連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」第40回
ヒューマントラストシネマ渋谷で開催中の“劇場発の映画祭”「未体験ゾーンの映画たち2019」。今回は、これぞ未体験ゾーンを代表する映画を紹介します。
映画言えばアクションとSF!様々な銃を持った傭兵たちが、迫りくるドローン=殺人ロボットと闘う映画こそ最高!
細かい説明に時間を割かなくて結構。ひたすら銃撃戦や格闘戦、CGで描かれたカッコいいロボットの姿が見たい!
というB級SF・アクション映画を愛する人のために作られた映画が、また1本誕生しました。
第40回はアメリカのノンストップSFアクション映画『バトル・ドローン』を紹介いたします。
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CONTENTS
映画『バトル・ドローン』の作品情報
【日本公開】
2019年(アメリカ映画)
【原題】
Battle Drone
【監督】
ミッチ・グールド
【キャスト】
ルイス・マンディロア、ドミニク・スウェイン、マイケル・パレ、ナターシャ・マルテ、ダン・サウスワース
【作品概要】
元海兵隊員のヴィンセント・レイカー率いる傭兵部隊は、報酬次第で危険な任務を果たすエキスパート集団。彼らは武器商人のカールとCIAから与えられた仕事を引き受けます。
しかし彼らを待ち受けていたのは、銃弾をものともせず襲い来る、謎のドローン兵士でした。
様々なスキルを駆使して立ち向かうレイカーたちは、強力な殺人マシーン兵団を打ち破り、任務を果たす事ができるのでしょうか。
監督はハリウッドでスタントマン、スタントコーディネーターとしてキャリアを積んでいるミッチ・グールド。こだわったアクションシーンが全編に炸裂します。
主人公を演じるのは、シルベスター・スタローンのランボーシリーズ最新作『ランボー5(邦題未定、原題Rambo V Last Blood)』に出演のルイス・マンディロア。
共演にはエイドリアン・ライン監督版の『ロリータ』でロリータ役を、『フェイス・オフ』でジョン・トラボルタの娘役を演じたドミニク・スウェインが出演しています。
ヒューマントラストシネマ渋谷とシネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2019」上映作品。
映画『バトル・ドローン』のあらすじとネタバレ
ロシアのモスクワを訪問中の、アルカサル共和国の次期大統領と目される男、セイラムは盛大なパーティの会場にいました。
形だけの不正な選挙で父の後を継ぎ、権力を握ろうとする彼は反対派を弾圧する為の兵器を、武器商人から手に入れようと企んでいました。
彼はパーティーで武器商人のゴールドビーフと接触します。警備状況を尋ねたセイラムに、ゴールドビーフは護衛は元KGBばかりで、ここはモスクワのど真ん中で安全だと豪語します。
モスクワに向かって、傭兵たちを乗せた輸送機が飛んでいました。彼らのリーダーはヴィンセント・レイカー(ルイス・マンディロア)。彼は部下たちに今回の任務を説明します。
CIAからの秘密裏の依頼でモスクワに乗り込む彼らの任務はロシアの同盟国、アルカサル共和国の次期大統領候補セイラムの誘拐、そして武器商人ゴールドビーフの殺害でした。
レイカーが信頼する部下は、そろって一癖ありました。潜入と格闘の達人シロウ(ダン・サウスワース)に、怪力の巨漢グレゴリ、クールだが頼りになる男カイル。
紅一点の狙撃の名手ヴァル(ナターシャ・マルテ)、そして腕は劣るが仲間からは、一番危ない奴と思われているダックス、これが傭兵部隊の面々です。
パーティー会場を襲撃したレイカーの部下は、各自のスキルを駆使してゴールドビーフ自慢の護衛を片付け、なぜかダックスは配膳係を襲って倒します。
最後はレイカーが2丁の拳銃を手に会場に乗り込みます。敵を次々倒し、弾が尽きると次の拳銃を引き抜き撃ち続けるレイカー。
レイカーたちは、ターゲットの身柄の確保に成功します。一同はダックスの行動に呆れますが、ダックスは奴はスパイだったと言い張ります。
依頼に従ってゴールドビーフを射殺すると、一同はダックスの確保したケイタリングの車に乗り込み、セイラムを引き連れ脱出します。
翌日レイカーは、CIAのスミスとその部下のヘイズ捜査官(ドミニク・スウェイン)と落ちあい、セイラムを引き渡します。CIAは非合法の危険な任務にレイカーを使っていました。
金で汚い仕事を引き受けるレイカーを、ヘイズは報酬次第で裏切るのではと警戒しますが、スミスは何かあれば切り捨て可能なレイカーを都合よく利用していました。
ヘイズは元海兵隊員でありながら、祖国を裏切ったレイカーを心底嫌っている様子です。
セイラムはラングレーのCIA本部に連行、アルカサル共和国の情勢について尋問されます。
帰国したレイカーを武器商人で外交官を自称する男、カール・ケス(マイケル・パレ)が訪ねてきます。
ケスはレイカーに新たな依頼を持ちかけます。それはウクライナ共和国のチェルノブイリに保管された武器を、アルカサル共和国の反政府勢力に引き渡す仕事でした。
簡単な仕事だと説明するケスに、レアアース資源を巡る思惑など、何か裏があると見たレイカーは首を縦に振りません。
レイカーがセイラムを捕えた結果、アルカサル共和国の情勢は混乱していました。
君が始めたことを君自身で終了させて欲しいなど、言葉巧みに説得するケス。彼はレイカーが、決して金だけで動く男ではないと知っていました。
内紛に苦しむアルカサルの人々を救うためにも、レイカーはケスの依頼を引き受けます。
チェルノブイリに向かう飛行機にカールの部下たちと、彼らを援護、監視するためのCIAのチームが乗り込んでいました。ヘイズ捜査官がCIAチームの指揮をとります。
レイカーの部下は仕事が済めばCIAに消されるのではと疑い、ヘイズの部下であるバーンズ捜査官を含む、CIAチームの面々は型破りな傭兵たちの態度に戸惑います。
レイカーはヘイズにCIAが援護する理由を尋ねますが、彼女は仕事がして欲しいだけと、冷たく突き放して答えます。
なぜ俺を嫌うと尋ねるレイカーに、祖国を裏切ったからだと答えるヘイズ。それに対しレイカーは、祖国が先に俺を裏切ったと返します。
チェルノブイリに到着したレイカーとヘイズのチームは、かつての汚染地帯の発電所の廃墟へと向かいます。その頃現地では、コンピュータで何かが起動されていました。
特殊装備に身を固めたCIAのチームに対し、レイカーの部下は各々が得意とする武器を持っていました。
レイカーは拳銃を、シロウはナイフを武器に身軽な装備で、巨漢グレゴリは機関銃、カイルはショットガンを手に進みます。
狙撃用ライフルを手にしたヴァルが、レイカーの指示でスコープで廃墟をうかがいますが、敵の姿はありません。
しかし何か怪しいと判断したレイカーは、まずシロウを廃墟に潜入させます。
たった1人で敵地に潜入させる命令にCIAチームは驚きますが、レイカーの部下たちはシロウが敵に発見されるなら、その前に我々は全滅していると答えます。
その頃様々な機器の並んだ一室で、CIAのスミスそしてキャラハン将軍に対し、武器商人のケスが饒舌にショーの開始を宣言していました。
ケスはレイカーを騙して、戦闘用ドローンの実戦演習のターゲットとしてチェルノブイリの廃墟に送り込み、CIAや軍を相手にデモンストレーションを行おうとしていました。
戻って来たシロウの報告で、レイカーは自分たちは何者かに待ち伏せされていると判断しますが、ヘイズは任務の続行を望んでいました。
そこでレイカーはCIAチームを含めて全員が、2人1組で警戒しながら進むよう命じます。
一方操縦用のヘルメットを被ったオペレーターは、ケスの指示で戦闘用ドローンの遠隔操縦を開始します。
突然廃墟の建物から銃撃を受けるレイカーたち。反撃で敵は制圧されたかに見えましたが、引き続き敵は攻撃してきます。一行はグレゴリの機関銃の援護され建物に突入します。
レイカーの指示で2人1組となった結果、CIAの監視チームも戦闘に巻き込まれ、スミスと将軍は懸念を述べますが、監視チームの生還も演習の一部とケスは説明します。
ケスは敵味方を識別して、確実にターゲットを殺害するドローンの性能を見せつけ、軍やCIAに売り込もうとしていました。
レイカーたちの戦闘は続いていました。狙撃の名手ヴァルは、敵は1人しかおらず2発は当てたはずと報告しますが、敵は何事もないかのように撃ち返してきます。
敵に翻弄される中、レイカーは脱出するには敵より優位に立つしかないと考え、シロウに敵に忍び寄るよう指示します。
巧みに敵に近づいたシロウが見たものは右手にマシンガン、左手に鋭い刃物を装備した等身大のロボット、ドローンでした。
レイカーたちは広い倉庫のような場所に出ますが、そこで戦闘用ドローンの姿を目にして驚きます。ドローンに何発もの命中弾を与えますが、動きを止められません。
倉庫にあった燃料のドラム缶を転がし、目の前で爆破させ倒れても動き続けるドローン。さらにもう1体ドローンが現れ、レイカーは一同に退却を命じます。
ドローンは倒されないと言っていたな、とつぶやくキャラハン将軍に、ケスは確かに遅くなっているが、ドローンは最高の敵を相手にしているのです、と余裕の表情で答えます。
ここが勝負とみたレイカーは、至近距離でドローンの頭部に拳銃を撃ち、ついに行動を停止させます。
罠にかけられた知ったレイカーは、CIAチームのヘイズ捜査官に何が起きているか白状しろ、と迫りますが、彼女は何も知らないと答えます。
彼女の部下は何人も死んでいました。ヘイズは上司のスミスから、この場所が厳重に警備されており、レイカーたちの行動を監視するだけと聞かされていました。
あなた同様、私もはめられたと訴えるヘイズに、俺たちはあのロボットの標的、エサだとレイカーはつぶやきます。
そして彼は、ドローンはバーンズ捜査官やCIAのメンバーを襲わず、犠牲になったCIAメンバーはレイカーたちが攻撃された際、巻き添えになったとものと見破っていました。
倒されたドローンは撃ちぬかれた頭部から、血のような銀色の液体を流しています。ドローンはただの機械ではなく、有機的な構造をしていると判断します。
予想外の苦戦に、ケスらは反撃してきたヘイズ捜査官もドローンの攻撃対象に加えます。
戦闘データを収集する観測者としては、計略を知るバーンズが残れば良いと判断し、事情を知らないヘイズは切り捨てる判断が下されました。
一方レイカーらは、囮を用意してドローンをおびき出して倒す作戦を立てます。囮はダックスとバーンズが引き受けますが、ダックスは突然バーンズの足を撃って逃げ去ります。
ドローンはバーンズに近づきますが、彼を認識すると攻撃せず立ち去ります。
バーンズはダックスの非常識な行動を怒りますが、それは彼が襲撃者とつながっているかを確認する策略でした。
安全な場所に運び込まれたバーンズをヘイズが銃を手に尋問しますが、君に開示できる情報ではないと言い張り答えません。銃を下ろすようレイカーは彼女に告げます。
殺しては情報が得られないと、レイカーはダックスにバーンズの面倒を見させます。それは死なない程度に痛めつけ、情報を引き出せとの意味でした。
言動の危ないダックスと残されたバーンズは慌てます。他の者が部屋を後にすると、バーンズの悲鳴が聞こえてきます。
ヘイズはヴァルに、傭兵たちのリーダーであるレイカーがどんな人物か尋ねます。ヴァルはレイカーは、仲間の命を第一に考える男だと語ります。
レイカーはアフガニスタンの戦場で、政治的な理由で多くの部下を裏切り無駄死にさせた上官を殺していました。ヴァルは同じ戦場で、彼の行動を目撃していました。
レイカーたちの思わぬ抵抗に手を焼いたケスは、用意されたすべてのドローンの起動を命じます。
壊されたドローンをシロウが分解すると、その内部に人工の筋肉のような組織がありました。これはロシアには無い技術で、負傷した者を救う為に開発されたものです。
しかしその技術は秘密にされ、何者かがドローン開発に利用したのです。レイカーは今回の任務はドローンのデモンストレーションとして、ケスが仕組んだ罠だと判断します。
ケスにはめられたが、ヘイズは敵とグルではないと部下に説明するレイカー。まず敵を正体を突き止めようと話し、ダックスとバーンズの元に戻ります。
ダックスの拷問でバーンズは傷つけられ死んでいました。殺すなといったはずだとレイカーは呆れますが、それでもダックスは必要な情報を得ていました。
機械と生態組織を組み合わせた人型の無人兵器はドローンと呼ばれおり、遠隔操作されていました。何体存在するのかはバーンズにも不明です。
撤退して飛行機で脱出するにも、機体にはCIAにより爆弾がしかけられおり、解除しようにもその意図がばれると爆破されてしまします。
疲れを知らず、また操縦者が交代すればいつまでも継戦可能なドローンから逃れるのは困難です。
しかし今戦場となっている廃墟なら、ドローンは手分けして我々を捜すはず。動き回って敵を1体ずつ破壊するしかないと、レイカーは決断します。
レイカーと部下の傭兵たち、そしてヘイズ捜査官は装備を身に付け、決戦に臨みます。
映画『バトル・ドローン』の感想と評価
これぞB級映画!殺人ロボットvs最強傭兵部隊
全編アクション展開、エンタメ精神全開のこの作品に、B級映画ファンは狂喜するでしょう。
飛行機で敵地に乗り込む凄腕傭兵部隊という展開は、まさに『エクスペンダブルズ』の世界。豪華アクションスターがそろった本家に対し、この映画の面々もなかなかユニークです。
各々が独自のスキルを持ち、上官と部下の関係を越えた熱い絆で結ばれている姿は、まるで少年ジャンプの漫画の様な、胸を熱くする設定です。
余計な描写が一切ない展開。例えば冒頭のモスクワのパーティ襲撃、どこに飛行機を降ろし、どうやって会場に乗り込み、襲撃後どう脱出したかの説明は一切ありません。
リアルと言われる大作スパイ映画の潜入・脱出の描写も、実は映画のウソで塗り固めたもの。娯楽に徹するならシンプルに状況を並べ話を進めても、かえって観客に親切というものです。
生身の人間に格闘で倒されるドローン。殺人兵器の存在意義が問われますが、CGのロボットと人間の格闘シーンをカッコよく描きたいだけですから、これもまた良しとしましょう。
全員が特徴ある武器を選んだ結果、主人公のレイカーは最後にアンテナを拳銃で破壊します。
あの距離で拳銃が当たる訳が無い、当たったところで威力も無い、そもそもとどく距離じゃ無い。この描写もカッコ良さ重視の映画のウソ、指摘する方が野暮でしょう。
アクションシーンは、どこかで見たようなスローモーション、静止画面が登場し強調されますが、これをカッコいいと受け取るかどうかは、ご覧の上で判定して下さい。
あらゆる無駄を省き、最強傭兵部隊と殺人ロボットが対決する映画。シンプルなB級SF・アクション映画を好む方にうってつけの作品です。
とにかく格好いいマイケル・パレ
参考映像:『ストリート・オブ・ファイヤー デジタル・リマスター版』(2018)
1984年公開の『ストリート・オブ・ファイヤー』の主人公、トム・コーディ役で一躍人気となり、日本でも熱狂的なファンを獲得したマイケル・パレ。
『ストリート・オブ・ファイヤー』は2018年デジタル・リマスター版が劇場公開されるなど、根強い人気を誇る映画です。
近年のマイケル・パレは大作映画やドラマで脇を固めながらも、いわゆるB級映画、低予算映画に活躍の場を移し、数多くの作品に出演しています。
アクション系の映画で主役を演じる事が多かった彼も、近年は必ずしも主役級の役に拘らず様々な作品に出演し、ファンを楽しませています。
『バトル・ドローン』では仇役、しかも口が達者な小悪党を演じ、最後に主人公にボコボコにされる姿を、余裕を持って演じている姿はファンならずとも必見です。
腕は立つが自由気ままな傭兵部隊を描いた映画ですが、撮影現場で気ままな傭兵に徹し、一番楽しんでいたのはマイケル・パレだといえます。
まとめ
B級映画の王道を行くアクション映画『バトル・ドローン』は、マイケル・パレにルイス・マンディロア、ドミニク・スウェイン以外にも映画ファンには、気になる俳優が出演しています。
狙撃の名手ヴァル役のナターシャ・マルテは、何故かゲーム原作映画が多く『DOA/デッド・オア・アライブ』のあやね役、そして『ブラッドレインⅡ』のレイン役を演じた以降B級映画の巨匠、ラズベリー賞の常連、ウーヴェ・ボル監督映画に多数出演しています。
格闘の達人シロウを演じたダン・サウスワースはスタントをこなす俳優、巨漢グレゴリ役のオレッグ・タクタロフは、ロシア出身の元サンボ世界王者で俳優に転身、多くのアクション映画に登場しています。共にアクション映画ファンならどこかで見たかもしれない俳優です。
危ない奴ダックスを演じたジェイソン・アールズはテレビドラマ『シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ』で、マイリー・サイラスの兄役を演じたことで有名です。
映画に登場した傭兵部隊顔負けの個性的な面々、やはり少年ジャンプのマンガ的なイメージでキャスティングされたのでしょう。
B級映画ファンは、ツッこみながらも大喜びすること間違い無しの映画『バトル・ドローン』。くれぐれも、超大作SFアクション映画と間違ってご覧にならないように。
次回の「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」は…
次回の第41回は殺人を目撃してしまった男の恐怖を描く、韓国の大ヒットスリラー映画『目撃者』を紹介いたします。
お楽しみに。