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Entry 2021/05/07
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映画『女たち』あらすじ感想と評価解説。倉科カナと篠原ゆき子がアラフォーの行き詰まり人生を演じる|映画という星空を知るひとよ63

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第63回

自然豊かな山間の町で織りなすアラフォー女子たちの生き様を描いた映画『女たち』が、2021年6月1日(火)よりTOHOシネマズシャンテ他、全国公開です。

田舎町で半身不随の母の介護をしながらパート勤めをする主人公の心の拠り所は、親友の養蜂家でした。

充実したマイペースな生活を送っているように見える主人公でしたが、その心には深い傷があり親友の突然の死によって、傷口は広がっていきます。

2018年の『銃』、2019年『エリカ 38』、2020年『銃 2020』、2020年『海辺の映画館』などの製作に携わったプロデューサー奥山和由が、ギリギリの女たちの生き様を描き出した作品。

監督は『おだやかな日常』の内田伸輝が務めました。主人公に篠原ゆき子、その親友には倉科カナ、そして半身不随の主人公の母は高畑淳子と実力派が揃いました。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『女たち』の作品情報


(C)「女たち」製作委員会

【公開】
2021年(日本映画)

【監督】
内田伸輝

【製作】
奥山和由

【キャスト】
篠原ゆき子、倉科カナ、高畑淳子、サヘル・ローズ、筒井茄奈子、窪塚俊介

【作品情報】
映画『女たち』は、毎日を一生懸命に生きながらも、心に持った深い傷と葛藤する女たちの姿を描き出しています。

製作は、1998年チームオクヤマを設立し、ますます意欲的に作品を手掛けている奥山和由。本作は、チームオクヤマ発足25 周年の節目に当たる作品です。

監督は『おだやかな日常』(2012)『ぼくらの亡命』(2017)の内田伸輝が務めました。『共喰い』(2013)の篠原ゆき子、『3月のライオン』(2017)の倉科カナ、ベテラン女優の高畑淳子が共演。そのほか窪塚俊介、サヘル・ローズらネームバリューある逸材のほか、筒井茄奈子ら期待の若手も出演しています。


映画『女たち』のあらすじ


(C)「女たち」製作委員会

自然に囲まれた山あいの小さな町。

アラフォーの独身女性・美咲は、半身不随の母の介護をしながら地域の学童保育所で働いています。

東京の大学を卒業したものの、就職氷河期で希望の仕事に就くことができず、恋愛も結婚もすべてが上手くいかずに故郷へ帰ってきたのです。

世間一般常識からの落ちこぼれのような娘を否定し、罵詈雑言を浴びせ続ける、半身不随の母。

毎日母との小競り合いをしながらも、美咲は、ホームヘルパーとしてやって来る直樹との結婚を夢見ています。

そんな美咲にとって、親友と呼べる養蜂家の親友・香織の存在が心の拠りどころでした。

ある日、母の介護に見知らぬ外国人女性がやって来て、直樹が転勤になったと告げられます。

そして知った直樹の手痛い裏切り。

酷く落ち込む美咲には、追い打ちをかけるように、親友・香織の死が待っていました。

美咲にとって、養蜂家として自立する香織は憧れの存在で心の支えでもありました。

将来の夢も心の支えもなくなった美咲の心はポキリと折れ、崩壊へと向かっていきます。

映画『女たち』の感想と評価


(C)「女たち」製作委員会

親友・香織の心の叫び

美しい自然が織りなす景色の中で、一人静かにハチと暮らす養蜂家の香織。その香織の元へ親友の美咲が訪ねるところから『女たち』は始まります。

本作の主人公は、職にも就けずに東京から舞い戻ってきたアラフォー女子の美咲ですが、美咲の心の拠り所となっているのが、親友の養蜂家の香織です。

美咲と香織は小学校からの同級生。明るく見える2人にも、心の奥に秘めたそれぞれの悩みがありました。

悩みを悟りつつもお互いを尊重する2人。蜂蜜作りという映像を通して、2人の触れ合いが美しく描き出されています。

一方、のどかで美しいだけが自然ではありません。山間の町にも、時には激しい豪雨が訪れます。

激しく降る雨の中、チーズやワイン、パスタなどの軽食で飾られた屋外の食卓につき、寂しさを紛らわすかのように独りでワインを飲む香織。

そのうちに豪雨に撃たれながら、自分の胸の奥にある「寂しさ」を爆発させます。

普段物静かで大人しい香織を演じるのは倉科カナ。美しくもあり、ゾッとするほど壮絶な自分との戦いとも言える場面に目を奪われます。

そこには、表に出さない感情を吐露する時の女性の姿が、鮮烈に描かれていました。

母と娘の葛藤


(C)「女たち」製作委員会

主人公・美咲は、病気のために呂律も回らず半身不随となった母・美津子と二人暮らし。父親は自殺をし、以来母と娘はお互いのせいだといがみ合っています。

身体が思うように動かせず、言葉もはっきり話せない美津子の苛立ちは、自分の介護をする娘の美咲に向きます。

また美咲も介護をしているのに……という思いを捨てきれず、衝突を繰り返すことになります。

実母に向かって何もかもかなぐり捨てて怒りを吐露する美咲。

ここにもまた壮絶なる女の闘いがありました。我慢に我慢をして爆発するときの凄まじさを見事に表現したのは、美咲を演じる篠原ゆき子です。

そして身体の不自由な高齢女性を体当たり的に演じた、高畑淳子。

ベテラン女優ですが、現役の介護ヘルパーに話を聞き、役作りを研究したと言います。

しゃべるときに一方に曲げたままの口元とか、片方の指を曲げたままにしたりとか……。その様子は硬直した身体を持つ病人そのもので、研究成果は十分表れていました。

しかも、眉毛のほとんどないノーメイク。白髪頭を振り乱して声にならない声を張り上げる姿は、まさに鬼婆の様相です。

このように、篠原ゆき子と高畑淳子の熱演によって、情け容赦なくお互いの感情をぶつけ合う母娘の争いが一段と迫力あるものとなりました。

母娘の気持ちの底にあったのは「生きる」ことへの切望と、不条理なことが続く人生への抗いではないでしょうか。

アラフォー、独身、恋人の裏切り、介護、いさかい、友の死。

立て続けに起こる出来事で、自分の人生にはもう何の望みもないと思っても、美咲の心を慰めるものがありました。

女としての不幸を全て飲み込んで、それでも生きていく逞しい原動力は、”母性の原点”と言えるかもしれません。

まとめ


(C)「女たち」製作委員会

映画『女たち』は、『銃 2020』、2020年『海辺の映画館』などの作品も手掛けた奥山和由が制作。

奇しくも、自ら立ち上げた「チームオクヤマ」の発足25 周年の節目に当たる作品となりました。

美しい自然の中、美咲と香織という2人を通して、生と死の間を彷徨うギリギリの女たちの生き様を描き出しています。

生きることは苦しい。それでも食いしばって生き抜いていく……。

蜜蜂のように一心不乱に生きた女たち。危ういはかなさと一途に生きる逞しさが、明日への希望を諭してくれます。

映画『女たち』は、2021年6月1日(火)よりTOHOシネマズシャンテ他、全国公開。

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次回の連載コラム『映画という星空を知るひとよ』もお楽しみに。







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