連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile145
『ドント・ブリーズ』(2016)から着想を受け製作され、本国で大ヒットを記録しただけでなく「音を立てたら、即死」と言うキャッチコピーが日本でも評判となった映画『クワイエット・プレイス』(2018)。
本作を機にホラー映画は空前の「○○をしたら死亡」ブームとなり、『バードボックス』(2018)を始めとした作品のヒットのきっかけとなっていきます。
今回はホラー映画のいちブームを気づきあげた作品の続編となる映画『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』(2021)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
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CONTENTS
映画『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の作品情報
【公開】
2021年(アメリカ映画)
【原題】
A Quiet Place: Part II
【監督】
ジョン・クラシンスキー
【キャスト】
エミリー・ブラント、ミリセント・シモンズ、ノア・ジュープ、キリアン・マーフィー、ジャイモン・フンスー、ジョン・クラシンスキー
【作品概要】
ドラマシリーズ「ジャック・ライアン」で主演を務めるなど、俳優としてのキャリアを重ねるジョン・クラシンスキーが監督した大ヒット映画第2弾。
前作に引き続きエミリー・ブラントが主演を務め、新たにアボット一家を支えるエメット役として『28日後…』(2003)のキリアン・マーフィーが参加しました。
映画『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』のあらすじとネタバレ
2020年、空から地球に飛来した「何か」は人類を襲撃し、生き残った人類は文明を捨て「何か」に見つからないように隠れ潜んで生活していました。
「何か」は視力が殆どないものの並外れた聴覚を持っているため、アパラチア山脈の谷で助けを待ちながら過ごすアボット一家は音を立てないようにさまざまな工夫を凝らしていました。
「何か」の飛来から474日後、母イヴリンが息子を出産した夜にアボット一家は聴覚障害を持つ娘リーガンの持つ補聴器から発せられる高周波によって「何か」の弱点を露出させ殺害できることを発見しますが、同時に父のリーが家族を守るために死亡してしまいます。
翌日、隠れ家も崩壊してしまい、新たな地を目指すことを余儀なくなったイヴリン、リーガン、マーカス、そして産まれたばかりの息子の4人はニューヨーク方向へと向かいます。
道中、「立ち入り禁止」の看板が掲げられる廃工場でマーカスが仕掛けられていたトラバサミに引っかかり足を負傷。
騒音に引き寄せられた「何か」に襲われる一家でしたが、廃工場に隠れ潜む男に救われ、彼の住む廃工場の地下へと案内されます。
男は「何か」の襲来前はアボット一家と親しい関係であったエメットでしたが、彼は息子と妻を失い人間不信に陥っていました。
エメットの隠れ家でリーガンはラジオから「ビヨンド・ザ・シー」が流れていることに気づきます。
エメットは数ヶ月前から音楽が流れ始めたと言い生き残りの人間がいることを示唆しますが、同時に生き残った人間は危険な存在だと忠告。
その日の夜、リーガンは「ビヨンド・ザ・シー」は「海の向こう」を意味しており、廃工場へと電波を飛ばせる放送局が徒歩1日圏内の波止場から目視できるはずの孤島にあることをマーカスに話します。
リーガンはラジオから補聴器の放つ高周波を流すことが出来れば生き残っている人間を支援できると力説しますが、危険すぎる行動にマーカスは反対。
翌日、目を覚ますとリーガンは1人波止場を目指し廃工場を出て行きました。
リーガンがいないことに気づいたイヴリンはエメットにリーガンを連れ戻すように懇願します。
渋々エメットは道中で「何か」に襲われるリーガンを助け連れ戻そうとしますが、彼女の意志は固く波止場へ向かおうとする行動を止めることが出来ずエメットも同行することになります。
波止場にたどり着き島へと渡るための船を探す2人でしたが、生き残りの少女を囮にした強盗たちに拘束されます。
リーガンの拉致を目前としたエメットはわざと騒音を鳴らすことで「何か」を引き寄せ、駆け付けた複数の「何か」によって強盗たちは虐殺。
騒ぎに乗じてリーガンとエメットは船を調達し島へと向かいますが、同時に2人は「何か」が泳げないことを知ります。
映画『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の感想と評価
前作のラストから続く物語
映画『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』は前作『クワイエット・プレイス』の地続きの作品となっており、物語は前作のラストシーンから始まります。
空から飛来しその正体も行動原理も分からない「何か」の弱点を発見したアボット一家ですが、依然として「何か」の驚異が薄れたわけではありません。
それゆえに「音を立ててはいけない」と言うルールは変わることなく人類の中に存在し、日常行動でつい立ててしまう微かな生活音でさえも引き続き恐怖の対象となります。
「音を立てることへの恐怖」を演出する一方で聴覚障害を持つリーガンを主眼としたシーンではあえて無音にすることで「危機の迫る音が聞こえない恐怖」を作り出す、前作で味わえた恐怖を再び感じ取ることができます。
本作ではさらに生存者たちとの出会いも描かれており、生き延びる上での「敵か味方か」も分からない不安が、前作以上に手に汗握るハラハラ感を引き出していました。
護る者と護られる者
本作の最大のテーマは「護る者」と「護られる者」の変化にあります。
前作では一家の父であるリーが妊娠中のイヴリンや家族を「護る者」であり、大黒柱としてアボット一家を率いていました。
しかし、リーが死亡したことで、前作では「護られる者」であったイヴリンが本作では家族を「護る者」となり、絶望的とすら言える旅に挑んでいくこととなります。
作中ではこのような「護る者」と「護られる者」が印象的に入れ替わり、誰もが人を「護る者」へと変わっていけると言うメッセージが力強く発せられていました。
ホラー映画特有の後味の悪さが苦手な人にもオススメしたい1作です。
まとめ
主演のエミリー・ブラントは本作のインタビューの中で、監督のジョン・クラシンスキーが第3作のアイデアを持っていることを語っており、パラマウントは「クワイエット・プレイス」をシリーズ化することを明言しています。
「音を立てたら、即死」と言う「クワイエット・プレイス」の恐怖はこれからもまだまだホラー映画界を席巻することは間違いありません。
そんなシリーズの最新作となる『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』は現在、劇場で公開中。
音を立ててはいけない世界が故の静寂さの恐怖をぜひとも劇場で体験してみてください。
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