サスペンスの神様の鼓動41
映画『クローブヒッチ・キラー』は2021年6月11日(金)より新宿武蔵野館ほかロードショー予定!!
10年前に、ある小さな町で起きた未解決事件「巻き結び(クローブヒッチ)連続殺人事件」。
この事件の真相に挑む、16歳の少年タイラーが、あまりにも衝撃的な真実に直面するサスペンススリラー『クローブヒッチ・キラー』。
殺人鬼を題材にした作品なのですが、残虐な描写がほとんどありません。
しかし計算された演出が、静かな恐怖を生み出している、本作の魅力をご紹介します。
小さな町の幸せな家庭で生まれ育った16歳の少年タイラーが、10年前に町を震撼させた未解決事件の真相に迫るサスペンススリラー。
主人公のタイラーを演じたチャーリー・プラマーは『ゲティ家の身代金』(2017)で誘拐される富豪の孫を演じたことで話題になり、続く『荒野にて』(2019)で「第74回ヴェネチア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)」を受賞した注目の俳優です。
タイラーの父親ドンに『ザ・シークレット・サービス』(1993)などの映画からTVドラマシリーズまで、幅広い活躍を見せている実力派の俳優ディラン・マクダーモット。
タイラーと共に事件の真相に挑む少女カッシを『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)でマンソン・ファミリーのケイティ役で印象に残る演技を見せた、マディセン・ベイティが演じています。
CONTENTS
映画『クローブヒッチ・キラー』のあらすじ
信仰を重んじる小さな町で生まれ育った16歳の少年タイラー。
現在は静かで平和な町ですが、10年前に10人の女性が犠牲になるという恐ろしい連続殺人事件が発生しました。
被害者は全員体を縛られた状態で殺害され、現場に必ず巻き結びされたロープが残っていたことから「巻き結び(クローブヒッチ)連続殺人事件」と呼ばれます。
結局、犯人は逮捕されないまま、事件は未解決となってしまいます。
そして、10人目の被害者を境に、何故か犯行が止まっていました。
町では、毎年被害者の追悼式が開催されていましたが、タイラーにとっては生まれる前の事件のため、他人事です。
タイラーは貧しくも、幸せな家庭に暮らしています。
特に父親のドンは家族に優しく、ボーイスカウトの団長も務め、町でも信頼の厚い人物です。
ある時タイラーは、ドンの車に乗って夜のデートに出かけます。
ですが、車内に拘束された女性の写真があったことで、タイラーは変態扱いされてしまい、その噂が同級生の間に広まってしまいます。
身に覚えの無い写真が、車内にあったことに納得のいかないタイラーはドンを疑い、ドンが趣味の工作を楽しむ為の小屋に潜入します。
そこで、タイラーは猟奇的なポルノや不穏なポラロイド写真を見つけてしまい、ある物がキッカケで「巻き結び連続殺人事件」の犯人は、ドンではないかという疑いを持つようになります。
タイラーは、自身と同じように「巻き結び連続殺人事件」の真相を追う少女カッシに協力を求めます。
事件の「真実」を追い求めるタイラーとカッシが、最後に目撃する衝撃の「事実」とは?
サスペンスを構築する要素①「町を震撼させた連続殺人の謎」
かつて、小さな町を震撼させた連続殺人事件の真相に、16歳の少年タイラーが挑む『クローブヒッチ・キラー』。
タイラーは、もともと連続殺人事件に全く興味を持っていませんでしたが、ある事がキッカケで、自分の父親であるドンを、事件の真犯人と疑うようになります。
その後、タイラーは連続殺人事件の情報を集めている少女カッシから、犠牲者や犯行現場の情報を得るようになります。
何も知らなかったタイラーが、徐々に連続殺人事件の詳細を知っていくのが前半の主な展開なのですが、知れば知るほど、この連続殺人事件は不可解なのです。
犯行現場に、必ずロープが巻き結びされていた事から「巻き結び連続殺人事件」と呼ばれているこの未解決事件。
犯行の特徴として、犠牲となった女性10人が全員体を縛られた状態で、首を絞められて窒息死していることです。
カッシは「犯人は自分の性的欲求を満たす為に、犯行を行った」と推測し、現場に必ず残されている、巻き結びされたロープについて「警察を挑発している」と考えています。
さらに「巻き結び連続殺人事件」の最大の謎である、突然犯行が止まったことに関して、カッシは「今は休んでいるだけ」と、また犯行が始まる可能性を危惧しています。
タイラーが、ドンを疑うようになった最初のキッカケは、拘束された女性の写真が、車の中に落ちていたことです。
さらにドンは、ボーイスカウトの団長も務めており、ロープの扱いには慣れています。
タイラーは「巻き結び連続殺人事件」のことを知れば知る程、ドンへの疑惑が強くなっていきます。
「信頼していた父親が、実は殺人鬼かもしれない」タイラーが抱いた疑惑が、次々と確証に変わっていく恐ろしい展開が、作品前半の主軸となっています。
サスペンスを構築する要素②「理想的な父親ドンの『不自然さ』」
タイラーが「巻き結び連続殺人事件」の真犯人として疑うようになる、父親のドン。
ドンは陽気な性格で、ボーイスカウトの団長を務める程、町の住人から信頼されている男です。
家庭では料理や家事を率先して行い、妻を助ける良き夫です。
タイラーにも友人のように対等に接しており、過保護な母親に内緒で、タイラーにお酒を飲ませたり、銃の撃ち方を教えたりするなど、少し危険なことも経験させてくれる楽しい父親です。
まさに理想の夫であり父親と呼べるドンですが、その全てが逆に不自然で、嘘くさく感じてしまいます。
特に印象的なのが、ドンは常に冗談を言っているような陽気な性格ですが、怒りや悲しみなどの感情を、表に出さないという点です。
言動には心が無いように見えてしまい、常に浮かべている笑顔は、本来の自分を偽る為の仮面のように感じます。
さらに、タイラーには、ドンから家庭内で禁止された2つの事項があります。
「ドンが趣味を楽しむための小屋には入らない」「インターネットを勝手に使わない」
この禁止事項は、何を意味するのでしょうか?
サスペンスを構築する要素③「表と裏の視点から暴かれる真実」
『クローブヒッチ・キラー』は、前半はタイラーの視点で物語が展開しますが、上映開始1時間ほどで、ある別の視点に切り替わります。
タイラーの視点が表とすれば、後半は裏の視点になっており、おぞましい真実が判明します。
そして、表と裏の視点が合わさったラスト20分では「巻き結び連続殺人事件」への決着が描かれています。
タイラーとカッシが直面する「巻き結び連続殺人事件」の衝撃的な真相だけでなく、タイラーがどのように事件を終わらせるのか?が終盤の見どころとなっており、ここに本作のメッセージが込められています。
映画『クローブヒッチ・キラー』まとめ
小さな町を襲う、過去に起きた連続殺人事件と言えば『ハロウィン』(1978)や「エルム街の悪夢」シリーズなど、殺人鬼が現れるスラッシャー映画を連想しがちです。
しかし『クローブヒッチ・キラー』は「信頼していた父親が、実は殺人鬼かもしれない」という、普通であれば考えたくもない疑惑が恐怖を生み出しており、作中に血が飛び散るような残酷描写も、殺人鬼に追いかけられる緊迫した展開も無いのですが、計算された静かな恐怖が充満された作品となっています。
この恐怖の根本には、例え家族といえど信頼できなくなってしまった、人間関係における現代社会の問題点があるように感じ、作中でタイラーの家族は一家団欒の時間を重視しているのですが、これが逆に嘘くさく不自然に感じるのも、本当に心が通じ合っているように見えないからでしょう。
また、10代の思春期の頃は、家族から距離を置きたくなる時期でもあり、本作はそういった、10代の目線で語られる、ジュブナイル映画としての特徴もあります。
主人公タイラーは、16歳という多感な年頃の為、これまでとは違う、家族を一歩引いた視点で見るようになっている部分があるのですが、これは誰しも心当たりがあるのではないでしょうか?
当初は協力関係だったタイラーとカッシが、徐々に恋愛関係になっていく様子も、ジュブナイル映画としての本作の見どころになっています。
殺人鬼を扱った映画でありながら、残酷描写は無く、表と裏の2つの視点で「巻き結び連続殺人事件」の恐怖と真相を描いた本作は、かなり計算された作品となっています。
ラストにタイラーが下す決断に関して、賛否が分かれるところでしょう。
ですが、人間関係が希薄になりながらも、やはりコミュニティの中でしか生きていけない、人間の悲しくも残酷な部分を描写しており、この決断を通して、タイラーが確実に成長した事が分かる、見事なラストシーンであると言えます。
「巻き結び連続殺人事件」のおぞましい真実と、タイラーの成長を是非ご覧ください。
映画『クローブヒッチ・キラー』は2021年6月11日(金)より新宿武蔵野館ほかロードショー予定!!
次回のサスペンスの神様の鼓動は…
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