連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile158
2019年、映画スタジオ「フォックス・サーチライト・ピクチャーズ」はディズニーの傘下へ。
社名を「サーチライト・ピクチャーズ」に改めながらも、作風は決して変わることなく心に投げかける映画を作り続けています。
今回は映像配信サービス「Disney+」によって配信された「サーチライト・ピクチャーズ」の新たなホラー映画『ナイト・ハウス』(2022)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
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CONTENTS
映画『ナイト・ハウス』の作品情報
【日本配信】
2022年(Disney+独占配信)
【原題】
The Night House
【監督】
デヴィッド・ブルックナー
【脚本】
ベン・コリンズ、ルーク・ピョトロフスキー
【キャスト】
レベッカ・ホール、サラ・ゴールドバーグ、ステイシー・マーティン、エヴァン・ヨニグケイト、ヴォンディ・カーティス=ホール、アンバー・アン
【作品概要】
『ザ・リチュアル いけにえの儀式』(2018)のデヴィッド・ブルックナーが手がけ、サンダンス映画祭でワールドプレミアが行われたホラー映画。
『それでも恋するバルセロナ』(2009)の演技で高い評価を受け、『ゴジラvsコング』(2021)にも出演したレベッカ・ホールが主演を務めました。
映画『ナイト・ハウス』のあらすじとネタバレ
夫のオーウェンを自殺で失ったベス。
湖畔の家で1人オーウェンの思い出に浸る夜を過ごすベスは外からの異音で目を覚ましますが、人影だけが見えその場には誰もいませんでした。
翌日、教師の仕事から帰宅し、妻を昔に失った隣人のメルに挨拶をしたベスは早朝に聞こえた銃声についてメルに聞きますが、彼は身に覚えがないようでした。
家の中でオーウェンの遺品から家の見取り図を見つけたベスは彼が「カエルトロイア」と書き残していたり、家の反転見取り図を作っていたことを知ります。
夜、突如オーウェンから「会いたい」とメッセージが届き、混乱するベスは彼に電話をかけると窓から湖畔に佇むオーウェンの姿を目撃。
気がつくと朝になっており、昨夜のメッセージもスマートフォンから無くなっていました。
メッセージの有無を確認するためオーウェンのスマートフォンを付けたベスはそこに自分以外の女性が写った写真を見つけます。
親友のクレアは遠目に写った写真であることからその写真はベス本人であると言いますが、ベスはこの写真がオーウェンの浮気相手だと疑っていました。
クレアの誘いで飲み会に参加したベスは同僚に、鬱を患っていたのは自分でありオーウェンは鬱では無かったと言います。
遺書を見たいと言われたベスは「君は正しい」「君を追いかけるものは何もない」「もう安全だ」とオーウェンの字で書かれた遺書を見せますがベスも含め誰もその意味は分かりませんでした。
酔い潰れ、クレアに家に送られたベスは実はオーウェンの遺書の意味がわかると告白。
ベスは学生時代に事故に遭い心停止した過去があり、その時に何も感じなかったことから死後の世界を否定していました。
オーウェンは死後の世界を信じており、彼の遺書に書かれた「君は正しい」が死後の世界についてのことではないかと考えていたのです。
すると突然、クレアがいなくなり家中にベスを呼ぶ騒音が響きます。
家を出たベスは湖に飛び降りていく複数の女性や湖の対岸に存在しないはずの邸宅を見つけ、ボートで対岸に向かいます。
邸宅ではオーウェンが自身と特徴の似た女性と関係を持っている様子が見え、気がつくと朝になっていました。
ベスはオーウェンのスマートフォンのデータを全てチェックすると、オーウェンが自分と特徴の似た女性の写真を数多く撮っていたことを知ります。
夜に邸宅を見た場所に向かうベスは森の中で自身の家と良く似た構図の家を発見します。
森の中を良く知るメルに詰問すると、オーウェンが女性と森の中に入っていく様子を何回か目撃しており、オーウェンが「強い衝動」に悩まされていることを聞いていましたがメルは「衝動」の内容を聞き出すことはできていませんでした。
オーウェンの所持品を調べるベスは森の中の家から見つけた人形が生贄の儀式に必要なものであると知り、心配を強めていきます。
映画『ナイト・ハウス』の感想と評価
夫の自殺の真相を暴くオカルトミステリー
夫のオーウェンが前兆なく自殺し、湖畔の家にただ一人残された教師のベス。
彼女がオーウェンとの思い出に浸りながらも夜中に起きる怪現象に悩まされ、心を乱していく様子が描かれる本作。
序盤こそ主人公が怪現象に見舞われるオカルトを中心となりますが、中盤から物語は徐々にオーウェンの自殺の真相を探る方向へとシフトしていきます。
自分の知らない家族の秘密が明らかになるとき、ベスはどんな決断を迫られることになるのか。
鑑賞者の気持ちを揺さぶるオカルトミステリー作品でした。
さまざまな伏線から導き出される真相
物語の中盤以降、次々と明らかになっていくオーウェンの抱えていた「衝動」。
それは一度心肺停止し蘇生した過去を持つベスに見惚れた「何か」が、彼女を死に追いやるためにオーウェンに彼女を殺害させようと導いていたものでした。
オーウェンは「何か」の狙いに気づき、ベスを守るために彼女に似た女性を殺害することで「何か」を誤魔化すことに終始します。
彼が生前に調べていた「カエルトロイア」は芝の迷路であり、その昔は悪霊を迷い込ませるために作られたものでした。
オーウェンはさまざまな「何か」の誘導方法を考案した結果、自分とベスの住む家と瓜二つの家を森の中で作り、その家の中でベスに似た女性を殺害することで「何か」を騙す行動を取っていました。
しかし、時間が経ったことで「何か」にオーウェンの誤魔化しが露見すると、オーウェンはベスを守るために自殺。
そして「何か」はオーウェンの死を使い、夜な夜なベスを追い詰めることで彼女を自殺に追い込もうとしていたのです。
序盤のさまざまな伏線が終盤に繋がる、考察好きにオススメのホラー映画です。
まとめ
夜は幻覚と現実が交差し、昼には夫の残した不自然な遺品と彼の行動が明らかになっていく。
中盤までは頭の中にたくさんの疑問符が生まれてしまう物語ですが、中盤から終盤に差し掛かるに連れてその疑問符が恐るべき真相に繋がっていきます。
恐ろしいながらも驚愕の愛の形が明らかになる、ホラーでありミステリーであり、そしてヒューマンドラマでもある映画『ナイト・ハウス』。
「サーチライト・ピクチャーズ」らしい、心に投げかける新感覚の映画でした。