Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2020/01/05
Update

映画『リーディングハウス』あらすじネタバレと感想。監督の失恋体験が生んだ⁈女たちの恐るべき秘密クラブとは|未体験ゾーンの映画たち2020見破録2

  • Writer :
  • 20231113

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」第2回

映画ファンには毎年恒例のイベント、令和初となる劇場発の映画祭「未体験ゾーンの映画たち2020」が、今年も1月3日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷で開催。2月7日(金)からはシネ・リーブル梅田でも実施、また一部上映作品は青山シアターで、期間限定でオンライン上映されます。

さて、前年の「未体験ゾーンの映画たち2019」の全58作品のすべてを見破し、紹介させて頂きました。

今年も挑戦する「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」の第2回は、イスラエルの異色サスペンスホラー映画『リーディングハウス』

演出を務めたのは、イスラエルにあるテルアビブ大学にて映画を学び、学士と修士号を経て卒業したギラッド・エミリオ・シェンカル監督。

独特な視点と感性で描いた短編『Lavan』 (2010)などを経て、ギラッド監督は初の長編映画となる『リーディングハウス』で、男子禁制の秘密の文学クラブで繰り広げた儀式を描きました。

招かれた男は帰ってこない、女性たちの秘密クラブでは恐ろしい秘密が隠されていました。ロマンスやブラックユーモア、そして社会風刺に満ちたユニークな作品を紹介します。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2020見破録』記事一覧はこちら

映画『リーディングハウス』の作品情報


(C)Quotes from the story “The Mrs. And the peddler” by Shmuel Yosef Agnon from ‘Smoch ve’nire’ publisher shaken 1950. All rights of the story “The Mrs. and The Peddler” reserves to Shoken publishers

【日本公開】
2020年(イスラエル映画)

【原題】
המועדון לספרות יפה של הגברת ינקלובה / Madam Yankelova’s Fine Literature Club

【監督】
ギラッド・エミリオ・シェンカル

【キャスト】
ケレン・モル、アニア・バクシュタイン

【作品概要】
女たちが運営する閉鎖的な秘密クラブを抱える闇を描く、スリラーホラー映画。気鋭のクリエイター、ギラッド・エミリオ・シェンカル監督の初長編映画である本作は、イスラエルアカデミー賞で6部門ノミネート、衣装デザイン賞とメイクアップ賞の2部門で受賞。イスラエルのノーベル賞作家、シュムエル・アグノンの小説「The Mrs. And the peddler」にインスパイアされた本作は、ダークなおとぎ話のような味わいに満ちています。

主演は世界の巨匠が集ったオムニバス映画『11’09”01 セプテンバー11』の、イスラエル編に出演したケレン・モル。『ゲーム・オブ・スローンズ』に出演など、国際的に活躍しているアニア・バクシュタインが、主人公のライバルを演じます。

ヒューマントラストシネマ渋谷とシネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2020」上映作品。

映画『リーディングハウス』のあらすじとネタバレ


(C)Quotes from the story “The Mrs. And the peddler” by Shmuel Yosef Agnon from ‘Smoch ve’nire’ publisher shaken 1950. All rights of the story “The Mrs. and The Peddler” reserves to Shoken publishers

上品な雰囲気を持つソフィー(ケレン・モル)が、男の運転する車をヒッチハイクしようと試みます。しかし車の男は彼女を見ると、年増呼ばわりして去っていきます。結局ソフィーと同じ年頃の友人、ハナが道路に飛び出して強引に車を停めます。

初老にも見える女2人を乗せ、不機嫌な様子の男に対し、ソフィーとハナは文学クラブに来ないかと誘います。そこに若い女もいると聞かされ、男は承知します。

ソフィーとハナはクラブに到着します。ソフィーは男をエスコートして会場に入り、ハナは使用人風のメイド服に着替えます。会場には多くの女性と、彼女らが連れて来た男たちがいました。

会場で文学クラブの歴史を紹介する映画が上映されます。ヤンケロヴァ夫人が設立したこのクラブは、才色兼備の女性を讃え、快適な生活を提供する役目を持っていました。一方でそういった女性の奉仕する役、清掃部に所属する女性を養成していました。

クラブは今回、最も魅力的な男性を連れて来た人物として、ソフィーにトロフィーを与えます。容姿の衰えは隠せず最近のトロフィー獲得者は、若いローラ(アニア・バクシュタイン)ばかり。今回で99個目のトロフィーを得て、ソフィーは大喜びします。

会合を終えたソフィーとハナ。清掃部で汚れ仕事をこなす彼女は疲れ切っており、クラブを退会する事を考えていました。しかしこの秘密クラブには、退会を許さぬ厳しい掟がありました。

ソフィーはあと1個トロフィーを得れば、殿堂入りの会員としてクラブで不自由なく過ごす事ができます。しかし老いた彼女にそれは困難、今日男を捕まえたのもハナのおかげ。それでもソフィーは、100個目のトロフィー獲得に固執していました。

2人は司書として働く図書館の、男子禁制の女子寮に帰宅します。ソフィーとハナは隣室に住んでいました。自室の壁に99個目のトロフィーを飾るソフィー。

翌日図書館で勤務中に、2人は次の会合に連れて行くに相応しい男を探します。魅力的な男性とみるやソフィーはアプローチしますが、迫られた男は敬遠するばかり。やむなく彼女は貧相な男を選びます。そしてハナは、もう清掃はイヤとの書置きを残して姿を消しました。

次の読書クラブに、みすぼらしい男と現れたソフィーは、メンバーの冷たい視線に晒されます。クラブを管理する代理人のラツィアは、ハナが参加していないと気付きます。

クラブの女たちとゲストの男たちが席につき、朗読会が始まります。いきなり男たちの椅子が作動し、彼らは清掃部のメンバーによって拘束されます。その男たちを冷酷に吟味するラツィア。今回のトロフィー受賞者はローラでした。

ハナが欠けた穴を埋めるため、ラツィアはソフィ-に清掃部の仕事を手伝わせます。拘束された男は姿を消し、清掃部は大量のソーセージを作っていました。これがハナの嫌った汚れ仕事です。ソフィーと清掃部のメンバーは、会合が行われた部屋の床を念入りに掃除します。

移動遊園地の屋台で、ホットドックを売るソフィー。そのソーセージはクラブで作ったものでしょうか。寮に戻った彼女をラツィアとローラが迎えます。2人はソフィーがハナの行き先を知っていると疑っていました。

2人は拷問を加え、ソフィーの口を割らせようとします。しかし彼女も行方を知りません。ローラをハナの部屋に住まわせ、ソフィーを監視させたラツィア。

翌日ローラと共に出勤するソフィー。ハナに代わって働き始めたローラは、図書館で男の気を引く一方、雑用はソフィ-に押し付けます。

屈辱を味わった彼女の前に、魅力的な男ヨセフが現れます。彼はアグノンの短編小説について調べに現れ、それはソフィーの専門分野でした。彼を見たローラが割って入ろうとしますが、ヨセフは彼女より知識豊富なソフィーを選びます。

勤務終了後、部屋に戻ったソフィー。外では雨の中、バス停でヨセフが途方にくれてました。彼女は隣室のローラの盗聴を見抜き、その監視を避けて自室にヨセフを招き入れます。

彼女の部屋を飾るトロフィーについて訊ねたヨセフ。ソフィーは彼に食事を用意しようとしますが、あったのはタッパーに入った、例のソーセージばかりでしょうか。やっと探し当てた缶詰を調理し彼に与えます。

夜、眠るヨセフを密かに評価したソフィー。彼をクラブに連れて行けば、100個目のトロフィー獲得は間違いないと判断します。一方彼は、ソフィーの部屋の電気の不具合を直しに、また部屋を訪れたいと申し入れます。

次の日も図書館に現れたヨセフ。ローラが激しくモーションをかけますが、彼の関心は小説とソフィーにありました。

今日も図書館の閉館後、ヨセフは雨の中バス停で待っています。監視するローラの部屋に忍び込み、彼女のワインに薬を盛って眠らせると、ヨセフを部屋に招き入れたソフィ-。

今回ソフィーは手料理で彼をもてなし、ヨセフは約束通り電気を直します、瞬く間に時間は過ぎ去り、ソフィーはもう一度ローラに薬を盛ろうと部屋に入ります。するとそこに、かつてハナが飼っていた鳩が舞い戻っていました。

ソフィーは鳩に付けられたハナからのメッセージを受け取ります。それを読んだ彼女は、ヨセフの食事に薬を盛り、彼を眠らせるとハナに指定された場所へと向かいます。

秘密クラブから逃亡したハナは、伴侶となる男性と共にパリへ逃げようと考えていました。しかし逃亡資金がありません。そこでハナは友人であるソフィーに手待ちの指輪を渡し、金に変えてくれと依頼してきたのです。

追われる身のハナを案じながらも、ソフィーは彼女の力になると約束します。そして部屋に戻ったソフィーは、深く眠るヨセフに添い寝します。

そのまま朝まで目覚めなかったソフィーを、ローラが出勤に誘います。慌てて出たソフィーですが、部屋にハナが居ると睨んだローラは、室内を探して回ります。

ヨセフは巧みに身を隠してローラの目を逃れましたが、ソフィーは彼を遺して出勤するしかありません。

2人が勤務に就いた時、残されたヨセフはソフィーの部屋を探っていました。彼は隠された飾り箱を見つけます。その中には文学クラブに誘い込んだ男と共に写った、ソフィーの写真が大量に保管されていました。

彼がそれを何者かに報告している時に、ローラの目を盗み図書館から戻ったソフィーが現れます。

以下、『リーディングハウス』ネタバレ・結末の記載がございます。『リーディングハウス』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)Quotes from the story “The Mrs. And the peddler” by Shmuel Yosef Agnon from ‘Smoch ve’nire’ publisher shaken 1950. All rights of the story “The Mrs. and The Peddler” reserves to Shoken publishers

ヨセフの行為に彼女は気付きませんでした。彼と別れたソフィーは質店に向かい、ハナから預かった指輪を金に換えました。

そのソフィーの行動は写真に撮られ、警察署長の手に渡っていました。その人物こそクラブを管理するラツィア。そして彼女の前にヨセフがいました。

警察署長であるラツィアは、自分の職権を利用し部下のヨセフをソフィーに接近させ、監視していたのです。ヨセフはラツィアに、彼女はハナを匿っていないと報告します。

しかし彼女の部屋で写真を見つけたヨセフは、ある疑念を抱いていました。

その頃密かにハナと再会したソフィーは、彼女に逃走資金を渡します。感謝したハナは自分は男と共にパリのホテルに向かうと告げ、彼女も愛してくれる伴侶を見つけ、秘密クラブの束縛から逃げるべきだと語ります。

その姿は警察に監視されていました。ハナはラツィアによって、危険な指名手配犯として逮捕されます。

ヨセフはソフィーの部屋で見つけた写真から、彼女が男性連続失踪事件に関わっていると疑い、ラツィアに捜査続行を願います。しかし捜査は終了と、一方的に命じるラツィア。

ヨセフはソフィーの部屋から持ち出した写真に、失踪した警察学校の同期の男が映っていた事を確認します。そして過去の捜査資料を調べようとした彼は、今朝それをラツィア警察署長が持ち出したと知ります。

ラツィアに不審なものを感じたヨセフは、署内の彼女の部屋に忍び込み中を探ります。そしてソフィーの部屋にあった物と同じ飾り箱を見つけ、その中には同様に彼女と男の姿を写した写真が大量に入っていました。

ヨセフはその中の古い1枚の写真に、ある人物の姿を見出します。

その夜ソフィーはヨセフと再会します。2人を結び付けたアグノンの小説について語りながら、互いが深く愛し合っていると確認します。ソフィーの抱える問題は知らぬものの、君のためなら月まで逃げると語るヨセフ。

2人で眠りにつくと、ヨセフを文学クラブに連れて行き、拘束しナイフを振り下ろす夢を見たソフィー。目覚めた彼女はヨセフに、今夜の会合には来ないよう告げます。

帰ろうとしたヨセフは例の写真を落します。それを拾おうとしたソフィーを遮り、キスをしたヨセフ。2人はそのまま愛を交わします。

ヨセフと共に逃亡する決意を固めたソフィーは、質屋で指輪を金に換えると、ハナの宿泊しているホテルに電報を送る手配をします。

そして彼女はヨセフに共に逃げようと話します。しかし事情が分からず、男性失踪事件の謎を解明したい彼は、文学クラブに行きたいと考えていました。

やむなくヨセフはローラに接近し、彼女の招待で文学クラブに乗り込もうとします。その姿を見たソフィーは、彼が若いローラに乗り換えたと信じ、深く傷つきます。

1人での逃亡を決意したソフィーは、タクシーで空港に向かいますが、パトカーに乗ったラツィアに追われます。気づいた彼女は車を捨て逃げますが、銃で撃たれ倒れます。

意識を取り戻した時、ソフィーは秘密クラブのテーブルで、男たちとともに拘束されていました。そして彼女の隣に、同じく拘束されたヨセフの姿がありました。

ヨセフを連れて来たのはローラだが、今回彼を連れて来た人物は、実質的にはソフィーであると紹介するラツィア。彼女のお蔭で愛に溺れてクラブの掟を破り、男と逃亡したハナも捕える事ができたと語ります。

部屋に首にロープをかけられた、ハナとその伴侶が現れます。2人を裏切り者として、吊し上げるよう命じるラツィア。

クラブはヨセフが睨んだ通り、男性を引き入れ殺害し、遺体を処分していました。実はラツィアの持っていた写真に、失踪したヨセフの父が写っていたのです。

しかし術策にはまり捕らわれたヨセフ。ラツィアはソフィーにナイフを渡し、ヨセフを殺しクラブの殿堂入りメンバーとなるか、裏切り者として死ぬかを選ばせます。

ついにナイフを振り下ろしたソフィー。それはラツィアの体に突き立てられていました。

皆が動揺する中、ヨセフを解放し逃げ出したソフィー。拳銃を持ったローラと清掃部の面々が追ってきます。ソフィーは傷付き倒れますが、ヨセフが抱きかかえて逃げます。

とある1室に逃げ込んだ2人。ドアをふさぐためにドラム缶を置きますが、そこには可燃性の物質が入っていました。裏口からソフィーが逃げた後、ドアをローラが拳銃で撃ちます。

大きな爆発が起きて、文学クラブが開催される洋館は吹き飛ばされます。

爆発から逃れたソフィーに、ヨセフが無事な姿を見せます。こうして“ヤンケロヴァ夫人の文学クラブ”の手を逃れた2人は、バイクで走り去っていきます。

映画『リーディングハウス』の感想と評価


(C)Quotes from the story “The Mrs. And the peddler” by Shmuel Yosef Agnon from ‘Smoch ve’nire’ publisher shaken 1950. All rights of the story “The Mrs. and The Peddler” reserves to Shoken publishers

女性だけの秘密クラブが描かれたもの

一筋縄ではいかない、実にブラックな作品です。男性優位の社会に反発して、女性の自立と互助、そして男たちへの復讐を狙って設立されたであろう、“ヤンケロヴァ夫人の文学クラブ”。

ところがその内実は、容姿に優れ男を虜にする者に特権が与えられ、そうでない者は権力者に仕えさせられるという、女性蔑視的な男性的価値観を、女だけの社会にそのまま持ち込んでいました。しかも実社会で警察署長であるラツィアは、暴力的に振る舞って邪魔者を追い詰めます。

かつて女性が社会進出すれば、社会から男性的な、権威や暴力に頼る風潮が消え、より良い社会が生まれると期待する声がありました。

イスラエルには宗教的な女性に対する制約もあるようですが、小国の人材活用の必要性から、政治・軍事を含むあらゆる面で、制度的に女性の社会進出を進めてきました。

権力を握った彼女たちは、結局従来の男性と同じ振る舞いに終始します。これは男社会に迎合した結果でしょうか、それとも男も女も、本質的に価値観と行動は変わらないのでしょうか。

文学クラブの女性たちの振る舞いには、そんなシニカルなメッセージが込められています。

控え目な様で実にブラックな描写の数々


(C)Quotes from the story “The Mrs. And the peddler” by Shmuel Yosef Agnon from ‘Smoch ve’nire’ publisher shaken 1950. All rights of the story “The Mrs. and The Peddler” reserves to Shoken publishers

さて、『リーディングハウス』に猟奇的描写を期待した方は、正直ガックリしてるかもしれません。その気持ち、良く判ります。

男性を殺害する直接描写なし、遺体を処理する場面もなし。裏で大量にソーセージを作っているから、間違いなく原料はアレでしょうね。でも説明は一切ありません。

そして遊園地でホットドックを売ります。都市伝説的にアレの肉、と言いたいのでしょう。しかも女性会員にタッパーでおすそ分け、彼女らもきっとソーセージを食べてるんでしょうね…。

控え目な様で凶悪な描写の数々は、これがイスラエルの映画だと思うと、更に強烈な意味を持ってきます。文学クラブの女性は男性の優位度の評価のために、顔の骨格を器具で測りますが、これはかつてナチスがユダヤ人の判別できると妄信し、使用した判定法と同じです。

逃れたハナを探すため、ソフィーを責め立て監視する手法は秘密警察と同じやり口。一方逃走資金を得るため、質屋で装飾品を処分する姿は、迫害から逃れるユダヤ人の姿そのものです。

力を得た女性たちがナチスまがいに振る舞う、風刺にしても重すぎる数々の描写。公権力機関で多くの女性が活躍している、イスラエルの現状に対するメッセージが込められているのです。

流血シーン以上の深い闇を、あえて描いた本作が、寓話的スタイルで作られたのも無理はありません。そしてこの映画を高く評価した、イスラエル映画人の姿勢に敬服させられます。

実のところ監督の失恋体験が生んだ映画?


(C)Quotes from the story “The Mrs. And the peddler” by Shmuel Yosef Agnon from ‘Smoch ve’nire’ publisher shaken 1950. All rights of the story “The Mrs. and The Peddler” reserves to Shoken publishers

インタビューで自身を、ティム・バートンの大ファンだと語るギラッド・エミリオ・シェンカル監督。彼はこの作品を、イスラエル初のファンタジー映画だと語っています。

世間で当たり前のように、男性が女性を容姿で判断しています。そんな世界を逆転させる事が監督のアイデアの原点でした。クラブの女性たち1人1人が男性に傷つけられた過去を持っており、スタッフとはその設定について深く話し合ったそうです。

しかし映画では彼女らの背景を、一切描かない事を選びました。こうして世界を支配する強い女性たちを、コミック的なキャラクターに仕立て上げました。

映画を映像的にも内容的にも、現実のイスラエルと切り離して描くため、彼は本作は全てスタジオで撮影したと語っています。こうして映画は特定の場所と時代を感じさせない、おとぎ話的な世界が完成したのです。

同時に監督は本作の脚本執筆時、失恋を経験していたと打ち明けています。成る程、愛についてセンチメンタルで、それ以上に女性の怖さを描いた作品になった訳です。

まとめ

参考映像:未体験ゾーンの映画たち2019で上映された『ザ・カニバル・クラブ』

ホラーとして刺激不足なようで、実はブラックなメッセージを持つ映画『リーディングハウス』。一風変わった風刺劇を好む人にお薦めです。

昨年の「未体験ゾーンの映画たち2019」には、上流階級の人間が下流の人間を文字通り、そして性的にも喰いものにするブラックな食人映画『ザ・カニバル・クラブ』があります。

この映画も『リーディングハウス』と同じく、キワもの的な設定を持ちながら、実は社会風刺に満ちた作品でした。

SF・ホラー・アクション映画の祭典との印象が強い「未体験ゾーンの映画たち」ですが、毎年実にユニークな作品が潜んでいるのです。そんな作品に出会えるのも、この映画祭ならではの楽しみなのです。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」は…


(C)2018 NEXUS FACTORY – BOBURST PRODUCTIONS – KLUGER PARTNERS – PROGRAM STORE

次回の第3回は命がけのリアル脱出ゲームを描くホラー映画『エスケイプ・ゲーム』を紹介いたします。

お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2020見破録』記事一覧はこちら

関連記事

連載コラム

【未体験ゾーンの映画たち2020ベスト10】Wiki情報より詳細に内容考察。ラインナップ54本+1本を全て見たシネマダイバー《増田健セレクション》

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」第55回 さまざまな理由から日本公開が見送られていた映画を紹介する、恒例となった上映企画”未体験ゾーンの映画たち”。今回の「未体験ゾーンの映画たち 2 …

連載コラム

映画『聲の形』ネタバレ感想と評価考察。京都アニメーション×山田尚子がいじめをテーマにした漫画を映像化|映画という星空を知るひとよ9

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第9回 映画『聲の形』は、耳が不自由な少女とその少女をいじめたことが原因で、コミュニケーションが苦手になった少年の切なく美しい青春ストーリーです。 原作は「マン …

連載コラム

映画『氷上の王、ジョン・カリー』感想と評価解説。英国人スケーターの栄光と苦悩|だからドキュメンタリー映画は面白い18

連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』第18回 世界を魅了した名フィギュアスケーターの、栄光と孤独とは。 今回取り上げるのは、2019年5月31日から新宿ピカデリー、東劇、アップリンク渋谷、 …

連載コラム

ゴジラ映画の感想と考察。シリーズ初代の由来と1984年版とシンゴジの共通点を徹底解説|邦画特撮大全21

連載コラム「邦画特撮大全」第21章 昨年2017年東宝は11月3日を“ゴジラの日”に制定し、日本記念日協会から認定を受けました。 これは東宝が製作した特撮映画『ゴジラ』(1954)の公開日、昭和29年 …

連載コラム

映画『僕らをつなぐもの』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。同性婚カップルのもとに“生まれた少年”の成長をユーモアたっぷりに描く理由|Netflix映画おすすめ90

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第90回 『僕らをつなぐもの』は、Netflixで2022年3月4日から配信が始まったイタリア映画。 同性婚の2人の父親の元で育った息子レオ …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学