Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2021/01/05
Update

映画『エマの秘密に恋したら』あらすじと感想レビュー。“秘密の暴露”がもたらすアレクサンドラ・ダダリオの魅力|映画という星空を知るひとよ44

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第44回

イリース・デュラン監督が手掛けた映画『エマの秘密に恋したら』が、2021年1月8日(金)新宿武蔵野館にて先行上映され、1月22日(金)からイオンシネマ他全国公開されます。

原作は、「レベッカのお買いもの日記」シリーズで人気の作家ソフィー・キンセラによるベストセラー小説。

搭乗した飛行機が乱気流に巻き込まれて墜落を覚悟した主人公エマが、遺言のように隣の席の男性に自分の秘密を打ち明けますが、その男性は会社のオーナーでした。最悪の出会いから始まる恋を描いたラブコメディです。

『カリフォルニア・ダウン』のアレクサンドラ・ダダリオがちょっとカッコ悪いけれどチャーミングな主人公を演じています。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『エマの秘密に恋したら』の作品情報


(C)2019 CYKAS LLC

【日本公開】
2021年(アメリカ映画)

【原作】
ソフィー・キンセラ:『エマの秘密に恋したら…』

【脚本】
ピーター・ハッチングス

【監督】
イリース・デュラン

【キャスト】
アレクサンドラ・ダダリオ、タイラー・ホークリン、スニータ・マニ、デビッド・イーバート、キミコ・グレン、ラバーン・コックス

【作品概要】
映画『エマの秘密に恋したら』は、ニューヨーク・タイムズのベストセラーリストにランクインし、40か国語以上に翻訳されたソフィー・キンセラの小説『エマの秘密に恋したら…』をイリース・デュランが映画化したものです。

『バチェロレッテ -あの子が結婚するなんて!』(2012)の製作スタッフが、『カリフォルニア・ダウン』(2015)のアレクサンドラ・ダダリオを主役に迎え、爽快なユーモアで女性たちの共感を集める作品を作り上げました。


映画『エマの秘密に恋したら』のあらすじ

(C)2019 CYKAS LLC

ニューヨークに支店を構えるオーガニック飲料の大企業で働くエマ。仕事ではなかなか能力を発揮できず、落ち込んでいたところに、昇進のチャンスが訪れます。

ところが、そのチャンスとなるべく出張先でクライアントとの会議に大失敗します。

傷心のまま搭乗した帰路の飛行機が乱気流に巻き込まれました。

“退屈な仕事にパッとしない恋人。私の人生、これで終わるなんて!”と、パニックと悔しさから自分を見失ったエマは、隣の席の見知らぬ男性に、誰にも言えない秘密をすべてぶちまけてしまいます。

気が付いたら飛行機は無事に着陸していました。

迎えに来た現在の恋人と帰路についたエマですが、次の日に何事もなかったかのように出社すると、オフィスはカリスマオーナーであるジャックの来社ということに沸いていました。

ところが、そのオーナーであるジャックこそが“飛行機の隣の席の男性”だったのです。

秘密を全部暴露したエマは、大慌てになるのですが……。

映画『エマの秘密に恋したら』の感想と評価

『エマの秘密に恋したら』の主人公エマはちょっとドジですが、奔放な明るい女性です。

恋人の趣味を自分では好きではないと思いながらも、自然な成り行きで好きなふりをしたりと、普通の女性が抱えているような悩みを持ち、本当の自分を隠しながら、毎日をおくっているようなところがありました。

飛行機が墜落すると思い、自分の人生はここまでと思って、胸の中にしまい込んでいた秘密を隣に座る見知らぬ男性に全部暴露したエマ。

話し終わって無事に飛行機も目的の空港に着陸し、やれやれと思った次の日、その秘密を打ち明けた男性が会社のオーナーとして再び目の前に現れました。

秘密を打ち明けた相手には、一番恥ずかしいところを知られたような気がするでしょう。

秘密を洗いざらい打ち明けてしまった人には、二度と会いたくないと思うのが普通でしょうから、会うはめになってしったエマはどんなに驚きあせったことでしょう。

秘密は、大なり小なり、人との信頼関係を左右させます。親しい間柄では、いいことも悪いことも全て話して欲しいと思うものでしょうか? それとも悪いことは秘密のままでいて欲しいものなのでしょうか?

様々な意見があるでしょうが、隠し事のないクリーンな関係が一番理想的です。ですが、全てを話していい相手がそうそう多くいるとは思えません。

全てを話していい相手かどうか、駆け引きなしでサイテーの選択と出会いをしてしまったエマですが、“秘密を知られた”という出来事は、エマを“素の自分”でいる強い女性に変えていきます。

エマの変化とエマが本物の恋を見つけるシンデレラストーリー。エマを演じるアレクサンドラ・ダダリオと、ジャックに扮するタイラー・ホークリン の息のあった演技も見ものです。

まとめ

(C)2019 CYKAS LLC

人生の終わりだと思って、自分の秘密を隣に座る見知らぬ男性に話してしまい、のちにその男性が会社のオーナーと知ったエマ。

最悪の出会いから、自身の成長にもつながる物語が始まります。

喜怒哀楽がはっきりする顔立ちのアレクサンドラ・ダダリオは、たとえセリフがなかったとしてもエマの気持ちが明確に伝わる演技をしています。

自分の感情のままに笑い、泣き、怒るエマ。彼女はエレガントなレディではないけれども、自分に正直なチャーミングな女性と思えます。

“秘密を知られる”ということを弱点を握られると考えず、“ありのままの自分を知ってもらう”とプラス思考で考えたとき、新たなシンデレラストーリーが生まれてきます。

映画『エマの秘密に恋したら』は、全てをさらけ出し本音で人と向き合う大切さを、さりげなく教えてくれる作品でもあるのです。

次回の連載コラム『映画という星空を知るひとよ』もお楽しみに。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら




関連記事

連載コラム

講義【映画と哲学】第8講「性的関係と享楽について:ラカンの観点から『愛のコリーダ』を見る」

講義「映画と哲学」第8講 日本映画大学教授である田辺秋守氏によるインターネット講義「映画と哲学」。 (C)大島渚プロ 第8講では、性的関係と享楽をジャック・ラカンの精神分析的観点から再考。それを踏まえ …

連載コラム

映画『長いお別れ』あらすじと感想。中野量太監督の描く認知症と向き合う家族の「つながり」|シニンは映画に生かされて8

連載コラム『シニンは映画に生かされて』第8回 はじめましての方は、はじめまして。河合のびです。 今日も今日とて、映画に生かされているシニンです。 第8回でご紹介する作品は、映画『湯を沸かすほどの熱い愛 …

連載コラム

Netflix映画『ケイト』ネタバレあらすじ感想と結末の考察解説。ヤクザ抗争とアニメ的描写で日本文化と東京をカリカチュアした描写は一見の価値あり|Netflix映画おすすめ57

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第57回 東京を舞台に、ヤクザの抗争に巻き込まれる外国人暗殺者を追ったNetflixのアクションスリラー『ケイト』。 毒を盛られ余命24時間 …

連載コラム

映画『グレートウォー』ネタバレ評価と感想レビュー。第1次大戦の米軍黒人部隊の死闘を描く|未体験ゾーンの映画たち2020見破録24

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」第24回 様々なジャンルの映画を集めた劇場発の映画祭「未体験ゾーンの映画たち2020」は、今年もヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田にて実 …

連載コラム

映画『ジャスト6.5』あらすじ感想と解説レビュー。イランでは稀なエンターテインメントを追究した作風|TIFF2019リポート17

第32回東京国際映画祭・コンペティション部門『ジャスト6.5』 2019年にて32回目を迎える東京国際映画祭。令和初となる本映画祭が2019年10月28日(月)に開会され、11月5日(火)までの10日 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学