連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第23回
日本公開を控える新作から、カルト的に評価された知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を網羅してピックアップする連載コラム、『すべての映画はアクションから始まる』。
第23回は、2021年2月26日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開予定のダニエル・ラドクリフ主演作『ガンズ・アキンボ』です。
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CONTENTS
映画『ガンズ・アキンボ』の作品情報
【日本公開】
2021年(イギリス・ドイツ・ニュージーランド合作映画)
【原題】
Guns Akimbo
【監督・脚本】
ジェイソン・レイ・ハウデン
【製作】
ジョー・ニューローター、フェリペ・マリーノ、トム・ハーン
【製作総指揮】
マイケル・メイリス、サイモン・ウィリアムズ、シルビア・シュミット、ジョン・ジェンクス、ジョー・シンプソン、ジェイ・テイラー、ウィル・クラーク、アンディ・メイソン、マイク・ルナゴール、シュテファン・カペラリ、エイドリアン・ポリトウスキー、バスティアン・シロド、ウィリアム・V・ブロミリー、シャナン・ベッカー、ネス・サバン
【撮影】
ステファン・シューペック
【キャスト】
ダニエル・ラドクリフ、サマラ・ウィーヴィング、ネッド・デネヒー、ナターシャ・リュー・ボルディッゾ、リス・ダービー、マーク・ロウリー
【作品概要】
「ハリー・ポッター」シリーズ(2001~11)、『プリズン・エスケープ 脱出への10の鍵』(2020)のダニエル・ラドクリフ主演によるガン・アクション。
ラドクリフ演じる両手に拳銃が固定された状態になった男マイルズが、エクストリームなデスゲームに参加させられていきます。
主な共演者に、謎の女殺し屋ニックス役に『レディ・オア・ノット』(2019)のサマラ・ウィービング、マイルズの元恋人ノヴァ役に『ホテル・ムンバイ』(2018)のナターシャ・リュー・ボルディッゾ。
監督・脚本を、長編デビュー作となるコメディホラー『デビルズ・メタル』(2016)で注目されたジェイソン・レイ・ハウデンが担当します。
映画『ガンズ・アキンボ』のあらすじ
ゲーム会社のプログラマー、マイルズはネットの掲示板やコメント欄に過激な書き込みをする”ネット荒らし”をすることで、仕事の憂さ晴らしをしていました。
その日もマイルズは、街を舞台に殺し合いをさせ、それを視聴する人気の闇サイト「スキズム」でいつものように攻撃的なコメントの書き込みに終始。
ところが、この目に余る荒らしコメントに激怒したサイトを管理する闇の組織のボスのリクターは、IPアドレスからマイルズの住所を突き止め、襲撃します。
気絶させられた後、目を覚ましたマイルズでしたが、両手がボルトで拳銃が固定された状態に。
リクターは「スキズム」に参加し、最凶の殺し屋ニックスと戦って24時間以内に仕留めろと、マイルズに命じます。
人殺しなどしたことのないマイルズが、悪戦苦闘の末に待ち受けるものとは!?
クソリプ大好きダニエル・ラドクリフがクソゲーに挑む?
「ハリー・ポッター」シリーズでのタイトル・ロール役で、一躍人気スターとなったダニエル・ラドクリフ。
ですが「ハリポタ」完結後の彼は、アクの強い役どころの作品をあえて選んで出演している感があります。
『ホーンズ 容疑者と告白の角』(2015)では頭に角が生えてしまう無実の殺人容疑者役を、『スイス・アーミー・マン』(2016)では無人島で役に立つ死体という奇抜すぎる役を演じました。
加えて、「壮絶な状況下から生死をかけて脱出を図る」役どころも目立っており、『ジャングル ギンズバーグ19日間の軌跡』(2017)では遭難したジャングルから生還を試みる男、『プリズン・エスケープ 脱出への10の鍵』では南アの刑務所から脱獄しようとする男を、それぞれ演じています。
そして本作『ガンズ・アキンボ』でラドクリフが演じるのは、ネットにクソリプ(悪質なコメント)を書き込みすぎて両手に拳銃を固定されてしまう男、マイルズ。
ここでも奇抜な設定な上に、人間が殺し合いをする模様をネット視聴するデスゲーム「スキズム」に参加させられるという、やっぱり生死をかけた役どころに、ひねりが効いています。
両手が塞がれた状態のため、物も持てないからズボンも履くのもままならず、トイレで用を足すのも悪戦苦闘……。こんなにもみっともないダメダメなラドクリフが観られる映画は、おそらく初でしょう。
初と言えば、ラドクリフとしても初めての本格アクションというのも、興味深いところです。
1980年代アクション映画へのオマージュが盛りだくさん
監督と脚本を手がけたジェイソン・レイ・ハウデンは、悪魔を召喚してしまったヘビメタ少年たちの騒動を描いたデビュー作『デビルズ・メタル』で、1980年代に量産されたホラー映画のテイストを盛り込みました。
そして監督二作目の本作で目指したのは、マイルズの部屋に『ランボー/怒りの脱出』(1985)や『コマンドー』(1986)のポスターが貼られている点からも察せるように、80年代アクション映画です。
何よりも、両手に拳銃を固定されてしまうマイルズは、明らかにジョン・ウー監督作『男たちの挽歌』(1986)のチョウ・ユンファのオマージュ。
ロングコートをなびかせ華麗に二丁拳銃さばきをしたユンファに対し、ナイトガウン姿で不格好に二丁拳銃を撃っていくマイルズ。この分かり易すぎるパロディが痛快です。
またジョン・ウーといえば、ジャン=クロード・ヴァン・ダム主演のハリウッド初進出作『ハード・ターゲット』(1993)を撮っていますが、本作でそのヴァン・ダム作品への、“分かる人には分かる”オマージュも入れていたりも……。
ホラーにアクション大好きなハウデンの中二病ぶりが、イイ意味で炸裂しています。
そのマイルズの命を狙う殺し屋ニックスも不気味さ満点。
目ざわりな者をガトリング銃で一掃すれば、ロケットランチャーで街を破壊し、ケガをしてもドラッグを吸ってハイになれば回復するという、ハーレイ・クインをもっと極悪にしたようなキャラクターは、インパクト大です。
演じるサマラ・ウィーヴィングは、「ロード・オブ・ザ・リング」トリロジー(2001~03)や『Vフォー・ヴェンデッタ』(2006)のヒューゴ・ウィーヴィングを叔父に持つ、期待の新鋭。
叔父ヒューゴが「マトリックス」トリロジー(1999~2003)で演じたエージェント・スミスばりに、マイルズを執拗につけ狙うニックスを姪のサマラが演じるというのも、何かの奇縁かもしれません。
二丁拳銃(=アキンボ)を持つダメ男の運命やいかに?
バイオレンスとコメディが混ざった、エクストリーム・ガンアクションの『ガンズ・アキンボ』ですが、ハチャメチャなストーリーの裏には、現実社会で減ることのない、ネット上での悪質な書き込みへの問題提起(?)も欠かしていません。
クソリプを飛ばしまくっていたら、マイルズのようにIPアドレスを特定されて個人情報が抜かれてしまった、という事例も実際にあるので、身に覚えのある方は要注意。
はたしてマイルズは、二丁拳銃(=アキンボ)を武器にこの無理ゲーを攻略できるのか!? 結末を知りたければ、劇場に足を運ぶしかない!
次回の『すべての映画はアクションから始まる』もお楽しみに。
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