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Entry 2021/04/03
Update

映画MARK OF THE WITCH|ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。魔女が18歳の娘の身体を奪う邪悪な魂の正体|未体験ゾーンの映画たち2021見破録30

  • Writer :
  • 増田健

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」第30回

公開が危ぶまれた、世界各国の傑作・怪作・珍作映画を紹介する「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」。第30回で紹介するのは『MARK OF THE WITCH』。

悪魔を信奉する魔女は、様々な邪悪な企てを行うもの。人の魂を奪い肉体を乗っ取る、そんな悪事もお手のものです。

それがクリエイターの想像力を刺激し、様々なホラー作品で活躍する魔女たち。恐るべき手段で人を惑わし暗躍する姿を描いた作品が、また1つ誕生しました。

数多くの映画祭で10部門ノミネート、4部門受賞。その中にはホラー映画祭Tabloid “Witch” Awardsでの撮影賞受賞もあります。アーティスティックな映像のホラー映画の登場です。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2021見破録』記事一覧はこちら

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映画『MARK OF THE WITCH』の作品情報


(C)Full Frame Features

【日本公開】
2021年(アメリカ映画)

【原題】
Mark of the Witch / Another / The Devil’s Daughter

【監督・脚本・撮影】
ジェイソン・ボグナッキ

【出演】
マリア・オルセン、パウリー・ロジャス、ナンシー・ウルフ、マイケル・セント・マイケルズ、デビッド・ランドリー、リリアン・ペニーパッカー

【作品概要】
幼い頃に死んだ母に代わり、叔母の手で育てられた娘。成長した彼女の肉体を巡り善と悪の戦いが繰り広げられる。ファンタジー色豊かなオカルトホラー映画。

監督はミュージックビデオや、実験的短編映画、ライブシネマを製作するジェイソン・ボグナッキ。彼らしい映像によって綴られた作品です。

主演はテレビ映画『オズの魔法使い』(2011)でドロシー役を演じたパウリー・ロジャス。彼女を育てた叔母役に『ヘルター・スケルター』(1976)で、マンソン・ファミリーの殺人者を演じたナンシー・ウルフ。

『セーラ 少女のめざめ』(2014)や『リメインズ 死霊の棲む館』(2016)など、個性的な容姿を生かし多くのホラー作品に出演している、マリア・オルセンが共演した作品です。

映画『MARK OF THE WITCH』のあらすじとネタバレ


(C)Full Frame Features

人知れぬ山奥の洞窟に、全身を黒い衣装に包んだ怪しげな集団が集まります。彼らはそこで、生まれたばかりの赤ん坊を使い、何かの儀式を行おうとしていました。

その中の1人の女が赤ん坊を抱えて逃げ出します。そして、18年の月日が流れます…。

18歳の誕生日を迎えたジョーディン(パウリー・ロジャス)を、彼女を育てた叔母のルース(ナンシー・ウルフ)と恋人のドニー(デビッド・ランドリー)、同居している友人のキム(リリアン・ペニーパッカー)が祝いました。

お前は若く活気があり、無限の可能性を秘めていると告げるルース叔母さん。素晴らしい友人にも恵まれ、唯一の心残りはこの場にお前の母がいないことだ、と言葉を続けます。

ケーキを切る前に、叔母はジョーディンに願い事をするように言いました。彼女は願いを心に思い浮かべますが、叔母の様子がおかしくなりました。

ルースは呪文のように「時は満ちた」の言葉を繰り返します。テーブルは地震のように揺れ、包丁を握りしめ立ち上がる叔母。

彼女は「時は満ちた」と叫びながら、包丁を自分の胸に突き立てます。激しく血が噴き出し、突然の出来事に驚く一同。

ルースは病院に搬送され、ジョーディンたちも付き添います。病院の外に彼らの姿を見つめる、怪しい人影がありました。

叔母は立派な人物ですが精神的に不安定で、事件爆弾のように突然言動が乱れる一面がありました。心配するドニーに、自らを刺した時の叔母は、他人のようだったと告げるジョーディン。

彼女は何者かの視線を感じます。しかし姿はありません。車で送ると言うキムに、ジョーディンは落ち着くために歩いて行くと告げました。

街を歩き地下鉄の駅に着いた彼女は、何者につけられていると感じます。地下鉄に乗る彼女を見つめる怪しい影がありました。自分の髪が何者かに切られたと感じるジョーディン。

怪しげな一室には幼いジョーディンの写真を並べ、切り取った髪をもて遊ぶ不気味な魔女(マリア・オルセン)の姿がありました。

薬剤師として働くジョーディンが職場で居眠りしていると、そこで清掃員として働く老人ジョン(マイケル・セント・マイケルズ)が彼女を起こします。

営業終了の時間でした。自分を起こしてくれたジョンに礼と冗談を言い、彼女は店を閉めて帰ろうとしました。

すると目の前に、あの怪しげな魔女が立っています。ジョーディンが閉店だと告げても動かず呪文をつぶやきます。魔女は笑い出し、伸びた爪で彼女の腕を引っかきます。

腕に3本の血の筋が出来ました。恐怖に駆られてジョンを呼びますが、彼が駆けつけた時には目の前に誰もいません。

自宅に帰り彼女は眠りにつきます。腕にはあの3本の傷跡が残っています。ベットの脇の時計がいきなり動き出し、6時66分を表示します。

ふと目覚めた彼女が洗面所で顔を洗うと、鏡に映る自分の顔が魔女のものに変貌します。それを見てショックを受け、気絶して倒れたジョーディン。

魔女が怪しげな魔術を鏡を通してジョーディンにかけたのでしょうか。彼女は夢遊病者のように夜の街をさまよいます。

やがて壁一面に女の写真を貼った部屋に入った彼女は、自覚せずにジョンと関係を持ったのでしょうか。目覚めた彼女は、魔女の「帰っておいで」の声に誘われ歩き出しました。

家に入ると修道女姿の魔女の写真があり、十字架を下げたネックレスが落ちていました。彼女がそれを拾った時、ルース叔母さんの声がします。

誰か他の者を探せ、彼女はお前とは違う。お前は地獄に帰れとつぶやくルース。

誰としゃべっているのか尋ねると、車椅子に座った叔母は話してないと否定します。ジョーディンが落としていたとネックレスを差し出すと、彼女は礼を言います。

ジョーディンが十字架付きネックレスを叔母の首にかけると、意を決したルースは隠してきた真実を語り始めます。あなたは孤児ではない、と叔母は告げました。

本当の母親はお前を捨てた、と告げるルース。動揺して自分は母の死亡記事を持っていると言うジョーディンに、真実ではないと話す叔母。

ジョーディンにその話は、狂信的な叔母の妄想に思えました。神を信じ愚かな空想を作りあげ私を束縛し解放しなかったと、ジョーディンはあざ笑います。

今までの不満をぶつけるように叫ぶ彼女に、お前を守るためだと話すルース。しかしお前を狙う者がついにお前を見つけた、それはお前自身が望んだからだと告げました。

誕生日の願い事は何にしたかと聞かれ、毎年の様に本当の両親を見つけたいと願ったと話すジョーディン。彼女にベットに脇の箱を取って来るよう頼むルース。

箱の中身はお前の母の物だと告げるルース。ペンダントを手にとり開くと、中にはあの魔女の若い頃の写真が入っていました。

異様な気配を感じ、ジョーディンは不安を覚えます。叔母から名を呼ばれても反応することが出来ません。

翌日彼女は、自分は何かに意識を奪われ、思わぬ場所で目が覚めるとキムに打ち明けます。

同居しているキムは、自分のおかしな言動に気付いていないか尋ねます。その話の最中にジョーディンの意識は、母である魔女に乗っ取られました。

急に表情と言葉が変わった彼女を見て、キムは違和感を覚えます。腕をジョーディンの爪に引っ掛かれ、皮膚を傷付けられ思わず声を上げたキム。

鏡の向こうから実の娘ジョーディンを眺め、その意識を操った魔女は不気味な声で笑い出します。

後日、ジョーディンが家に帰った時に、留守電には彼女の行動を不審に感じた者からのメッセージが複数入っていました。

彼女は2階のキムの部屋から物音がすると気付きます。部屋に入ると彼女の恋人ドニーと、親友のキムが愛し合っていたのです。

ショックを受けたジョーディンに、ルームメイトは何でも共有すべきだと告げるキム。今までの友人の態度からは考えられない言動でした。

翌日、1人でグランドで運動するキム。彼女の姿を何者かが見つめています。昨日、自分がなぜあんな行動をとったのか理解に苦しむキム。

思い悩んだ彼女はスタンドに座るとジョーディンに電話をかけ、謝罪し話そうとしますが切られました。涙ぐむ彼女の背後に、黒い影が近づきます。彼女は魔女のような女に襲われました。

家には容態が回復したルース叔母さんが1人でいます。その前に容貌が醜く変貌した、引っかかれた腕の傷から血を流すキムが立ちふさがります。

キムはルースに告げました。「こんにちは、妹」と…。

以下、『MARK OF THE WITCH』のネタバレ・結末の記載がございます。『MARK OF THE WITCH』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)Full Frame Features

ルースは、キムに憑依した者の正体を知っていました。それは彼女の姉であり、ジョーディンの母でもある魔女です。

キムの体を支配した魔女は、ルースも新たな体に魂を映し、若い肉体を得るがよいと叫びます。永遠にイエスの影に隠れることは出来ない、自分と共に歩めと迫るキム。

そのキムを秘めた力で飛ばしたルース。彼女もまた魔女の力を持っていました。倒れたキムを力まかせにドアに挟み傷付けます。

憑依した魔女が離れたのか、我に返ったキムがルースの名を呼んでも手を休めません。やがてキムは息絶えました。

職場に出勤したジョーディンは、床に倒れた血塗れのジョンを見つけます。深手を負っていましたが、強心剤を打ち蘇生させたジョーディン。

誰にやられたかと聞くと君だ、と答えるジョン。驚いた彼女が防犯カメラの映像を再生すると、ジョンを襲う自分の姿が映っていました。

その映像は、彼女の上にのしかかるジョンの姿に変わります。映像の中でジョンを殺害するジョーディン。モニターに魔女が映り、彼女の行動を嘲笑します。

彼女が逃げる様に家に帰ると、そこにはテレビゲームに興じるドニーがいました。

去ったばかりの彼女が戻ってきたと言う、ドニーとの会話はどこかかみ合いません。自分たちが不在の時は、この家に入らないで欲しいと言うジョーディン。

血に汚れた手を洗面所で洗った彼女は、ここに今着ている服と同じ様に、血に汚れた自分の服がかかっていると気付きます。彼女にはどういう事か理解できません。

恐る恐る実母のペンダントを開けてみると、中にあった母の写真は消えていました。

十字架を掲げたベットで眠る叔母の元を訪れ、自分は何か恐ろしい事をしたと思う、と告げるジョーディン。彼女に対し、これが始まりだと告げたルース。

実の娘ジョーディンの肉体を奪おうと企む魔女は、精神に入り込む手段を見つけようと、無防備に眠っている間の彼女の意識に入り、彼女を演じて秘めた恐れや疑いや、罪の意識を学びます。

そしてジョーディンが身に付けた物や、愛着を抱く物を奪い、それに属する思い出を入り口にして、彼女の意識を奪おうと試みる。

今、お前は徐々に支配されつつあり、支配した時間に魔女は慣らし運転のようにお前の体を操る。自分の身に起きた事に注意して欲しい。

支配のテスト段階が過ぎると魔女は行動を操り、親しい人々からお前を孤立させる。徐々に友人と疎遠になり、見知らぬ人がお前と旧知のように近づいて来る、と魔女の支配の兆しを説明するルース叔母。

話したような出来事が起きているかと聞かれ、ジョーディンは動揺します。思い当たる事が確かに彼女の周囲で起きていました。

相手を混乱させると魔女の支配の最終段階が訪れる。お前自身が知らない、お前の本当の望みを知る魔女が現れ誘惑する。こうなったら手遅れでお前は空っぽになり、魔女がお前になる。

ただし、歳を経た魔女の肉体は衰え、彼女は死にかけている。だからお前の若い肉体を必要としている。ジョーディン自身が望まない限り、魂の転送は行われない。

魔女が魂を新たな肉体に転送を試みる時が、最も弱く倒すことも可能だ。準備が出来ているか尋ね、ジョーディンに催眠術をかけるルース。

叔母は彼女が魔女に支配されていた時間の記憶を呼び覚まし、ジョーディンの意識が母と接触できるように誘導します。

ジョーディンの意識を体から離れさせるルース。彼女の肉体は魔女の魂とつながり表情が変わります。目の前の鏡にジョーディンの母で、ルースの姉である魔女の顔が映ります。

対決を試みるルースにお前自身の願いを叶えるがよい、「美しさと力」との言葉を繰り返す魔女。その言葉に抵抗し神に祈るルース。

魔女に支配されたジョーディンが、恋人のドニーを殺そうとした時、魔女の部屋にルースが姿を現しました。

姉と直接対決するルース。50年ごとに新たな肉体に乗り換える企てを阻止しようとする妹に、ではイエスはお前に何をしてくれたと尋ねる魔女。

自分は光に仕えていると言う妹に、光で盲目になり自分の本性を忘れたか、かつて自分のものだった美と力を覚えているか、と魔女は問いかけます。

ルースもかつて姉と同じ魔女でした。2人は怒りをむき出しにし、全身から炎を発し掴み合います。しかし魔女の力が勝ったのか、血を吐いてルースは倒れました。

今は道を違えた妹に永遠に一緒だ、いずれお前は私に感謝する、と告げる魔女。

ジョーディンの魂は怪しげな部屋に誘い込まれていました。現れた仮面を着けた、下着姿の妖艶な女の姿に魅かれるジョーディン。

彼女は自分自身に出会います。もう1人の自分は、私があなたが望んで出来なかった事をしただけ、と話しかけます。

ジョーディンはもう1人の自分に、何者かと尋ねました。私はあなたの目覚めた夢だ、と答えたもう1人の自分は、自分に身を任せろとささやきました。

差し出された手をとったジョーディン。相手の顔は母である魔女に変わっていました。2人はキスを交わします。

魔女はこれは自分たちが誕生する遥か昔、聖ならざる父、悪魔から私たちに与えられた運命だと語ります。私はお前の成長を見守っていたと告げる魔女。

なぜ自分を捨てた、あなたは誰だと訊ねるジョーディンに、お前を喰い尽くし我が物にする傷付いて汚れた魂だ、と魔女は答えました。

18年前の怪しげな集団が集う洞窟の中に、身ごもった魔女がいました。悪魔を信奉する者たちは、臨月の魔女の腹を強く押します。

魔女の顎が大きく開き、口から胎児が顔を出します。それを掴むと引き出し魔女の魂が次に宿る、新たな肉体となる運命を持つ赤子を誕生させた悪魔信者。

赤ん坊を勝ち誇ったように抱き上げる魔女。しかし悪魔信者の1人が、可愛らしい赤ん坊を抱いて抱いて洞窟を抜け出します。

その信者がカピロテ(三角に尖った頭巾・覆面)を脱ぐと、中から現れたのはルースの顔です。赤ん坊を奪われたと知った魔女は、叫び声を上げ追ってきました。

ルースが赤ん坊を連れ出したのは、運命を哀れんだからでしょうか。他の生命の肉体を奪って生きる自分たち姉妹の運命を、終わらせようと願ったからでしょうか。

魔女から逃れようともがき、お前は母親では無いと叫ぶジョーディンを押さえつけ、お前を召喚し誕生させた日を覚えているか、と魔女は言い放ちます。

自分を邪悪な魔女だと認め、現れた悪魔信者と共に迫ります。ルース叔母が倒れている姿を目にして、誰も助けてくれないと悟ったジョーディン。

彼女は悪魔信者にベットに押さえつけられます。彼女に迫った魔女は口を開きました。口からうごめく小さな、醜悪な生き物が現れます。

意識を取り戻したルースの前で、その生き物はジョーディンの中に入ります。魔女も悪魔信者も姿を消し、ジョーディンと母親の写真が燃え上がります。

今は魔女の魂を宿したジョーディンが立っていました。若い肉体を得た彼女は、年老いた体を持つ妹ルースに迫ります…。

あの洞窟に悪魔信者が集まります。彼らは全裸の若い娘を囲みます。信者の1人が素顔を現すと、それはジョーディンの恋人ドニーの顔をしています。

彼らを率いるのは、ジョーディンの姿となった魔女でした。信者たちは若い娘を押さえつけ口を開かせます。そこに連れて来られたルース。

魔女ジョーディンが術をかけるとルースの口から、小さな醜悪な生き物が現れます。それは娘の中に入っていきます。

こうしてルースの魂も新たに若い肉体を得ました。私たちはこれを永遠に続けることが出来る、とささやくジョーディン。

魔女が「美しさと力」と呼びかけると、魔女の妹ルースは運命に抗うことを止めました。

「共に、永遠に」と答えます。新たな肉体を得た魔女姉妹は互いの手をつなぎます。

この後、恐ろしくゆっくりと流れるエンドロールが10分間続きます。多くの名が印されたSpecial thanksにはジェス・フランコ、ダリオ・アルジェントの名があります…。

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映画『MARK OF THE WITCH』の感想と評価


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様々な分野で映像クリエイターとして活躍する、ジェイソン・ボグナッキ監督のアート感覚豊富な恐怖映像はいかがでしょうか。

ジェス・フランコとダリオ・アルジェントに賛辞を捧げた監督。70年代のイタリア・スペインの犯罪・ホラー映画”ジャッロ”のファンに、本作を作ったとインタビューに答えています。

“ジャッロ”初期作品の持つスタイリッシュなカメラワークや、刺激的なホラーシーンを再現したと語る監督は、好きな映画にアルジェントの『歓びの毒牙』(1970)と、ジェス・フランコの『ヴァンピロス・レスボス』(1971)をあげています。

本作の観客に、主人公ジョーディンの悪夢を直接体験させたかった、と話す監督は意図的に強烈な映像で織り成された作品を完成させました。

こうして2014年に完成、『Another』のタイトルで映画祭に出品された本作は、鮮烈な映像が注目を集め撮影・編集部門で4つの賞を獲得しています。

とはいえ興行的評価は得られません。本作はまず『The Devil’s Daughter』のタイトルで、そして別会社により米国などで2016年『MARK OF THE WITCH』のタイトルで公開されます。

なんとも妖しい映像世界に困惑者続出!?


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評論家に映像が高く評価された本作も、観客からは疑問の声が上がります。短いプロットを長編映画化するために、70分弱の本編中おそらく2/3程度がスロー再生映像と見てよいでしょう。

その後ゆっくり流れるエンドロールが10分程度続きます。合計80分、何とも凄い内容で、”ジャッロ”風に印象的な映像をつないだ結果、説明不足な映画にもなりました。

実は本作、短編映画として製作されていましたが、それを製作中の早い段階で長編映画することが決定します。しかし製作費は25000ドル。

新たなシーンを付け加えるのではなく、当初のプロットをスローで引き延ばし印象的場面を加え、長編映画化した訳です。

短編を長編化するにあたり、新たに外部から製作費を調達はせず、低予算と製作期間の制約から編集用に複数ショットや別テイクを撮影する余裕もありません。

撮影現場に立ってから改めてどの様なシーンを撮るべきか、改めて検討する余裕もありません。経験豊富な映像作家の監督は、必要な映像だけを撮影できるよう準備し臨みました。

低予算で映画を作る上で一番大切なのは、入念なプランニングだと語る監督。プロジェクトに適切な人物を集め、撮影中の全ての時間を最大限に活用する。

撮影以外ではスタッフが働いた時間に対し、期限内に報酬を支払うことに力を尽くす事になった。それを果たすことが出来て本当に良かった、と監督は語っています。

ホラー映画は役者の顔が命です

参考映像:『リメインズ 死霊の棲む館』(2016)

この映像重視のホラー映画に相応しい、ユニークな出演者が集まりました。

魔女を演じたマリア・オルセン。プロデューサーも務める南アフリカ出身の女優です。1966年生まれの彼女は演劇の道を追求しますが、故郷でそのチャンスに恵まれません。

そこで2005年にLAに渡って活動を開始、2007年にNYのブロードウェイで役を得て役者業に専念します。同じ年「パーシー・ジャクソン」シリーズの映画化に向けたオーディションを受けます。

こうして獲得した役が『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』(2010)のドッズ先生役。これが彼女をブレイクさせました。彼女の武器は本作でも、また『リメインズ 死霊の棲む館』(2016)でもお判りの通り、その容姿が持つ存在感。

女性の容姿を語るのは失礼ですが、『パラノーマル・アクティビティ3』(2011)の役名は”キモい女性”、『パラノーマル・アクティビティ5』(2015)では”魔女団の女性”…。彼女は自分の姿を生かして大活躍しています。

渡米して以降既に70本近い長編映画と、150本以上の短編映画・ドラマなどに出演。ホラー映画ファンなら絶対に見ている顔だ、と断言して良いでしょう。

ボグナッキ監督は以前マリア・オルセンと仕事をしており、本作の魔女は彼女を念頭に創造しました。監督にナンシー・ウルフの起用を提案したのも彼女です。

この2人がオーディションで選ばれた、パウリー・ロジャスと共演します。どこか無邪気な印象を与えるパウリー・ロジャスが、最後に行きつく姿を描きたかったと語るボグナッキ監督。

5・6歳の頃から母親とドラキュラやホラー映画について話していた、生来のホラーファンのマリア・オルセン。今は製作会社を持ちプロデューサー、エージェントとしても活躍しています。

仕事のためにホラー映画を見ながら編み物をするのが大好きという、今やホラー映画界の魔女ならぬゴットマーザーとして活躍する彼女に、どうか注目して下さい。

まとめ


(C)Full Frame Features

印象的な映像が強烈な、しかしスローモーで、エンドロールがとてつもなく遅い、何とも忘れられない映画『MARK OF THE WITCH』を紹介しました。

この映画を見て唖然とした、一言言ってやりたいと思う方が大多数でしょうが、恐らく皆が「あのシーンは強烈」といった感想をお持ちでしょう。

映画の内容は忘れた、面白くなかったと語りつつ、あるシーンだけは強烈に覚えていたり、そのシーンだけが何かと話題に上る経験があると思います。

この映画はそんなシーンの宝庫です。恐るべき魔女の悪夢的世界に遭遇したと覚悟し、耐えに耐えてツッコミを入れつつ、エンドロールまで鑑賞して下さい。

クレジットで”マイケル・ラパポート”になっている俳優の正体は、”マイケル・セント・マイケルズ”だったり、この映画は色々とネタの玉手箱状態ですから。

ボグナッキ監督が本作を撮る際意識した、ダリオ・アルジェントの映画にもインパクトはあるが本編と全く関係ない、何とも妙なシーンが挿入されたりしています。

恐るべし、低予算B級ホラー映画の世界。本作のような映画との出会いが、心底楽しく感じられるようになったらもう、この世界から逃れる事はできません…。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」は…


(C)2019 ISY Holdings LLC

次回第31回は、少年誘拐事件の捜査を担当した刑事の家で、奇妙な出来事が起きます。誰も想像できない予想外の展開が話題の、サスペンススリラー映画『フロッグ』を紹介します。お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2021見破録』記事一覧はこちら




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