連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第71回
夢を追う全ての人に捧ぐミュージカル作品『tick, tick…BOOM!:チック、チック…ブーン!』がNetflix配信と劇場公開されました。
35歳の若さで亡くなった原作者ジョナサン・ラーソンの自伝ミュージカル作品を、リン=マヌエル・ミランダが長編映画初監督として手掛けました。
ミュージカル作家を目指すジョナサンは30歳の誕生日目前に、時間を無駄にしている不安や焦りを感じながらも夢を諦められないでいました。
友人や恋人たちは出会ったころから少しずつ変化しているにも関わらず、自分は昔のまま夢を追いかけている。tick,tick…と時を刻む音と共に、彼の人生が作品に刻まれています。
『アメイジング・スパイダーマン1』(2012)、『アメイジング・スパイダーマン2』(2014)、『ハクソー・リッジ』(2016)主演のアンドリュー・ガーフィールドが、夢を追う作曲家ジョナサンを演じています。
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CONTENTS
映画『tick, tick…BOOM!:チック、チック…ブーン!』の作品情報
【公開】
2021年(アメリカ映画)
【原作】
ジョナサン・ラーソン
【監督】
リン=マヌエル・ミランダ
【キャスト】
アンドリュー・ガーフィールド、アレクサンドラ・シップ、ロビン・デ・ヘスス、ヴァネッサ・ハジェンズ、ジョシュア・ヘンリー
【作品概要】
ブロードウェイでロングラン上映『レント』の原作者ジョナサン・ラーソンが、作詞作曲した自伝ミュージカル作品。監督を務めたのはリン=マヌエル・ミランダ。彼の最初の長編映画監督になります。
1990年ニューヨーク若者の街ソーホーのダイナーで、ウェイターとして働きながらミュージカル作家として成功を目指している29歳のジョナサン・ラーソン。
30歳まで残り1週間となり焦りと不安を抱えながらも奮闘するサクセスストーリー。
映画『tick, tick…BOOM!:チック、チック…ブーン!』のあらすじとネタバレ
自己紹介動画が流れ、1990年ニューヨーク、ミュージカル作曲家29歳のジョナサン・ラーソン(ジョン)は、ミュージカルの作曲家を目指しながらダイナーでウェイトレスの仕事をしています。
どこへ行ってもチックチックと音が聞こえてくると話しました。恋人のスーザンのナレーターが始まりまり、”トニー賞やピュリッツァー賞を取るより、亡くなるよりも前”とひと言残します。
シーンはジョンの働くダイナー。あと1週間で30歳になり若さが消えてしまう、8年間の時間を費やしてきました。そして、29歳最後の試聴会「スーパービア」を開くことを、ダイナーの仲間達に話していました。
恋人のスーザンと本屋で、ダイナーを辞める宣言をお店の人にしたと話しました。スーザンは心配した様子でしたが、ジョンは”情熱に導かれた人生を歩むのだ”と言いました。
自分では‟情熱に導かれた人生を歩むのだ”と言っているものの、成功したい焦りでいっぱいでした。
友人のマイケルの紹介が始まります。ジョンと彼と共にニューヨークへ上京、素晴らしい役者だったが、夢を諦め大手広告代理店へ就職し安泰な人生を送っていました。
続いて恋人のスーザンの紹介、中西部育ちで大学まで生物学専攻、学者か教師を目指していましたが、モダンダンスにハマってしまい単身でニューヨークへ向かいます。
4年間の修行後、劇団から誘いがきましたが、リハーサルで骨折。6ヶ月後復帰するものの、迷いが出ました。そして、2人の関係が問題だとジョンは言いました。
ジョンはお金が無いにも関わらず盛大にホームパーティを開きました。マイケルやスーザン、ダイナーの仲間などを集めました。そのパーティの終わりにジョンはスーザンからあることを伝えられます。
スーザンはニューヨークから離れたバークシャー郡にあるジェイコブス・ピロー校のダンスの先生に募集があり、応募し採用されたことを話しました。
そして一緒に引っ越そうと提案します。水曜までに返事をする必要があると伝え、その日は答えが出ないまま終わりました。
翌日、ジョンはマイケルの新居へ向かう車でスーザンとの話をしました。するとマイケルは、広告関連の仕事を誘いましたがジョンは前向きな回答はしませんでした。
到着したマイケルの新居はドアマンがついているほど豪華で、自分との暮らしの差を感じながら現実へ戻ります。
ダイナーにアイラワッツマン劇場の責任者がやってきました。彼は「スーパービア」開催を名乗り出た唯一の業界人です。
曲が完成したか聞かれました。ジョンはいつもならすぐに出来るのにできないと話しました。彼と話している間にジョンはスティーヴン・ソンドハイムのことを思い出していました。
ジョンがミュージカル作曲の学校に通っていた頃に、彼から「曲も歌詞も一級品」と言われたことが励みになっていたことを思い出したのです。
ジョナサンはエージェントのローザと連絡が取れないでいました。彼女は業界で顔が広いため、有名な人を集めてもらう予定になっているのです。
ジョンはエージェントとも連絡が取れない、曲も完成しない。焦りが募るばかりです。そして月曜からついにリハーサルが始まります。
映画『tick, tick…BOOM!:チック、チック…ブーン!』の感想と評価
冒頭のナレーションで、ジョナサンの結末を先に伝えられるため、本人は35歳の若さで亡くなることはわからないとしても、視聴者は本当に彼に時間が無いと思うのではないでしょうか。
早く成功したい、もう時間は無駄にしたくないと焦るジョンを描く本作は、夢追い人には特に突き刺さるものが多いものになっていました。
また、ジョンが焦っていたのは時間だけでなく、周りの変化でした。自分だけが足踏みをしていて、周りは着実に前へ進んでいる。そんな不安は誰しもが感じたことのあるものです。
ジョンは‟30歳”を過ぎると若さは消えるという固定概念に自分で縛られ、それが焦りにも繋がっていました。
このように、‟何歳だからこうあるべき”という自分で勝手に決めたルールが自分を苦しめていることもあると気付かされます。
まとめ
『tick, tick…BOOM!:チック、チック…ブーン!』原作者ジョナサン・ラーソンは、ブロードウェイで大ヒットした『RENT』の作者です。ミュージカル『レント』は2006年に映画化されています。
『tick, tick…BOOM!:チック、チック…ブーン!』は、『レント』がブロードウェイで公演されるよりも更に6年前のストーリーになっています。
ジョナサン・ラーソンは、1996年1月25日に35歳という若さで亡くなっており、念願だったブロードウェイでの公演を見ることはできませんでした。
本作で初監督を務めたリン=マニュエル・ミランダは、『ハミルトン』(2016)『イン・ザ・ハイツ』(2021)で作曲を担当。
『ハミルトン』では作曲だけでなく主演も果たし、ゴールデングローブ賞(ミュージカル部門)で主演男優賞を受賞しています。
本作は、天才作曲家2人の夢の共演作品となっています。
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