Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

映画『ゴジラVSビオランテ』感想と解説。帰ってきたウルトラマン34話の怪獣との共通性を深掘り⁉︎|邦画特撮大全27

  • Writer :
  • 森谷秀

連載コラム「邦画特撮大全」第27章

読者の皆さま、新年明けましておめでとうございます。

先年は私の拙文にお付き合いいただき誠にありがとうございます。

今回取り上げる作品は『ゴジラVSビオランテ』(1989)。

本作は1989年の12月に正月映画として公開された特撮映画で、平成に改元されて最初に製作されたゴジラ映画です。

平成最後のお正月に、平成最初の正月ゴジラ映画を振り返っていきましょう。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら

スポンサーリンク

映画『ゴジラVSビオランテ』の作品情報

『ゴジラVSビオランテ』は前作『ゴジラ』(1984)の正式な続篇として製作されました。しかしメインスタッフや登場人物は前作と大きく変更されています。

本作の脚本・監督を務めたのは大森一樹。大森監督は8ミリフィルムによる自主制作映画出身で、『オレンジロード急行』(1978)で商業映画デビューしました。

その後、吉川晃司のデビュー作『すかんぴんウォーク』(1984)、斉藤由貴主演の『恋する女たち』(1986)や『トットチャンネル』(1987)などを監督しています。

大森監督は当時を代表する新進の監督の1人でした。

特技監督は川北紘一(1942~2014)が務めています。

東宝の特殊技術課出身で「ゴジラ」シリーズをはじめ多くの東宝特撮映画に参加して来ました。

参考映像:『ゴジラVSデストロイア』(1995)

川北は中野昭慶の後を継ぎ、本作から『ゴジラVSデストロイア』(1995)までゴジラシリーズの特技監督を務めました。

本作のプロデューサーは富山省吾。第1作目『ゴジラ』(1954)からプロデューサーを務める田中友幸を支える形でゴジラシリーズに参加。以降、『ゴジラ FINAL WARS』(2004)まで富山はゴジラシリーズのプロデュースを手掛けました。

こうした新たな人材を中心とした布陣は、「ゴジラ」シリーズに新風を吹き込む意欲的な試みでした。

主要キャストには若手科学者の桐島一人に三田村邦彦、その恋人・大河内明日香に田中好子。

超能力を持った少女・三枝未希には第2回東宝シンデレラの小高恵美。

自衛隊の若きエース・黒木特佐に、『キングコング対ゴジラ』(1962)に主演した高島忠夫の息子・高嶋政伸。

ビオランテを生み出した遺伝子工学の世界的権威・白神博士役に高橋幸治といった顔ぶれです。

登場シーンはわずかですが本作のキーとなる白神英理加役を沢口靖子が好演。デビュー間もない鈴木京香も出演しています。

また大和田官房長官には久我美子が友情出演しています。久我は『ゴジラ』(1954)で芹沢博士を演じていた平田昭彦の妻です。

当時の内閣官房長官が女性初の森田眞弓であったことも反映されたキャスティングです。

新しいゴジラの幕開け


東宝特撮Blu-rayセレクション『ゴジラVSビオランテ』

大森一樹、川北紘一、富山省吾といった新たなメインスタッフによって製作された『ゴジラVSビオランテ』。映像や物語も新しい時代を感じさせるものとなっています。

まずゴジラの造形です。

本作は1984年版『ゴジラ』の正式な続篇ですが、ゴジラは新たなデザインの着ぐるみが撮影に使われています。

本作に登場するゴジラはこれまでのものに比べ頭が小さくなっています。鳩胸のように胸が盛り上がっており、体はシャープな仕上りになっています。

またサメのように歯が二重になっており、より凶暴性が増したデザインになっています。

本作のテーマは“バイオテクノロジー”です。第1作目『ゴジラ』で描かれた“原水爆の恐怖”、『ゴジラ対ヘドラ』(1971)で描かれた“公害”。

“科学への警鐘”というテーマは本作にもしっかり受け継がれています。

本作の敵怪獣ビオランテはゴジラの細胞とバラ、白神博士の娘・英理加の遺伝子を組み合わせて作られた怪獣です。

ビオランテの造形も細かいディテールが表現され、これまでの怪獣とは違った雰囲気の仕上りになっています。

人間ドラマの部分では若い世代と上の世代のぶつかり合いがテーマとなっています。

科学者の立場や科学の意義を巡って対立する桐島一人と白神博士。ゴジラへの対策を巡って対立する黒木翔特佐と山地統幕議長などの描写にそれが見られます。

これは大森監督ら若い世代の実感が投影されたものだと思われます。

またゴジラの細胞を巡るアメリカとサラジア共和国の産業スパイの攻防戦が挿入され、映画のテンポもこれまでの作品に比べスピーディーなものになっています。

スポンサーリンク

原案者・小林晋一郎と『帰ってきたウルトラマン』第35話

参考映像:『帰ってきたウルトラマン』OP(1971)

『ゴジラVSビオランテ』は公募された原案を元に製作されました。

選ばれた原案『ゴジラ対ビオランテ』を執筆したのが小林晋一郎です。

ちなみに最終候補に残った原案には巨大なコンピューターが戦車のようなメカに変形し、ゴジラと戦うというものがありました。

しかし本作の少し前に製作された『ガンヘッド』(1989)の興行不振もあり、小林の『ゴジラ対ビオランテ』が選ばれたのです。

原案を執筆した小林晋一郎の本職は歯学博士、歯科技師。実は小林は高校1年生の頃、『帰ってきたウルトラマン』(1971)のストーリーを円谷プロダクションに送ったことがあるのです。

『帰ってきたウルトラマン』に不満を持っていた小林は、13話分のストーリーを円谷プロに送りました。

その結果、制作されたのが第34話「許されざるいのち」(脚本:石堂淑朗/監督:山際永三)です。

『帰ってきたウルトラマン』のファンの間では“11月の傑作群”と呼ばれている作品で評価の高い回の1つです。

そして「許されざるいのち」と『ゴジラVSビオランテ』には多くの共通点があります。

「許されざるいのち」に登場する怪獣は合成怪獣レオゴン。

郷秀樹/ウルトラマンの旧友で生物学者の水野が、ウツボカズラとトカゲを合成して作り上げた怪獣です。

ビオランテ同様に植物と動物をかけあわせた怪獣で、ツルを触手のようにして攻撃します。また2体とも登場場所が芦ノ湖です。

両作ともバイオテクノロジーがテーマです。しかしレオゴンを作った水野とビオランテを作った白神博士の動機はかなり違うものです。

水野の方は亡き父へのコンプレックスが動機ですが、白神博士は愛娘の死という喪失感がビオランテを作った動機です。

2作ともバイオテクノロジーを利用して怪獣を作り上げたというメインプロットは共通しますが、それぞれに登場する2人の科学者の思いはかなり違うものです。

両作を水野、白神博士の立場から見比べてみるのはいかがでしょうか。

次回の邦画特撮大全は…

次回の邦画特撮大全は『モスラ対ゴジラ』(1964)を中心に操演怪獣の魅力を特集します。

お楽しみに。

【連載コラム】『邦画特撮大全』記事一覧はこちら

関連記事

連載コラム

映画『異端の鳥』感想レビューと評価。発禁書となった原作コシンスキの東欧州での映像化は“観るものが試される”|銀幕の月光遊戯 59

連載コラム「銀幕の月光遊戯」第59回 映画『異端の鳥』はTOHOシネマズシャンテ他にて2020年10月9日(金)ロードショー! 自身もホロコーストの生き残りであるポーランド出身のイェジー・コシンスキの …

連載コラム

映画『サモン・ザ・ダークネス』ネタバレ感想と考察評価。アレクサンドラ・ダダリオら3人の美女が催す悪魔の殺人パーティー|未体験ゾーンの映画たち2020【延長戦】見破録7

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020【延長戦】見破録」第7回 佳作から怪作・問題作まで、世界のあらゆる映画を紹介する「未体験ゾーンの映画たち2020【延長戦】見破録」。第7回で紹介するのはカルト …

連載コラム

映画『アングスト/不安』感想レビューと評価。実在の殺人鬼がモデルの1983年製作のサイコスリラー|SF恐怖映画という名の観覧車104

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile104 緊急事態宣言が緩和され劇場での映画公開が再開し、徐々に日常が戻りつつあります。 しかし、依然として映画館への人入りは少なく、最新作の劇場 …

連載コラム

『がんばれいわ!!ロボコン』ネタバレ感想と考察評価レビュー。映画版となった20年ぶり復活のロボコンで汁なしタンタンメンが誕生?|邦画特撮大全73

連載コラム「邦画特撮大全」第73章 2020年7月31日から公開となった映画『がんばれいわ!!ロボコン ウララ~!恋する汁なしタンタンメンの巻』。 『燃えろ!!ロボコン』(1999~2000)から実に …

連載コラム

映画『レ・ミゼラブル(2012)』あらすじと感想レビュー。バルジャンとジャベールの対立とキャストの歌声は一見の価値あり|蟹江まりの映画ともしび研究部1

連載コラム「蟹江まりの映画ともしび研究部」第1回 はじめまして、蟹江まりです。 歌と演技が大好きで、女優を目指して特訓中の大学生です!愛してやまない映画の面白さと素晴らしさを、少しでも分かりやすく伝え …

U-NEXT
架空映画館 by ReallyLikeFilms Online
【Cinemarche】今週のおすすめ映画情報
凱里(かいり)ブルース|2020年6月6日(土)よりシアター・イメージフォーラムほかにて全国順次ロードショー予定!
映画『異端の鳥』2020年10月9日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国公開
映画『朝が来る』2020年10月23日(金)より全国公開
ドラマ『そして、ユリコは一人になった』
【玉城ティナ インタビュー】ドラマ『そして、ユリコは一人になった』女優として“自己の表現”への正解を探し続ける
【ビー・ガン監督インタビュー】映画『ロングデイズ・ジャーニー』芸術が追い求める“永遠なるもの”を表現するために
オリヴィエ・アサイヤス監督インタビュー|映画『冬時間のパリ』『HHH候孝賢』“立ち位置”を問われる現代だからこそ“映画”を撮り続ける
【べーナズ・ジャファリ インタビュー】映画『ある女優の不在』イランにおける女性の現実の中でも“希望”を絶やさない
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
アーロン・クォックインタビュー|映画最新作『プロジェクト・グーテンベルク』『ファストフード店の住人たち』では“見たことのないアーロン”を演じる
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
【平田満インタビュー】映画『五億円のじんせい』名バイプレイヤーが語る「嘘と役者」についての事柄
【白石和彌監督インタビュー】香取慎吾だからこそ『凪待ち』という被災者へのレクイエムを託せた
【Cinemarche独占・多部未華子インタビュー】映画『多十郎殉愛記』のヒロイン役や舞台俳優としても活躍する女優の素顔に迫る
日本映画大学
国内ドラマ情報サイトDRAMAP