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『帰って来たドラゴン』あらすじ感想と評価考察。‟伝説のアクション俳優” 倉田保昭出演の幻のカンフー映画が《2Kリマスター版》で劇場に降臨!【すべての映画はアクションから始まる46】

  • Writer :
  • 松平光冬

連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第46回

日本公開を控える新作から、カルト的に評価された知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を時おり網羅してピックアップする連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』。

第46回は、2024年7月26日(金)より新宿武蔵野館ほかにて全国公開される『帰って来たドラゴン』

日本が誇るアクション映画界のレジェンド・倉田保昭が出演した1974年製作のヒット作が、2024年に「倉田保昭日本凱旋50周年」2Kリマスター99分完全版としてリバイバル上映されます。

【連載コラム】『すべての映画はアクションから始まる』記事一覧はこちら

映画『帰って来たドラゴン』の作品情報


(C)1974 SEASONAL FILM CORPORATION All Rights Reserved.

【日本公開】
1974年(香港映画)※2024年リバイバル公開

【原題】
神龍小虎闖江湖(英題:Call Me Dragon)

【製作・監督・脚本】
ウー・シーユエン

【共同脚本】
タン・ロー

【撮影】
チュン・ケイ

【音楽】
チョウ・フクリョン

【アクション監督】
ブルース・リャン

【キャスト】
ブルース・リャン、倉田保昭、マン・ホイ、ウォン・ワンシー、ハン・クォーツァイ、ディーン・セキ、チャオ・ナン

【作品概要】
1970年代前半から数多くの香港映画に出演し、2000年代以降も精力的に活躍するアクション映画のレジェンド・倉田保昭出演の1974年製作のカンフーアクション。

敵役を演じた倉田と、香港アクション映画で活躍したブルース・リャンによる、縦横無尽のバトルが話題となり大ヒットを記録しました。

その他のキャストに『蜀山奇傅・天空の剣』(1987)のマン・ホイ、『男たちの挽歌II』(1987)のディーン・セキ。製作・監督・脚本を、ジャッキー・チェンやジェット・リーといったスターの主演作を数多くプロデュースしたウー・シーユエンが手がけました。

日本では1974年3月に初公開され、「倉田保昭日本凱旋50周年」に相当する2024年に、現存する最良の99分完全版マスターから2K化を行ったバージョンがリバイバル公開されます。

映画『帰って来たドラゴン』のあらすじ


(C)1974 SEASONAL FILM CORPORATION All Rights Reserved.

清朝末期。悪党のイム・クンホーが支配し、麻薬や人身売買などあらゆる犯罪が渦巻く金沙村(ゴールド・サンド・シティ)。

この村に、悪を懲らしめながら旅を続けるドラゴン一行と、伝説の女格闘家イーグルが集います。彼らの目的は、チベットの寺院から盗まれたという秘宝「シルバー・パール」でした。

加えて、イムを訪ねて殺人空手の使い手ブラック・ジャガーも出現。盗まれたシルバー・パールを巡り、強者・曲者たちの激闘が火ぶたを切るのでした…。

“和製ドラゴン”倉田保昭の代表作がリバイバル上映


(C)1974 SEASONAL FILM CORPORATION All Rights Reserved.

ブルース・リーが大ブレイクを果たす1970年代前半から数多くの香港アクション映画に出演し、1974年からは日本で『闘え!ドラゴン』(1974)や『Gメン‘75』(1975~79)などのテレビドラマで人気を博した、“和製ドラゴン”こと倉田保昭。

ジャッキー・チェン、サモ・ハン、ジェット・リー、ドニー・イェンといった香港のアクションスターたちとスクリーン上で拳を合わせ、2000年代に入っても『マンハント』(2018)、『ゴールデン・ジョブ』(2020)などの話題作に出演するなど、半世紀以上にわたり精力的に活動を続けています。

そんな彼の全盛期ともいえる1974年に製作された本作『帰って来たドラゴン』。ブルース・リー亡き後、香港アクション映画界を盛り上げていたブルース・リャン演じる主人公・ドラゴンの敵ブラック・ジャガーを演じ、香港や日本で大ヒットしました。

本作はこれまでにビデオ及びDVD化はされてはいたものの、マスターのネガフィルムの劣化により劇場公開やHD化が難しい状態でした。しかし製作・監督のウー・シーユエン自ら、倉田の日本凱旋50周年を祝して最良のビデオ素材を2K化したバージョンを作成、この度のリバイバル上映が実現しました。

走る!登る!降りる!武器使用!縦横無尽のリアルアクション


(C)1974 SEASONAL FILM CORPORATION All Rights Reserved.

本作が製作された73~74年時の香港アクション映画界はブルース・リーブームが席巻。そのリーが73年7月に亡くなって以降は、彼を模した作品であふれかえっていました。

ブルース・リーと同じアクションでは観客に飽きられる――倉田、主演兼アクション監督のリャン、そしてシーユエン監督の3人は、盗まれたチベットの秘宝を巡る争奪戦をストーリーの軸として、アクションのアイデアを凝らすことに。

「ブルース・リーは一撃で倒すから、コッチは何発もやろう、それでやられたら今度は追いかけたり逃げたり、そういうスピード感でやろうとしたんですね。しかし今一つ売りのアクションがない。それで今度は壁と壁との間を足で登るアクションを考えたんです。二、三日練習しましたね」(「映画秘宝Vol.3 ブルース・リーと101匹ドラゴン大行進!」洋泉社・刊)

倉田がこう述懐するように、クライマックスでの倉田とリャンのバトルはまさに縦横無尽。走っては殴り蹴り、狭い壁の間を足の跳躍で登った状態で闘い、屋上に上がったかと思えば落下し、また走っては殴る蹴るという、あえて例えればバトル版『SASUKE』といった様相を呈しています。

さらには倉田がトンファー、リャンがヌンチャクという、それぞれ異なる武器を使ったアクションも。ヌンチャクといえば倉田が生前のリーにプレゼントしたというエピソードがありますが、ここでの倉田は日本から取り寄せた本物のトンファーを使用。一方のリャンのヌンチャク裁きは、本家のリーを凌駕していると言っても過言ではないでしょう。

そのリャンが繰り出す足技にも触れないわけにはいきません。円熟期に出演した『カンフーハッスル』(2005)や『燃えよ!じじぃドラゴン 龍虎激闘』(2013)での足技にも驚かされたものですが、倉田同様に、全盛期に出演した本作で披露されるその脚力は圧巻です。

『夢物語』(2023)予告

24年6月公開の主演作『ライド・オン』のPRで久々に来日したジャッキーと旧交を温め、サモ・ハンやジョン・ウー監督とも現在進行形でコンタクトを取っているという倉田保昭。近作の短編『夢物語』(2023)と『夢物語その2』(2024)では、喜寿を超えた彼の衰え知らずなアクションが見られます。

CG、ワイヤーといった現在のアクション映画に不可欠な特殊効果がまったくない時代に製作された『帰って来たドラゴン』。倉田やリャンらレジェンドが織りなす、すべてが生身、すべてがリアルなアクションを堪能しましょう。

次回の『すべての映画はアクションから始まる』もお楽しみに。

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松平光冬プロフィール

テレビ番組の放送作家・企画リサーチャーとしてドキュメンタリー番組やバラエティを中心に担当。主に『ガイアの夜明け』『ルビコンの決断』『クイズ雑学王』などに携わる。

ウェブニュースのライターとしても活動し、『fumufumu news(フムニュー)』等で執筆。Cinemarcheでは新作レビューの他、連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』『すべてはアクションから始まる』を担当。(@PUJ920219

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