Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2019/03/27
Update

映画『ギャング・イン・ニューヨーク』ネタバレ感想と評価。ジョン・ゴッディの実録映画化に家族たちも協力|未体験ゾーンの映画たち2019見破録37

  • Writer :
  • 20231113

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」第37回

今年もヒューマントラストシネマ渋谷で開催中の“劇場発の映画祭”「未体験ゾーンの映画たち2019」。今回はNYに君臨した、伝説のギャングの半生を描いた作品が登場します。

幾度となくハリウッド映画に登場する、ニューヨークの裏社会に君臨するマフィアたちの世界。

その中に1980年代に君臨し、派手な振る舞いで世間の注目を集めた人物である、ガンビーノ一家のドン、ジョン・ゴッディがいました。

彼の歩んだ生き様と同時に、多くの一般市民すら魅了したカリスマの姿が描かれます。

第37回はアメリカの実録犯罪映画『ギャング・イン・ニューヨーク』を紹介いたします。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2019見破録』記事一覧はこちら

映画『ギャング・イン・ニューヨーク』の作品情報


(C)2017 GEORGIA FILM FUND 46, LLC

【日本公開】
2019年(アメリカ・カナダ合作映画)

【原題】
Gotti

【監督】
ケヴィン・コナリー

【キャスト】
ジョン・トラボルタ、ケリー・プレストン、スペンサー・ロフランコ、プルイット・テイラー・ヴィンス、ステイシー・キーチ、クリス・マルケイ、ウィリアム・デメオ

【作品概要】
「リアル・ゴッドファーザー」と呼ばれた実在のマフィアのドン、ジョン・ゴッティをジョン・トラボルタが演じるクライムアクション映画。

またゴッティの妻、ヴィクトリアをジョン・トラボルタ夫人である女優、ケリー・プレストンが演じています。

ドラマ『アントラージュ オレたちのハリウッド』など、多くの作品に出演している俳優、ケヴィン・コナリーが本作の監督を務めています。

そして2019年ゴールデン・ラズベリー賞に6部門にノミネートされるなど、通常と異なる視点から映画ファンの注目を集めている作品です。

ヒューマントラストシネマ渋谷とシネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2019」上映作品。

映画『ギャング・イン・ニューヨーク』のあらすじとネタバレ


(C)2017 GEORGIA FILM FUND 46, LLC

夜の街を背景に「ニューヨークてのは、世界一の街だ」と語るジョン・ゴッディ(ジョン・トラボルタ)。そして彼は続けます。

「マフィアの末路は死ぬか、塀の中だ。俺は両方だ」。

1999年、服役中の刑務所で、厳重に監視され面会室へ向かうゴッディ。それと共に彼の半生が振り返られます。

1973年、マフィァの5大ファミリーの1つ、カルロ・ガンビーノ一家の一員であったゴッディは、幹部から殺しの指示を受けます。

ターゲットはガンビーノの甥の誘拐・殺人事件の主犯と思われる男、ジェイムズ・マクブラトニー。バーにいた彼にゴッティと仲間は警官を装って近づきます。

マクブラトニーに銃弾を浴びせ、止めを刺したゴッディ。1957年から裏社会で生きていた彼は、この功績で正式な一家の構成員となります。

刑務所の面会室でゴッディは、息子のジョン・A・ゴッティ(スペンサー・ロフランコ)と面会します。父と同じ世界に入ったジョンは、自らの裁判を控えていました。

ジョンは父に司法取引させる事で、自分の刑期を短くする事を望んでいました。事態を収束させたいと説明するジョンに、ゴッティは強く反発します。

1974年、ゴッティは刑務所で妻のヴィクトリア(ケリー・プレストン)と子供たちと面会していました。

事件の後ゴッティは逮捕されましたが、検事との取引や圧力の結果、わずか4年の刑を宣告されたのみでした。

しかもゴッディは守衛を買収し、医療行為を名目に外出することまで許されていました。収監されて2年目、外出した彼はギャングのメンバーを殺害し、何食わぬ顔で刑務所に戻ります。

刑務所を出たゴッディは妻子や幼い頃からの友人で、マフィアの仲間であるアンジェロ・ルッジェーロ(プルイット・テイラー・ヴィンス)に迎え入れられます。

アンジェロはゴッティ一家と家族ぐるみで付き合っており、ゴッティの子供たちとも親しい関係でした。

そして功績を認められたゴッティは、5大ファミリーを取り仕切るマフィアの秘密結社、“コーザ・ノストラ”の正式な一員として迎え入れられます。

成績優秀なジョンはミリタリー・アカデミーに入学しますが、父であるゴッディの犯罪がテレビのニュースとなり、学校での居場所を失っていきます。

マフィアの仲間たちと酒を酌み交わすゴッディ。ゴッティが仕えるガンビーノ一家の実力者、ニール・デラクローチェ(ステイシー・キーチ)から幹部たちを紹介されます。

フランク・デチッコ(クリス・マルケイ)やサルヴァトーレ・サミー・グラヴァーノ(ウィリアム・デメオ)など、幹部たちとゴッディは交流を深めていきます。

一方息子のジョンはミリタリーアカデミーを停学になります。ゴッティは驚きますが、ジョンは士官学校への進学を諦め、父と同じ道を進む事を選びます。

ルッケーゼ一家のアンソニー・カッソ(通称ガスパイプ)や、ジェノベーゼ一家のヴィンセント・ジガンテ(通称チン)など、ゴッティは他の一家の動向も見極めていきます。

ガンビーノ一家で最も力を持っているのはポール・カステラーノ。彼がカルロ・ガンビーノの後を継ぎ、一家を仕切っている事がゴッティには不満でした。

1980年、ゴッティの息子の一人フランクが自宅の前で車にひかれ亡くなります。将来を期待していた息子の突然の死に、取り乱す妻ヴィクトリアをゴッティは必死に支えます。

しかしジョンは、独りになったゴッティが泣いている姿を目撃します。

フランクをひいてしまったのは、隣人のジョン・ファヴァラという男でした。ファヴァラはある日何者かに拉致されてしまいます。

ヴィクトリアに、ファヴァラの奴をバットで殴ってやったと告げるゴッティ。ファヴァラはその後二度と姿を現しませんでした。この一件はテレビのニュースでも報道されます。

1984年のクリスマス、ゴッティ家のパーティーにガンビーノ一家の幹部が集まります。幹部たちの間に一家のボス、ポール・カステラーノに対する不満が高まっていました。

1985年、仲間と共に酒場にいたジョンは喧嘩騒ぎを起こし、相手に死人が出ます。ゴッティは息子の犯した不始末を激しく怒ります。

父に責められたジョンをアンジェロ・ルッジェーロは、ゴッティは息子である彼を誇りに思っていると伝え慰めます。ジョンたちが起こした事件の後始末はゴッティらが行いました。

ガンビーノ一家を揺るがす事件が起きます。アンジェロ・ルッジェーロの娘の電話がFBIに盗聴されていたと判明したのです。

FBIの捜査の進展を知るため、ポール・カステラーノはアンジェロにテープを入手し自分に渡すよう要求します。

テープがポール・カステラーノに手に渡ると、アンジェロだけでなく他の幹部の立場も危うくなります。この事態に組織は大きく動揺します。

ゴッティらは組織の重鎮ニール・デラクローチェを頼りますが、彼はガンに犯されていました。

ゴッティや彼の友人ウィリー・ボーイ・ジョンソンなど、ガンビーノ一家の幹部は盗聴テープを基に裁判にかけられます。

ゴッディは100万ドルで保釈されますが、裁判の過程でジョンソンがFBIの情報提供者と判明します。狼狽するジョンソンに、ゴッディは平静を装います。

結局裁判でゴッティやジョンソンは無罪となります。釈放されたゴッディは地元であるNY市内のクイーンズで花火を打ち上げ、人々と共に祝います。

許可を得ず行われた打ち上げ花火を、警官たちが注意にやって来ますが、20年も前からやってる事だとうそぶくゴッティ。警官は引き上げるしかありませんでした。

そんな中、ジョンは後に伴侶となる女性、キムと出会います。

ガンビーノ一家の幹部たちの、ドンであるポール・カステラーノに対する不満は高まっていきます。ゴッティは自分がその地位に就くことを考え始めます。

ゴッティは余命いくばくも無い、ニール・デラクローチェを頼ります。ボス殺しはマフィアの掟に反する行為であり、彼はゴッテイに慎むよう告げます。

しかしニールはゴッティの熱意に負け、もしボスを倒すなら誰を味方に付け、誰を警戒し、他のファミリーがどう動くかをアドバイスします。

そのニールが死ぬと、ゴッティはついに決断します。ガンビーノ一家の主要な幹部を味方に付け、他のファミリーも動かないと見た彼は、ポール・カステラーノ暗殺を決意します。

1985年12月16日、ついにゴッティはフランク・デチッコ、サルヴァトーレ・グラヴァーノらと共に暗殺を実行します。4人のヒットマンにゴッティは自ら計画を伝えます。

46丁目のステーキハウス、スパークスに現れたポール・カステラーノは襲撃され射殺されます。ゴッティはそれを車の中から見届けていました。

ポール・カステラーノ殺害のニュースが流れる中、ガンビーノ一家の幹部は集会を開きます。ゴッティは暗殺犯はいずれ突き止めるとして、まずは新たなドンの選出を提案します。

ドンとして推薦されるゴッティ。幹部たちは全員拍手して賛同を示します。

こうしてジョン・ゴッディは、ガンビーノ一家のドンとなりました。マスコミは「新ゴットファーザーの誕生」「アメリカ最強の犯罪王」と報じます。

以下、『ギャング・イン・ニューヨーク』ネタバレ・結末の記載がございます。『ギャング・イン・ニューヨーク』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2017 GEORGIA FILM FUND 46, LLC

しかしボス殺しという、秘密結社“コーザ・ノストラ”の掟をゴッティが破ったと疑う、他のファミリーは黙ってはいません。

1986年4月、ゴッティの腹心フランク・デチッコが自動車に仕掛けられた爆弾で暗殺されます。

これはポール・カステラーノ暗殺に対する、ルッケーゼ一家のアンソニー・カッソ(通称ガスパイプ)とジェノベーゼ一家のヴィンセント・ジガンテ(通称チン)の報復でした。

ゴッティは他のファミリーとの関係修復に苦心します。そんな中ゴッテイの古くからの友人でもあるアンジェロ・ルッジェーロは、独断でガスパイプの暗殺を試みます。

アンジェロによるガスパイプの暗殺は失敗し、ファミリーの抗争は激化します。

1999年に戻り、監獄で息子ジョンと面談しているゴッティ。家族のために刑期を軽減を望むジョンは、父に司法取引への協力を求めます。

ゴッティは息子に、お前はどちらの家族(ファミリー)のために戦っているのだ、真の男は収束を求めず徹底的に闘うもの、と怒鳴りつけます。

ガンビーノ一家をまとめるため、そして他のファミリーとの抗争を納めるために、ゴッティは古くからの友人アンジェロを切り捨てる事を決断します。

暗殺未遂はお前の為にやったと訴えるアンジェロを、ゴッティは組織から追放します。

1987年に行われた3度目の裁判でもゴッティは無罪を勝ち取り、マスコミは大きく報道します。堂々とFBIや権力を敵に回すゴッティの姿は、一般市民からも人気を集めます。

ゴッティの息子ジョンも“コーザ・ノストラ”の一員と認められ、ガンビーノ一家で頭角を現してゆきます。

その一方アンジェロは組織から追放の1年後、ガンで亡くなります。ゴッティは1人その墓前に立つのでした。

1990年、キムとの結婚式を迎えたジョンをゴッティは祝福します。息子夫婦と共に妻ヴィクトリアと踊るゴッティ。彼は幸せの頂点にいました。

しかし盗聴などで新たな証拠を得たFBIは、ゴッティをポール・カステラーノ殺害容疑で逮捕します。

1991年から始まった裁判でゴッティは追い詰められていきます。観念したサルヴァトーレ・グラヴァーノは政府と取引し、組織を裏切って検事側の証人となったのです。

その結果ゴッティの有罪は確定、終身刑の判決が下ります。それに抗議して集まった一般市民が騒ぎを起こし、マフィアの抗争の激化など、判決は社会に大きな影響を与えます。

そしてガンビーノ一家は弱体化し、幹部となったジョンも捜査の対象となります。服役中のゴッティに面会したヴィクトリアは、息子をマフィアの一員にした彼を責めます。

ついにジョンの前にFBIや警察が現れます。家族に別れを告げたジョンは逮捕され連行されます。

観念したジョンはマフィアの世界から足を洗い、家族と共に再出発する事を決意します。父ゴッディとの面会を望んだ彼は、刑務所で父と向き合っていました。

そんなジョンの姿勢を怒ったゴッティも最後には息子に、お前はすべき事をしろ、顔を上げて堂々と生きろと告げます。こうして父子の面会は終了しました。

2002年、罪を認め服役中のジョンは父ゴッティの死を知ります。仲間を売って減刑を得る司法取引を拒んだゴッティは、獄中で亡くなりました。

ゴッティを支持し、英雄視する人々は街に繰り出します。彼が君臨した頃は犯罪も少なかった、マフィアだが偉大な人だったと、インタビューに答える人々が紹介されます。

「こんな男には二度と出会えないぞ」夜のNYを背景にゴッディは語ります。

ジョンは罪を認め服役した後も繰り返し起訴され、5度の裁判を戦い、その全てに打ち勝ちます。2009年に無罪が確定した彼は組織を抜け、家族の元に帰ります。

その裁判で検察側の証言者となった犯罪者は、罪に服することなく釈放されたと紹介されます。

映画『ギャング・イン・ニューヨーク』の感想と評価

派手な振る舞いで世間を魅了したジョン・ゴッディ


(C)2017 GEORGIA FILM FUND 46, LLC

この映画は実在のギャング、ジョン・ゴッディと、その息子ジョン・A・ゴッティを描いた作品です。

ゴッディは将に映画で描かれたような派手好きな人物。世間の注目を浴びる事を好み、公然と権力に歯向かったマフィアのドンでした。

映画の最後で登場人物の氏名や行動は創作されていると断りながらも、登場人物や出来事はほぼ忠実に描かれています。

ゴッティが街中で花火を打ち上げるシーンも、実際にニューヨーク市民の為に行ったパーティーの出来事で、無論警察に無許可です。そんな振る舞いが市民に愛された犯罪者でした。

また息子を交通事故死させた隣人が、行方不明になった件も有名な実話。映画ではゴッティが直接手を下した説をとっていますが、あくまで現在も「行方不明」とされています。

70〜80年代はスラム化し治安が最悪だったニューヨーク。当時を描いた様々な映画を見ると、その雰囲気が感じとれます。ゴッディは暗黒時代の街で活動したマフィアでした。

そのゴッディの逮捕で再開発が進み治安が回復、世界的な観光名所に変貌してゆくニューヨークの歴史と重なっています。

その姿はギャングが支配する70〜80年代のラスベガスで、ギャングのために働き、派手な振る舞いで注目を集めたカジノのボス、フランク・レフティ・ローゼンタールに似ています。

参考映像:カジノ(1996)

そのレフティを主人公にした映画がマーティン・スコセッシ監督の『カジノ』。レフティ(劇中ではエース)を演じたのがロバート・デ・ニーロです。

ラスベガスも同時代に再開発が進み大手資本が参加し、危険な魅力を持つ賭博場から家族で楽しめる観光都市に変貌しました。『カジノ』でデ・ニーロはその歴史を述懐しています。

同様の時代背景を持つ都市を、実在の人物・事件を基に描いた『ギャング・イン・ニューヨーク』は、様々な面で『カジノ』と重なる作品です。

なぜかラズベリー賞に6部門ノミネートされた作品


(C)2017 GEORGIA FILM FUND 46, LLC

ところがスコセッシ、デ・ニーロの代表作として名高い『カジノ』に対し、この映画は2019年ラズベリー賞に6部門ノミネート。一つも受賞出来なかった事が、むしろ残念に思えます。

しかもローリング・ストーン誌が選ぶ、2018年のワースト映画で堂々の2位。ちなみに1位はラズベリー賞受賞作『パペット大騒査線 追憶の紫影』です。

なぜこんな結果になってしまったのか、改めて分析してみましょう。

この作品はジョン・トラボルタとケリー・プレストン夫婦の共演作ですが、この夫婦が共演した映画と言えば、2000年のラズベリー賞を席巻した『バトルフィールド・アース』があります。

参考映像:バトルフィールド・アース(2000)

そして本作は『アントラージュ オレたちのハリウッド』の主要キャストとして人気の俳優、ケヴィン・コナリーが監督を務めています。

これらの事実からこの映画は、ラズベリー賞関係者などから弄られやすい作品でした。また3時間近い上映時間の『カジノ』に対して、この映画の上映時間は1時間50分。

その中でジョン・ゴッディの人生の様々なエピソードと、取り巻く関係者を可能な限り忠実に、時間軸に沿って描いています。

ニューヨークに君臨した実在のマフィアたちが次々登場してしまい、誰が誰であったか、上手く整理されていない状態でした。

ゴッティは次々裁判にかけられますが、何の容疑で捕まり、何を争点に裁かれたのか判り辛いです。しかしこれら事実は、時間に沿って忠実に並べられています。

ジョン・ゴッティという人物を知っていれば、誰の関わった、何の事件が描かれたか理解出来ますが、そうで無い方には判り辛い映画になっています。

実話を基にしたノンフィクションを、脚本化するにあたりドラマ化、フィクション化を図った『カジノ』に対し、実際の人物やエピソードの再現に拘った『ギャング・イン・ニューヨーク』。このアプローチの違いが、2つの作品の性格を大きく分けています。

まとめ


(C)2017 GEORGIA FILM FUND 46, LLC

アメリカでは厳しい評価を得たこの作品を、その背景を含めて紹介してきました。

しかしジョン・ゴッディの半生に絞って振り返ると、彼に起きた事件と彼の周囲にいた人物は忠実に登場しており、マフィアの世界に関心ある方には興味深い映画になっています。

2019年のアカデミー賞受賞作、『ボヘミアン・ラプソディ』は伝記映画でありながら、巧みにドラマ的な改変を加え、感動的な映画として世界的ヒット作になりました。

同じく『女王陛下のお気に入り』は歴史的人物を登場させながらも、史実とは異なる時間軸で人物は登場しており、全く創作された物語と言って良い内容となっています。

その一方で実際の事件、人物を正しい時間軸で紹介することに拘った『ギャング・イン・ニューヨーク』に与えられた厳しい評価は、実に興味深い結果と言えます。

映画に描かれた事実は、歴史的事実と異なる物語であると心に留め、だからこそ面白く胸を打つものであると、理解しておくべきでしょう。

なおこの映画を「事実に拘った作品」と紹介しましたが、多くの愛人がいたゴッティの私生活の別の側面や、息子ジョンの関わった様々な犯罪行為は描かれていません。

これはSpecial Thanksでジョン・A・ゴッティなど、ゴッティの子供たちや関係者がクレジットされており、それらの方々に配慮した結果でしょう。やはり事実を忠実に映画化するのは、いろいろと難しいようですね。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」は…


(C)2017 EYEWORKS FILM & TV DRAMA – PHANTA FILM HTG VOF – ATLAS FILM – ZDF – één

次回の第38回はベルギーのベストセラー小説を原作にしたサスペンスミステリー映画『アンノウン・ボディーズ』を紹介いたします。

お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2019見破録』記事一覧はこちら

関連記事

連載コラム

映画『ファーストラヴ』ネタバレ感想と結末ラスト解説。事件の相関図と真相に絡む“社会の闇”|映画という星空を知るひとよ50

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第50回 第159回直木賞を受賞した島本理生の同名小説『ファーストラヴ』が映画化。 主演は『スマホを落としただけなのに』の北川景子、共演に中村倫也、芳根京子、窪 …

連載コラム

『続世界残酷物語』ネタバレ感想と内容解説。前作の成功が生んだモンド映画第2弾|未体験ゾーンの映画たち2021見破録22

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」第22回 最新作だけでなく歴史的怪作映画も紹介する「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」。第22回は『続・世界残酷物語』。 世界各地の奇習・風習を記 …

連載コラム

映画『アサンディミッタ』あらすじと感想レビュー。スリランカの鬼才監督アソカ・ハンダガマとは|OAFF大阪アジアン映画祭2019見聞録9

連載コラム『大阪アジアン映画祭2019見聞録』第9回 今年で14回目の開催となる大阪アジアン映画祭。2019年3月08日(金)から3月17日(日)までの10日間、アジア圏から集まった全51作品が上映さ …

連載コラム

『ロボシャークvsネイビーシールズ』ネタバレ感想と結末解説のあらすじ。サメ映画として革新的な“人間と怪獣の関係性”を描く | B級映画 ザ・虎の穴ロードショー13

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第13回 深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信サービス【U-NEX …

連載コラム

映画『ザ・スリープ・カース 失眠』ネタバレ感想。香港ホラーに日本人俳優の姿も⁈|未体験ゾーンの映画たち2019見破録29

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2019見破録」第29回 今年もヒューマントラストシネマ渋谷で開催中の“劇場発の映画祭”「未体験ゾーンの映画たち2019」。様々な58本の映画が公開中ですが、今回は極 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学