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Entry 2020/11/10
Update

『私をくいとめて』のんと大九明子監督が歓喜。東京国際映画祭にて観客賞を受賞|TIFF2020リポート5

  • Writer :
  • 石井夏子

第33回東京国際映画祭は2020年10月31日(土)~11月9日(月)開催。

2020年10月31日(土)に開幕したアジア最大級の映画祭・第33回東京国際映画祭が、11月9日(月)に閉幕を迎えました。

コンペ部門を廃止した今年は、ショーケース部門「TOKYOプレミア2020」の中から観客の投票により、観客賞に『私をくいとめて』が決定。

クロージングセレモニーには、受賞作品よりのん、大九明子監督が登場しました。

セレモニー後に行われた受賞者記者会見の模様とあわせて、セレモニーの様子をお伝えします。

【連載コラム】『TIFF2020リポート』記事一覧はこちら

クロージングセレモニーの概要

(c)2020 TIFF

【イベント名】
第33回東京国際映画祭 クロージングセレモニー

【開催日時】
2020年11月9日(月)17:00~18:00

【会場】
TOHOシネマズ 六本木ヒルズ スクリーン7(東京都港区六本木6丁目10-2)

【登壇者】
のん、大九明子監督(観客賞/東京都知事賞受賞作品『私をくいとめて』より)、
柳楽優弥、田中泯、橋本一監督、河原れん(クロージング作品『HOKUSAI』より) 
安藤裕康(第33回東京国際映画チェアマン)、多羅尾光睦(東京都 副知事)、武井雅昭(港区 区長)、

『私をくいとめて』受賞者スピーチ紹介

大九明子監督

(c)2020 TIFF

「このようなすばらしい賞を受賞しましてありがとうございます。観客賞を受賞するのは2度目となります。3年前に『勝手にふるえてろ』で頂戴したときと世界は全く違っていまして、この映画祭も全く違う形となりました。いろいろな映画祭がリモートや配信で行う中でTIFFが実際にお客様をお入れして、同じ劇場で同じ時間で一緒にスクリーンに向かって映画を観るという体験を実現させたの は本当に素晴らしいことだと思います。まだまだ出歩くことが安心できない不安な中で、チケットを取っていただき劇場まで足を運ん でいただいて、映画をご覧いただき点数を入れてくださった、お一人お一人の貴重な一票が私どもにこの賞をくださったと、いつも以上に感慨ひとしおです。早くひとりひとりのお客さんと直接握手をしたり、お話をしたりできれば良いなとお祈りしております。」

主演・のん

(c)2020 TIFF

「このような素敵な賞をいただきありがとうございます。毎年設けられている賞だと思いますが、今年は唯一の賞ということで、観客の皆さんに応援いただいた作品ということに嬉しく思っております。私事ではあるのですが、この作品で何年振りかの主演映画で大九監督に呼んでもらいこの映画に参加させていただき、本当に心から喜びでいっぱいです。スタッフ、キャストと代表して監督と二人で感謝の気持ちを伝えたいと思います。映画というのは、本当に観客の方々に見ていただいて初めて完成するものだと思います。今回この賞を大切に受け止めたいと思っています。」

キャスト・林遣都代読

(C)2020「私をくいとめて」製作委員会

「この度は観客賞受賞の連絡を聞きとても驚いております。本日は残念ながら登壇出来ませんが、劇場に足を運んで投票してくだ さった皆様、心より感謝申し上げます。ありがとうございます。そして大九監督おめでとうございます! この作品の細部に散りばめられた監督やスタッフの皆さんの強いこだわり、そして情熱が多くの人に届いたんだなと思うと嬉しい気持ちでいっぱいです。スクリーンから大九組のあのワクワクする空気感を皆さんにもっと味わって頂ける日を楽しみにしています。」

キャスト・橋本愛代読

(C)2020「私をくいとめて」製作委員会

「見てくださった皆様のお力添えに感謝します。この映画も、自分にとっても、映画界全体も、良き未来を作り上げていくために、大きな一歩になったと思っています。何より楽しんでいただけたことが、心から嬉しいです。また、大九監督とのんさんに、本当におめでとうって言いたいです。」

受賞者記者会見の概要

(c)2020 TIFF

【イベント名】
第33回東京国際映画祭受賞者記者会見

【開催日時】
2020年11月9日(月)19:00~

【会場】
TOHOシネマズ 六本木ヒルズ スクリーン2(東京都港区六本木6丁目10-2)

【登壇者】
のん、大九明子監督(観客賞/東京都知事賞受賞作品『私をくいとめて』より)

受賞者記者会見レポート

(c)2020 TIFF

昨年まで実施していた「インターナショナルコンペティション」、アジアの新鋭監督を集めた「アジアの未来」、日本映画の気鋭作品をそろえた「日本映画スプラッシュ」の3部門を1つの部門に統合し、「TOKYOプレミア2020」とした2020年の東京国際映画祭。

その中の全作品を対象に、観客の投票により「観客賞」を受賞した『私をくいとめて』。

主演ののんと、大九明子監督が、受賞記者会見で喜びと今後について語りました。

はじめに

大九監督:今年コロナ禍で様々な困難がある中、栄えある観客賞を受賞しとても光栄です。映画館にくるという喜びをかみしめて、今回私自身もいろいろな作品を拝見させていただきました。まさか、私の映画が観客賞を頂戴できるとは思っていませんでしたが、大変嬉しいです。

のん:黒田みつ子役を演じましたのんです。この度は観客賞という嬉しい賞を受賞し、喜びでいっぱいです。私ごとではあるのですが、何年ぶりかの主演映画で大九監督に呼んでいただいて、この映画に参加することができて心から嬉しいです。映画は観客の皆さんがいて初めて完成すると思っているので、たくさんの方に届いたのだという印の観客賞をいただいき感謝の気持ちでいっぱいです。本当にうれしいです。ありがとうございます。

映画祭におけるコンペについて

──今年はコロナの影響でコンペを廃止し観客賞を据えたのですが、映画祭におけるコンペについてどう思われますか?また大九監督はご自身も、これまで審査員として映画祭にご参加されていますが、今後TIFFが良くなるためにはどういうものが必要だと思われますか?

大九監督:コンペの賞と言うものは、これまでいただいたことが全くございません。観客賞はコンペに入っていただいたものではあります。コンペという形で審査員をした経験もあるが一言でいうと大変不確かな賞だと思います。どういう審査委員が何人いて…と些細な違い結果がすごく変わってきますし、審査員の声の大きさでも変わってきます。だからこそ映画的だともいえるかもしれません。

映画祭の課題については3年前も同じことを言った気がしますが、若者が少ない、これに尽きると思います。もちろんエイジレス、ジェンダーレスな状態で楽しむのが映画祭だと思うのですが、P&Iの上映に足を運ぶと若者がほとんどいない。

私たち制作者にとってP&Iのみなさんはお客さんへの架け橋ですので、若い方々も必要なんです。若い世代がこれまでの映画界を見直し、壊すところは壊すなり、守るところは守るなりして受け継いでいってほしいと思っています。

もちろんいくつになっても映画を楽しんで、そこに学問を見出し、研究し、情熱をかける大先輩方の一生懸命ゆっくり歩きながら席につくお姿を見て、心が震えますし、そういう方を追いかけて映画を作りたいとも思っています。

のんにとっての女優業とは?

(c)2020 TIFF

──のんさんへ、さきほどの挨拶の言葉からも映画に久しぶりに主演した喜びや強い思いを感じるができました。のんさんにとって映画とは?また女優業とは何ですか?

のん:私は本当に女優のお仕事が大好きで、ここに一生いたいと思っています。10代の時に一度、もし女優をしていなかったら何をしていたんだろうと考えたことがありましたが何も思い浮かびませんでした。実家にいる妹に尋ねてみたら、「その辺でのたれ死んでいると思う」と言われて、やばいやばいって(笑)。

これは自分の生きる術だと思って気持ちが固まった。主演映画というのは本当に特別です。まずたくさん出番があって、一番セリフがある。ずっと大好きな演技をしていられるということが至福です。

また映画は、本当にたくさんの方々の技術と脳を集結させて一つのシーンを作り上げていく、たくさんの人が一点を見つめて同じ目標に向かっていくという感覚が本当にたまらないです。主演はもちろんくたびれることもあるけど、良いものが撮れた時の感覚は他では味わえないです。

コロナ禍における映画の意義

──コロナ禍における映画祭に参加する意義、参加してみていかがですか?映画製作の現場も大変な状況下と思いますが、この状況で製作する意義はなんでしょうか?

大九監督:今回TIFFがリアルで開催する道を選んだのは勇気ある選択。命より大事なものは何もないですから、スタッフの皆さんから緊張感を感じました。その中でチケットを買って、電車に乗ってわざわざ足を運んでくれた方たちの想いに報いたいと思って、どうぞ面白かったと思っていただけますようにと祈るような気持ちでした。

この作品は3月中旬クランクイン、4月中旬クランクアップの予定でしたが、4月の頭に緊急事態宣言が発令され、撮影中断を余儀なくされました。約2カ月ほど中断し、その間に脚本を書き直したりもしました。

緊急事態宣言が明けたあとの撮影現場では、毎日体温を測る、フェイスシールドをつけるなど、自発的に皆で知恵を出し合って健康を守りながら撮影を敢行しました。

映画館も閉まり、不要不急という言葉が飛び交いましたが、映画は不要でも不急でもないと信じたいし思いたいので、今後も各製作者が細心の注意を図りながら作り続けていくべきだと信じています。

「女性監督」であるということ

(c)2020 TIFF

──今年の東京国際映画祭の出品作品の女性監督の割合は 16.7%と、まだまだ少ないように感じますがいかがですか?

大九監督:商業映画の世界に入って13年くらいになりますが、当初はもっと女性のスタッフは少なかった。私が監督である時点で、1人女という性がふえるせいか、この組は女性が多いなという声が飛び交ったりしました。その度、「地球のバランスでいったらまだまだです」と言い続けてきました。

その後、映画を作りたいことだけが唯一の欲望なので、お声をかけていただければ嬉しくて、「やります」と返事をして走り続けて気ましたが、その多くの理由は、「女性の監督だからお願いしたい」というものでした。

もちろん性別や国や育ちが全て監督という人間に影響を与えていると思うので、間違いではないと考えていました。それどころか女であるということが個性の一つに言われるなんて有利だな、とも思っていました。

でもそれも本当に数年で終わり、だんだん腹が立ってきました。私は女の人生しか送っていないから女の人としてしか作品を作れないかもしれませんけど、男の監督にもそれを言いますか、と少し生意気に思うようになりました。

きっとこの世に生きる女性なら、そんな思いをしたことが一度でもあると思います。様々な不公平を味わってきて、そういえば、と振り返ってみると私を導いてくれた大事な人はすべて女性でしたね。小学校の時に作文をほめてくれたのも女の先生、四つの時から通っていた書道教室で戦争体験を楽しく話してくれて笑って生きる大切さを教えてくれた書道の先生も女性、商業映画の一本目を取らせてくれたプロデューサーも女性。

なので、私はこれからも女性の後輩にはうんと優しく、たまには厳しくして、彼女たちの個性や才能を照らしていける存在に、そんな大人になりたいなと思っています。

まとめ

(c)2020 TIFF

コロナ渦で、新たな形を模索しながら、映画館でのフィジカルな上映を実施した第33回東京国際映画祭。

イベントはオンラインで開催し、コンペ部門を廃止するなど、さまざまな趣向を凝らしながら、映画館でしか体験できない時間を提供していました。

2021年の東京国際映画祭にも期待が高まりますね。

また、観客賞を受賞した『私をくいとめて』は、2020年12月18日(金)より全国公開となります。ぜひ劇場でお楽しみください。

【連載コラム】『TIFF2020リポート』記事一覧はこちら






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