連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第74回
映画『真実の穴』は2021年12月2日(木)にNetflixで配信開始された、タイのサスペンスホラーです。
母親の交通事故をきっかけに突如現れた祖父母と暮らすことになった姉妹が、祖父母の家で次々に恐ろしい出来事に巻き込まれるという物語になっています。
監督を務めるのは、ウィシット・サーサナティヤン。2001年の『怪盗ブラックタイガー』の監督から着実に実績をあげ、2011年にはオムニバス映画も手掛けた監督です。
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映画『真実の穴』の作品情報
【配信】
2021年(タイ)
【監督】
ウィシット・サーサナティヤン
【キャスト】
スタッター・ウドムシン、ナッタパット・ニムジラワット、ソンポーブ・ベンジャティクル
【作品概要】
監督のウィシット・サーサナティヤンは、主にCM界で活動していましたが、2001年にタイ映画として初めてカンヌ映画祭に正式出品されたアクションコメディ映画『怪盗ブラックタイガー』で監督デビューを果たしました。
日本公開された映画『ナンナーク』(1999)では、脚本を手がけています。
2011年韓国の釜山映画祭企画で行定勲、韓国のチャン・ジュヌァンらとともにオムニバス映画を手がけたことでも知られています。
映画『真実の穴』ネタバレあらすじ
母のマイと娘のピムとその弟のパットは3人で暮らしています。母親のマイが会社で昇進して喜んでいました。
チア部の部長をしている姉のピム。弟のパットは片足を骨折してギブスをつけていました。
パットの友達のフェイムが家に遊びに来ました。ピムは着替えを覗かれて怒ります。どうにかして部屋から締め出したものの、フェイムはパットの秘密の動画を元にパットを脅してから帰っていきました。
車で仕事から帰っていた母親は、ピムからの着信を確認するために目を離したせいで正面から来た車と衝突してしまいます。
マイの帰りを待っていたピムとパットのもとにマイの父親、ふたりにとっての祖父だと名乗る男が尋ねてきて、事故のことを知らされました。
病院に連れて行かれたふたり。重度の脳震とうで病院に入院しているマイの元に行くと、意識不明のマイがいて祖父と一緒に祖母だと名乗る女性が現れます。
祖母はピムのことを抱きしめますが、パットのことをにらみつけたのでした。自分の孫だと祖父に言われて笑いかけますがどこか不気味です。
ピムとパットには祖父と祖母の記憶はありませんでしたが、促されるままに祖父母らの家に行くことになりました。
祖父母の家に行ったピムとパット。マイが使っていたという部屋には一部がちぎられたマイの写真が飾られた写真立てや赤ん坊の写真がありました。
翌朝、朝食にいくと顔の形に並べられた目玉焼きとホットサンドとウインナーが用意されていました。
食卓で祖父から、祖母は認知症だから、マイが目覚めるまで一緒に暮らして世話をしてほしいと頼まれます。
マイは脳を損傷していて、目覚める確率は50%のみ。経過を見るしかないと診断を受けました。一ピムたちの家で飼っていた猫のラテと荷物をもって祖父母の家に向かったピムとパット。
パットは家の壁に穴が空いているのを見つけます。
覗き込むと、ボロボロのソファーが置かれた部屋が奥にあり、女性の姿が見えました。ピムに話しても後で祖父に伝えようと言うだけでした。
祖父母の家で夕食をとるパットとピム。ラテを外に出したと言う祖母に怒るパット。夕飯を残すことを許してもらえませんでした。
穴があることを祖父母に伝えますがふたりとも見えないと言います。確かにピムとパットには見えているのに。
その晩、ベッドでピムとパットは祖父母は本当に自分たちの祖父母なのかという話になります。マイは2人に祖父母の話を一度もしたことがなかったからです。
翌朝、大量の牛乳を飲み切るように言われるパット。昨夜見つけた穴はふさがっていました。祖母はかかっていない壁時計をみて時間を読み上げます。
学校でパットは、フェイムから家に行くと脅されます。ピムに会うためです。いびられるパットをかばい家には来るなと言うピムでしたが放課後にフェイムは家に来ました。
穴が再び現れ、パットが覗き込むとそこには黒い肌の少女が黒い液体を口から吐き出して立っていました。
驚くパットは穴を覗き込むようにフェイムに促します。フェイムにはその穴は見えませんでしたが壁に目を近づけた途端にフェイムは顔を強く壁に打ち付けました。
鼻を切り、パットが押したからだと怒るフェイム。フェイムはピムのシャワーを浴びる動画を持っていて、それを種にパットとピムを脅していたのでした。
帰宅した祖母は血痕をみてパニックを起こします。パットのことをクリットと呼んで、早く片づけるように怒鳴ります。ピムがなだめて祖母は落ち着きました。
元警官だった祖母は警察に向かいます。マイの事故の相手は不動産王アピワットの息子でチャイユットだということが分かります。
当時チャイユットは飲酒していて、友人が運転したという事でしたが、祖父は信じませんでした。
ピムとパットがふたりで家にいるとき、壁の中から音がしました。ピムが穴を覗き込むと少女が血を流して地面を這っていました。
隣の家に助けに行こうとするピム。パットが覗き込むと頭に穴が開いた少女が手をこまねいていました。
ピムがもう一度穴を覗くと、赤ん坊を抱いた少女が黒い液体を口から吐き出していました。もう二度とこの穴は覗かないようにしようと2人は決めます。
ソファにフェイムが落としていった携帯電話を見つけたピムとパット。ピムは自分のシャワー中の動画があることを確認しました。
その晩、ピムとパットの部屋に穴の中にいた少女が現れます。眠るピムの隣に座り顔を触ろうとする少女。
驚いたパットがシーツをかぶり、もう一度覗くと目の前に少女が立っていました。悲鳴をあげたパットに驚いて起きたピムでしたが、もう少女はいませんでした。
翌朝鼻血を出して寝込むパット。祖母が牛乳をもって部屋にやってきます。祖母がパットのスケッチブックを見ていると、パットが描いた覚えのない少女の絵が描かれていました。それを見てパニックになる祖母。
祖母が部屋から出て行ってからパットは牛乳をこぼしてしまいます。こぼれた牛乳を猫のラテがなめていました。
学校でチア部のキャプテン発表が行われました。現キャプテンのピムが引き継ぐことになります。その後、親友のパエウが実はピムのシャワー動画を撮って、フェイムに送っていたことをフェイムの携帯アプリの履歴から知ったピムは問い詰めます。
ピムに嫉妬心があり、やったのだと白状するパエウ。コーチからも糾弾されて、パエウは黙り込みます。
祖父は飲酒運転中のチャイユットを追い詰め、殴ったうえ制裁だと言って火をつけます。
一方でマイが病室で目覚めます。父親がお見舞いに来たことや、ピムとパットが彼らと一緒に暮らしていることを聞いて、早く助けなければとパニックを起こします。
家にいた祖父母とパットとピム。穴の裏から音が聞こえ始めます。ピムが穴を覗き込むと、15年前の家の中の様子が見えました。
マイにはピムを生む前にピニャという名前の娘がいました。顔半分が奇形で腫れていたその少女は穴から見えていた少女でした。
映画『真実の穴』の感想と評価
覗いた穴の中で見えたおそろしい光景。その裏に隠された謎に迫るとともに、家族の秘密が明かされていくサスペンスホラー映画となっています。
今まで会ったことのなかった祖父母宅で巻き起こる恐怖というと、設定がよく似たM・ナイト・シャマランの『ヴィジット』を連想させます。
特に前半は、姉のピムと弟のパットの前に現れた祖父母らの不気味さが際立っていました。家に母親のマイの写真があったことや、特徴的な朝食が共通点で祖父母なのだろうと考えられるものの、もし赤の他人だったら…という恐怖心が駆り立てられます。
祖母の奇怪な行動や支離滅裂な発言はいかにも不気味で、主人公の姉弟がまだ学生なこともあって自力では逃げ出せないという緊張感が張り詰めていました。
ただ『ヴィジット』と違うのは、穴の中に恐ろしい光景が見えることで、そこから家族の秘密や過去に物語が展開していくところです。
そして中盤には姉ピムと弟パットの2人が隠していた秘密が明かされます。本作のテーマはタイトルにもなっている「真実」です。
家族誰もが持っていた秘密の真相が少しずつ明かされていくので、先が気になって食い入るように観てしまうかと思います。
クライマックスにかけて明かされる驚愕の事実。この種明かしがひと筋縄ではいかないところが見どころです。
ホラーらしいぞっとするような映像もありつつ、人間の醜さやしたたかさを描いたサスペンスとしても楽しめる作品だといえるでしょう。
まとめ
全体的に不穏な展開が漂い、先の展開が最後まで読めないのが本作の魅力の一つです。
タイ映画独特のエンタメ感は、派手なアメリカンホラーやじっとりしたジャパニーズホラーとも違った面白みがあります。
濃厚なサスペンスに考えを巡らせているうち、ぞっとさせられる快感を味わえる映画だといえるでしょう。ラストシーンの何とも言えない感覚は絶品です。