連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第81回
未知の生物による襲撃や自然現象によって崩壊していく世界を描いた映画ジャンル「ポスト・アポカリプス」。
このジャンルを描いた作品の多くは事態の打開を画策したり、安全地帯への到達を目的とした人間を主題とした作品が殆どです。
そんな中、アメリカで制作された『マザー/アンドロイド』(2022)は「ポスト・アポカリプス」でありながら独特な題材を描いていました。
今回は危険に満ちた世界で家族になろうとする2人にフォーカスを置いた『マザー/アンドロイド』を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
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CONTENTS
映画『マザー/アンドロイド』の作品情報
【配信】
2021年
【原題】
Mother/Android
【監督】
マットソン・トムリン
【脚本】
マットソン・トムリン
【キャスト】
クロエ・グレース・モレッツ、アルジー・スミス、ラウル・カスティーリョ
【作品概要】
『プロジェクト・パワー』(2020)で脚本を務めたマットソン・トムリンが自身の書いた脚本を監督として映画化した作品。
映画『キックアス』(2010)への出演以降、活躍を続けるクロエ・グレース・モレッツが主演を務めた本作は本国では映像配信サービス「Hulu」が配信権を取得しましたが、日本では配信権を「Netflix」が取得し独占配信作となりました。
映画『マザー/アンドロイド』のあらすじとネタバレ
巨大企業のラスター社によるアンドロイドや自動運転車が普及する近未来。
ジョージアはボーイフレンドのサムとの子供を妊娠します。
友人たちとのパーティの最中、ノイズがスマホから鳴り響くとアンドロイドが人間を襲い始め街はパニックとなりました。
数ヶ月後、ジョージアとサムはアンドロイドが徘徊する街を避け、森をキャンプしながら安全地帯を探していました。
森の中にある軍人の管理するキャンプ地に受け入れられた2人は、アンドロイドが反乱した日にスマホから鳴り響いた音は電子機器を封じるEMP(電磁パルス)であり、既にEMPを使い尽くしたニューヨークは壊滅していることを知ります。
妊娠発覚から9ヶ月が経ち、既に出産予定日を過ぎているジョージアは安全とされる韓国へと向かう船が出ているボストンへ向かうための道を軍人に尋ねますが、ボストンも既に陥落間近と言う答えのみが返ってきます。
ジョージアはキャンプの医師からボストンへ向かう兵士用の車に妊婦であるジョージアを乗せることはできると聞きますが、父親であるサムを乗せることはできないと言われます。
ジョージアは1人でボストンに行くことを拒否し、サムは兵士の1人に掛け合います。
酒に酔う兵士は自分と素手の喧嘩で勝つことが出来たら車に乗せると言う条件を提示しサムはその条件を受け入れます。
翌日、サムは喧嘩に勝利はしましたが相手の兵士が大きく負傷したことでキャンプを守る兵士を束ねる隊長は激怒。
サムとジョージアは約束を反故にされただけでなくキャンプ地を追い出され、2人で危険な道を歩きボストンへ向かうこととなります。
ボストンへの道は「無人地帯」と呼ばれており、人が居ないだけでなくアンドロイドが多数徘徊している危険区域でした。
無人地帯に突入する前に人のいない家屋を見つけたジョージアは出産をここで行い、遠回りでニューハンプシャーを目指すことを提案します。
しかし、サムは子供がいつ産まれるか分からず、生まれたばかりの子を抱えての隠密行動は不可能であると言い、民家のバイクを使って無人地帯を突っ切る提案をし、2人はバイクで無人地帯へと入りました。
森を走る中で2人は多数のアンドロイドとドローンからの追跡を受けます。
逃げきれないことを確信するサムは自身が囮となり、ジョージアに歩いて逃げるように言います。
ジョージアは1人逃げる中でAIプログラマーのアーサーに保護され彼のアジトであるトラックに匿われます。
アーサーはジョージアのボストン行きを護衛すると言い、彼の開発したアンドロイドの視覚情報を遮断するマントを彼女に貸し与えます。
サムを助けることを譲らないジョージアを森の中にあるアンドロイドの拠点に案内したアーサーは、アンドロイドが生存者を監禁し人間を誘き出すための餌にしていることを教え、サム用のマントをジョージアに渡しました。
拠点に侵入したジョージアはサムを見つけ救出しますが、他の生存者に叫ばれたことでアンドロイドたちに発見されてしまいます。
高い戦闘能力を持つアーサーが駆けつけ追いかけて来たアンドロイドを殲滅したことで窮地を脱した2人でしたが、タイミング悪くその場でジョージアの破水が始まってしまいます。
アーサーはサムとジョージアをトラックに乗せ、どこかへと車を走らせました。
映画『マザー/アンドロイド』の感想と評価
「親」として「家族」を守る2人の道程
アンドロイドが暴走した日に妊娠が発覚したジョージアとそのボーイフレンドのサム。
「親」となることが決まった日から死と隣り合わせの日々を過ごすことになった2人は、「親」として強くあるためにお互いを守ることを誓い行動します。
その行動が結果として2人を追い詰めることになったとしても、家族を守るためにがむしゃらに進む2人にフォーカスを当てた本作は「ポスト・アポカリプス」を背景としながらも人間ドラマを主題としています。
命をかける選択を繰り返し、その度に他者を守る選択の辛さを痛感させられる作品でした。
残虐なアンドロイドが恐怖を引き出す
本作に登場する人類を脅かす存在「アンドロイド」は、一貫して人間の殺害のみを考えて行動しています。
その行動はより効率良く人類を削減するために最適化されており、慈悲もなく襲い来るアンドロイドは恐怖の存在として完成されています。
アンドロイドがなぜ人間を襲うのかと言う行動理念は語られることがなく、淡々とその行動だけを描いた本作はSFホラー映画としても充分な魅力を感じました。
まとめ
子役時代から活躍し、20代の半ばに差し掛かった俳優クロエ・グレース・モレッツ。
自身が親になることに困惑しつつも、家族を守るために奮闘することを決意し始める感情の変化を描いた彼女の見事な演技にも注目の映画『マザー/アンドロイド』。
ただただ人を殺戮するために行動するアンドロイドの恐怖は『ターミネーター』(1985)を彷彿とさせるものがあり、無機物が見せる恐怖の新たな描き方を見せてくれます。
ヒューマンドラマとしても、そしてSF映画としても見どころたっぷりの本作をぜひ「Netflix」でご覧になってください。