連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第13回
日本公開を控える新作から、カルト的評価を得ている知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を網羅してピックアップする連載コラム、『すべての映画はアクションから始まる』。
第13回は、シルヴェスター・スタローン主演の1986年公開作『ロッキー4/炎の友情』。
スタローンの出世作となった人気シリーズ第4作を、ネタバレ有でレビューします。
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CONTENTS
映画『ロッキー4/炎の友情』の作品情報
【日本公開】
1986年(アメリカ映画)
【原題】
Rocky IV
【脚本・監督】
シルヴェスター・スタローン
【製作】
アーウィン・ウィンクラー、ロバート・チャートフ
【製作総指揮】
ジェームズ・D・ブルベイカー、アーサー・コバニアン
【撮影】
ビル・バトラー
【キャスト】
シルヴェスター・スタローン、タリア・シャイア、バート・ヤング、カール・ウェザーズ、ドルフ・ラングレン、ブリジット・ニールセン、マイケル・パタキ
【作品概要】
シルヴェスター・スタローンを一躍トップスターにしたアカデミー賞作品『ロッキー』(1976)のシリーズ第4作目。
宿敵にして親友だったアポロを絶命させたソ連のボクサー、ドラゴに挑戦するロッキーの雄姿を描きます。監督・脚本・主演は、前作に続いてスタローンが担当。タリア・シャイア、バート・ヤング、カール・ウェザーズといった前作からの主要キャストも続投し、ソ連のボクサー、ドラゴ役をドルフ・ラングレン、その妻ルドミラをブリジット・ニールセンが演じます。
前作『ロッキー3』(1982)に続き主題歌を担当したサバイバーの『バーニング・ハート』や、ジェームス・ブラウンの『リビング・イン・アメリカ』などが収録されたサウンドトラックは、大ヒットを記録しました。
映画『ロッキー4/炎の友情』のあらすじとネタバレ
参考映像:『ロッキー4/炎の友情』のトレーニングシーン
クラバー・ラングを倒しチャンピオンに返り咲いたロッキー・バルボアに、ソ連のアマチュアボクシングヘビー級王者イワン・ドラゴが訪米し、世界ヘビー級王者であるロッキーとの対戦希望を表明します。
その話を聞いた、かつての宿敵で今は親友となったアポロ・クリードが、代わりに自分が試合に出たいとロッキーに懇願。
現役を引退して数年経つアポロのブランクを心配するロッキーでしたが、友人のたっての希望を聞き入れることに。
アポロとドラゴの対戦はエキシビジョン・マッチとなり、ラスベガスで行われることに。
ロッキーはアポロのセコンドに付き、試合が始まりますが、ソ連の最新鋭科学を駆使したトレーニングを積んだドラゴのパンチは、恐るべき破壊力を持っていました。
容赦なく殴られる親友を見て、ロッキーは思わずタオルを投入しようとするも、それを拒んだのは他ならぬアポロでした。
ドラゴのパンチを食らい続けたアポロは、命を落としてしまいます。
親友の死を目の当たりにしたロッキーは、弔いとしてドラゴとの対戦を決意しますが、ドラゴ陣営は自分たちを敵視するアメリカでは生命の危険があるとして、自国ソ連での対戦を要求。
さらに、アメリカでの興行が見込めないとしてファイトマネーは無い上に、協会未認可の非公式戦となるためにタイトル返上を余儀なくされるも、ロッキーはそれらすべてをのみます。
自殺行為だとして対戦を反対する妻エイドリアンを置いて、ロッキーはアポロのトレーナーだったデューク、義兄ポーリーらとソ連に渡るのでした。
映画『ロッキー4/炎の友情』の感想と評価
参考映像:『ロッキー4/炎の友情』のドラゴ戦
米ソの冷戦状態を反映
本作『ロッキー4/炎の友情』は、当初完結編となる予定だった前作『ロッキー3』(1982)が大ヒットしたことを受け、新たに製作されました。
製作にあたり、東西の冷戦関係やゴルバチョフ書記長によるペレストロイカといった、当時の社会事情を大いに反映。
それに伴い、あらすじも単純明快なリベンジものにシフトし、MTVを意識したPVの演出を盛り込んだ上で、ランニングタイムも全シリーズ中最も短い91分という観やすさに。
それらが功を奏し、結果的に前3作を大きく上回るヒットとなりました。
ただ同時に、この頃から主演のシルヴェスター・スタローンへの風当たりが強くなります。
特に本作ラストでのロッキーによる勝利者インタビューが、あまりにも政治的すぎると批判されたり、ラジー賞ノミネートの常連にもなっていきます。
『ロッキー4/炎の友情』のちょっとしたトリビア
参考映像:『ロッキー4/炎の友情』のアポロvsドラゴ戦
本作のクライマックスであるロッキーvsドラゴ戦では、ファイトシーンの臨場感を高める狙いから、スタローンとドラゴ役のドルフ・ラングレンは一部で実際に殴り合っています。
ところが、極真空手の有段者であるラングレンは、手加減が上手く出来ずにパンチを浴びせてしまい、スタローンを病院送りにしてしまいました。
また、アポロvsドラゴ戦でドラゴがアポロを投げ飛ばすシーンでは、アポロ役のカール・ウェザーズが本気でエキサイトしたことでいざこざになり、撮影が一時中断する事態になっています。
ドラゴの無念は『クリード 炎の宿敵』へと続く
参考映像:『クリード 炎の宿敵』(2019)
ドルフ・ラングレンは、自身が演じたイワン・ドラゴについて、「ソ連の政治家や軍事日和見主義者の思い通りに操られていることを、誰よりも自覚している人物」だとして同情を抱いたと語っています。
そのドラゴは、『クリード チャンプを継ぐ男』(2015)の続編『クリード 炎の宿敵』(2019)に再登場。
アポロの遺児アドニスとドラゴの息子であるヴィクターが因縁の対決をするこの作品では、ロッキーに敗れた父イワンのその後も描かれています。
ラングレンの見解が反映されたかのような立ち位置での登場は必見です。
次回の連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』もお楽しみに。
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