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Entry 2024/12/13
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『繕い合う・こと』あらすじ感想と評価レビュー。長屋和彰初監督作品は「金継ぎ」をモチーフに兄弟の衝突と絆を描く|映画という星空を知るひとよ240

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第240回

「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023」の国内コンペティション長編部門に正式出品された映画『繕い合う・こと』。

ある兄弟とその周囲の人々との繋がりの物語であり、亡き人に胸を張って生きて行く道を歩み始める物語でもあります。

映画『繕い合う・こと』は2025年1月11日(土)より、新宿K’sシネマにて公開!

カメラを止めるな!』(2017)に出演していた長屋和彰が初監督にして初脚本を、プロデューサーには同じく『カメラを止めるな!』(2017)に出演していた大沢真一郎を迎えて製作した作品です。

歪になってしまった兄弟の関係を修復していく様を、近年世界的にも話題になっている”金継ぎ”をモチーフにして描いています

映画『繕い合う・こと』を、公開に先駆けてご紹介します。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『繕い合う・こと』の作品情報


(C)2023 Mending Cracks

【日本公開】
2025年(日本映画)

【企画・監督・脚本・編集】
長屋和彰

【プロデューサー・助監督・スチール】
大沢真一郎

【主題歌】
『UPA』ジョルジョデコヤツ

【キャスト】
長屋和彰、黒住尚生、菊池豪、山本由貴、ふくだみゆき、大沢真一郎、篠原篤、田村彰規、
岡田雄樹(声)、藤井桂(声)、ジョルジョデコヤツ(声)

【作品情報】
父の死によって歪んだ兄弟の絆を、陶磁器の修復技法である「金継ぎ」になぞらえて、修復していく物語『繕い合う・こと』。

カメラを止めるな!』(2017)などに出演する俳優の長屋和彰が初監督・脚本を手がけました。

長屋監督自ら主演を務め、不器用な兄弟と周囲の人々が織りなす物語を綴ります。

映画『繕い合う・こと』のあらすじ


(C)2023 Mending Cracks

金継ぎ師であった父を亡くした、護と幹の兄弟。

亡き父の跡を継ぎ[金継ぎ師]の道を選んだのですが、“ある”わだかまりを抱える兄の護。

弟の幹は、これといった目標を持たず、父を継いだ兄に対して焦りや羨望から苛立ちを覚えています。

ある年の暮れ、幹は例年通り大掃除をする為に、護の住む実家へと帰省しました。

幹は掃除の途中で、父の部屋が空っぽになっていて遺品が無くなっていることに気が付きます。

その夜、なぜ黙って遺品を片付けたのかと、幹は護を問いただします。

2人のぶつかり合いは激しくなって……。

映画『繕い合う・こと』の感想と評価


(C)2023 Mending Cracks

人が生きていく上で、周囲との繋がりは不可欠なもの。本作では、兄弟という関係の2人にスポットライトを当てて、友人たちとの日常も交えて、人と人との繋がり方を表しています

本作で描かれる兄弟間のわだかまりや衝突は、多くの方も経験したことがあるのではないでしょうか。一度できてしまった溝をどうやって埋めていくのかと、気になるところです。

本作では言葉少ない兄弟の細やかな表情と態度で、つかず離れずの危うい兄弟の気持ちが表現されます。

また、兄・護の仕事の[金継ぎ]も重要な要素を持っています。[金継ぎ]は、割れたり欠けたりした陶磁器を漆で接着し、継ぎ目に金や銀、白金などの粉を蒔いて装飾するという日本の伝統技術です。

一度こわれたものを修復する仕事を用いて、人間関係も繕っていけるのではという、希望がのぞく作品となっています。

[金継ぎ]の美しい仕上がりもお見逃しのないように、注意してください。

まとめ


(C)2023 Mending Cracks

父の死によってすっかり冷え切った状態になった護と幹の兄弟が確かな絆を修復する物語『繕い合う・こと』。不器用な兄弟は会話も少なく、お互いを意識して行動しているせいか、とても静かな作品です。

わだかまりを持つ兄弟と思え、パッと見、仲が悪そうですが、彼らの胸の奥にある本心を想像させるに十分なヒントがあちこちにちりばめられています

鑑賞後は、血の繋がりっていいなと、誰もが思うのではないでしょうか。そして、いかにも身近にいるようなリアルティあふれる兄弟に親近感を覚えるにちがいありません。

作品のこれからの兄弟の生き方を暗示する仕上がりに心温まることでしょう。

映画『繕い合う・こと』は2025年1月11日(土)より、新宿K’sシネマにて公開!

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星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。

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