連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」第57回
ヒューマントラストシネマ渋谷で開催された“劇場発の映画祭”「未体験ゾーンの映画たち2019」。今回は眠らずにいる果てに、何が起こるのかを描く舞台劇をテーマにした、異色のスリラー映画を紹介します。
俳優を追いこむ過酷な演出で知られる、著名な舞台演出家の新作は、廃屋となった精神病棟を舞台に使用するものでした。
それはかつて彼女が、主演女優を108時間眠らずに演じさせた前衛演劇を踏まえて、新たな描かれた舞台劇です。
演出家は俳優に実際に眠らず過ごさせ、登場人物の心理状態に近づく様に求めます。主役を狙う女優ビアンカも不眠に挑みますが、幻覚に襲われ心身共に追いこまれていきます。
役柄となった女性について調べたビアンカは、舞台劇に隠された恐るべき事実を知ります。
第57回は禁断のブレイン・バースト・スリラー映画『108時間』を紹介いたします。
【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2019見破録』記事一覧はこちら
CONTENTS
映画『108時間』の作品情報
【日本公開】
2019年(アルゼンチン・スペイン・ウルグアイ合作映画)
【原題】
No dormirás / You Shall Not Sleep
【監督】
グスタボ・エルナンデス
【キャスト】
ベレン・ルエダ、エヴァ・デ・ドミニシ、ナタリア・デ・モリーナ、ヘルマン・パラシオス、フアン・マヌエル・ギレラ、マリア・アルフォンソ・ロッソ
【作品概要】
不眠をテーマに登場人物を襲う、様々な恐怖を描く異色のスリラー映画です。
監督はワンショットで描いたPOVホラー映画、『SHOT ショット』でデビューした、ベネズエラ出身のグスタボ・エルナンデス。
評判となった『SHOT ショット』はハリウッドで、エリザベス・オルセン主演の映画『サイレント・ハウス』としてリメイクされています。
主役のビアンカを演じるのは、アルゼンチンのモデル出身の女優エヴァ・デ・ドミニシ。
謎を秘めた舞台演出家を演じるのは、アレハンドロ・アメナーバル監督の『海を飛ぶ夢』や、J・A・バヨナ監督の『永遠のこどもたち』に主演したベレン・ルエダです。
ヒューマントラストシネマ渋谷とシネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2019」上映作品。
映画『108時間』のあらすじとネタバレ
薄暗い廊下に現れた女性。音楽を流していたレコードプレーヤーを止め、辺りの様子を伺います。彼女は血の跡が残る廊下を歩いて行きます。
彼女は部屋の中で一心不乱に髪をとぐ、老婆サブリナ(マリア・アルフォンソ・ロッソ)の姿を目にします。
ガラス越しに観客が見守る中、髪をといでいるのは、その女性自身でした。時は1975年。この前衛劇「断眠」を演出しているアルマ(ベレン・ルエダ)が、観客に解説しています。
ガラスの中にいる女優、マーリ-ナは絵を描くのが上手になったと語るアルマ。彼女は俳優を眠らせない状態に追いこみ、演じさせる試みを行っていました。
彼女が現実と幻覚の、演じている人物サブリナと自分の区別がつかなくなっています。その状態で演じさせる実験的試みを、誇らしげに観客に解説するアルマ。
彼女の断眠状態は、ついに108時間を越えました。観客の前で奇妙な行動を取り始めるマーリ-ナ。彼女は幻覚に支配されて動いていました。
断眠実験を行った結果、96時間を越えると精神異常の兆候が表れると報告されています。そして1980年代、これを越える試みが行われてた、と紹介され物語は始まります。
1984年。舞台で出番を待つ女優、ビアンカ(エヴァ・デ・ドミニシ)とセシリア(ナタリア・デ・モリーナ)。まもなく出番という時に、ビアンカの父が現れます。
スタッフの制止を振り切って現れた父は、血相を変えて娘に新聞記事を示します。彼女を紹介した記事を読み、居場所がばれたと訴える父をビアンカは楽屋に案内します。
落ち着くよう言い聞かせ、座らせた椅子の周囲の床に、父のペンダントに入れたチョークで円を描くビアンカ。このスペースは安全だと父に言い聞かせます。
精神的に不安定な父を落ち着かせ、舞台に立ったビアンカ。その姿を客席からアルマとその助手、クラッソ(ヘルマン・パラシオス)が見つめていました。
出番を終えたビアンカが楽屋に戻ると、円の中に父の姿はありません。父を担当する医師に電話をかけ、早く来てほしいと依頼するビアンカ。
電話を終えたビアンカに、クラッソが声をかけます。演出家のアルマが彼女に興味を示し、新作舞台の主役に彼女を候補として検討していると伝えます。
その劇の主演女優は、アルマの指導に耐えられず脱落したと伝えるクラッソ。アルマの舞台は厳しいが君の代表作となり、何よりアルマは君を高めてくれると話します。
父の介護がある、と答えたビアンカに、クラッソは返事は2日待つと答えます。
ビアンカが家に帰ると、父は部屋にこもっていました。安心した彼女はビデオテープを流します。それはあの舞台劇「断眠」について語る、演出家アルマ・ベームを紹介するものでした。
インタビューに対し、芸術家は創造するが私は破壊する、と答えるアルマ。彼女は演者には命を賭けて欲しいと語っています。
ビデオを見ていたビアンカの前に、ハサミを持った父が現れます。連中に見つかると訴え、ハサミを手にしたままビアンカに迫る父。彼女の腕を傷つけ、父は我に返ります。
駆け付けた医師が彼女を手当てします。落ち着きを取り戻した父は、自ら入院を決断します。お前には犠牲を強いてきた、だがお前には才能があると、ビアンカを励ます父。
彼は娘に、下げていたチョークの入ったペンダントを渡します。救急車に乗り込んだ父を見送るビアンカ。
父の世話から解放され、応援を得たビアンカは、アルマの舞台に立つ事を決意します。
ビアンカは「断眠」の舞台について知るため、演じたマーリ-ナの自宅を訪ねます。彼女は「断眠」の後、舞台女優を引退していました。
彼女が席を外した際に、書棚を眺めたビアンカは、「断眠」と書かれたノートを見つけ手にとります。マーリ-ナが現れると、思わずノートを隠します。
「断眠」の舞台は危険よ、と告げるマーリ-ナ。彼女に追い出されるように送られたビアンカは、ノートを手にしていました。それは舞台に立っていた時の、彼女の覚書でした。
迎えに来たクラッソの車に乗り込むビアンカ。そこにはセシリアの姿もありました。アルマはビアンカとセシリアの2人を、主役候補として競わせるつもりでいました。
クラッソはビアンカに、新作舞台劇「大熊座」の台本を渡します。それは産後の鬱で夫を殺害し、幼い赤子も殺害しようとした女性、ドラを描いたものでした。
車は廃屋となった精神病院、サンタ・レヒナ病院に到着します。劇団員はここで稽古を重ね、この場所で前衛的な舞台を演じることになります。
クラッソから2階の好きな部屋を使用選ぶよう告げられたビアンカとセシリア。セシリアはビアンカの父の入院を心配していました。両親に会えるなら、何でもすると語るセシリア。
ビアンカは前回セシリアと主役を争い、彼女にその座を奪われていました。セシリアはお守りである腕輪に、ビアンカにキスさせ幸運を願わせます。2人は良きライバルでした。
壁紙の剥がれかけた部屋を選び、荷物を整理していたビアンカは、床に細工された歯ブラシが落ちている事に気付きます。何者が置いた物か、彼女は不審に思います。
彼女は聞こえて来る声に気付きます。セシリアと共に下に降り、瞳が刻まれた壁に開けられた穴を覗くと、その先で劇団員が芝居の稽古をしていました。
クラッソに案内され、稽古場に向かう2人。そこには指導するアルマと、サラとフォンゾ(フアン・マヌエル・ギレラ)が演じる姿がありました。
サラに対し何かが足りないと、アルマは問いかけます。台本を読んだビアンカは、恐怖心が足りないと口にします。その言葉を満足げに受け入れるアルマ。
こうして劇団員の共同生活が始まります。一番大切なのは眠らない事。「断眠」の時と同様、アルマは俳優に眠らない様要求していました。
方々に眠気覚ましの水を置き、耐えられなくなったら笛を吹いて、とビアンカに説明するサラ。笛の音を聞いたフォンゾが、水をかけようと飛んできます。
劇団員は自炊し食事を共にする共同生活を送ります。アルマは断眠を続ける事で俳優を覚醒状態に追いこみ、望む演技を引き出そうとしていました。
稽古の中でテストが始まる、テストの合格者には賞品を与えると告げるアルマ。彼女から合格の証として、優れた演者にスリッパが与えられます。
自室に戻り台本を覚えるビアンカ。彼女は座っていた椅子に違和感を覚えます。調べてみると背板に不自然なネジが付いています。
彼女は部屋で拾った歯ブラシが、ドライバーに細工されてると気付き、ネジを回し背板外します。中から小さな金属の箱の、アクセサリーが出てきました。
部屋がノックされます。彼女が扉を開けるとそこにはフォンゾが立っていました。眠気覚ましに集中して炎を見つめれば、炎の中に何かが見えると、アドバイスして去るフォンゾ。
再度ノックが響きます。扉を開けても誰もおらず、火のついたロウソクが置いてありました。それを手に取り、ビアンカは片目をつぶって炎を覗き込みます。
炎の先に横切る人影を見たビアンカ。彼女が廊下の先へと進むと、そこには小道具の人形がいくつもぶら下がり、その中にフォンゾもいました。
アルマの前でセリフを演じるビアンカ。眠気と闘う彼女は思う様に演じられません。アルマは彼女を手に取って指導しますが、満足する演技は引き出せません。
アルマはセシリアに、賞品のスリッパはあなたの物よと告げます。追いこまれたビアンカは、思わず涙を流します。
台本を読むビアンカの姿を、サラがポラロイドカメラで撮影します。断眠して24時間と告げるサラ。その姿を時間の経過と共に記録していました。
ビアンカの頭痛薬をもらうサラ。2人は屋外に出て体を動かし眠気を覚まします。
洗濯をしていたビアンカは、壁の穴ごしに会話するアルマとクラッソの姿を目撃します。もう止めようというクラッソの言葉を拒絶するアルマ。
ビアンカは隣室の気配に気づきます。そこには無数の人形と、書きなぐった絵が吊るされていました。そこで小道具を作っているフォンゾ。彼女も小道具作りを手伝います。
人形の下地に貼る紙に、何か書いてある事に気付いたビアンカ。千切られた紙をつなぎ合わせると、病院の内部を記した地図になりました。
彼女を撮影し、断眠36時間おめでとうと告げるフォンゾ。ビアンカは彼に、このメモは1963年に記されたものだと告げます。
ここに吊るされた絵は、舞台劇「大熊座」の主役である、ドラが描いたものでした。ドラはかつてこの病院の患者だったと、ビアンカは気付きます。
アルマはビアンカとセシリアを、敷地内にあるドラの墓に連れて行きます。彼女は1963年にここで亡くなっていました。2人に彼女の人生を表現して欲しい、と語るアルマ。
その言葉に刺激され稽古に励むビアンカ。彼女は水の張られた浴槽に、身を沈める場面を演じます。
彼女が浴槽から顔を上げると、皆の姿が消えていました。再度水に浸かり顔を上げると、何者かの気配が感じられます。もう一度身を沈めて顔を上げると、ビアンカの周囲の光景が一変していました。まるで過去の精神病院に迷い込んだかのようです。
彼女が恐る恐る周囲を確認すると、1人の男の死体があります。そして血にまみれた手を洗面台で洗う女の姿が。これはドラでしょうか。身を潜めたビアンカに、ドラが掴みかかります。
浴槽から身を起こしたビアンカの周囲に劇団員がいました。皆彼女が長い時間、水に浸かっていた思っています。
アルマはビアンカが体験したのは忘我状態だと説明し、彼女の成果を褒めたたえます。マーリーナやフォンゾ、サラはその先を体験したと語るアルマ。
アルマはセシリアを呼び、彼女に与えた賞品のスリッパをビアンカに譲らせます。しかしビアンカは、ドラに付けられたとしか思えない、肩に付いた傷に気付いていました。
自室に戻ったビアンカ。壁に断眠して48、60、72時間経過した彼女の写真が貼ってあります。ビアンカはマーリーナの家から持ち出した、彼女が舞台「断眠」について記した覚書を読みます。
マーリーナは断眠してから60時間が過ぎると幻覚症状を繰り返し、ノートの後半は彼女が演じた役、サブリナの名で埋め尽くされていました。
ビアンカは剥がれかけた壁紙の下に、文字が書かれている事に気付きます。夢中になり壁紙を剥がすビアンカ。文字はおそらく血で記されたもので、壁を埋め尽くしていました。
それを眺めるビアンカとセシリア。自分たちの演じている劇の台本は、ドラの人生そのものだと訴えるビアンカ。セシリアには信じられません。
それを確認しようとするビアンカ。彼女はアルマとフォンゾが、台所の奥に何か隠している事に気付いていました。彼女はセシリアと共にそこへ向かいます。
ビアンカは台所の奥の収納庫に入ります。中にはドラのカルテが入っていました。カルテの中に彼女が入院前に、夫を殺害した事件を記した新聞がありました。
突然収納庫の扉をセシリアが締めます。アルマが台所に現れたのでした。マーリーナから送られた手紙を開封すると、無造作に収納庫にしまうアルマ。
ビアンカがその手紙を見ると、やってはいけない、とだけ書かれていました。
ドラのカルテを持ち出して自室に戻ったビアンカ。彼女がロウソクの炎を覗いてみると、背後に何者かの気配を感じます。
ビアンカは廊下に先に、鎖をかけ封鎖された部屋がある事に気付きます。鍵を壊し無数の穴の開いた扉を開けその部屋に入ると、そこは焼け跡となった部屋でした。
そこにはカルテに記された当時の、病院関係者の名が記された衣装が並んでいます。ビアンカが通気口のカバーを、歯ブラシを細工したドライバーで開けると、マッチがありました。
ドラの死因が判ったと呟くビアンカ。1962年に出産後夫を殺害し、この病院に入院したドラは、翌年関係者を殺害した後病院に火を放ち、赤ん坊を殺そうとして命を落したのです。その全てが舞台劇「大熊座」の台本に描かれていました。
そこに現れたフォンゾが、ここは舞台の為に再現した火事の現場で、全てはフィクションだと説明します。彼とセシリアは、ビアンカが現実と舞台の区別がつかなくなったと思います。
サラと共にミラーリング(相手の動作に自分の動きを合わせるレッスン)をするビアンカ。彼女と会話しているつもりが、実は自分1人しかいないと気付きます。いつの間にか父から渡されたペンダントの、チョークを入れたケースが無くなり、床を転がって行きます。
在らぬ方向を転がるケース。その先にドラの姿を目撃するビアンカ。ドラに襲われた彼女が、思わず床にあった、部屋で見つけた金属ケースのアクセサリーを掴むと、ドラは姿を消します。
ドラの姿を見たと、クラッソに訴えるビアンカ。彼はビアンカをなだめ、アルマに報告すると告げ立ち去ります。その姿をサンタ・レヒナ病院に現れたマーリーナが見ていました。
クラッソの報告を聞き、あなたは恐怖に負けたとビアンカに告げるアルマ。
荷物をまとめるビアンカに、私の向上心はあなたのおかげ、と別れを告げるセシリア。ビアンカは彼女にスリッパを渡し、クラッソの車で最寄りのバス停まで送られます。
バス停にあるバーで、ビアンカは入院中の父の電話をかけます。早く帰る事になった、と話そうとしますが、父から舞台の活躍を期待していると告げられ、涙ぐむビアンカ。
彼女の前にマーリーンが現れます。彼女はアルマが演出した舞台で、自分が経験した事を語り始めます。ノートに記されたサブリナとは誰か、ビアンカは彼女に尋ねます。
憑依について知ってる、と言うマーリーン。断眠の果てに、自分の中にサブリナを解放して彼女を演じようとしたマーリーン。しかしサブリナは私に取り付き、自殺しようとしたと語ります。
断眠して108時間が過ぎた時、彼女はサブリナに襲われます。しかし現実には、彼女自身が自殺しようとしていました。それに気付いた観客の1人がガラスを破り、彼女を救ったのです。
その光景を何故か満足気な表情で見ていたアルマ。話を聞いたビアンカは、サラとフォンゾは演じている、モデルとなった人物に似ていると気付きます。
マーリーンはビアンカがあと25分で、断眠を始めてから108時間になると気付きます。タイマーを25分にセットした腕時計をビアンカに渡し、その前に眠るよう告げるマーリーン。
彼女はあの体験の後も、アルマの呪縛から逃れるには、時間が必要だったと語ります。
そしてビアンカは、サンタ・レヒナ病院に戻っていました。彼女だけでなく、セシリアも断眠から108時間を迎えようとしていると気付いたのです。
映画『108時間』の感想と評価
現実と幻覚が舞台劇で交差する多重構造
コンプライアンスという言葉以前に、人道的に問題があり過ぎる、メソッド演技も「ガラスの仮面」もビックリの、前衛的な舞台劇をテーマにした異色作です。
断眠の世界記録は1964年、スタンフォード大学の教授立ち合いの下で、17歳の高校生が行った264時間と言われています。
彼はその後15時間寝て、後遺症も無く生活を取り戻しましたが、どう考えても無茶な話。ギネスブックは危険を伴う行為として、断眠の世界記録は受け付けていないそうです。
「未体験ゾーンの映画たち2019」は、何故かこの映画と『ザ・スリープ・カース』の“断眠映画対決”になってしまいました。
2本の映画を一言で表すなら、『ザ・スリープ・カース』は“凶悪”、『108時間』は“複雑”とでも呼びましょうか。
断眠による幻覚と現実と、演じられる舞台が交錯する物語の『108時間』。展開も演出家の意図も含めて、様々な謎を秘めたミステリーになっています。
ネタバレ・結末の紹介部分は、何が幻覚と現実、現実と舞台劇であったのか、混乱させられる事必至の展開。深読みすると、それ以前から仕掛けがあったとも解釈出来ます。
終わってみれば納得できる展開。でもあのシーンは何だったのか、どこまでが演出家アルマの意図だったのか、鑑賞後に疑問が次々湧き出す映画です。
ニュージャンルな仕掛けで異彩を放つエルナンデス監督
複雑かつ意欲的な『108時間』を描いたグスタボ・エルナンデス監督は、デビュー以来意欲的に仕掛けのある、ジャンル映画を世に発表しています。
参考映像:『SHOT/ショット』(2011年DVD発売)
デビュー作のウルグアイ映画『SHOT/ショット』は『カメラを止めるな!』でお馴染みとなった、またその上をゆく、何と86分ワンショットで描かれたホラー映画です。
参考映像:『Dios Local』(2014年)
次に監督・脚本手掛けた映画『Dios Local』は、過去の出来事の罪の意識や、トラウマに取り付かれ、それをテーマにした音楽を作る、ロックバンドの若者たちが主人公。
彼らがプロモーションビデオの撮影を、ある洞窟で行ったところ大古の悪魔を呼び覚ましてしまいます。その結果、彼らは過去に体験した恐怖との対決を余儀なくされます。
スティーブン・キングの小説を思わせる展開ですが、『108時間』のアイデアの萌芽を感じるストーリーでもあります。
常にひねりを加えた作品を製作する、グスタボ・エルナンデス監督の今後の活躍に注目して下さい。
まとめ
断眠が人に与える影響を描くだけでは無く、演劇を扱った映画としてもユニークな『108時間』。
この複雑な構成は、映画を見てからあれこれ考える事が好きな人には、興味深いパズルを提供してくれる作品となっています。
暴走する役者魂と演劇魂を描いたこの作品、前衛舞台演出家アルマを演じた、ベレン・ルエダのカリスマ性を感じさせる演技は見物です。
しかしアルマが演出し、劇中で拍手喝さいされた舞台劇「大熊座」は、実際に観客の視点で見た場合、本当に面白いものでしょうか。
これが“前衛”って奴でしょうか。少なくとも命がけで見る価値は、多分無かったでしょうね。
次回の「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」は…
次回の第58回は最終回!これを持って見破達成の作品です。朝鮮戦争に参戦したトルコ軍部隊の兵士と、戦災で孤児となった少女の交流を描く戦争ドラマ映画『ブレイブ・ロード 名もなき英雄』を紹介いたします。
お楽しみに。