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Entry 2020/11/29
Update

Netflixアニメ『虫籠のカガステル』ネタバレ感想と評価解説。最後終末のポストアポカリプスの世界で奇病が蔓延する中で出会ったキドウと少女イリ|Netflix映画おすすめ5

  • Writer :
  • 薬師寺源次郎

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第5回

千明孝一が手掛けた、橋本花鳥の漫画を原作としたNetflixオリジナルアニメシリーズ『虫籠のカガステル』。

人間が巨大な虫になってしまう奇病カガステルが蔓延する世界を舞台に、カガステルを狩る駆除屋の青年キドウと、“閉ざされた過去”を持つ少女イリの姿を描くアクションファンタジーです。

巨大な虫、カガステルに支配された世界で主人公・キドウは少女、イリと出会い、陰謀の渦に巻き込まれていきます。

残酷な世界だからこそ、人は生きることを渇望し希望を見出すと、現在にも通じるメッセージが込められたアニメです。

【連載コラム】「Netflix映画おすすめ」記事一覧はこちら

アニメ『虫籠のカガステル』作品情報

Netflix『虫籠のカガステル』

【公開】
2020年

【監督】
千明孝一

【キャスト】
細谷佳正、花澤香菜、花江夏樹、櫻井孝宏、、森川智之、興津和幸、諏訪部順一、塩崎智弘、茅野愛衣、白鳥哲、間宮康弘、山下大輝、鬼頭明里、杉田智和、悠木碧、鳥海浩輔

【作品概要】
橋本花鳥による終末アクションコミックをアニメ化。『ブレイブストーリー』(2006)などで知られる千明孝一が監督を務めます。

人間が巨大な虫に変化する奇病“カガステル”により荒廃した世界で、カガステルを狩ることを生業とする“駆除屋”の青年キドウと、一人の少女イリの出会いが、やがて世界の命運を揺るがす事になります。

アニメ『虫籠のカガステル』のあらすじとネタバレ

21世紀末、人間が突如、巨大な虫に変貌する奇病、“カガステル”により、世界は分断されます。

虫を駆除することを生業とする駆除屋のキドウ(声:細谷佳正)は馴染みの商人、ジン(声:興津和幸)を護衛する途中、巨大な虫、カガステルに追われる車を発見します。

成り行きで車に乗る親子を助けますが、父親のグリフィス(声:浪川大輔)は重傷を負ます。

グリフィスは娘のイリ(声:花澤香菜)を母親の下へ送り届けてほしいとキドウに託し、息絶えます.

キドウたちはイリを連れ、拠点としている都市、E‐05で下宿としている酒場、ガーデンマリオに帰ります。

店主・マリオ(声:森川智之)に事情を説明するキドウはマリオにイリの母親、タニアを探すよう頼みました。

タニアが見つかるまでの間、キドウと共にガーデンマリオで暮らすイリですが、初めはキドウや自らの境遇に反発します。

しかし、スラムで暮らす少年、ナジ(声:山下大輝)や、たくましく生きる少女、リジー(声:鬼頭明里)らとの出会いにより前向きに生きることを決意。そして、いつしかキドウに惹かれつつも、キドウの心にある陰に気が付きます。

そんな日々を送る中、駆除屋ばかりを狙った猟奇殺人事件が多発、キドウもその標的にされ、半身がカガステル化した謎の青年、アハト(声:花江夏樹)と出会い、対峙します。

戦いの最中、イリに遭遇したアハトはその姿を見て驚きます。その隙をキドウに突かれ、アハトは退却します。

しばらくして、キドウは顔なじみの軍人、カシム(声:諏訪部順一)がカガステルを発症、成り行きから駆除します。

帰ってきたキドウの人を寄せ付けない雰囲気に恐怖を覚えるイリにマリオはキドウの生い立ちを話します。

極東と呼ばれる地で両親を失った幼いキドウは駆除屋のラザロに育てられ、駆除屋として鍛えられます。

ある日、ラザロが取りまとめる駆除屋たちの集団は軍との軋轢から罠にはめられ、多くの駆除屋が死傷、ラザロは生き残った者たちの助命のため、自らの身柄を軍に差し出し、事態を治めようとします。

それを止めようとするキドウの前でラザロはカガステルを発症、キドウに駆除されます。

ラザロに次ぐ実力者になっていたキドウを中心に駆除屋が勢力を盛り返すことを恐れた軍人、ペトロフ(声:鳥海浩輔)はキドウを暗殺しようとしますがキドウは極東を去り、長い旅の末、E-05に辿り着きました。

話を聞いたイリはキドウを励まそうと部屋を訪ねます。

初めはイリを拒絶するキドウですが、イリの想いに触れ立ち直ります。

翌日、キドウはカシムの相棒であったエディ(声:塩崎智弘)からE-05に査察にやってきている軍が持っていた情報の話を聞かされます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『虫籠のカガステル』ネタバレ・結末の記載がございます。『虫籠のカガステル』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

それは3ヵ月前、カガステル化した人間が誰も襲わずに去っていったという事案があり、そこでイリに似た少女が目撃されていた事、そこがイリが以前、暮らしていた所であったことを知ります。

帰宅したキドウはイリにその事実を確認しようとしますが、ガーデンマリオにE-01からやってきた軍と科学者然とした男、フランツ(声:櫻井孝宏)が現れます。

イリを連れ、E-05から逃げる決意をするキドウは、ナジたちの手引きで街を出ようします。

しかし、キドウは再び現れたアハトと対峙、イリ達のは兵士に追い詰められます。

ナジたちの危機にイリは自らの隠されていた記憶を思い出します。

イリは兵士の一人にカガステルが発症する因子を見つけると強制的に発病させ、ほかの兵士たちを襲わせます。

その後、イリは現れたフランツにより連れ攫われました。アハトはキドウに「イリに会いたければE-07に来い」と言い残し去っていきます。

事態を把握するため、ジンと共にイリの私物を調べるキドウはメモリーチップに残されたグリフィスのメッセージを見つけます。

グリフィスはかつて、フランツと共にカガステルの研究をしていました。

蜂や蟻のように女王により統治されるカガステルを制御するため、人工的に女王を作ろうとし、フランツは義理の妹、タニア(声:花澤香菜)を実験に用いました。

カガステルを発症した出産前の女性から生まれたタニアは、カガステルに近い存在でした。

その過程でタニアの分身として生まれたのがアハトであり、タニアとフランツが結ばれ、生まれた子供がイリでした。

しかし、フランツはカガステルを制御する装置の一部にタニア自身を使用、タニアは決して覚めることない眠りにつきます。

しかし、研究を命じていたアドハム(声:間宮康弘)はカガステル因子を持つE-07の住民を強制的に発病させ、管理します。

それを承知の上で研究していたフランツにグリフィスは別れを告げ、イリを連れ、E-07を去り、自らの子供として育てました。

しかし、成長したイリは暴漢をカガステルにしてしまい、グリフィスはフランツに助けを求めようとしていました。

E-07に連れてこられたイリはアドハムと対面、アドハムは代を重ねるごとにカガステルへの影響力を増すイリの体質を利用し、より強力な女王を作り出そうとしていました。

アハトはアドハムの企みを知り、イリを解放します。

E-07に乗り込んだキドウはアドハムの私兵の妨害を受けながらもイリと合流します。

アドハムがアハトへの対応、イリの捜索に追われる中、フランツはE-07内のカガステルの制御を解放、人間を襲わせます。

フランツはカガステルこそ進化した生命の姿であり、人間は淘汰されるべきと考えていました。

そのことを知ったアドハムはフランツを銃撃、フランツは重傷を負います。

制御装置のある最上階を目指すキドウとイリでしたが、キドウはイリを先に行かせ、追ってくる兵士たちと対峙します。

その途中でキドウはアハトと遭遇、2人は刃を交えます。

最上階へたどり着いたイリは装置を停止、崩壊を始める装置の中からタニアの姿を見つけます。

装置の崩壊と共に命が尽きようとしていたタニアはイリを見つけ、「I LOVE YOU」のメッセージを最後に息を引き取ります。

キドウとアハトとの戦いは熾烈を極めますが、キドウが勝利、アハトはイリをキドウに託します。

イリと再び合流したキドウはタニアの亡骸を思い出が詰まる温室に弔い、E-07を去ります。

キドウと別れたアハトはフランツの死を看取るとタニアの隣に眠らせます。

E-07を出たキドウとイリは迎えに来ていたジンと共にE-05へ帰っていきます。

アニメ『虫籠のカガステル』の感想と評価

Netflix『虫籠のカガステル』

3DCGによる迫力の映像

本作『虫籠のカガステル』は新鋭のアニメーションスタジオ、スタジオKAIにより制作されています。

3DCGで描かれる事により、立体感あふれるバトルシーンに力を入れていました。

特に、キドウとアハトが熾烈な戦いを繰り広げるクライマックスの対決では、刃がぶつかり飛び散る火花や血しぶき立体的に拡散する演出は、立体感のみならず、臨場感あふれる白熱のバトルになっています。

また、キャラクターを描く上で瞳の動きによる表情の変化が表現されている点も見事でした。

とりわけ、心境の変化を表現する際の一瞬、揺らぐ瞳の動きで表情には現れないものの僅かに垣間見える動揺や驚きが感じ取れました。

単純に“見せる”映像だけでなく細かな部分にこだわった繊細な作画は重厚なストーリーを余すところなく表現しています。

残酷な世界で「何者」として生きていくのか?

本作で描かれている世界は人間がカガステルの脅威に脅かされて恐々とし、人々がどこか自分たちの生き方や在り方に囚われている中、主人公・キドウとイリは自分たちの生き方を見つけます。

劇中でキドウは自身に何度も「駆除屋は“剣”であれ」と言い聞かせ、生き残るため、“感情”を無駄なものと切り捨て、他者に対して非情になろうとしますが、人一倍、感じやすく、情け深いキドウにとって、その言葉は心の苦しみを表す“呪い”のようにのしかかります。

特に、物語の中盤、キドウに歩み寄り始めたもののカガステル化したカシムを殺め、その後、新たに負った心の傷さえも否定しようとする様子は、前述のキドウの苦しみをもっとも表す場面に感じます。

ですが、キドウはイリとの出会いで知らず知らず、人間らしい感情を否定することが無くなっていきます。

しかし、そのイリもカガステルを制御するため生み出された“女王”であり、アドハムの陰謀に巻き込まれ、自らの出自に苦しみ、一度はその運命を受けいれますが、その身を運命に委ねるのではなく、自分の想いを遂げるため行動を起こします。

また、単身でイリを助けに向かったキドウは、自らの意思や衝動と言った彼の言う“剣”ではなく一人の人間として感情を元にしています。

そして、最後にはイリがカガステルの女王であり、人をカガステルに変えてしまうかもしれないという不安を抱えながらも、人として生きていく事を決意し、キドウはイリと共に歩みはじめます。

“剣”であると自分を規定していたキドウ、“女王”として生み出されたイリ、自らの出自に関わらず、ただの人間として歩もうとする2人はある意味、もっとも過酷な道を選んだのかもしれません。

しかしながら、人は決意と覚悟を持ち、信じた道を歩いて行ける、そんなメッセージを本作から感じ取ることができました。

まとめ

劇中、「乾いた傷は自分の一部、癒そうとするものではない」と言うセリフが登場します。

キドウの過去を語って聞かせるマリオがイリに感想を求めた際に発したその言葉は、つらい過去は忘れるものではなく、痛みが消えても、決して無くなるものではなく、その過去を抱えて生きていくしかないと言う意味で発せられます。

この言葉は現実に生きる私たちにとってもどこか身につまされるように感じられます。

それだけに残酷な世界でいくつもの“乾いた傷”を持つキャラクターたちが前を向いて歩み続ける『虫籠のカガステル』に勇気をもらえるのかもしれません。

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