連載コラム「邦画特撮大全」第24章
2020年に公開予定のハリウッド映画『ゴジラVSコング』。ゴジラとキングコングの2大怪獣がスクリーンをリングに激突するのです。
しかし半世紀前にゴジラとキングコングはすでに戦っていました。
そのタイトルマッチが今から56年前に公開された『キングコング対ゴジラ』(1962)です。
日本のゴジラとアメリカのキングコング。半世紀前に繰り広げられた2大怪獣の戦いを、『ゴジラVSコング』の公開前に振り返ってみましょう。
『キングコング対ゴジラ』の作品概要
本作は東宝創立30周年記念作品。ゴジラシリーズ第3作目で初のカラー作品です。
監督は本多猪四郎、特技監督は円谷英二、脚本は本作がゴジラシリーズ初参加となった関沢新一です。
本作の観客動員数は1255万人で、この記録はゴジラシリーズ史上最大のものです。
1962年の日本の人口が9583万人ですので、約7人に1人の日本人が公開当時に本作を鑑賞していた計算になります。
本作の元になったのはウィリス・オブライエンによる『キングコングVSプロメテウス』という企画で、そもそもはキングコングとフランケンシュタインの怪物が戦うというものでした。
アメリカ本国の映画会社のみならず日本にもこの企画が売り込まれ、本作『キングコング対ゴジラ』に結実したのです。
また当初の企画に登場したフランケンシュタインの怪物の要素は、後に『フランケンシュタイン対地底怪獣』(1965)として結実します。
本作の主演は高島忠夫。高島の飄々とした雰囲気や有島一郎と大村千吉ら脇役の持ち味も相まって、本作はゴジラシリーズの中でもコメディ色が強い娯楽作となっています。
ちなみに高島忠夫の息子である高嶋政宏は『ゴジラvsメカゴジラ』(1993)と『ゴジラvsデストロイア』(1995)に、同じく高嶋政伸も『ゴジラvsビオランテ』(1989)に出演しています。
またヒロイン役で出演したのが浜美枝と若林映子。海外公開された本作がきっかけで、2人は『007は二度死ぬ』(1967)のボンドガールに選ばれました。
アメリカを代表する怪獣・キングコング
『キングコング』(1933)
アメリカを代表する怪獣・キングコング。彼の初登場作品はRKO製作の映画『キングコング』(1933)です。
監督はメリアン・C・クーパーとアーネスト・B・シュードサックです。シュードザックは後に、続編『コングの復讐』(1933)や『猿人ジョー・ヤング』(1949)などを監督しています。
初代キングコングは人形によるストップモーション・アニメで表現されました。
この特殊効果を担当したのがストップモーション・アニメの先駆者で、レイ・ハリーハウゼンの師匠でもあるウィリス・オブライエンです。
前述したように本作の元になった企画も彼の手によるものでした。
円谷英二は『キングコング』の特撮に衝撃を受け、フィルムを取り寄せて1コマ1コマを分析・研究したそうです。
初代『ゴジラ』(1954)の際に円谷は、キングコング同様にゴジラをストップモーション・アニメで表現しようと意欲を見せました。
しかし予算の都合上ゴジラは、ご存じの通り着ぐるみで表現されることになりました。
本作『キングコング対ゴジラ』に登場するキングコングも、ゴジラと同じく着ぐるみで表現されています。
また初代キングコングは南洋の髑髏島に棲んでいましたが、見世物にされるためニューヨークに連れてこられたという設定です。
『キングコング対ゴジラ』に登場するキングコングの方は、ソロモン諸島のファロ島に棲む巨猿で、島民から“巨大なる魔神”として畏れられています。
キングコングが日本へ連れてこられた理由は、日本の企業・パシフィック製薬が自社提供のTV番組の視聴率不振を打破するためです。
細かい設定は違いますが、南の島から見世物として都会へ連れてこられたという物語の大枠は両作とも共通しています。
また初代キングコングで有名なシーンがエンパイア・ステート・ビルでのクライマックスです。
キングコングが女優アン・ダロウを手に掴みエンパイア・ステート・ビルに上る場面は、『キングコング対ゴジラ』でも踏襲されています。
『キングコング対ゴジラ』では浜美枝が演じるヒロインをさらって国会議事堂によじ登るシーンがあります。これは初代キングコングへのオマージュです。
『キングコング対ゴジラ』の後、日本では『キングコングの逆襲』(1967)が製作されました。
『キングコング:髑髏島の巨神』(2017)
本国アメリカでもジョン・ギラーミン監督による『キングコング』(1976)と続編『キングコング2』。ピーター・ジャクソン監督による『キング・コング』(2005)。
昨年2017年に公開された『キングコング:髑髏島の巨神』など、数多くのリメイク作品、リブート作品が製作されています。
ゴジラとキングコング・世紀の一戦!!
ゴジラとキングコングの対決はプロレスを模して作劇・演出されています。これは1957年に行われたプロレス世界選手権争奪戦、力道山とルー・テーズによる対戦を参考にしたためです。
まず本作の題名である『キングコング対ゴジラ』。
対決する怪獣の名前をそれぞれ入れて“対”や“VS”といった文字で結ぶのは、プロレスのタイトルマッチからの引用です。
ゴジラシリーズは本作以降、怪獣同士の戦いがメインとなり題名も本作のような「ゴジラ対 (相手の怪獣)」といったものが多用されることになります。
また劇中で高島忠夫がゴジラとキングコングの対決を「世紀の一戦」と表現している他、「やりますか2回戦?」などプロレスを思わせる台詞も頻出します。
怪獣同士の戦いの間に「どっちが勝つかな?」などと野次馬が言い合う場面も、プロレスの観客を思わせます。
まとめ
キングコングとゴジラによる怪獣同士の戦いはプロレスを参考に表現されました。
結果本物のプロレスさながらに、手に汗にぎる一大娯楽傑作となったのです。
またゴジラとキングコングの対決以外にも、北極海の氷山から登場するゴジラや、実際のタコを使って撮影された大ダコなど見所がたくさんある作品です。
次回の邦画特撮大全は…
次回の邦画特撮大全は『ゴジラ対へドラ』(1971)を特集します。
お楽しみに。