレンジャー”を名乗る再生怪人も登場。ご丁寧に偽番組タイトルまで登場しました。

その他、同時期にテレビ朝日で放送されていた時代劇『子連れ狼』やテレビアニメ『釣りバカ日誌』とコラボしたエピソードもあります。

近年のスーパー戦隊シリーズでは番組エンディングでダンスを踊るのが定番化しています。『リュウソウジャー』でもエンディングダンスが採用されていますが、これを定着化させたきっかけが『アバレンジャー』です。

ただし『アバレンジャー』の場合、出演者ではなく敵戦闘員のバーミア兵たちが踊ります。

強烈なキャラクターたち『獣電戦隊キョウリュウジャー』

太古に氷漬けにされた暗黒種“デーボス”が現代に復活しようとしていました。デーボスの復活を阻止するため、賢神トリンは“強き竜の者”キョウリュウジャーを終結させます。

キョウリュウジャーとそのパートナー“獣電竜”はデーボス復活のため暗躍する悪魔の軍団“デーボス軍団”に立ち向かうのです。

『キョウリュウジャー』はメイン監督に坂本浩一、脚本に三条陸と『仮面ライダーW』に参加していたスタッフを起用しました。

三条陸は漫画『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』の原作者としても知られています。そのためもあってか本作は少年漫画的な魅力にあふれた作品となっています。

人気漫画『ONE PIECE』の主人公・ルフィを彷彿させる明朗な桐生ダイゴ/キョウリュウレッドをはじめ、色男のイアン・ヨークランド/キョウリュウブラックやお嬢様のアミイ結月/キョウリュウピンクなどメンバー全員が強烈な個性を持った人物として描かれています。

本作の準レギュラーやゲストにはかつてスーパー戦隊に出演していたキャストも登場しています。

有働ノブハル/キョウリュウブルーの妹役に木下あゆ美(『特捜戦隊デカレンジャー』)、立風館ソウジ/キョウリュウグリーンの両親役に春田純一と萩原佐代子(『科学戦隊ダイナマン』)。

その他、出合正幸(『轟轟戦隊ボウケンジャー』)、海老澤健次(『炎神戦隊ボウケンジャー』)も登場。『リュウソウジャー』も本作同様に特撮OB俳優たちが第1話にも登場していましたね。

またキョウリュウジャーは右肩に装甲が施されたデザインになっています。一方『リュウソウジャー』は“ナイトモード”に変身時、右肩に装甲が現れます。

補足~各戦隊の色分け・モチーフ恐竜の比較

恐竜戦隊ジュウレンジャー

 
“恐竜戦隊”と銘打っていますが、モチーフには恐竜以外の古代生物も含まれています。

これは全てを恐竜モチーフにすることで各キャラクターのシルエットが似通ってしまうのを避けるためのアイディアです。

ゲキ/ティラノレンジャー(赤・ティラノサウルス)
ゴウシ/マンモスレンジャー(黒・マンモス)
ダン/トリケラレンジャー(青・トリケラトプス)
ボーイ/タイガーレンジャー(黄・サーベルタイガー)
メイ/プテラレンジャー(桃・プテラノドン)
ブライ/ドラゴンレンジャー(緑・ドラゴン)

爆竜戦隊アバレンジャー

メンバーの名前はそれぞれ白亜紀、三畳紀、ジュラ紀、中生代と古代の地質時代が由来となっています。

レッドとブルーのモチーフ恐竜は『ジュウレンジャー』と共通しています。

またプテラノドンは担当色が違いますが、女性戦士のモチーフという点で共通しています。

伯亜凌駕/アバレッド(赤・ティラノサウルス)
三条幸人/アバレブルー(青・トリケラトプス)
樹らんる/アバレイエロー(黄・プテラノドン)
アスカ/アバレブラック(黒・ブラキオサウルス)
仲代壬琴/アバレキラー(白・トゥプクスアラ)

獣電戦隊キョウリュウジャー

メンバーの姓の頭文字を合わせると“恐竜”、名前の頭文字を合わせると“ダイノソア”になります。

『ジュウレンジャー』と『アバレンジャー』との差別化から、トリケラトプスをピンクのモチーフに選んでいます。

桐生ダイゴ/キョウリュウレッド(赤・ティラノサウルス)
イアン・ヨークランド/キョウリュウブラック(黒・パラサウロロフス)
有働ノブハル/キョウリュウブルー(青・ステゴサウルス)
立風館ソウジ/キョウリュウグリーン(緑・ヴェロキラプトル)
アミイ結月/キョウリュウピンク(桃・トリケラトプス)
空蝉丸/キョウリュウゴールド(金・プテラノドン)

騎士竜戦隊リュウソウジャー

レッドとブルーのモチーフ恐竜は『ジュウレンジャー』『アバレンジャー』と共通しています。

タイガーサウルスとニードルサウルスは実在の恐竜ではなく、本作オリジナルの恐竜です。

コウ/リュウソウレッド(赤・ティラノサウルス)
メルト/リュウソウブルー(青・トリケラトプス)
アスナ/リュウソウピンク(桃・アンキロサウルス)
トワ/リュウソウグリーン(緑・タイガーサウルス)
バンバ/リュウソウブラック(黒・ニードルサウルス)

まとめ

“恐竜”をモチーフにした3つのスーパー戦隊を特集しましたが、それぞれ違った色の作品であることが分かります。

『騎士竜戦隊リュウソウジャー』がどんな“恐竜戦隊”になっていくのか、これから1年間見守っていきましょう。

次回の邦画特撮大全は…

次回の邦画特撮大全は、『仮面ライダー剣』(2004)を特集します。

お楽しみに。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら

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