連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第283回
2023年に第169回直木賞と山本周五郎賞をダブル受賞した永井紗耶子の『木挽町のあだ討ち』。
ある雪の夜、江戸の木挽町の芝居小屋「森田座」の近くで、美形の若侍が父親の仇討ちをしました。「みごとだ」と江戸中の評判となったのですが、実はこの仇討ちには秘密があったのです。
アッと驚くようなどんでん返しが用意されたミステリー小説『木挽町のあだ討ち』を、源孝志監督が映画化しました。
映画『木挽町のあだ討ち』は、2026年2月27日(金)全国公開。
事の顛末を紐解いていく田舎侍・加瀬総一郎を柄本佑、森田座で謀略を巡らせる立作者・篠田金治を渡辺謙が演じています。
見事な仇討ちの裏には、どんな秘密があるというのでしょうか。人情味あふれるミステリー時代劇をご紹介します。
映画『木挽町のあだ討ち』の作品情報

(C)2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会 (C)2023 永井紗耶子/新潮社
【日本公開】
2026年(日本映画)
【原作】
永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』(新潮文庫刊)
【監督・脚本】
源孝志
【企画協力】
新潮社
【主題歌】
『人生は夢だらけ』椎名林檎(EMI Records / UNIVERSAL MUSIC)
【キャスト】
柄本佑、長尾謙杜、北村一輝、瀬戸康史、滝藤賢一、山口馬木也、愛希れいか、イモトアヤコ、野村周平、高橋和也、正名僕蔵、石橋蓮司、沢口靖子、渡辺謙
【作品概要】
本作の原作は、永井紗耶子のミステリー時代劇『木挽町のあだ討ち』です。監督・脚本を手がけたのは、テレビドラマ『忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段』などの時代劇や映画『大停電の夜に』(2005)の源孝志。
加瀬総一郎役で柄本佑が主演を務め、森田座で謀略を巡らせる立作者・篠田金治に渡辺謙。
若侍・伊納菊之助役で長尾謙杜(なにわ男子)、菊之助の父を手にかけあだ討ちされる作兵衛役で北村一輝、森田座の木戸芸者・一八役で瀬戸康史、森田座の立師・相良与三郎役で滝藤賢一、女形の芳澤ほたる役で高橋和也、小道具方の久蔵役で正名僕蔵が共演しました。
映画『木挽町のあだ討ち』のあらすじ

(C)2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会 (C)2023 永井紗耶子/新潮社
1810年(文化7年)1月16日、江戸・木挽町の芝居小屋「森田座」では、『仮名手本忠臣蔵』が千秋楽を迎えていました。
舞台がはねた直後のことです。千秋楽を観終わった観客たちの目の前で、突然、仇討ちが行われました。
「森田座」に隣接する空地で、美濃遠山藩士・伊納菊之助(長尾謙杜)が、父・清左衛門(山口馬木也)を殺害して逃亡した元藩士・作兵衛(北村一輝)の首をみごとに討ち取ったのです。
雪舞う夜、若き美男子が成し遂げたこの事件は、「木挽町の仇討ち」として、江戸の語り草となりました。
それから1年半後、菊之助の縁者と名乗る元遠山藩士・加瀬総一郎(柄本佑)が森田座を訪れ、あの仇討ちについて周囲の人に聞いて回ります。
木戸芸者の一八(瀬戸康史)、立師の相良与三郎(滝藤賢一)、元・女形の衣装方二代目を名乗る芳澤ほたる(高橋和也)、小道具方の久蔵(正名僕蔵)、そして戯作者の篠田金治(渡辺謙)。
遠山藩存続の鍵を握っている総一郎は、仇討ちにどこか納得いかないものを感じ、真相を探っていたのです。そして、金治らの話からついに真実が判明します。
映画『木挽町のあだ討ち』の感想と評価

(C)2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会 (C)2023 永井紗耶子/新潮社
本作は、2023年の直木賞と山本周五郎賞をダブル受賞した永井紗耶子の小説『木挽町のあだ討ち』を映画化したものです。
父の仇を討つために、江戸にやってきた若侍・菊之助。みごとに仇討ちを成功させますが、それを不思議に思う菊之助の縁者・総一郎が事件の真相を探ります。
本作品のタイトルは、漢字ではなく平仮名の「あだ討ち」です。ここにすべての謎を解く鍵があるといっても、言い過ぎではないでしょう。
映画冒頭すぐに始まる本物の「仇討ち」は、芝居小屋で先ほどまで見ていた演目の続きを見ているような錯覚を見物人に与えます。緊張感走るこのシーンは、本作の見どころの一つとなっています。
りりしくも美しい菊之助を演じる長尾謙杜の華麗な剣は、傘の華咲く雪景色に鮮やかに描かれ、そのビジュアルを最大限に活かした映像に酔いしれることでしょう。
菊之助の仇討ちに手を貸す金治を、頼りがいのあるトップとして演じる渡辺謙のいぶし銀の演技や、柄本佑が主役の加瀬総一郎を、一癖も二癖もある謎多き人物として演じ切っているのも見逃せません。
原作小説では芝居小屋の関係者たちの過去も描いていますが、映画では仇討ちに関わるところを大きく切り取って映像化されています。
「森田座」の個性的な人々の菊之助に対する愛がにじみ出るような一大仇討ちとなりました。
また、個性豊かな登場人物が巻き起こす小さな失敗や、図らずしも起るハプニングに慌てる様は、緊張感が続く中でも笑いを誘い、楽しませてくれます。窮地を凌ぐ渡辺謙の殺陣にも注目を!
事件の謎解きだけでなく、芝居の世界を舞台にした時代劇ならではの、見どころ満載の本作。
忠義や名誉、義理人情を重んじる武士たちと、人情味あふれる‟偽の世界”を創り出す芝居小屋の人々が織りなす「あだ討ち」の一部始終を、どうぞ最後まで見届けてください。

(C)2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会 (C)2023 永井紗耶子/新潮社
まとめ

(C)2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会 (C)2023 永井紗耶子/新潮社
本作の原作は、永井紗耶子のミステリー小説『木挽町のあだ討ち』。美徳とされがちな武士の仇討ちに纏わる物語が、美しい映像とともにスクリーンに登場します。
雪の降る日に江戸で行われた仇討ちに江戸中が湧きました。それから1年半たった頃、一人の田舎侍・加瀬総一郎がやって来て、あの仇討ちのことを関係者から聞いて回ります。
「仇討ち」事件の真意に次第に迫る総一郎の執念、若侍・菊之助の女装した美しさ、立作者・篠田金治のハプニングにも即応する演技力に、物語に引きずり込まれるのに違いありません。
映画『木挽町のあだ討ち』は、2026年2月27日(金)全国公開。

(C)2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会 (C)2023 永井紗耶子/新潮社
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星野しげみプロフィール
滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。


































